海外/国内ミステリ小説の投稿型書評サイト
皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止 していません。ご注意を!

弾十六さん
平均点: 6.14点 書評数: 528件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.108 5点 シャーロック・ホームズの災難(上)- アンソロジー(海外編集者) 2018/12/24 06:23
1944年出版。『エラリークイーン推理の芸術』(2013)によると、EQ編集「101年の娯楽」のドイル作品の再録許可ミスによりアドリアンにつけ込まれお蔵入りになったアンソロジー。序文の「クイーンの片割れ」部分が(何故か)マンフレッド リーを怒らせたいわくつき。(コンビ芸人がピンの仕事に注力する相方を快く思わない感じ…)
収録作品は
⑴ペグラムの怪事件(ロバート バー)、⑵遅かりしホルムロック シアーズ(ルブラン)、⑶洗濯ひもの冒険(キャロリン ウェルズ)、⑷稀覯本「ハムレット」(スタリット)、⑸ホームズと翔んでる女(バークリイ)、⑹婦人失踪事件(クリスティー)、⑺高名なペテン師の冒険(バウチャー)、⑻ジェイムズ フィリモア氏の失踪(クイーン)、⑼不思議な虫の事件(パーマー)、⑽二人の共作者事件(バリー)、(11)大はずれ探偵小説(トウェイン)、(12)盗まれた葉巻入れ(ブレット ハート)、(13)シャムロック ジョーンズの冒険(O. ヘンリー)
まとめて読むと胃もたれするので少しづつ書評。とりあえず総合5点で。(初出はEQのゆきとどいた解説を元にFictionMags Indexで補正)ここまで2018-12-24記載

⑴The Great Pegram Mystery by Robert Barr (Idler 1892-5 as ”Detective Stories Gone Wrong: The Adventures of Sherlaw Kombs” by Luke Sharp) 中川 裕朗 訳: 評価7点
おちょくりが心地よい作品。S.H.の見事なカリカチュアになっています。ちゃんとワトスンの立場をわかってるのが良いですね。
p41 自動六連発(his self-cocking six shooter): この時代「自動拳銃」はありません。ボーチャードC-93(1893)が自動拳銃の最初です。(ガンマニアに)誤解のない翻訳は「ダブルアクションの六連発」ですが、(マニア以外には)煩わしいので「六連発」で充分でしょう。1892年の六連発ダブルアクションリボルバーなら有名どころでWebley Mk.I(1887)、S&W .44 DA(1881)、Colt M1889など。なお「自動六連発」でガンマニアが連想するのは、レアなWebley–Fosbery Self-Cocking Automatic Revolver(1901)ですね。シリンダを回してコックするのに引き金を引く力ではなく撃った反動力を使う特異なリボルバーです。
p43 紙幣で300ポンドばかりを引き出して(he drew something like £300 in notes): 消費者物価指数基準1892/2018で123.4倍、現在価値約520万円。
p46 半ソヴリン貨(half a sovereign): 車掌の一働きに対する謝礼。0.5ポンド金貨、現在価値8673円。
(2018-12-24記載)

⑵Holmlock Shears Arrives Too Late by Maurice Leblanc (Transatlantic Tales 1907-10 as “Sherlock Holmes Arrives Too Late”、仏初出Je sais tout 1906-6-15 as “La Vie extraordinaire d'Arsène Lupin : Sherlock Holmes arrive trop tard”)中川 裕朗 訳: 評価4点
懐かし〜!まあ話自体は工夫の足りない、ただのルパンの自慢話なんですけど。
(2018-12-24記載)

⑶The Adventure of the Clothes-Line by Carolyn Wells (Century 1915-5) 中川 裕朗 訳: 評価5点
名探偵協会(The Society of Infallible Detectives)シリーズは他に2作、まーどれもふざけた作品なんですが… この作品ではワトスンが一番良いですね。なお原書にはイラスト2枚付きです。
(2019-1-2記載)

⑷The Unique Hamlet by Vincent Starrett (私家版1920) 中川 裕朗 訳: 評価4点
シャーロックは愛書家の世界に興味を向けるタイプでは無いと思いました。
(2019-1-23記載)

⑸Holmes and the Dasher by Anthony Berkeley (単行本1925) 中川 裕朗 訳: 評価4点
バークリーなので非常に期待してたんですが… 翻訳がふざけ過ぎな感じ。「クソ面白くない」はdashed thick and not a little rotten、dashed rotten and pretty thick、pretty well dashed thick and rottenの三変化です。英語力が無いのでよくわかりません… なぜワトスンがBertieなのかといえば、ジーヴスの(愛すべき間抜けな)御主人の名前だからですね。(ここではホームズがジーヴスの役) ウッドハウスの文体のパロディらしいのですが、翻訳では生かされていないように感じます。
(2019-1-23記載)

No.107 5点 探偵小説の世紀(下)- アンソロジー(海外編集者) 2018/12/22 19:47
1935年出版。下巻の収録作品は
⑴三つの鍵(ヘンリー・ウエイド)、⑵遺伝(アントニー マースデン)、⑶青年医師(H.C. ベイリー)、⑷豚の足(F.A. クマー)、⑸1ドル銀貨を追え(ビガーズ)、⑹ミス ヒンチ(H.S. ハリスン)、⑺封印された家(ハルバート・フットナー)、⑻強い兄ジョン(ハーバート・ショー)、⑼障壁の向こうから(J.S. フレッチャー)、⑽カステルヴェトゥリを殺したのは誰か?(ギルバート・フランコウ)、(11)白い足跡の謎(フリーマン)、(12)偽痣(J.D. べリスフォード)、(13)中の十二(ネリー・トム=ギャロン&コールダー・ウィルスン)、(14)エイブル・クルー(ヘンリー・ウッド夫人)
他の創元文庫に収録されてるビッグネーム(下巻だとセイヤーズ、クリスティ、トウェイン、ブラマ、カー)は再収録せず、という潔さも手伝って、全く売れそうに無いメンツになっています。初出年等の基礎データは記載されていません。巻末に小山 正+橋本 直樹+菊地 千尋の対談付き。
ぼつぼつ内容を読みつつ、レヴューしていこうと思います。とりあえず5点としていますが、あくまで暫定点です。

さて私にとっての重要問題は表紙絵なんですが、下巻には銃の部品ぽいガラクタが積まれています。デザインは上巻同様、アトリエ絵夢 志村敏子さんです。
中央部と上右の斜めになってるやつ、ボルト部分かな?と思ったら、よく見てびっくり。
日本の超レアな自動拳銃、日野式じゃないですか!まーデザインが変テコで画家の興味を引きそうな銃であることは確かですが、上巻の評で銃器に興味なさそう、なんて言ってごめんなさい。とすると、上巻のライフルも実在するのかなぁ… ニワカガンマニアとしては気になるところです。(以上、2018-12-14記載)

