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麝香福郎さん
平均点: 6.62点 書評数: 89件

プロフィール高評価と近い人 | 書評 | おすすめ

No.89 7点 卒業生には向かない真実- ホリー・ジャクソン 2026/02/09 18:34
ピップのもとに鳩の死骸が置かれたり、謎めいた落書きが描かれたり、無言電話や脅迫まがいのメールが届く。自分で犯人の正体を探ろうと調査を開始したピップが発見したのは、一連の行為が6年前の連続殺人事件と酷似しているという事実だった。
ピップは調査を始めるが、その後に衝撃的な展開が待っている。だが真の衝撃は、さらにその後でピップが下すある決断。ミステリとしては抜群の吸引力を誇りつつも、決して最後まですっきりすることはない。本文最後のページは一見、ハッピーエンドのように見える。だが決してそうではない。この三作で繰り返し描かれてきたテーマを考えてみればそれが分かる。

No.88 6点 成瀬は天下を取りにいく- 宮島未奈 2026/01/12 13:39
他人の目を気にすることなくマイペースに生きている成瀬あかりの中学二年生から約四年間の生き様が、幼なじみの島崎を筆頭に、立場も距離も異なる人々の視点から描かれていく。夏休みの間、閉店の決まったデパートへ毎日通い、唐突にM-1グランプリへの出場を決め猛進する成瀬の言動は、普通の枠からはみ出している。成瀬は自分が異端であることに屈託を抱えている訳ではない。ただ自分がやりたいことを自分が納得できるようにしているだけのなのだ。
この感覚が読みながらじわじわと効いてくる。憧れて、妥協して、忘れようとしても忘れられなかったものが詰まっている。唯一無二の青春物語。

No.87 5点 ママはきみを殺したかもしれない- 樋口美沙緒 2025/12/01 20:32
脚本家として実績を重ねる美汐。理解のある夫と郊外の一軒家で幸せに暮らしていたが、息子の反発に思わず首を絞めてしまう。混乱のうちに気を失い、時計の針は六年前に巻き戻る。仕事を優先にして子供を手に掛けてしまった後悔から、今度は愛息と真正面から向き合う生活を選ぶのだ。
全編から問われるのは人生におけるファースト・プライオリティ。人は誰のために生きるのか。成功のためには犠牲が必要なのか。巧妙に紡がれたメッセージは心に突き刺さる。

No.86 6点 隣人を疑うなかれ- 織守きょうや 2025/11/16 21:24
隣人の謎めいた失踪、マンション住人への疑惑、そこに世間を震撼させている連続殺人事件までもが絡んでくる。隣同士の名前も顔も分からなくなった危うすぎる現代社会の側面がリアルに再現されている。
この物語は、ごく普通の人間が狂気を生み出す背景を丁寧に描き出している。当たり前の日常は、いかに危険と隣り合わせであるのか。取り返しのつかない事件を未然に防ぐための警鐘が高らかに聞こえてくる。衝撃の冒頭から、緻密に組み立てられたミステリアスな展開、そして見事な伏線回収の後に待っていたラストまで全く油断ならない。

No.85 6点 奈良監獄から脱獄せよ- 和泉桂 2025/09/29 21:40
弓削朋久は、教え子を殺した罪で有罪となり、奈良監獄に収監された。しかし教え子は自殺したのであり、彼は無実だった。二年が経った時、羽嶋亮吾という新入りの囚人に仕事を教えることになる。強盗殺人と放火で無期懲役の羽嶋だが、彼も無実だと知り気に掛けるようになる。
この二人を中心に粗暴な山岸、弓削が仕事の師匠と思っている相内や、新任の長谷川などが絡んでストーリーが進行していく。意外性を盛り込んだ脱獄の面白さが十分に堪能できる。最初は気持ちに食い違いがあった二人が、脱獄仲間になり強い絆で結ばれた相棒となる関係がいい。弓削の冤罪に関する扱いには驚かされたが、あえてこのようにしたのだろう。

