皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
していません。ご注意を!
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ぷちレコードさん |
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| 平均点: 6.24点 | 書評数: 317件 |
| No.97 | 7点 | アヒルと鴨のコインロッカー- 伊坂幸太郎 | 2022/03/09 22:39 |
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| 物語は二つの時間軸で進行する。一つは「僕」とある男が書店を襲う現在の話であり、もう一つは「わたし」とブータンの青年が残酷なペット殺しの犯人を追及する二年前の話。この現在と過去の話が交互に語られ、途中で大きく交差して全体像を劇的に見せる。
その物語を反転させる鮮やかなトリックと細部の組織化が見事。様々なピースが少しずつ組み合わされ、些細な事柄や古い言葉が新鮮な意味を帯びている。 クールで知的な語り口、気の利いた会話、人物たちの温かな存在感も魅力的。 |
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| No.96 | 7点 | 硝子のハンマー- 貴志祐介 | 2022/02/23 22:39 |
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| ビルの12階、内廊下には監視カメラ、窓には嵌め殺しの防犯合わせガラス。密室であるはずの社長室で社長が殺された。
仮説を立てては壊し、立てては壊す純子と榎本の推理の顛末を描く第一部と、一転して犯人の視点から、殺人の動機や計画の詳細、犯行後の不安と孤独を描いた第二部。 論理的に構築された謎が論理的に解かれていく過程が楽しい。 |
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| No.95 | 5点 | 春期限定いちごタルト事件- 米澤穂信 | 2022/02/23 22:35 |
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| 学園ものの連作ミステリ。一見、命の生々しさとは無縁のように思える。だが、読み出してすぐに印象は変化する。平穏を至上の価値として「小市民」を目指す高校一年生の男女が巻き込まれる小事件の数々。
この徹底的な爽やかさとひ弱さが、我々の命がナマモノであることを強く感じさせる。 |
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| No.94 | 7点 | プラ・バロック- 結城充考 | 2022/02/08 22:54 |
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| 警察の群像劇は類型の域を出ていないが、悪魔的な犯罪の全容が浮かび上がってくる展開は読み応え十分。
雨、工業地帯、猟奇的犯行、仮想空間。「ブレードランナー」「セブン」のようなダークな映像作品を容易に想起させる材料を用いながらも陳腐にならず、先鋭的に仕立てた手腕は買う。 |
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| No.93 | 6点 | 麒麟の翼- 東野圭吾 | 2022/02/08 22:49 |
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| 被害者の足取り調査と、その界隈を歩いた理由に迫っていく、地味ながらも二段構えの構造の謎解きが読みどころ。
中途半端な解決は、被害者家族の救済にならないという加賀の言葉には胸を打たれる。 |
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| No.92 | 4点 | ジェシカが駆け抜けた七年間について- 歌野晶午 | 2022/01/22 23:02 |
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| ヒロインのジェシカはエチオピア出身のマラソン選手で、日本人監督・金沢勉のもとで練習に励んでいる。ジェシカはある夜、同僚の女子選手・原田歩が丑の刻参りで金沢を呪っているところを目撃するが、まもなく原田歩は自殺してしまう。
不可能犯罪の面白さ、女子スポーツの友情、努力、感動の物語は保証できる。しかし、このトリックは「葉桜の・・・」のような普遍性に欠ける。ラストは唖然呆然、こんなのありかと脱力。 |
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| No.91 | 8点 | 六人の嘘つきな大学生- 浅倉秋成 | 2022/01/22 22:58 |
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| IT企業の新卒採用の最終選考に残った6人の学生たちの密室劇。6人の中から1人の内定を決める課題を会社から出された学生たちは、告発文を交えた暴露合戦を行うことになる。