⑴The Three Keys by Henry Wade (初出不明) 吉田 誠一 訳: 評価4点
樽のような捜査もの。不可能犯罪っぽい設定なんですが、淡々とした調査が単調に語られ、面白みがありません。15年ほど前に戦争のためドイツ人が拘禁された…とあるので、1930年頃の作品か。ユダヤ人が出てきますが、対立や差別をうかがわせる描写はありません。ネタは、多分、実生活で気づいたことを安直に使っただけ?
p17 2シリング: スポーツクラブのチケット代(タオル付き) 消費者物価指数基準1930/2019で64.82倍。現在価値937円。
p22 赤帽へのチップ 1シリング
p23 映画(グレタ ガルボ主演): 1926年から主演映画があります。
(2019-3-3記載)
***************
⑵Heredity by Antony Marsden (初出不明) 榊 優子 訳: 評価4点
もう少し工夫が欲しい。スッキリしない作品です。
p43 フランスの諺「すべてを理解することは…」(トウ コムプランドル): Tout comprendre, c'est tout pardonner.(…すべてを許すことだ。) どうやら諺ではなくトルストイ「戦争と平和」が発祥。ウェブスターやランダムハウスの辞書に載っています。
(2018-12-16記載)
***************
⑶The Young Doctor by H.C. Bailey (多分Windsor誌が初出? その頃の項目がFictionMags Indexに欠けているので詳細不明。単行本はMr. Fortune’s Practice, Methuen 1923、別題The Superfluous Clues) 永井 淳 訳: 評価6点
フォーチュンもの。二転三転が面白い。組織に皮肉っぽい目を向けるフォーチュン氏が気に入ったので創元文庫をさっそく注文しました。
p51『おお、なんびとの愛も望みえぬ肥満せる白き女よ』(Oh, fat white woman that nobody loves): Frances Cornford(1886-1960 英国の詩人)のtriolet poem "To a Fat Lady Seen from the Train" (Poems 1910)からの引用。
p54 ドイツで売っているラウフ タバク(sell in Germany and call Rauch-tabak): 独語rauchはsmokingの意味らしい。パイプ・タバコのことか?
p70『20人を見すごし、21人目に石を投げる…』(Let twenty pass and stone the twenty-first, loving not, hating not, just choosing so): Robert Browningの詩“Caliban upon Setebos”(Dramatis Personae 1864)からの引用。
(2018-12-22記載; 2020-2-29追記 Gutenbergに原文があったので引用句が判明)
***************
⑷Pig’s Feet by F.A. Kummer (Saturday Evening Post 1924-2-2) 中村 凪子 訳: 評価5点
発表がポスト誌なので先を予想して安心しちゃうのが欠点。スリリングな展開なんですけどね。作中で、第一次大戦後の「法を無視して金儲けに走る風潮」を嘆いています。
(2019-3-3記載)
***************
⑸The Dollar Chasers by Earl Derr Biggers (Saturday Evening Post 1924-2-16〜2-23)乾 信一郎訳: 評価5点
いかにもポスト誌が好きそうな軽くて明るい話。わかりやすい展開が良いですね。作者は中国人と日本人を書き分けています。タツという名の日本人が大活躍。当時、中国人は正確だ、という評判があったようです。
以下トリビア。
p130 週給50ドル: もらってる方は「スズメの涙」と言う給料(割と能力のある若い新聞記者)ですが、消費者物価指数基準(1924/2018)で現在価値736.95ドル、83421円。月収36万円は結構良い稼ぎです。(そういえば映画「七月のクリスマス」(1940)の主人公が週給22ドルでした)
p165 なつかしきイングランドのローストビーフ: 英国の愛国歌。The Roast Beef of Old England、Henry Fielding作(1731)
p180 ホームズとワトスン: いつものようにワトスンの知的能力が過小評価されています。
p188 英国は海洋を制覇す: 歌の一部。このような歌詞は結構あると思うので今回は探していません。
(2018-12-14記載)
***************
⑹Miss Hinch by H.S. Harrison (McClure’s 1911-9) 高田 恵子 訳: 評価4点
話の筋が読めちゃう感じですが、最後まで引っ張ります。オチの付け方は感心しないなあ。
(2019-5-27記載)
***************
⑺The Sealed House by Hulbert Footner (Mystery 1933-7) 永井 淳 訳: 評価5点
マダム ストーリーもの。(Madame Rosika Storey) 美貌の女探偵。秘書ミス ブリックリーの一人称で語られます。程よいスリルの気楽に楽しめる話。
初出のMystery誌は元々Illustrated Detective Magazineとして1929年に創刊、Woolworth専売の雑誌とのこと。値段10セント。読者層から女性探偵という設定なのかもしれません。
p291 三千ドルのミンク・コート: 米国消費者物価指数基準(1933/2019)で19.7倍、現在価値637万円。
p293 家賃は月400ドル: 一軒家、半地下の台所、二階建て。上記の換算で85万円。週500ドルの収入は月収2167ドル(460万円)。
(2019-7-25記載)
***************
⑻Strong Brother John by Herbert Shaw (The Novel Magazine 1912-6) 西条 裕美子 訳: 評価5点
ヒッチコック劇場で映像化したらぴったりな感じの話。二百十ポンドは英国消費者物価指数基準(1912/2019)で113.27倍、320万円。
(2019-8-6記載)
***************
⑼From Behind the Barrier by J.S. Fletcher (Metropolitan Magazine 1907-8) 後藤 安彦 訳: 評価5点
オカルト風味、双子って神秘的なところがあります。結末は充分納得がいく話。三千ポンドは英国消費者物価指数基準(1907/2019)で119.30倍、現在価値4599万円。全部ソブリン金貨ということは当時エドワード七世の肖像(1902-1910)で1枚8gなので3000枚24kg。
(2019-8-11記載)
***************
⑽Who Killed Castelvetri? by Gilbert Frankau (The Strand 1928-3 挿絵Stanley Lloyd) 真野 明裕訳: 評価6点
フランスの法廷もの。制度がよくわからない。12人の陪審員のほかに判事が三人って多すぎ。もつれた時の最終判決は判事の合議制なのか?拳銃が沢山出てきてマニアには楽しい話。
p369 ピストルではありません。ごく古いリヴォルヴァー(Not a pistol... Only a very old revolver): 自動拳銃という意味でpistolを使っているようだ。
p371 両方とも七連発のブローニング… 口径は六・三五ミリ… 一方はベルギーのヘルプシュタール(Herbstahl)で製造… 弾倉に三発、薬室に一発… もう一丁はM・A・Bというマークの入ったフランス製… : ベルギーFN(Fabrique National de Herstal)製の6.35mm(=.25口径)の極小ポケット・ピストルBrowning M1905(製造年からM1906とも呼ばれる。全長114mm、重さ367g)がヒットしたので、世界各国の他メーカーから類似品がかなり製造販売された。弾倉に6発、薬室に1発で7連発が可能な自動拳銃。フランスではMAB(Manufacture d'Armes de Bayonne) Model Aとして1925年から製造されている。
p371 二十九フラン: 仏国消費者物価指数基準1928/2020(422.33倍)で1フラン=€0.64=77円。29フラン=2225円。ポケットに入っていた金額。
p371 弾倉のマーク: マガジンの写真を見ると左サイド下部に楕円で囲まれたM・A・Bマークがある。FN製の場合は右サイド下部に楕円で囲まれたFNマーク。
p374 フランス革命—アメリカ映画で再現されたもの(French Revolution—as reconstructed by the American film): 色々あると思うがD. W. Griffith監督のOrphans of the Storm(1927)か。
p383 ピストル、それともリヴォルヴァー?(A pistol, or a revolver?)… フランスの下層階級ではその二つはあいにくと同じ意味(Among the lower orders in France, the terms are unfortunately synonymous): この質問は自動拳銃か回転拳銃か?その答えはフランス語のrevolverは普通どちらをも意味する、ということ。ラルース仏和辞典にもそう書いてありました。
p385 どの探偵小説でも… 語り手はうすのろ扱い(In all the detective stories... the narrator is made out a half-wit): 探偵小説への言及。
(2020-2-29記載)
***************
(11)The Case of the White Footprints (初出 日刊紙Daily Graphic 1920-8-9〜14(六回連載) 挿絵画家不明) 大久保 康雄 訳: 評価5点
ソーンダイクもの。ジャーヴィスの推理が冴え渡る、のですが最後はソーンダイクに持って行かれます。ところで謎に憧れる医者が実際に謎に対面した時の態度が面白い。確かにこんな口先野郎、いますよね…
p418 シエラレオネは『白人の墓場』(White Man’s Grave): そんな言い方あるのかな、と思ったらWikitionaryにも出てました。
p419 スコットランド流にいうと『味見』(‘tasting,’ as they say in Scotland): そーゆー感じ?調べつかず。
p438 二、三百ポンド: 消費者物価指数基準(1923/2019)で60.04倍、現在価値169〜253万円。
(2019-1-21記載; 2021-10-28修正)
***************
(12)The Artificial Mole by J. D. Beresford (初出Nash’s Magazine 1927-11 挿絵M. Mackinlay)「偽痣」池 央耿 訳: 評価5点
過去の出来事(1910年3月)を振り返る話。大して面白みはないが、時代色が良い。英国の田舎(人口500人くらい)の事件。
p457 三月二十六日土曜日♠️1910年の日付と曜日で間違いなし。
p454 六ペンス硬貨くらいの大きさ♠️当時の銀貨(1902-1910)はエドワード7世の肖像、重さ3g、直径19mm。
p467 五千ポンド♠️英国消費者物価指数基準1910/2021(120.83倍)で£1=18979円、9490万円。
p473 二十万フラン♠️仏国消費者物価指数基準1910/2021(2666倍)で旧1フラン=4.06€、1億780万円。
(2021-10-17記載)
***************
(13)The Middle Dozen by Nellie Tom-Gallon & Calder Wilson (初出不明)

***************
(14)Abel Crew by Mrs. Henry Wood (Argosy[UK] 1874-9, as by Johnny Ludlow) 浅羽 莢子 訳: 評価6点
当時のArgosy(米国の同名雑誌とは無関係)は、このヘンリー ウッド夫人(Ellen Price Wood, 1814-1887)がオーナーで編集長。なかなかやり手の女性だったようで、自作を匿名や変名でこの雑誌に掲載。本作は語り手の少年と同名のジョニー ラドロウ名義で発表。おぼっちゃまの一人称による、いかにも田舎な描写でゆったりと語られ、実に納得のゆく結末に至ります。(村びとが使う訛りの翻訳はちょっと苦しい)
p509「例年よりえらく遅い」復活日明け火曜日(四月下旬)の出来事: 復活祭はグレゴリオ暦だと3月22日から4月25日の間。1874年以前で「えらく遅い」復活祭(4/20以降)を遡ると1867-4-21、1862-4-20、1859-4-24、1851-4-20、1848-4-23。1859年は4/20以降となったのが8年ぶり、しかも最も遅い日付なので「えらく遅い」印象にふさわしいかも。とすると雑誌掲載時の15年前なので30歳くらいの「わたし」が少年の日を思い出して手記を書いてる感じか。
(2018-12-30記載、追記2019-1-20)

No.106 5点 探偵小説の世紀(上)- アンソロジー(海外編集者) 2018/12/22 19:45
1935年出版。チェスタトンの序文目当てで購入。上巻の収録作品は
⑴ジグソー・パズル(レナード R. グリブル)、⑵大強盗団(オッペンハイム)、⑶アズテカ族の髑髏(ギャビン・ホルト)、⑷鉄のパイナップル(フィルポッツ)、⑸真珠のロープ(H. ド・ヴィア・スタクプール)、⑹読心術合戦(ウォーレス)、⑺8:45列車内の死(フランク・キング)、⑻根気づよい家捜し人(ベックホファー・ロバーツ)、⑼くずかご(アラン・メルヴィル)、⑽死の舞踏(ジョージ・グッドチャイルド)、(11)犯罪学講義(コール夫妻)、(12)無抵抗だった大佐(ベントリー)、(13)剣によって(セルウィン・ジェプスン)、(14)無用の殺人(ミルウォード・ケネディ)、(15)ハムプステッド街殺人事件(クリストファー・ブッシュ)、(16)エルキュールの功績(べロック・ローンズ)、(17)みずうみ(W.F. ハーヴェイ)、(18)極秘捜査(G.R. マーロック)、(19)真紅の糸(J.J. ベル)、(20)金色の小鬼(トマス・バーク)
他の創元文庫に収録されてるビッグネーム(上巻だとポー、コリンズ、バークリー、チェスタトン)は再収録せず、という潔さも手伝って、全く売れそうに無いメンツになっています。初出年等の基礎データは記載されていません。
まだ全編を読了していませんが、チェスタトンの序文は読みました。毒にも薬にもならない文章です。まあデテクションクラブ会長(1930-36)としての名誉編集者(名義貸し)なのでしょう。
ぼつぼつ内容を読みつつ、レヴューしていこうと思います。とりあえず5点としていますが、あくまで暫定点です。