No.84 6点 人探し- 遠藤秀紀 2025/09/13 09:42
能勢恵は歩容解析のプロ。歩容解析とは歩き方の特徴から個人を特定する技術で、能勢はそのプログラム「ラミダス」を開発した。広告代理店の企画課に在籍し、警視庁の捜査支援分析センターと鉄道会社の支援を受けて次々に事件を解決していくが、能勢は密かにある男を追っていた。
歩容解析のメカニズムも面白いが、ひきつけてやまないのは壊れた家庭の犠牲者たちである。「誰もが大切なものを失いながら、生きるものよ」という言葉が出てくるが、それは悲しみを見据えた温かな認識ではなく、復讐=殺人の正当化。壊れた者たちの対立と葛藤が切々とした響きを持ち、救われて欲しいと願わざるを得なくなる。独創的なアイデアに満ちたミステリであり、心震わせる力強い人間ドラマである。しかし、文章は上手いとはいえず読みづらかったのが減点材料となった。

No.83 5点 サドンデス- 相場英雄 2025/08/25 18:56
主人公の理子は、鬱病の母の世話をしながらガールズバーで働いていた。ある日、客の女から誘われ、条件のいいラウンジへ転職する。すると収入も急増し、暮らしぶりは好転する。その日常をSNSにアップすると数万人のフォロワーがついた。その反面、妬むアンチも急増する。
成功する者と落ちていく者、富む者と貧しい者。両者を区切る境界線は細くて脆い。そのわずかな線上で両者はもつれ合う。SNSの功罪、格差と分断。現代社会の底に横たわる問題を抉り出したスリリングな物語。

No.82 7点 恐るべき太陽- ミシェル・ビュッシ 2025/08/08 22:00
人気作家PYFが、作家志望者とその同行者を招いて、七日間の創作セミナーを開く。作家志望者はすべて女性だった。そして序盤でPYFが失踪した後、主要登場人物が一人また一人と死体になっていく。
本作は厳密にはクローズド・サークルではない。しかしフランス本国から遠く隔たった太平洋上の離島ということで、登場人物の活動には、例え警察官や憲兵の身分であっても制約がかかる。そんな中、殺人が連続して発生する。サスペンスに満ちた展開といえるし、登場人物が抱える秘密を徐々に明かしたり、語り手を頻繁に交互させて二つのプロットを同時並行させることもあるなど、飽きさせることはない。
ただこれらの読みどころは、最後に明かされた大ネタにより、その印象を吹き飛ばされてしまう。しかもフランス小説特有の気取った書き方が煙幕として機能している。

No.81 6点 刑事何森 逃走の行先- 丸山正樹 2025/07/19 11:19
無骨だが人一倍正義感の強い刑事・何森稔は、聾者の手話通訳士をする荒井尚人と彼の妻である美幸とコンビを組む。
「逃女」は、女性ベトナム人技能実習生が上司を刺して逃走している事件を、「永遠」は、中年男性がラブホテルで殺され若い女性が被疑者として追われる事件を、「小火」は公園トイレの放火の被疑者である高齢の女性ホームレスを追ううちに、イートイン席のある洋惣菜販売店からの誤報とされた強盗騒ぎとの関連が浮かび上がってくる様を描いている。
加害者被疑者は女性だが、その背景にあるのは外国人排斥や入管問題、パパ活やコロナ禍による女性の貧困など。日本のシステムや社会の空気が、女性や少女、在留外国人など声なき被差別者たちに、望まない事件を起こさせているのではないかと思わずにいられない。
一見、バラバラに見える事件、被害者の逃亡に、ある組織の存在が浮かび上がる。クー・バンという支援組織で、特徴は罪を犯した外国人女性でも助ける点だ。正しいことではないかもしれないが、やむにやまれぬ事情を汲むという人としての心をそこには感じる。