前半は、学生たちの隠された顔が次々と暴かれ、告発文を書いた犯人も一応は突き止められるのだが、後半になると別の視点から本当の犯人捜しが始まる。前半は意外性に富んで緊張感も高いが、後半は巧妙に張られた伏線の回収となる。 人間の負の部分を描くイヤミス全開の暴露合戦が、人間味あふれる温かな世界へと逆転する展開もいい。 |
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| No.90 | 6点 | 妻は忘れない- 矢樹純 | 2022/01/06 22:41 |
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| 5編が収録されているが、いずれも切れ味が良くて意外性に富んでいる。なかでも姉妹の間に横たわる家族の死が大きな影を落とす「百舌鳥の家」がいい。人間の心が持つ不気味さと、家族というねじれて憎み合う関係を鋭く捉えていて、ドラマに厚みがある。
「裂けた繭」は、引きこもり青年のおぞましい日常が途中で劇的に反転して、全く異なる状況を見せつける。おぞましさが一段と際立つどんでん返しに驚き。 そのほか夫に殺されるかもしれない恐怖「妻は忘れない」、距離を急激につめてくるママ友との葛藤「無垢なる手」、大学生の息子に事件の容疑がかけられる「戻り梅雨」も小業が効いている。 物語のひねりにやや小手先の感はあるものの、読者の目先を変えて絶えず読者を意外な方向に引っ張っていこうという強い意志が感じられる作品集。 |
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| No.89 | 5点 | 地べたを旅立つ 掃除機探偵の推理と冒険- そえだ信 | 2022/01/06 22:33 |
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| 副題にあるように探偵は掃除機。交通事故で昏睡中の刑事がなぜか円形型のロボット掃除機に憑依してしまい、小学五年の姪を守るために、札幌市から小樽市まで旅に出る。
目覚めた部屋の隣室には殺人死体もあり、刑事として謎解きもしていく。掃除機にはスマートスピーカー機能がついているので、Wi-Fiがあればメールも打てる。でもなかなか信用されない。しかも充電は必須。 次々に難問が押し寄せるものの、それを一つずつクリアしていくアイデアが面白いし、語り口も楽しい。掃除機には限界もあり、どうしても人任せになるのが難だが、それでも奇想天外の設定を巧みに生かしていて悪くない。 |
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| No.88 | 5点 | 幽女の如き怨むもの- 三津田信三 | 2021/12/23 23:10 |
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| お馴染みの様式的な殺人は影を潜め、身を売られた女性の悲哀がたっぷり描かれるシリーズ中の異色作。
周到な伏線や手掛かりが隠されているのはもちろんなのだが、遊郭という場所、遊女という存在、その時代でなければ成立しない謎が解体されると同時に、薄幸な女たちの悲哀も浮かび上がる。心打たれる本格ミステリ。 |
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| No.87 | 7点 | 新参者- 東野圭吾 | 2021/12/23 23:06 |
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| 正面からではなく、背面や両サイドからの視点を変えることで、「被害者は誰か?」「一体何が起きたのか?」と同時に「なぜ殺されたのか?」「刑事は何をしたいのか?」という謎が多層化した物語。
しかも、八つの断片からなる連作短編集が、最後の一章で一気に長編となり意外な全貌を浮かび上がらせる。物語としても奥深くコクがある技巧派の面目躍如たる作品といえる。 |
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| No.86 | 9点 | 魔眼の匣の殺人- 今村昌弘 | 2021/12/07 23:07 |
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| 「あと2日で4人が死ぬ」という予言が横たわる中で、人は何を考え、どう行動するのか。舞台設定こそ前作の「屍人荘の殺人」より地味かもしれないが、超自然的な現象とロジカルな謎解きを組み合わせる手並みの鮮やかさは前作以上といっていいでしょう。
「クローズドサークル」や「人が死ぬごとに減っていく人形」といった定番過ぎる題材とも真正面から向き合っている。ミステリの名探偵はなぜ、警察を待たずに関係者を集めて犯人を名指しするのか。クライマックスでは、パロディとして扱われることの多いこんな疑問に対しても、本作ならではの回答をぶつけている。 |
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| No.85 | 6点 | 日曜の夜は出たくない- 倉知淳 | 2021/11/20 22:55 |
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| 生活感漂う日常パズラー連作短編と思ったら、最後でひっくり返り長編としての筋が一本通るタイプのミステリ。
トリックの弱さを凝りに凝った趣向でカバーする。各編ごとに語り口を変えて、最後はアクロバティックな多段落ちできれいに締める。主人公の猫丸先輩は、外見のほのぼのとしたムードと裏腹に突き放した冷たさが魅力的。 |