ところで、私にとっての問題は表紙に描かれているライフルなんですよ。(デザインは、アトリエ絵夢 志村敏子)
一見して、なんだか面倒くさそうな機関部だな〜、こんなのあったっけ?と思いました。だいたいボルトレバーがサブマシンガン風なのに、サイト周りが長距離射撃用な感じが変テコです。大事な引き金部分にも変な金具がついていて邪魔くさい。
多分ベース(木製ストック)はスプリングフィールドM1903で、それにM1ガーランドの機関部、M1トンプソンのボルトレバー部分、別のライフルのタンジェントサイトなどを組み合わせて創作したものじゃないか、という一応の結論を出しました。
よく使う道具の重要な条件はメンテのしやすさですが、このデザインだとかなり手間がかかりそう。なので多分このライフルは実在しないと思います。女性だから銃器には興味ないんでしょうね。
ところが… (下巻の評に続く)ここまで2018-12-14記載

⑴The Jigsaw by Leonard R. Gribble (初出不明 1935年?) 永井 淳 訳: 評価5点
スコットランドヤードのトレンチ(警部?)が活躍する話。語り手の「わたし」はその同僚らしい。やや変則的な手法により真相が明らかになります。
p18 ジグソー パズル: 発祥は1760年。1880年ごろjigsawという名称が定着。大不況時に暇つぶしとして流行したそうです。
p24 半年ごとに五百ポンド: 消費者物価指数基準1935/2019で70.61倍、現在価値496万円。
p25 軍用型の拳銃: 1916年当時の英国陸軍の軍用拳銃はWebley Mk VI Revolver(犯行に使われたのはMk IVかMk Vの可能性もあり)
(2019-1-20記載)
***************
⑵ The Great West Raid by E. Phillips Oppenheim (Saturday Evening Post 1928-1-7) 遠山 峻征 訳: 評価5点
いきなり冒頭が「何日かあとのある日の早朝…」なので調べると、全体はThe Human Chase (Hodder & Stoughton, London, 1929)として出版された連作短編集。(WEB上のRoy Glashan's Libraryに公開、イラスト付き!) 第1部(べンスキン刑事の初期の活躍)はコスモポリタン誌に毎月連載(1927-11〜1928-4)され、第2部(マシューとの追っかけっこ)はポスト誌に隔週掲載(1927-12-24〜1928-3-3)された。このThe Great West Raidは第2部の2話目。本作はストランド誌1928-7にも掲載されたが、この時は何故か主人公の名前がPeter Brettとなっている。
意外とキビキビした文章。なかなか面白いんですが、続き物なので中途半端に終わります。損害見積もり30万(ポンド)の現在価値は消費者物価指数基準(1927/2018)で61倍、約26億円。言及されてるエラコット事件、ハウスン事件は、第2部1話目に起こった事件です。
(2018-12-16記載)
***************
⑶ The Aztec Skull by Gavin Holt (Flynn’s [Issued Weekly] 1925-6-13, as by Charles Rodda) 後藤 安彦 訳: 評価3点
舞台はメキシコ。現地人をなめた文章。時代ですね… 物語も全然ワクワクしません。ネタもつまらない。旅ものとしても読むところなし。
p99 ブローニングの銃口: 多分おなじみFN1910。
(2019-2-25記載)
***************
⑷ The Iron Pineapple by Eden Phillpotts (Red Magazine 1910-3-15) 宇野 利泰 訳: 評価6点
不思議なタイトルにふさわしい不思議な話。くどい文体が図らずも内容にマッチしています。
p117 郵便支局の副業… 月に1ポンド 1シリングの給与: =1ギニー=1.005ポンド 消費者物価指数基準(1910/2018)で現在価値114.4ポンド、16337円。国家事業なのにため息が出るほど少額、と愚痴っています。
(2018-12-16記載)
***************
⑸The Rope of Pearls by H. de Vere Stacpoole (Strand Magazine 1934-11) 大村 美根子訳: 評価5点
異郷もの。舞台はオランダ領東インド ジャワ サンダバール。意外な物が謎解きのヒントになりますが、かなり強引です。中国人に対する評価が興味深い。
p147 ハルマ将棋: Halma Wikiに項目あり。将棋ではなくチェッカーっぽい感じ。
p147 五グルデン: 1934年の交換レートは1グルデン(ギルダー)=0.1339ポンド。英消費者物価指数基準1934/2019で70.98倍。5グルデンの現在価値は6869円。
p149 ルーガー ピストル: Luger P08のことですね。正式名称はParabellum-Pistole。
(2019-3-3記載)
***************
⑹The Mind-Readers by Edgar Wallace (Pall Mall Magazine 1927-10) 池 央耿 訳: 評価6点
Oratorことオリヴァー レイター警部もの。(シリーズ第3作。単行本1928では2番目に収録) 内容は軽いのですが、面白い筋立て。実に素晴らしく、読後感も良い。一流の三文小説です。ただし最後の犯行はもうひと工夫欲しいところ。暖炉に電気の炎がついているシーン(on the white hearth an electric fire glowed redly.)があり、結構電化は進んでいたのですね。
(2018-12-29記載)
***************
⑺Death on the 8:45 by Frank King (Detective Fiction Weekly 1929-4-14) 真野 明裕 訳: 評価4点
英国作家で英国が舞台ですが初出は米国雑誌。列車の郵便車両という舞台と英国人の喫茶への情熱が興味深いだけの話。探偵はポール グレンドン。
(2019-5-26記載)
***************
⑻The Persistent House-Hunters by C.E. Bechhofer Roberts (The Passing Show 1934-11-24) 深町 眞理子 訳: 評価4点
A.B.C. ホークスもの。科学万能主義の探偵のようです。話が回りくどくて、探偵が傲慢で不愉快な感じ。解決もパッとしません。勝手なキャンパーが田舎生活の問題になっているなど、当時の英国日常生活がうかがえるのは興味深い。
p222 テレビジョン: wikiによると1932年8月 - 英国で世界初の定期試験放送(機械式、週4日)開始、とのこと。
p235 罰金2ポンド: 鑑札なしで犬を飼っていたことに対するもの。英国消費者物価指数基準(1934/2019)で70.98倍、現在価値19116円。
p251 整骨療法家: かなりのディスりっぷり。
(2019-7-25記載)
***************
⑼The Waste-Paper Basket by Alan Melville (初出不明 1935?) 山田 順子 訳: 評価4点
ホームパーティの情景が興味深い。皮肉っぽい作風ですが、ネタは残念な感じ。
p255『重要人物ゲーム』: どんなものかよくわかりません。
p257 五百ポンド: 事件は1932年以降ということなので英国消費者物価指数基準(1932/2019)で69.22倍、現在価値460万円。
p277 銃[リヴォルヴァー]はサイレンサー付きだ: この頃、サイレンサーが流行ってたのかな。残念ですがリヴォルヴァーだと効果は低いです。
(2019-8-6記載)
***************
(10)Death in the Dance by George Goodchild (初出不明 1935?) 佐々木 雅子 訳: 評価5点
英国の(退屈な)社交生活が語られる。探偵役の行動はいかにも理系な感じ。五十万ポンドは英国消費者物価指数基準(1935/2019)で70.53倍、現在価値45億円。
(2019-8-10記載)
***************
(11)A Lesson in Crime by G.D.H. Cole & Margaret Cole (初出不明 単行本A Lesson in Crime, 1933) 野口 玲子 訳: 評価5点
ウィルスン警部もの。急行の一等コンパートメント… そーゆー舞台だけでワクワクするのは何故か? 単純な話ですが皮肉な眼差しが心地よい。コール夫妻の長篇も読んでみたくなりました。登場する、ベストセラーの推理ものや暴力小説(ショッカー)を書いてて代作ありの多作家… と言えば当時ならエドガー・ウォーレスあたり?
p311 謎の中国人、痕跡を残さない未知の毒物… 国際的なユダヤ人秘密結社: 三文小説の典型例
p313 心理学をふりまわす探偵ども…ヴァン・ダイン氏の作品: 当時はそーゆーイメージか。
p317 五万ポンド: 英国消費者物価指数基準1933/2020で72.04倍、現在価値5億円。
p319 <ポインツ>欄: タイムズ紙の投書欄には種々のグレードがあり、真ん中ページが最高で、要旨だけを載せるpoints欄があったようだ。
(2020-1-17記載)
***************
(12)The Inoffensive Captain by E.C. Bentley (Strand Magazine 1914-3) 宇野 利泰 訳: 評価4点
トレントもの。警部をからかう軽薄な口調がファイロ ヴァンスを思わせます。中途半端に終了。続きはあったのかな?アイリーン アドラー風味がある暗号解読もの。ストランド誌のこの号は内容の全て(イラスト含む)をWebで見ることが出来ます。
(2018-12-22記載)
***************
(13)By the Sword by Selwyn Jepson (Cassell’s Magazine 1930-12, 挿絵Illingworth) 浅羽 莢子 訳: 評価7点
サスペンスたっぷりの物語。一応クリスマス・ストーリー。
p361 二千ポンド: 英国消費者物価指数基準1930/2020(65.79倍)、£1=9334円で、£2000=1867万円。
p362 家紋: 短剣を握る手の紋章は数種ある。
p363 トルケマーダのクロスワード・パズル: Torquemadaは英国の翻訳家、詩人のEdward Powys Mathers(1892-1939)がObserver紙の凝ったクロスワード・パズル作者(1926-1939)として使っていた名前。Mathersは同紙で探偵小説の書評も行なっていた。
p378 七時十五分前には夕食前の着替えの時刻を知らせる銅鑼が鳴り: 家族の集まりだけど、ちゃんと着替えるんだよねえ。
p379 二十七シリングの儲け: 12601円。ブリッジの5 rubber(三回戦×5)終了時に一人勝ちで得た金額。
p381『時間との実験』: 当時An Experiment with Time(J. W. Dunne著1927)はよく読まれてたのですね。JDC、ノックス、クリスティに続いて最近の読書中、4回目の登場。
(2020-2-29記載)
***************
(14)Superfluous Murder by Milward Kennedy (本書が初出?) 真野 明裕 訳: 評価5点
殺人計画を実行する男。あまり良い計画ではないような気がするが…
p395 一シリング: 英国消費者物価指数基準1935/2020(71.59倍)で508円。駄賃。当時の1シリング貨幣はジョージ五世の肖像、.500 Silver、直径23mm、重さ5.65g。
p402 切符入れのポケット: ticket pocket、チケットポケット(名刺入れ) 背広裏側の左胸元に縦に入ってる切れ目みたいなやつ。別名「テケ」長いこと背広を着ていますが今まで全く知りませんでした… (裏側の腰のあたりの小さなポッケはタバコ・ポケットというらしい) (2021-10-31訂正: 以上は日本の背広の話で、英国背広だと右ポケットの上の小さめのポケットのこと)
p402 ラジオ: 英国の放送開始は1922年5月。
(2020-3-1記載)
***************
(15)The Hampstead Murder by Christopher Bush (本書が初出?) 水野谷 とおる 訳: 評価5点
語り口の妙で成立している作品。ハムステッドは高級住宅地。
p420 二、三百ポンド: p395の換算で£300=305万円。指輪の値段。
p421 千五百ポンド: 1524万円。年収。
p432 十三ポンド十四シリング: 約14万円。調査費用。
(2020-3-4記載)
***************
(16)A Labour of Hercules by Mrs. Belloc Lowndes (The Windsor Magazine 1929-1 挿絵Henry Coller) 吉野 美恵子 訳: 評価5点
エルキュール・ポポー(Popeau)もの。ポアロとの関連性が一部で言われているけど、名前以外に類似があるかなあ。
p442 元日♣️事件発生日。何年かは不明。
p448 紳士録(ボタン)… 灰色の装丁♣️Bottin紳士録は1903年から。
p451 私の大きな頭♣️賢い人間なら頭が大きいはず、ということか?
p461 二十一歳未満♣️英国なら保護者の同意が必要。英国人向けのセリフだが、当時のフランスではどうだったか。
(2021-10-17記載)
***************
(17)The Lake by W. F. Harvey (初出不明1920年代後半以降?)「みずうみ」宇野 利泰 訳: 評価6点
クロスワード・パズルが出てくるので1924年以降は確実。ウィルキー看護婦シリーズの第一話?作者は医大出らしいが、職業知識が生かされている作品。淡々としているのが実話っぽくて良い。
p481『阿房宮の犯罪』その他、ある作家の小説が数冊、これはみんな探偵小説… 伯母はスリラー物に目がなくて(“Crime at the Folly”, and any other books by the same writer(…) I know the old lady has a weakness for thrillers)♠️エドガー・ウォーレスのイメージかなあ。
(2021-10-17記載)
***************
(18) In Confidence by G. R. Malloch (Cassell’s Magazine 1931-4) 「極秘捜査」大井 良純 訳: 評価7点
イーゴウ(Ego)警部シリーズ第4話。警部と副総監のやり取りが楽しい。ちょっとひねくれた話。
p515 六万♣️ポンドなら英国消費者物価指数基準1931/2021(69.88倍)で£1=10986円。
p516 ニューヨークの株式市況が好転したら♣️時代です。
p527 お巡り(ビジイ)♣️busyまたはbizzy=英俗detectiveのこと。Oxford Dictionary of Slangには1904とあった。
(2021-10-18記載)
***************
(19) A Thread of Scarlet by J. J. Bell (The Strand Magazine 1927-3 挿絵E. G. Oakdale)「真紅の糸」栗山 康子 訳: 評価5点
宿の飲み屋、終業時間近く。三人の常連客がねばっている。いろいろ判然としないところはあるが、まあいいでしょう。作中年は20年前の2月(p537)。
p541 黒い旗♠️刑務所で死刑執行が完了した、と知らせる合図。1902年にこの慣習をやめた、というから作中年はそれ以前。
p551 四百ポンド♠️英国消費者物価指数基準1901/2021(126.08倍)で£1=19672円。400ポンド=789万円。
p552 十時♠️飲める時間の終わり。破ると営業許可に響く。
(2021-10-31記載)
***************
(20) The Yellow Imps by Thomas Burke (初出不明, 短篇集“Pleasantries of Old Quong”1931)
クオン老人(Old Quong)もの。