No.80 7点 アブソルート・コールド- 結城充考 2025/07/05 20:30
舞台となる見幸市は、夢見られていた未来都市とスラム化した迷宮が混然となった世界。高層ビルが林立する町の住民は二分化され、それぞれ「高層人」「地上人」と呼ばれている。高層人とは、ビルの屋上にバラックを立てて暮らす寄生種族のようなもの。ビルの電気設備のメンテナンスで生計を建てており、正規の市民とはみなされていない。少女コチは高層人で、コチたちは「横断機」という装置を使ってワイヤ伝いにビルからビルへと移動する。
コチのほか、主要な登場人物が二人いる。そのうちの一人、クルミは二十二歳の男性警察官で優れた射撃の腕を持つ。もう一人、ビトーは私立探偵で。今回のテロ事件の捜査に独自の立場で関わることになる。
人工知能関係の様々な自動端末、廃れた工場を動き回る機械たち、モルールの軌道上で繰り広げられる銃撃戦。盛りだくさんのアイデアを詰め込み、それらをきっちりと組み立てたストーリーが語られる。人と機械の境界が溶けあい、生と死の境界が取り払われる。魅力的かつ戦慄すべき未来絵巻である。

No.79 6点 寒波- マウリツィオ・デ・ジョバンニ 2025/06/19 20:29
ナポリが舞台のP分署捜査班シリーズ第三弾。
ピッッォファルコーネ署は、過去の不祥事ゆえ廃止の瀬戸際にある。このため署に集められた刑事は全員訳ありではみ出し者だ。
本作では、同居する若い兄妹が自宅で殺害される事件がメインとなる。捜査が進むにつれて亡き被害者、特に妹の人生と性格とが鮮やかに立ち現れる。捜査対象の人々の人生模様が交錯する一方、レギュラー陣の人生も起伏が激しく、一筋縄では行かない。今回もモジュラー型の警察小説はかくあるべきというお手本のような作品。

No.78 6点 骨灰- 冲方丁 2025/06/02 19:38
二〇一五年六月、渋谷駅の再開発事業に大手企業で投資向けの広報を扱うIR部の危機管理チームに所属する松永光弘は、東棟と呼ばれる高層ビル建設現場の地下に向かう。東棟地下に関するSNS上のデマの真偽を確認するためだったが、彼はそこで地下深くに伸びる階段を発見、白い粉塵と異臭にまみれたその底には、ドアで仕切られた空間の中に不審な穴と祭壇があった。
テーマは都市民俗に根差した祟りで、東京という街は火災や震災、大空襲など多くの犠牲者を出してきた。中盤から始まる松永とその父親とその相克劇も読みどころ。父親であって父親でないそれとの関係から松永のトラウマが浮かび上がってくるだけでなく、家族のありよう、引いては国家と個人との関係のありようにも迫る。渋谷駅再開発という着眼の妙もさすが。

No.77 6点 五十万年の死角- 伴野朗 2025/05/13 19:44
太平洋戦争の開戦のまさにその日、密命を帯びた日本軍兵士が北京協和医科大学の施設を急襲した。貴重な文化財である北京原人の化石骨を接収するためである。だが、大学関係者が厳重な守りに固められた金庫を開けた時、声にならぬ驚きが辺りを支配した。金庫の中には、目指す化石骨が消えていたのである。誰が何のために持ち出したのか、北京原人を追い、日本軍、中国共産党、日本中それぞれの特務機関が激しい暗闘を繰り返しながら行方を探っていく。
手法としては、フォーサイス的手法の作品と言えるだろうか、北京原人の行方をめぐる話を中心としながら、主人公の周囲では藍衣社会や松村機関といった特務機関の人物が派手な活劇を繰り広げ、謎を追う者たちの躍動感が全編に充満している。