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| No.84 | 6点 | 逆ソクラテス- 伊坂幸太郎 | 2021/11/05 22:23 |
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| 人物たちの企みと齟齬、事実の開示の意図的な遅らせ、予想外の展開、意外な真相など語りとプロットに捻りをきかせて予測させない。日常の何でもない一場面ですらサスペンスを高めて語る。
いじめ、スポーツにおける頭ごなしの叱責、家庭内虐待、不審者による理由なき暴力などが主題になっているが、見事なのは小学生の話なのに広がりと豊かさを兼ね備えていることだろう。人間のコミュニケーションにおいて重要なものは何かという視点が貫かれているからで、大人まで考えに耽る要素を十分に持つ。 |
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| No.83 | 7点 | シャドウ- 道尾秀介 | 2021/11/05 22:11 |
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| 登場人物は精神医学の医師や研究者数名とその家族。精神障害が核となっている構図が第一章で分かる。複数の登場人物の視点によって物語が語られるという一見ありふれた手法を逆手に取り、終幕近くになって事件の全貌が明らかになるとともに、一挙にカタストロフィへとなだれ込んでいく展開は圧巻。 | |||
| No.82 | 5点 | 真夏の方程式- 東野圭吾 | 2021/10/23 23:13 |
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| 資源開発か環境保護かで揺れる海辺の町が舞台。
書かれたのは震災前だが、震災後に読むと現実の問題とリンクした読み方ができると思う。 「無知ゆえの幸福」と自他に許さないのが湯川の矜持で、そこはぶれていない。ただ得失を冷静に計算すれば未来を最適に制御できるという信念が通用しないのが、震災で露になったリスク社会の実相。その意味で、今回の湯川の判断は適切だったのか。いささか中途半端な気がしてならない。 |
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| No.81 | 5点 | 元彼の遺言状- 新川帆立 | 2021/10/23 23:08 |
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| 第19回このミステリーがすごい大賞受賞作。
「僕の全財産は、僕を殺した犯人に譲る」という奇妙な遺言を残して、大手製薬会社の御曹司・森川栄治が亡くなった。殺人を疑われる要素はなかったが、遺産目当ての犯人たちが次々と押し寄せる。弁護士の剣持麗子は英治と学生時代に交際した過去があるが、犯人候補に名乗り出た英治の友人の代理人として、「犯人選考会」に参加する。 設定も度肝を抜くが、ヒロインの弁護士像も、極めて異色。お金好きで身勝手、すぐに人を馬鹿にする性格で親しみがわかない。もちろん読んでいけば少しずつ印象が変化するように作られているし、事件の意外な展開も真相もよく考えられている。出色のデビュー作といえるが、全体的に少し受けを狙いすぎの部分が鼻につく。 |
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| No.80 | 5点 | スイーツレシピで謎解きを 推理が言えない少女と保健室の眠り姫- 友井羊 | 2021/10/09 23:12 |
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| チョコレート盗難の疑いをかけられたのをきっかけに、主人公は自分の推理力を目覚めさせていく。
ひとつひとつの作品の謎解きもさることながら、やはり読みどころは最終章で明らかになる大仕掛け。あまりに予想外、しかも書き手の立場にとって難度が高すぎる趣向に茫然。もう一度読み返したくなる。 |
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| No.79 | 6点 | 雪冤- 大門剛明 | 2021/10/09 23:05 |
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| 死刑制度の根本を問う真摯な社会派の姿勢を貫きながら、本格もののケレンの味を余すところなく発揮している。
あまりにもどんでん返しが続くので、本当に辻褄が合ったのか不安感が残ったが。 |
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| No.78 | 6点 | バック・ステージ- 芦沢央 | 2021/09/26 22:10 |
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| 卓抜した心理描写を駆使したシリアスなサスペンスを描いた作品が多い中、本作はかなりポップな読み口になっている。(もちろん、ヒリヒリするような感情に迫るサスペンスもあるが...)
連作短編集の形をとっており、その仕掛けの鮮やかさには驚かされた。 |
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