No.105 7点 九人と死で十人だ- カーター・ディクスン 2018/12/17 05:02
JDC/CDファン評価★★★★★
H.M.卿第11作。1940年出版。創元文庫で読了。訳者は同じですが国書刊行会版の全面改稿とのこと。
実に見事な傑作。小説が上手くなった感じ。特に船内部の描写がとても生々しい。ついに作家覚醒か?(でも同時期のほかの作品はそうでもない。これだけ何故か際立っています)
ただし、語り手が別の者に変わる部分が欠点。マックス視点に統一すればもっと傑作になるのに…
1941年1月19日金曜日から物語が始まります。注釈がいかにもJDC/CD。大ネタも素晴らしい。散りばめられた小ネタも良く、最後までサスペンスを持続させています。最後のアクションシーンは全く余計ですね。(JDC/CDはこういう演出が大好きですが、犯人があえてそんなことする?という感じです)
ではトリビアです。原文未参照。
p22 ガスマスク: gasmask uk 1939でWeb検索すると当時のが見られます。英国では1939年に毒ガス爆撃に備えて全家庭配布(3800万個)を行ったらしい。(結局使う機会はなかった…)
p40 風と共に去りぬ: 当時の大ベストセラーだから英語の勉強に使っているということですね。
p69 10〜15セントのインク壺: 10セントは食パン基準1940/2018で現在価値2.4ドル、272円。
p69 遥かなるワバッシュ川 (On the Banks of the Wabash, Far Away): 訳書の注釈の通り。
p72 偽造指紋が使われた事例は世界のどこを探してもない…: えー。赤い拇指紋事件は?ノーウッド建築士事件は?
p109 クールヴォワジェ事件、ボーデン事件、ウォレス事件: François Benjamin Courvoisier 1840, Lizzie Andrew Borden 1892, William Herbert Wallace 1931 全部、血まみれ事件らしい。
p151 ナポレオンというゲームを教えてもらう… : どのようなものかは不明。
p169 ボタン磨きの<クリーン オー>: 不明。
p183 シャッフルボード(shuffleboard): スティックを使うペタンク・カーリング系のゲームのようですね。英国16世紀の記録あり、とのこと。
p188 ボーイ(boy): 辞書によると確かに≪古俗≫champagneと出ていました。
p190 デッキテニス(deck tennis): 英語Wikiに詳しい解説あり。
p215 とりあえず1ポンド置いていく: 多分破格の散髪代。(少し前のところで「以前、三倍の料金をもらった」という記述あり) 消費者物価指数基準1940/2018で現在価値54.37ポンド、7764円。
p217 ペンシルヴァニアの大洪水: 1936年3月のThe Great St. Patrick’s Day floodのことでしょうか。
p241 シェイクスピア型の頭蓋骨: あの肖像画のラインに似てるということか。
銃はリボルバー、22口径のライフル銃、45口径のリボルバー(英国の船なので実は455口径か)が登場。いずれも詳細不明。語り手が見てもいないのに「リボルバーの発射音が轟いた」と書いてあるけど、拳銃の銃声、の意味でしょうね。ゴルゴ13でもたった一発の発射音だけでリボルバーなのかセミオートマチック(自動拳銃)なのか、わかるわけがない。(いやゴルゴなら音の大きさや持続時間や反響などから拳銃の種類から口径まで聞き分けるのかも)