No.76 6点 最後の祈り- 薬丸岳 2025/04/23 21:38
刑務所で受刑者の精神的救済のために教誨を行っている牧師の保坂宗佑のもとに、北川由亜が暴漢に殺害されたとの連絡が入る。犯人の石原は、由亜と彼女のおなかの子供を含め四人を殺害。しかし罪の意識もなく、「人を殺して楽しめないならどうだっていい」と、死刑判決を受け入れる。
虚しさを抱く保坂に、由亜の叔母にあたる女性は石原に教誨を行うように頼む。彼女曰く「もっと生きたいと思わせ上で、死ぬ直前に地獄に叩き落す言葉を突き刺して欲しい」。つまり希望を持たせたうえで絶望させるという、復讐のためだ。
信仰を復讐に利用していいのか心を揺らす保坂のほかに、反省のないままに刑務所で過ごす石原や、さらには教誨に立ち会う若い刑務官・小泉の視点も絡む。特に刑務官の苦悩は、胸に迫るものがある。
人は憎い相手を赦せるのか、そんな苦いテーマと同時に浮かび上がるのは、無差別殺人の犯人は本当に冷血なのか、またそんな人間に生への希望や命の重さを認識させられるとしたら、それは何をもたらすのか、という問い掛けだ。
保坂、石原、小泉それぞれの「最後の祈り」とは何か。痛切な物語ではあるが、最後には人間を信じたいという気持ちを抱かせる。

No.75 6点 ZONE 豊洲署刑事 岩倉梓- 福田和代 2025/04/01 21:16
豊洲署の生活安全課刑事・岩倉梓が手掛ける事案は、どれも事件以前の事件とでもいうべきものだ。「月へ帰る」と言い残し、幼い子供を置き去りにした母親。孤独死した偽名の男と孤独に付け込む犯罪の影。幼稚園に届いた脅迫状に隠された母親たちの確執。ストーカー被害に秘められた思惑。震災被災者を騙った詐欺事件の根っこにある哀しい歪み。ここには捜査一課の刑事が扱うような凶悪な事件は一切出てこない。しかし、本作にはスリリングな展開とは別の種類の読み応えがある。
急激に変貌する地域という特殊な空間を定点観測し、人の暮らしの中に生じる明暗を様々に切り取りながら、そこに寄り添う、あるべき警察官像を主人公の成長とともに示していく。犯罪を未然に防ぐ努力と起きてしまった犯罪を捜査することは、刑事にできることは限られている。だが、人と街のためにできることは、それが限界ではないはず。そう自らを奮い立たせる姿は、凄惨な事件に命懸けで挑む刑事にも負けない矜持を感じさせ、胸を熱くする。

No.74 6点 忌名の如き贄るもの- 三津田信三 2025/03/10 21:20
事件の中心となるのは、小村に伝わる自分の「忌名」が書かれたお札を滝つぼに投げ込む儀式だ。滝への道中「角目」に名を呼ばれ振り返ると右の目を潰される、生名鳴地方の虫くびり村で行われた「忌名の儀式」の愛中に怒った殺人は、言い伝えを具現化したように右目を鋭利な凶器で貫かれていた。
物理的に人間心理的に、さらに過去の出来事の時間軸も加わってシンプルな状況が徐々に新たな謎でデコレートされていく過程は、謎解きミステリにおける大きな読みどころとなっている。そこに怪異がバッティングし、過剰とさえいえる強烈な装飾となって謎の奥行きを妖しく深めていく。終盤の二転三転するシリーズの謎解きの妙は健在。

No.73 7点 眠る邪馬台国 夢見る探偵 高宮アスカ- 平岡陽明 2025/02/19 21:08
高岡周二は文化部所属の新聞記者。懇意にしている教授から、定年後に大学で講座を持たないかと勧められたが、本を書くことが条件だった。それも邪馬台国のような派手なテーマが良いという。そんな折アメリカの大学で、夢と睡眠の研究をしている甥のアスカが来日した。高宮から事情を聞いたアスカは邪馬台国の謎に興味を惹かれていく。
アスカが魏志倭人伝を読み解いていくのは定石通りだが、恣意的な読みを極力排除して進めていくのが好印象。さらに地政学的な見地から、当時の魏や倭国の周辺状況を推察して、邪馬台国の位置を比定していく手法が目新しい。
さらに高宮が抱える心の問題へのアプローチが、本書のもう一つの魅力になっている。高宮は愛妻を二年前に急病で亡くしたショックで精神に不安を抱えている。一方のアスカは、近年人気のないフロイト学説の一部を再生したいと思っており、高宮が最近よく見る夢を、フロイトのいう「検閲官」を引き合いにして分析する。高宮の見た夢から邪馬台国の場所と高宮の心の安寧のための二つの解が、同時に得られる離れ業が決まっている。

