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[ 青春ミステリ ]
探偵は教室にいない
真史と歩シリーズ
川澄浩平 出版月: 2018年10月 平均: 5.00点 書評数: 6件

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東京創元社
2018年10月

東京創元社
2021年09月

No.6 5点 ぷちレコード 2021/05/17 22:31
日常に潜むささやかな謎を中心に、四人の少年少女の幼年期特有の青春や葛藤が微笑ましくもあり、切ない気持ちにさせられる。
ミステリといえど、複雑怪奇な内容ではないので、気軽に誰でも楽しめる作品となっている。

No.5 5点 猫サーカス 2019/02/24 15:15
語り手の「わたし」は札幌市の中学校に通う少女、真史。机の中に入っていたラブレターの書き手は誰なのか、友人が合唱コンクールのピアノ伴奏をやめた理由は何なのか、別の友人の二股疑惑の真相とは何かなどを調査する。探偵役は真史と幼なじみの引きこもりの少年、鳥飼歩。甘いものが大好きで、シニカルで、時々もってまわった言い方をしながらも理路整然と謎を解いていく。いわゆる日常の謎系のミステリだが、北村薫氏と加納朋子氏という日常の謎系の作家2人を含む選考委員会が選んだだけあって論理はしっかりとしていて、地味な青春ミステリではあるが、丁寧な筆致と優しい抒情がいい。

No.4 5点 まさむね 2019/01/13 23:56
 第28回鮎川哲也賞受賞作。受賞作が堅実な学園モノであったということが、個人的には最大の意外性…といった感じ。
 軽やかな筆致で、読み心地も悪くないのだけれども、如何せん小粒感は否めません。いや、新人賞作品としては確実に小粒でしょうね。前回受賞作「屍人荘の殺人」、前々回受賞作「ジェリーフィッシュは凍らない」と比較してしまうと、ね…。お上手な作品だと思うし、決して作者が悪い訳ではないのでしょうがね。「青春ミステリの新たな書き手の登場に、選考委員が満場一致で推した」という触れ込みだけれども、東京創元社さんは鮎川哲也賞をどのように捉えているのだろう…と気になったりして。ちなみに、このサイトでの書評、私を含めてここまで重複する部分が多いようですねぇ。つまりは、そういうことなのか。

No.3 5点 名探偵ジャパン 2018/12/16 16:41
ジオン脅威のメカニズム、量産型ザクの如く、どんどん大量生産され続ける「高校生と日常の謎」ものミステリ。
今年の鮎川哲也賞受賞作は悪い意味で予想外でした。

キャラクターも謎も文章も、全てが「60点前後」の非常に手堅い作品です。これを商業出版するとして、まず、反対する編集者はいないでしょう。確実に一定の支持、売上げを見込める出来映えだからです。既存のプロ作家が本命作の構想を練っている間に、糊口を凌ぐ意味で書いたものであれば、すこぶる納得できる作品です。
ですが、天下の「鮎川哲也賞」ですよ。「新人賞」です。

かつて同賞の審査員も務めたことのある有栖川有栖は、「新人賞に求めているのは、まず『斬新さ』」であると言い、その理由として、「普通に『上手い』ミステリを書く作家など、プロに掃いて捨てるほどいるから」と「プロが審査したうえで『これは新しい』と唸らせるものでなければ、出版社が経費と時間をかけて新人を発掘する意味がないから」という趣旨の発言をしています。
それを鑑みたうえで本作を読んでみると、どうでしょう?

私は「鮎川哲也賞」は数あるミステリ新人賞の中でも、特に(唯一?)ストイックな賞だと思っていました。普通、出版社としては、こういった賞レースにおいて、話題作りの(と、賞にかけた経費を無駄にしない)ために、なるべくなら「受賞作なし」を避けたいはずです。ですが、過去を振り返ってみれば、鮎川哲也賞は結構な割合で「受賞作なし」を出してきていました。それゆえ「ストイックだなあ」と感じていたのですが。昨今の出版不況の折り、東京創元社も、そんな悠長なことを言っていられなくなったのでしょうか? 数年前であれば、今回の鮎川哲也賞は「受賞作なし」で終わっていたのではないでしょうか。

誤解を招くといけないので最後に書いておきますと、私は本作を決して「つまらない」と感じたわけではありません。ただひとつだけ、「鮎川哲也賞」という看板を背負うに足る作品(ミステリ)なのか? に疑問を呈したいだけです。

No.2 5点 虫暮部 2018/11/19 10:52
 なかなかの人物造形、但し地味、なのは悪いことではないけれど、同系統他作品との差別化という点で弱い。偏見を承知で書くと、この手の話って“そこそこ筆力はある人が一か八かを狙わない時の安全策”になっていないだろうか。
 ところで、女性の169センチって(中学生にせよ)そんなに珍しい高身長? これって要するに“どのくらいの範囲を平均値として認識するか”という問題であって、真史は先入観ゆえに気にする、歩は視野が広いので特に気にしない、と対比にする手もあったのでは。

No.1 5点 人並由真 2018/11/18 13:26
(ネタバレなし)
 昨年の激震作を受けた今年の(第28回)鮎川哲也賞受賞作。
 AmazonのレビューやTwitterでほぼ好評であるが、個人的にはもうひとつ。
 第1話の謎からして、真相も、ここが伏線だなという箇所も見え見えで、これでだいぶ印象がよろしくなくなった(悪くなった、とまでは言いたくないが)。
 残る3編もごくフツーの「日常の謎」もの……なら、まだ良いのだが、第3話の相合傘の謎、久方ぶりにミステリにおける読者に向ける謎の求心力の意義みたいなものを考えたくなったほどである。こんなのは、相手がちょっと遠出しかける最中の妹ではとか、従姉妹のお姉さんではとか、まずはベタな仮想をするところから始めるべきではないか。そういう手順を踏んでないものだから、作中人物が騒ぐ事態に説得力がない。いまどきの若い子は悪い意味で繊細で敏感なのね、ってオッサンは思うばかり。
 最後の話のクロージングはまあ良かった……ように見えたが、実はこれって、単にヒロインの父親がアレだっただけだろう。ヒロインは極端な行動をする前に、一二回は自分の親に向かって「彼はこういう人間だ」という、読者と共有する情報にもとづく、もっと具体的な説得・説明を試みるべきではないか。主人公たちの未熟さを棚に上げて、いい話風にまとめられても困る。おかげで最後、男子主人公がいきなりエラくなってしまったような戸惑いまで覚えた。そういう効果はもちろん作者の本意ではないんだよね?
 
 ここまでアレコレ言っておけば、たぶん次の人が逆張りで良いところを語ってくれるであろう(笑)。もしかしたら素で読んでいれば、あるいは誰も誉めない内に出合っていたらもっとスキになれていた一冊かもしれないとも思うけれどね。世の中全般の本作への好評ぶりがどうも釈然としないので(一部には謎とかが「薄い」と真っ当なことを言う人もいるようだが)、現状ではこの感想。


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川澄浩平
2020年11月
探偵は友人ではない
平均:5.00 / 書評数:1
2018年10月
探偵は教室にいない
平均:5.00 / 書評数:6