No.104 6点 奇商クラブ- G・K・チェスタトン 2018/12/16 10:05
私が読んだ創元文庫の旧版(福田 恆存 訳 1977年)は、チェスタトン初短編小説集The Club of Queer Trades (1905 Harper & Bros.)にThe Man Who Knew Too Much (1922 Cassell)収録の2編を追加。創元新版は追加無しです。
The Club of Queer Trades: 評価6点
FictionMag Indexで調べたのですが、⑴The Tremendous Adventures of Major Brown (Harper’s Weekly 1903-12-19)がチェスタトンの小説デヴュー作のようです。(当時29歳、文壇デヴューは詩人として1900年、評論は1901年?) Harper’s Weeklyは当時16ページ、10セントのheavily politicalな週刊誌らしい。(消費者物価指数基準1903/2018で現在価値2.86ドル、324円)
⑵The Painful Fall of a Great Reputation(単行本初出)
⑶The Awful Reason of the Vicar’s Visit (Harper’s Weekly 1904-5-28&6-4、2回分載)
⑷The Singular Speculation of the House-Agent (Harper’s Weekly 1904-6-11&6-18、2回分載)
⑸The Noticeable Conduct of Professor Chadd (Harper’s Weekly 1904-6-25&7-2、2回分載)
⑹The Eccentric Seclusion of the Old Lady (Harper’s Weekly 1904-7-9&7-16、2回分載)
実は内容不明なClub of Queer Trades(チェスタトン作)というのがHarper’s Weekly 1904-5-21&5-28(2回分載、2回目は⑶と同じ号)に掲載された、という記録があり、もしかすると⑴ブラウン大佐の冒頭部分は連作短篇のイントロとして5-21に掲載されたんじゃないか、と思いました。つまり最初は単発作品(多分もっと短かった)のつもりで、連作の予定はなかったのでは?
さて肝心の内容は、日常スケッチに奇想を交えたいつものチェスタトンです。静かに論理的に狂う男やいきなり動物や鳥や樹木が出てきて寓話タッチになるのもGKCらしいですね。ただ最初にネタ(奇妙な商売)を割っているので驚きの展開にならないのが惜しい。
なんでも商売にしてしまう風潮を皮肉っているのでしょうか。
以下トリビアです。
p15 オ、ロウティ… O Rowty-owty tiddly-owty Tiddly-owty tiddly-owty Highty-ighty tiddly-ighty Tiddly-ighty ow.: 意味はないのだ、と思います。
p27 7ペンス半と3ペンス玉 (There was sevenpence halfpenny in coppers and a threepenny-bit.): 銅貨のペニー7つ&半ペニー1つ、それに銀貨の3ペニー1つ。0.04325ポンド。現在価値は消費者物価指数基準(1904/2013)で4.72ポンド、687円。
p27 きみの拳銃 (your revolver): この時代の拳銃はほぼリボルバーです。
p29 あの男、なんていう名前だったかな?… ほら有名な物語に出てくる… そうそうシャーロック ホームズさ。(what's his name, in those capital stories?—Sher-lock Holmes.): 当然のように批判的です。
p36 料金表 1日のアルバイト料が1ポンド。(多分高額な方) 上述の換算で118ポンド、17172円。
p51 5ポンド賭けてもいい: 思い切った賭け金。上述の換算で84263円ですからね。
p70 21シリング: =1ギニー=1.05ポンド。1日のアルバイト料。(多分高額な方) 上述の換算で124ポンド、17707円。
p77 言うまでもなく、ジェームズ カー氏ではありません (not Mr James Carr, of course): 当時、有名な人? JDC/CDは自分の苗字が出てきて嬉しかろうと思います。
p87「万歳、万歳、英国よ世界に冠たれ、景気をつけろ、やーい」(Hooray! Hooray! Hooray! Rule Britannia! Get your 'air cut. Hoop-la! Boo!): 多分、出鱈目な文句。
p100 1回5ギニー: =5.25ポンド。料金表の中の最高料金。
p142 真に緊急かつ強制的な唯一のもの… 電報 (really urgent and coercive—a telegram): 現代では電話かメールですね。
p153 800ポンド…(中略)… 真面目な事務員4人分の年収: 上述の換算で94400ポンド、1374万円。
p161 半クラウンの賭け… 少額: 2.5シリング=0.125ポンド。上述の換算で14.75ポンド、2147円。
p172 半ペニー 新聞代: 上述の換算で0.245ポンド、36円。当時Timesは3ペンス。Daily Telegraphが安売り新聞のはしり、とのこと。
p176 おお、この黄金のスリッパよ(Oh, dem Golden Slippers): James A. Bland作(1879) ミンストレルショーの歌。

The Tower of Treason (Popular Magazine 1920-2-7): 評価5点
語り口がひねくれてて面白く読ませる話。普通の作家なら「何これ」というネタを上手に料理しています。これをブラウン神父ものにしなかった理由は…
以下トリビアです。(原文未参照)
p201 色黒だが: 好男子の決まり文句tall, dark, handsomeのdarkはdark hair&dark eyeのことらしい。なので「色黒」とか「浅黒い」と訳されてると反射的に実は髪の色?と疑う癖がつきました。swarthyは肌が浅黒いの意味ですが、Web検索で画像を見ると、ちょっと日焼けした感じの肌色なのかなあ。
p210 ラッパ銃: blunderbussの事だろうと思いますが、あくまで接近戦用で長距離狙撃には向かないような… 銃口がラッパのように広がってるのは弾込めしやすいように、というのが一番の理由です。石とか釘とかをぶちこむこともあったらしい。(あまり無茶すると銃身内部がぼろぼろになります)
p212 赤いトルコ帽: fezのことでしょうか。
p222 ユダヤ人がこの付近の諸国に国際的なばかりか反国家的な網を張りめぐらしているということも本当で、さらにユダヤ人というのは、横領することにかけて非人間的で、貧乏人を弾圧するに際しても非人間的なことが多い… 事実ユダヤ人の多くは陰謀家なのです… : この悪質な文章のために、この話が新版から削除されたのかも。日本Wikiにはチェスタトンの偏見について触れられていますが、反ユダヤのことは何故か書いていません。(英語Wikiには記載あり)

The Trees of Pride (英Story-Teller 1918-11; 米Ainslee’s 1918-11 巻頭話The Peacock Trees): 評価7点
充実した力作。この展開及び結末は素晴らしい。でも読後に思うのはこんなひねくれたことを考えるのはひねくれ者だけじゃ無いの?という真っ当な疑問です。チェスタトンはいつもそういう感じですね。そしてそーゆー話を喜ぶのも立派なひねくれ者です。
以下トリビアです。
p252 リーマス叔父(Uncle Remus): 「ウサギどんキツネどん」私は子供の頃よく読みましたが、ポリティカルコレクトの現代では禁書扱い?
p262 2ペンス(twopence): クリスティファンなら誰でも発音を知ってるよね? ここでは最低限の賭け金。消費者物価指数基準1918/2018で現在価値0.5ポンド、71円。
p266 あけがた前のもっとも暗き時刻は… (the darkest hour before the dawn): 二流の詩人(some orher minor poet remark)のものとして引用。古い諺 the darkest hour is just before the dawn (最悪の時でも希望はある)のことだと思うのですが minor poet が出てくるのがちょっと謎。
(米初出を追加2019-8-11)

No.103 7点 木曜の男- G・K・チェスタトン 2018/12/11 05:09
1908年出版。iBook版(光文社文庫 南條訳)で読了。昔々、創元文庫(吉田訳)で読みました。
飲み食いをする美味しそうな場面が多いな、と思って読んでたら、訳者あとがきに「ピクニック譚」とありました。南條訳は難しい冒頭の詩(E.C. ベントリーに捧げたもの、吉田訳は省略)をちゃんと訳していて、その詩の解説も(訳者あとがきに)ついています。
吉田訳は取っ付きにくい感じがありましたが、南條訳はこなれててとても読みやすい仕上がり。
まさに夢を見ているような展開で大好きな物語。もっと圧倒的に恐ろしかった記憶があったのですが、再読してみたら結構軽いファンタジーでした。第8章までは本当に素晴らしいです。
実はスパイスリラーのパロディかもしれません。そうすると時代的にオッペンハイムやルキューなどが元ネタでしょうか?(と言っても、この二人の作品を読んだことはありませんが…)
ではトリビアです。ガードナーのThe Annotated Thursdayは未見。どんな注がついてるのか、とても気になります。なおページ数は創元文庫のもの。
p32 大きなコルトの拳銃 (a large Colt’s revolver): さすがにSAAでは古すぎるのでM1892あたり?正しく「輪胴式拳銃(リヴォルバー)」と訳して欲しいなあ。(気にするのはマニアだけ)
p37 アリー スローパーの半休日(Ally Sloper’s Half-Holiday) 吉田訳では「赤本」: WEB検索で見たら不気味なガリガリの赤鼻おじさんでした。
p52 安物の葉巻(...)ソーホーで2ペンスで買ったやつ: 現在価値は消費者物価指数基準(1908 /2018)で0.966ポンド、141円。英国の安売りシガー(通販)を探したら3ポンド/本くらいが最安値でした。
p70 大英博物館のメムノン像(Memnon in the British Museum): 顔の横幅約1メートルの像。優しい顔だけど…
p75 死人の眼にペニー銅貨を乗せて、云々という物語(ugly tales, of some story about pennies being put on the eyes of the dead): 眼が開かないようにする工夫らしい。
p186 カービン銃(carbines) 吉田訳では「銃」: 騎兵隊(gendarmes、吉田訳:「憲兵」)なので短くて馬上で扱いやすいカービン銃です。

この一節が昔から大好きなんです。「一匹の蠅が、なぜ全宇宙と戦わねばならないのか? 一茎の蒲公英(たんぽぽ)が、なぜ全宇宙と戦わねばならないのか?」(Why does a fly have to fight the whole universe? Why does a dandelion have to fight the whole universe?)
子どもごころに、ハエやタンポポも戦っていたのか? そうか戦っているんだな! という気づきがあったのです…

