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ぷちレコードさん
平均点: 6.32点 書評数: 208件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.48 6点 オー!ファーザー- 伊坂幸太郎 2021/03/13 22:08
主人公の由紀夫には父親が4人いる。誰が遺伝子上の父親かは分からないまま、4人とも可愛がってくれている。父親の個性はバラバラ。それぞれの人生哲学を教えこまれた結果、由紀夫は喧嘩の攻撃の仕方や、女性へのアプローチの仕方など、さまざまな教訓を頭に刻み込んでいく。
にぎやかに楽しく話は進み、やがて由紀夫は絶体絶命のピンチに。そこから鮮やかに伏線を回収しながらトラブル打開に向かっていくさまは実に爽快。

No.47 7点 むかし僕が死んだ家- 東野圭吾 2021/03/01 22:53
記憶、思考と人間に絡む謎を取り上げている。抽象的な枠組みの中で、謎そのもの、執拗に繰り返される推理そのものが、緊密かつ必然的にテーマに繋がっている。

No.46 4点 砂の器- 松本清張 2021/03/01 22:49
刑事たちの捜査に偶然の要素が多く、ミステリとして弱い。社会派としてはどうかというと、犯人の過去については、むしろ映画の方がしっかり描かれている。

No.45 5点 冬のフロスト- R・D・ウィングフィールド 2021/02/19 22:58
いくつもの謎が錯綜するモジュラー型の展開。
今回とりわけフロストを悩ませるのが、少女たちの誘拐事件。容疑者を確保するものの立件できないまま、事態は思わぬ方向へ展開していく。自称超能力者までが捜査をひっかきまわすし、警部の疲労は限界にまで達してしまう。
お荷物の部下と自己中の上司に挟まれて、またも大あらわのフロストだが心も凍る冷たい犯罪と向き合いながら、情けもあれば優しさも忘れない主人公の温かさが心地良い。

No.44 7点 さよなら神様- 麻耶雄嵩 2021/02/19 22:50
二〇〇五年刊の「神様ゲーム」の続編にあたる連作集。
小学生の「俺」こと桑町淳は、まず鈴木に犯人の名前を聞き、調査を進めてショッキングな事実に辿り着く。本作が扱うのは犯人捜しではなく、答えを知ることで生じる異常事態と状況そのものを要因とする屈折したプロット。オーソドックスなスタイルを転倒させ、仕掛けを弄して後味の悪いドラマを紡いだ野心作。

No.43 4点 イン・ザ・プール- 奥田英朗 2021/01/20 17:36
精神科医がクライエントに対して精神的優位に立ち、相手の精神をコントロールすることで癒すという、精神分析を扱った小説における古典的な一方通行の図式は、完膚なきまでに崩壊し去っている。
確かに結果的には、クライエントの抱える心の病は癒されるのだけれども、伊良部は、クライエントと一緒になってはしゃぐばかりで、少なくとも表面上は、クライエントの意志を左右しようという意志があるようには見えない。

No.42 7点 密室殺人ゲーム王手飛車取り- 歌野晶午 2021/01/11 20:11
インターネットで殺人推理ゲームを出題し合っている五人。それぞれマスクをしたり、画面をぼやかしたりして正体を明かさず、映像と音声でやり取りしながら、推理合戦に白熱していた。密室、アリバイ崩し、犯人当て。ただし話題になっているのは全て確実に起こった事件であり、その実行犯は五人の中の出題者。探偵推理ゲームのために殺人を次々に犯しているという奇抜な設定。ただ作者は、単なる推理ゲームの羅列で終わらせていない。意表をつく展開とともに、巧妙に仕組まれた恐ろしい結末を用意している。

No.41 5点 黒百合- 多島斗志之 2021/01/04 21:21
戦後間もない六甲の別荘地で繰り広げられる、中学生たちの淡い恋物語。物語の大部分を占めるパートに、戦前のドイツと戦中の神戸が舞台となる二つの短いエピソードが挿入されるという構成。
最後の最後でようやく全編に巧みな罠が仕掛けられていたことが分かり、瑞々しい青春小説の中から別の風景が騙し絵のように浮かび上がる。作者の卓越した技巧は脱帽もの。

No.40 8点 ザリガニの鳴くところ- ディーリア・オーエンズ 2020/12/28 18:32
人権に関する意識が希薄であった時代の米国を舞台に、両親に捨てられながらも一人で生きていこうとする少女の姿を、ミステリの技法によって描いた作品。
生き方が他人と違うためにゆえなき差別を受けるキャサリン・クラークは、犯罪事件にまで巻き込まれてしまう。社会が分断された危機的な様相を帯びる今日だからこそ、ぜひ読んでもらいたい一冊。