No.72 6点 呪いと殺しは飯のタネ- 烏丸尚奇 2025/01/27 20:08
満足な小説が書けなくなり伝記作家として活動する著者と同名の主人公が、現実での刺激を受けることで創作脳を活性化させて傑作を書こうとし、自ら危険地帯に足を踏み入れていくオフビートなサスペンス。
冒頭、大手企業から創業者の伝記執筆の依頼が烏丸のもとに届く。依頼書に書かれた金銭的な報酬以外にも「刺激を約束」するという一文に魅かれた烏丸は長野県の奥地にある個人の残した邸宅に滞在することになるが、到着早々彼は、創業者の妻と子らが全員がそれぞれ死亡、失踪、植物状態となっていることを知る。
一体会社は自分にどういった伝記を書かせたいのか?そして約束された刺激とはなんなのか。烏丸は一族の歴史を辿りながら取材を進めていく。彼が暴いていく一族の裏の姿に、恐怖や怪奇だけでなくツイストの効いた真相を潜ませた手腕は確かなもの。

No.71 6点 急行霧島: それぞれの昭和- 山本巧次 2025/01/08 21:11
昭和三十六年、鹿児島駅から東京駅までのおよそ二十六時間の旅路に様々な人間模様を浮かび上がらせるサスペンス。主人公は本屋の店員・美里。彼女は生き別れた父と会うために東京に向かう列車に乗る。車内で仲良くなった同年代の女性・靖子はお嬢様風のいで立ちながら、ただ一人で乗車している。その靖子は美里に、自分が何の目的で東京へ行くのか当ててみるというのだ。同じ霧島には二人の警察官が乗り込んでいた。傷害事件を起こして逃走中の容疑者がこの列車に乗っていると踏んだからである。
さらに凄腕のスリ師、乗車する宝石商から宝石を盗もうとする二人組の男などが登場し、なぜか犯罪のメッカとなってしまった急行霧島は人々の思惑を乗せて一路東京を目指す。無関係なはずの美里もやがて事態に絡むことになる。
なかなか姿を見せない犯罪者を炙りだすためにあの手この手を使う警察、随所に仕掛けられた意外な展開。鉄道ミステリの愉しみに、作者の得意とする人情噺を盛り込んでいる。

No.70 6点 虹の涯- 戸田義長 2024/12/15 22:26
幕末の水戸藩の天狗党で首魁路だった藤田小四郎を探偵役に据えている連作集。
史実では、尊王攘夷派である天狗党は挙兵して失敗し関係者が小四郎を含めて軒並み処分され、影響力を失う。そんな悲しい未来が確定している小四郎は、各編で鋭い推理を披露し謎を解く。
父の死。蔵での密室殺人。商家での密室傷害事件。いずれの事件も真実に人の意志が薫る。白眉は最終話の「幾山河」。天狗党は上野で挙兵し、京都を目指す。道中の藩と戦闘しつつ、追ってくる幕府軍を警戒する中、武士たちが次々に惨殺されていく。
「化人」と称される殺人鬼に浮き足たつ天狗党は、上京し本懐を遂げられるのか。いかにもミステリめいた人工的な謎を、史実に制約される時代小説に巧く落とし込んでいるのが印象的だ。天狗党が末路とも言うべき最期を迎えるのを知りながら読むと、得も言われぬ虚しさ、もののあはれが込み上がてくる。

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