No.102 5点 読者よ欺かるるなかれ- カーター・ディクスン 2018/12/09 09:53
JDC/CDファン評価★★★☆☆
H.M.卿 第9作。1939年出版。HPBで読了。
魅力的なタイトルの「読欺」(ラノベ短縮風なら「ヨカルナ」か) 1938年4月29日金曜日の事件と明記。題名に違わず、とてもゾクゾクする発端。でもみんなが聴きたい「誰が?」を何故そこで追求しないかな?という疑問が… 今までは一人の女性に忠誠を誓う語り手でしたが、このころから二人の女性に挟まれる状況を登場させてる印象。(「猫と鼠」など)JDC/CDもちょっと大人になったのでしょう。いつものように被害者の書き込みが不足、そして超能力ネタをもっと盛り上げられたのでは?と思います。大ネタはいかにもこの作者らしいヤツですが前フリの小ネタが残念。(読心術を簡単に扱いすぎ) ラストはセリフ過多で消化不良。
「ヒトラーやムッソリーニを殺す」ネタや、終幕のH.M.の憂いが、大戦前の不穏な時代を感じさせる作品でした。もっとブッとんだのが読みたいですね。
以下トリビア。原文入手出来ていません。
p115 ピーター キント(Peter Quint): 「ヘンリー ジェームズの『ねじの回転』に出てくる」今、南條訳を読んでるのでちょっとびっくり。(南條訳ではピーター クウィント)
p117 タットラー誌(Tatler): 週刊誌。1シリング。白黒60ページ。舞踏会、チャリティー、競馬、狩猟、ファッション、ゴシップを掲載。写真が豊富なヴィジュアル誌のようです。1シリングは現在価値3.17ポンド(1939/2018消費者物価指数による) 日本円で462円。
p133 戸棚のなかに、ビールの大瓶が、半分ほど残っていた: 冷やして飲むものではないのでしょうね。
p191 ジョン ビールの唄: ここではアコーディオンで弾かれます。不明。
p192 意気なヘルメット横ちょにかぶり/巡査(ボビイ)ピールは朝から陽気: みんなで歌ってるので有名な歌?不明。
p201 ほぼ5000ポンド: 裁判一件にかかる費用。上述のレートで現在価値4620万円。
本作にはH.M.が扱った過去の事件への言及が結構ありますが、宇野先生は注をつけていません。以下[ ]内は評者。
p93 アンスウェル事件[ユダの窓]、ヘイ事件[五つの箱の死]
p114 30年のダーワース事件[黒死荘]、31年のクリスマスの映画スター事件[白い僧院]、マントリング卿の密室事件[赤後家]
p208 ランカスター ミュウズの事件: これだけ何だかわかりません…

No.101 5点 白いビキニ- カーター・ブラウン 2018/12/06 06:04
原書ペーパーバック(1963年刊行 Signet S2275)の表紙絵はマッギニス。ギター片手にビーチチェアに横たわるブロンド。白ビキニの上部は白ファー?に隠れて見えません…ああブラ外してて右手で軽く握ってる紐だけ見える図なんですね。(WEB検索でwhite bikini carter brown mcginnis)
冒頭2ページだけで美人が四人も出てくるハリウッド探偵リック ホルマンの豪華な活躍物語。女好きなのか女嫌いなのかよくわからないキャラです。白岩義賢のあとがき(「リック・ホルマン無頼な男」)によるとハリウッド美女に慣れていてガッついていないタイプらしい。
さてストーリーはよくわかったようなよくわからない話。まー硬いこと言わないで、なんとなく筋が通っていれば良い感じです。コミさんの軽妙な翻訳で、薄っぺらい軽ハードボイルドの世界を充分楽しめました。
カーター ブラウンはハウスネームじゃなくて一人の作家だった、という事実(小鷹さんの調査結果)には結構驚きました。しかもほとんど米国に足を踏み入れていない?(確認せずに書いています。本がどこかに埋もれてしまった…)
以下トリビアですが、作者は雑誌などで知識を仕入れてたのかなあ。なお原文未入手です。
p7 首吊りジョニイ: Hanging Johnny (Long Drag Shanty) 詳しい解説は本書p47にありますが、船乗りの歌で作業歌のようです。
p21 10ドル: 情報を得るためにモルグの係員に握らせた額。ちょっと多めの感じ? 他にも25000ドルとか3000ドルとか出てきますが、こういう少額がどの程度なのかが気になります。(結局は作者想像上の米国の話なんですが…) 現在価値は食パン基準(1963/2018)で89.82ドル(10167円)
p37 フォークソングの歌手: 「ギターをならして、脱腸になった猫が、てめえの腸で、じわじわ首をしめられて死ぬときみたいな、うすきみのわるい声をだすやつさ」ジョーン バエズのデビューが1960年、PPM結成が1961年。
p41 エスプレッソ: コミさんの注釈で「ビート族のたまり場」となっていて、へーと思い調べてみると、コーヒーハウスは1950年代のビートニック時代から結構フォークシンガーに発表の場を提供していたようです。最近知って驚いたのですが、本場イタリアでは必ず砂糖2杯くらいを入れて甘々で飲むらしい… 日本人は必ずブラックなので呆れられてるようです。(イタリアで修行したシェフによる。私はもちろんブラック派です。糖尿病なので…)
p42 バーバラ アレン: 古謡。このすぐあとに出てくる古いイングランドの歌「ママ、ママ、ぼくのベッドの用意をして」が見つかりませんでした。この文句自体はBarbara Allenにも出てきます。(Oh, Mama, oh Mama, go make my bed)
p61 着てるものなんか 脱いじまえ: これは作者創作の歌かなあ。
p70 1ドル半: 小さな町の安食堂で食べたステーキサンドウィッチ代(コーヒー付き) 先ほどの換算で1525円。結構高め。なお原書PBの値段は35セント。(現在は4ドルくらいか) 1964年刊行のポケミスは160円。(こちらは現在1000円くらい?)
p91 エリオット ネス:「アンタッチャブルの」と訳されています。TVシリーズ1957-1963。
銃はコルト45(間違いなくSAA)、詳細不明の38口径が出てくる程度。銃器には興味のない人のようですね。

初出は米国ではなくシドニー1963年3月?にThe Ballad of Loving Jennyのタイトルで出版されてるようです。(米国Signet版は1963年7月以降?)

No.100 7点 栞と紙魚子の生首事件- 諸星大二郎 2018/12/01 19:11
栞と紙魚子シリーズ第1弾 初出ネムキ1995年〜1996年掲載。kindleで読了。
怪奇っぽいけどほのぼのしてしまう連作。主人公の少女たちのキャラも良く、怪異過ぎず現実過ぎない程よいファンタジーです。ラヴクラフト・ファンもきっと楽しめると思います。

収録作品及び初出(全て隔月刊の少女ホラー雑誌「ネムキ」に発表): 一言とファン評価
「生首事件」1995年 Vol.23: 栞のボケぶり ★★★★☆
「自殺館」(じさつやかた) 1995年 Vol.24: 店主が良い ★★★★★
「桜の花の満開の下」1995年 Vol.25: よくある話 ★★★☆☆
「ためらい坂」1995年 Vol.26: 自転車の二人乗り ★★★☆☆
「殺人者の蔵書印」1995年 Vol.27: よくある話 ★★★☆☆
「ボリスの獲物」1996年 Vol.29: ヨグが良い ★★★☆☆
「それぞれの悪夢」(ナイトメア) 1996年 Vol.30: ボリスが結構アレです ★★★☆☆
「クトルーちゃん」1996年 Vol.31: 段先生の妻が良い ★★★★☆
「ヨグの逆襲」1996年 Vol.32: ネタ的には二番煎じ ★★★☆☆
「ゲッコウカゲムシ」1995年 Vol.28: 最近の子は影踏みなんてやらないのかな ★★★☆☆
巻末には「胃の頭町イラストマップ」付きです。

No.99 6点 猫と鼠の殺人- ジョン・ディクスン・カー 2018/11/28 22:05
JDC/CDファン評価★★★★☆
フェル博士 第14作。1941年出版。創元文庫で読了。
登場人物が少ないので大丈夫かな?と思うくらいのシンプルな話。特異な性格のキャラが出てくるので良いJDC/CDです。もー少し被害者の描写を多くして、事件前の猫と鼠のいたぶり描写を肉付けしておけば、もっと傑作になったと思います。
奇天烈度がやや低いのと結末に不満(チュートハンパやなー、な感じ)があるので中傑作「弱」という評価になりました。
ところでプールの場(第14-16章)ですが、ずっと「テニスコートの謎」の一場面だと記憶していました。どーゆー狙いの一幕なのか、よくわかりません… 何か隠された深い意味があるのでしょうか?
さてトリヴィアです。原文入手出来ていません。
p8 かつら: 18世紀のコスプレみたいなやつ。まだ続いてるのか、と思ったら、民事裁判では2008年廃止。
p37 年500ポンド: UK消費者物価指数の比較で約54倍(1940/2018)。現在価値は日本円にして393万円ほど。
p54 実話雑誌: 米国では1920年代〜1940年代に流行。英国版Trye Story誌は1922年からHutchinsonが出版。
p146 ナポレオンいわく。男は6時間、女は7時間、愚者は8時間眠るとな。: Six hours for a man, seven for a woman, eight for a fool. 英国の古い諺?歴史上のナポレオンとはあまり関係ないようですが、ナポレオンが引き合いに出されることも多いようです。
p188 公衆電話… 5ペンス… Aボタン: Public telephones in 1940s BritainでWEB検索すれば「A ボタン」が見られます。デザインセンスが実に英国らしいダサさで良い。
p190 水着: 詳しい描写なしです。swimsuit 1940で検索すると、すでにセパレート型が登場しているようですが、ワンピース率が高いかなぁ。
銃は「アイヴス=グラント32口径」リボルバーが登場。「銃身を折ってみると、弾丸は全部装填されて一発だけ撃たれている。」という描写があるのでWebley & Scott .32 Caliber Revolverみたいなトップブレークの拳銃なのでしょう。でもIves Grantというメーカーは全く聞いたことがありません。ニワカマニアなので、存在しない!と断言することも出来ません… この場面で作者が架空のメーカーをでっち上げる必要は無いように思うのですが… (2018-12-14追記: Iver Johnsonにも32口径トップブレークのrevolverがありました。1933年F.D. ローズヴェルト暗殺未遂事件に使われたやつです。この記憶が生々しかったので出版側が難色を示した?のかも。多分JDC/CDは気にしないタイプ。最近入手したかなり網羅的なカタログにもIves又はGrantのいずれも掲載されていなかったので、この名称は架空のものと断言しても良さそうです)
p14 小型の回転拳銃の弾丸: なぜリボルバーの弾と分かるか、というと薬莢にリムがあるからですね。