No.39 4点 向日葵の咲かない夏- 道尾秀介 2020/12/22 17:20
肝となる世界設定がご都合主義的。しかも探偵役の造形は、この不思議な世界にあってさえ不自然極まりない。新本格黎明期に出たある名作の異形譚という印象が拭えない。

No.38 7点 聖母- 秋吉理香子 2020/12/13 19:05
部分部分に覚える、モヤモヤした違和感。はっきりしないが、何かがおかしい。それが終盤に近付くにつれて、謎だった点と線が繋がり、一気に視界が開けていく。ページを戻って、違和感を覚えたところを改めて見ると、あれもこれも伏線だったのかと納得。真相を知ったうえで読み返すと、ひとつひとつの言葉の意味を見つけることが出来ます。

No.37 7点 GOTH リストカット事件- 乙一 2020/12/04 19:27
「暗黒系」、「リストカット事件」は、探偵役による事件解決の論理が、残虐極まりない犯人の異常性と完全にすれ違っている。それはまさに、恐るべき現実を映し出しているといえるでしょう。
「土」は、少年少女の情死を冴え冴えとした筆致で描き切り、哀切さが強く心に残る。

No.36 7点 崩れる脳を抱きしめて- 知念実希人 2020/11/28 18:34
恋愛と医療ミステリとの儚くも美しい融合が見事な作品。その中に、現役医師でもある著者の終末医療に対する考え方や患者に向き合う姿勢も垣間見えた気がする。
そして、まるで映画を観ているかのようなラストシーンは、絵画のような表紙と相俟って更に作品の感動を高めていたように感じた。

No.35 9点 容疑者Xの献身- 東野圭吾 2020/11/20 19:25
中心に据えたアイデアを成立させるために計算し尽くされた人物像と設定、事件の捜査につれて予想外の展開をみせるサスペンスの妙。テーマの複数解釈を可能にさせる狡猾な筆致。
驚天動地な仕掛けを用いながら、それが本格初心者にも容易に分かる単純明快な構造である。さらに人間ドラマとしても充分に楽しめる。

No.34 5点 火蛾- 古泉迦十 2020/11/14 20:22
宗教小説ないし、ファンタジーとも見えた物語が論理的に収斂してゆく姿は、本格ミステリならではのカタルシスを堪能させてくれ、二人の語り手を配した二重構造も過不足なく機能している。
ただ、ミステリとしての仕掛けが必ずしもテーマに即しているとは思えなかった。

No.33 6点 グラン・ギニョール城- 芦辺拓 2020/11/06 19:27
作者の凝り性ぶりが見事に結実した作品。事件そのものの行方は言うに及ばず「城」の世界と探偵森江春策の世界をどのように近づけていくのかという展開方法にも激しく興味を掻き立てられた。

No.32 7点 葉桜の季節に君を想うということ- 歌野晶午 2020/10/30 20:15
読者が陥るであろう錯誤を想定してメイントリックが策定されている。トリックの作りとともに、見えない人に気づかされたという目から鱗が落ちるような読後の感触が心地良い。
しかし、関係のない事件が挿入されているのは思わせぶりで中途半端な気がした。

No.31 8点 スイス時計の謎- 有栖川有栖 2020/10/22 19:25
表題作は小説の形式は極めてオーソドックスな型の探偵小説。
しかし、その論理展開には新鮮なものがあり、かつ理詰めで物事を突き詰めていくことの美しさや楽しさを十二分に伝えてくれるものだった。
設定、構成などの外見的な部分でケレンに頼らず、純粋に論理のみで勝負しており、本格ミステリとして高度な達成をなしえている。

No.30 6点 アイネクライネナハトムジーク- 伊坂幸太郎 2020/10/16 20:06
大きな事件が起きるでもなく、衝撃的な展開もない。普通の人々が紡ぐ日常の記録、なのにキラキラと輝いてみえる。
登場人物たちの軽妙でセンス溢れるやりとりがとても心地よい。現実的なちょっとした奇跡がほっこりさせてくれる。

No.29 5点 貘の檻- 道尾秀介 2020/10/07 19:21
横溝テイストにあふれた舞台設定に加え、地下水路、農作業のしるべとなる山の残雪の形、薬物、写真など多彩な道具立てを駆使し、人物の造形にも怠りのない精緻な本格ミステリ。

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ぷちレコードさん
ひとこと
中学生の頃、ミステリにはまった。でも続いたのは3年間ぐらい。今また、ミステリにはまりつつある。やっぱりミステリは最高だ。
好きな作家
採点傾向
平均点: 6.32点   採点数: 208件
採点の多い作家(TOP10)
伊坂幸太郎(11)
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芦辺拓(5)
米澤穂信(5)
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