ここで問題。本書の作中時間は何年でしょうか?
作品中に、4月27日金曜日(p53)、4月30日月曜日(p227)と明示されています。ですから簡単にわかるはず… しかし、この日付は矛盾しているのです。
登場人物がソドベリー クロスの毒殺事件(緑のカプセルの謎)に言及(p84)しており、作中時間はこの事件の後であることが明白です。(震えない男p85にソドベリー クロス事件は1937年10月に発生した、との記述あり)
ところが「4/30月曜」の該当年は原作出版年(1941)に近い範囲(1930-1950)で1934年と1945年だけ。
ああJDC/CDがやらかしたな… 単純ミスだよ… となってしまいますよね。でも日付がもう一つ。p267に「4月30日火曜日」とあり、訳注では「原作の誤り。5月1日火曜日のはず」と指摘しているのですが「4/30火曜」の該当は1940年です。とすると、実はこれが正しく「4/30月曜」が誤りなのか! と結論に飛びついたそこのあなた。あなたは重大な歴史的事実を忘れています。
それは英国では1939年9月1日に始まった灯火管制(blackout)のことです。
この作品中の夜間の光や窓の扱い方は平時のもので、灯火管制下の世界ではありえません。

以下、解決篇です。
多分、作者は1940年「4/30火曜」で初稿を書いたのでしょう。そのあと灯火管制の開始時期を思い出し、1940-1-1は月曜日、1939-1-2は月曜日、というような事実から「日付を一つ後ろ送りすれば1年前にずらせる、それなら灯火管制前になるのでオッケー」と考え1940年「4/29月曜」→(作者のつもりでは)1939年「4/30月曜」などと修正したのだと思います。(1箇所p267は修正漏れ) なのでJDC/CDが執筆中に想定していた事件発生年は1939年だと思うのです。(実際の1939年4月30日は「日曜日」) 作者は閏年のズレ(3月以降は2つズレる)を忘れていた、というのが私の仮説です。Q.E.D.

No.98 7点 ボッコちゃん- 星新一 2018/11/26 05:42
1961年出版『人造美人 ショート・ミステリイ』『ようこそ地球さん』(いずれも新潮社) を中心に自選50篇。文庫オリジナルのようです。私は電子本で読みました。
セリフの感じが60年代です。スマートという形容がふさわしい。
真鍋博のイラストも良いですね。
小学校の教室内にあったように記憶しています。人が読んでると、読みたくなくなるへそ曲がりなので、随分大人になってから読みました。(きっかけは最近のショートアニメだったような気がします)
短い作品は大好きです。そして星さんの作品は読む前から品質に安心感があるのです。(星新一伝、買ってるけどまだ読んでいません…)

No.97 7点 ギャングース- 鈴木大介 2018/11/25 19:26
漫画: 肥谷圭介&ストーリー共同制作: 鈴木大介
ノンフィクションをエンタメにする一つの方法。
現実が、本当にこうなのか、はよくわからないのですが、ただならぬ迫力の若き犯罪者たちの冒険物語です。
現代の悪党パーカーはこれだ!

No.96 7点 連続殺人事件- ジョン・ディクスン・カー 2018/11/25 08:50
JDC/CDファン評価★★★★☆
フェル博士 第13作。1941年出版。創元文庫で読了。
スコットランド愛が溢れた作品。子供時分に読んで、こんなに楽しいスコットランドが大好きになりました。(でも作者のスコットランド知識も登場人物のアランとどっこいどっこいじゃなかったのかな) 最近エマニュエル トッド説を知り、やはりスコットランド万歳です。
前に読んだ、といってもほぼ40年前。話の筋や犯人、トリックなど全部忘れています。呑んだくれて大騒ぎの強烈な印象が残っていただけなので再読がとても楽しみでした。(逆に三つの棺とか火刑法廷はなんだか気が重いんですよ… まだ読めていません。)
constant suicidesの適訳はなんなのでしょう? 連続自殺事件でいいのかな。(A Constant Suicideという小説が出ていました。こっちは単数形なので「常に自殺」?)
冒頭は映画のラブコメ。ビリーワイルダーのセンですな。(いやワイルダーならもう一捻りあるか) ブッキッシュな作者なので歴史トリヴィアからスタートです。(ネタのクリーヴランド公爵夫人は歴史上の実在人物、肖像画を見ると「金髪の小柄」では無いようですね…)
途中の記述でトリックを思い出してしまいました。でもそんなに支障は無いです。
スコットランドヤードをスコットランドに呼ぶ、が一番面白いジョーク。
強烈な登場人物が出てくるとJDC/CDは傑作になる可能性が高いです。奇妙奇天烈な筋だから、それにキャラが釣り合っていなければ。この作品は合格です。
最初の事件に比べて、後の事件が弱いのはいつもの通り。昔読んだときは大傑作!という記憶でしたが、今回読んでみると、破天荒度が高くないので中傑作という評価です。「キャンベル家の宿命」ちょっと飲んでみたいですね。(やめておけ)
さてトリヴィアコーナーですが、原文が入手出来ず、調べが行き届きませんでした。
p8 例のスコッチのダジャレ: よくわかりません。
p30 ぺピース: 現在はピープス(Pepys)でお馴染み。
p34 ロックローモンド: The Bonnie Banks O' Loch Lomond スコットランドの古謡
p38 ネクタイ1ダースで3シリング6ペンス: 0.175ポンド。当時のドル換算で70セント。現在価値は16.751ドル(食パン基準1940/2018) 随分安い…
p45 セドリック ハードウィック(Cedric Hardwicke): 41歳(1934)で卿に叙された英国俳優。シュノッズル デュランテはおなじみ(じゃないかな?)Jimmy 'Schnozzle' Duranteですね。
p80 ショオの“医者のジレンマ”(The Doctor’s Dilemma): G.B.Shaw作、初演1906年。邦訳は『医師のジレンマ -バーナード・ショーの医療論』(中西勉訳、丸善名古屋出版サービスセンター1993)だけ?ショーって相変わらず人気無いですね。(「ウォレン夫人の職業」にミステリ味があったようなおぼろげな記憶が…)
p119 ヒースの美酒の秘密よ/とこしえにわが胸に眠れ: 詩の引用らしいのですが、発見出来ず。
p158 文豪スティヴンソン…(中略)…アレン ブレック(アランじゃないんだから間違えないでもらいたい)… (中略)… 映画になった“誘拐”: Kidnapped(1886)にも出てくる実在のAlan Breck Stewartの発音がアランじゃないらしいです。英Wikiより(Gaelic: Ailean Breac Stiùbhart; c.1711–c.1791) 実はアイリーン?
p220 スコットランドの法律には事後従犯なんて無い: これにはビックリ。調べてみると日本の刑法でも事後従犯は処罰の対象ではないらしい。(犯罪を事前に助けると「従犯(幇助犯)」です。ペリー メイスンの読みすぎで全世界共通の罪だと思いこんでいました…)
p235 いとし娘は、かぼそいおぼこ…: 多分実在の唄。Alan Lomax録音のスコットランド古謡のシリーズ(Jeannie Robertson, Jimmy MacBeathなど)を持ってますが、収録されてるのかなぁ。後でじっくり聴いてみます。
銃は「軽い20口径の猟銃」(p238)が登場。20-bore「20番」ですね。延原先生は正しく訳してるのに… (井上一夫さんは弟子) 「強だま」(p255)はheavy loadのことでしょうね。

(以下2019-6-1追記)
やっと原文を入手出来ました。不明の詩はあっさり判明。
p119 Here dies in my bosom/The secret of heather ale.: Robert Louis Stevenson作のHeather Ale. A Galloway Legend(1890)より。
p235 I love a lassie, a boh-ny, boh-ny las-sie –/ She’s as pure as the li-ly in the dell – ! : ミュージックホールコメディアンHarry Lauderの出世作I Love a Lassie(1905)より。Webに音源あり。
p38の現在価値を、上ではドル換算してますが、英国消費者物価指数基準1940/2019(55.52倍)で計算し直すと1360円。きちんと読むと「一本三シリング六ペンスだに」(They’re three-and-sax-pence each.)となってることに今気づきました。じゃあ普通の値段(やや安いか)ですね。

No.95 8点 虎よ、虎よ!- アルフレッド・ベスター 2018/11/24 19:09
まさか登録されてるとは思いませんでした。ここは懐が深いですね…
1956年英国で初版。ついで米SF雑誌Galaxyに連載。ここら辺の事情は何だったのか?
SFの祭典なら文句なしの10点です。
悪党パーカー的なのが好きな人にも良いのでは?

No.94 8点 夏への扉- ロバート・A・ハインライン 2018/11/24 18:29
夏、といえばこの作品なのですが、ミステリ興味あったっけ?と思い返すと全く内容を覚えていない! ことにたった今気づきました。
小尾さんが改訳、というのも初めて知りました。
早速、アマゾンで新訳版を注文です。届いたら読みます。
手始めに記憶の印象だけでこの評価です。(悪徳なんか…のユーニスは強烈に覚えてるのに…)

No.93 8点 ユービック- フィリップ・K・ディック 2018/11/24 17:39
昔はレムが書いたら傑作になってたのに、と思ってました。今は、正反対の評価です。日常生活の中に、突然、裂け目が出来る感覚を、軽いタッチで見事に表現しています。生きることは、少しずつ死ぬことだ、と言う真理をガキだったわたしに強く印象づけました。レムなら哲学論で台無しにしてたでしょうね… 深読みしたくなるほど、表面上はストレートなSF傑作です。
※ なんかアマゾンを今見たら、翻訳が古いとなっててショック… 浅倉先生ももー古いんだ… 久々に再読してみようかな… (ディックが書いた映画版ユービックの脚本もかつて読みましたが、いまいちピンと来なくて、途中で落ちました)

No.92 8点 母なる夜- カート・ヴォネガット 2018/11/24 14:56
Uブックス版は池澤さんがさらに練った訳、というので買って読まねば! と思いました。情報ありがとうございます。(私は白水社の旧版で読みました)
「チャンピオンたちの朝食」(1973)までは熱心な読者だったのですが、それ以降は読んだり読まなかったりです。
本作はヴォネガットの作品中、もっとも普通の小説でその点の完成度が高いです。確か小鷹さんが引用していた作者の言葉Make love while you can, it’s very good thing.(うろ覚えです)とともにいい思い出として心に残っている作品です。
再読を果たしたら、追記しようと思います…
「デッドアイ・ディック」は殺人が出てくるし、SFっぽくない小説なので追加しようかな…

No.91 7点 一九八四年- ジョージ・オーウェル 2018/11/24 14:00
この作品自体は素晴らしいと思います。(ロンドンの鐘の音と、ネズミが心に深く残っています)
私が気に食わないのは、日本ではザミャーチンの「われら」との関連が抹殺されてることなんです… 事実を無かったことにする、その行為自体が1984的な世界だと思うのです。まあ一度「われら」(岩波文庫で入手可能)を読んでいただければ、私の言いたいことがわかっていただけるのではないか、と思います。
WikiのZamyatin “We”の項目より引用。
Orwell began “Nineteen Eighty-Four”(1949) some eight months after he read Zamyatin's “We”(1921) in a French translation and wrote a review of it.

<誤解を与えそうなので、追記>
パクリ云々の話(全ての芸術はパクリである)ではなく「われらを読んで強い印象を受けたものと思われ、その設定を発展させ1984年を執筆した」と何故素直に書けないのか?ということです。(パクリアレルギーの人っていますよね…)
英Wikiでも上記の文章は1984の項には書かれていません… (日本Wikiの「われら」の項目が特に気持ち悪い。躍起になって1984年を褒め称えています)
オーウェルの書評 E・I・ザミャーチン著「われら」(Tribune 1946-1-4)がWEB上で読めるんですね… 最後の文はオーウェルの犯行予告です。
This is a book to look out for when an English version appears.

No.90 7点 溺れるアヒル- E・S・ガードナー 2018/11/24 08:52
ペリーファン評価★★★★☆
ペリー メイスン第20話。1942年5月出版。
冒頭はパームスプリングスのホテルで休暇中のメイスンとデラ。やはり主人公とともに何だかわからない事件に巻き込まれて行くこの感じが好きです。地方新聞に動向が乗るほどの有名弁護士メイスンに持ち込まれた依頼は18年前の殺人事件の調査。今は1942年と明示され、出征間近で結婚を急ぐ青年や、この戦争が若者たちを鍛え上げるだろう、といったセリフが開戦直後の雰囲気を感じさせます。豪邸でドレイクと合流し、乾杯は「犯罪を祝して!」(Here’s to crime.) メイスンの無茶な行動はほとんど無く、デラと乗馬を楽しんだり、猛犬を簡単に手なづけたり、路肩でタイヤを交換したり。(ただし危険な助言は結構あり) 舞台がエル テムプロ(El Templo: 架空地名、多分インディオの近く)なのでトラッグはお休み。
法廷ではメイスンは傍聴人席(シリーズ初)でイライラ、最後は「待ってました」の独壇場で得意の攻撃を繰り出し、事件を解決に導きます。
タイトルに動物が登場するの(吠え犬、門番猫、びっこカナリヤ、偽証オウムなど)には傑作が多く、この作品も切れ味がとても良い秀作。
ではトリヴィアです。(◼︎はPerry Mason Bookからのネタ)
銃はライフル銃(rifles)、六連発銃(six-shooters)、散弾銃(shotguns)が登場。詳細不明。
p102「重装の、あの20ゲージの銃を発射して」(You take one of these twenty-gauge guns with a good heavy load): heavy loadは重い散弾(反対語 light load)のことなので「20ゲージの銃で重装弾を発射して」が正確。20ゲージ(.615インチ)は12ゲージ(.729)より小口径で小型鳥獣猟用。
p34「自分が、劇にでてくる主人公のようだと思ってるだろうな。客は腰を打つし…」(must feel he’s like the host in that play where the man broke a hip): この劇はGeorge S. Kaufman & Moss Hart 作の喜劇The Man Who Came to Dinner(1939初演、1941映画化 日本未公開)とのこと。(某Tubeに楽しそうなトレイラーあり) ◼︎
p36「パリス型石膏」(a plaster of Paris cast): ギプスのこと。
p120「清浄剤」(detergent) :「界面活性剤」が正訳。翻訳時(1958)には普及していなかったのかな? 現在「清浄剤」は界面活性作用ではなく、化学作用や物理作用で汚れを落とす洗剤に使われる。なお米国でも本書出版当時detergentは一般家庭で使用されておらず、ライフ誌1939-2-27号に“Aerosol Makes Even Ducks Sink”という記事が載ったとのこと。◼︎
p125「シカゴのセントラル・サイエンティフィック商会、ニューオルリーンズのナショナル・ケミカル商会、ニューヨークのアメリカン・シアン・ケミカル会社」(Central Scientific Company of Chicago, National Chemical Company of New Orleans, and American Cyanamid and Chemical Corporation in New York): いずれも当時実在の会社です。作者はAmerican Cyanamidの社員(その娘は後年のミステリ作家Sally Wright)に取材したので、ここで一つ宣伝、ということでしょう。◼︎
p181「われわれアメリカ人全部にとっても、このあたりで、ひとつがんと喰らわされるのはよいことかもしれないんだ」(It might be a good thing for all of us to get jolted out of it.): 後段で「(我々は)戦争に一度も負けたことがない」と言っています。当時はまだ日本軍も善戦中。(ミッドウェー海戦は1942年6月)

<ちょっと誤訳>
p31「マーヴィンは、研究所の実験に生き物を使用するには、ちょっと神経質すぎると思うよ。」(I think he’s a bit sensitive about using live things in laboratory experiments.) heの直前に話に出てくる男性はFatherだけなので、内容から言っても「お父さんは随分気にするだろうと思う」ということですね。
p87「昔、毒ガス室で、犯罪者を死刑にしたものと同種のものだ。」(It’s the same kind they use to execute criminals in a gas chamber.): 当時バリバリの新方法(カリフォルニア州では1938年からガス室実施)なので、変だと思いました。used toの見誤り。

No.89 6点 鬼平犯科帳 (コミックス)- さいとう・たかを 2018/11/23 07:19
池波先生には大変申し訳無いのですが、梅安も秋山小兵衛も鬼平も、全部さいとう氏の劇画でしか知りません。でもそれらの劇画のおかげですっかり池波先生の小説のファンみたいな気持ちです。(エッセイは読んでおり大好きです)
さいとう・たかを氏は、リアリティに気を使う主義なので、江戸時代の描写も正確なのでは?と思っています。絵で見ないとわからないものって結構ありますよね。
まー内容は「本格の盗賊」とか、当時はもっと身分制度が窮屈な感じじゃないの?とかフィクション味が多い気がしますが…

キーワードから探す
弾十六さん
ひとこと
気になるトリヴィア中心です。ネタバレ大嫌いなので粗筋すらなるべく書かないようにしています。
採点基準は「趣好が似てる人に薦めるとしたら」で
10 殿堂入り(好きすぎて採点不能)
9 読まずに死ぬ...
好きな作家
ディクスン カー(カーター ディクスン)、E.S. ガードナー、アンソニー バーク...
採点傾向
平均点: 6.14点   採点数: 528件
採点の多い作家(TOP10)
E・S・ガードナー(96)
A・A・フェア(29)
ジョン・ディクスン・カー(29)
雑誌、年間ベスト、定期刊行物(19)
カーター・ディクスン(19)
アガサ・クリスティー(18)
アントニイ・バークリー(13)
R・オースティン・フリーマン(12)
ダシール・ハメット(12)
ドロシー・L・セイヤーズ(12)