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[ SF/ファンタジー ]
アブソルート・コールド
結城充考 出版月: 2023年04月 平均: 7.00点 書評数: 3件

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早川書房
2023年04月

早川書房
2023年04月

No.3 7点 糸色女少 2025/08/31 11:46
物語は主人公である高層人女性コチと男性警察官未来とその補佐を務める佐久間の女性社員雫の視点を入れ替えつつ進み、さらに彼らと物語中では出会うことがない元警察官の物語がサイドストーリー的に語られる。
事件は佐久間の本社ビルで細菌テロが起きたことから始まる。テロに巻き込まれて命を落とした高層人の遺体から、コチは巨大な容量を持つ量子記憶装置を回収する。そこには奇妙なAIと佐久間会長が主導する秘密計画のデータが隠されていた。コチは量子記憶装置から逃げ出したAIによって操られる猿型のオートマンを相棒として、AIを巡る事件の核心に迫っていく。
敢えて電脳空間的なものは最小限に抑えて、現実空間でのアクションを中心に据えたのが成功し、サスペンスの連続で最後まで一気に走り抜ける。最後に電脳世界のささやかな変容が暗示されるところも、いかにもサイバーパンクらしい。

No.2 7点 麝香福郎 2025/07/05 20:30
舞台となる見幸市は、夢見られていた未来都市とスラム化した迷宮が混然となった世界。高層ビルが林立する町の住民は二分化され、それぞれ「高層人」「地上人」と呼ばれている。高層人とは、ビルの屋上にバラックを立てて暮らす寄生種族のようなもの。ビルの電気設備のメンテナンスで生計を建てており、正規の市民とはみなされていない。少女コチは高層人で、コチたちは「横断機」という装置を使ってワイヤ伝いにビルからビルへと移動する。
コチのほか、主要な登場人物が二人いる。そのうちの一人、クルミは二十二歳の男性警察官で優れた射撃の腕を持つ。もう一人、ビトーは私立探偵で。今回のテロ事件の捜査に独自の立場で関わることになる。
人工知能関係の様々な自動端末、廃れた工場を動き回る機械たち、モルールの軌道上で繰り広げられる銃撃戦。盛りだくさんのアイデアを詰め込み、それらをきっちりと組み立てたストーリーが語られる。人と機械の境界が溶けあい、生と死の境界が取り払われる。魅力的かつ戦慄すべき未来絵巻である。

No.1 7点 虫暮部 2023/06/22 12:20
 サイバーパンク作品としての目新しいアイデアは特に無い。ハード・ボイルドの物語としては読ませる力作。但し、細切れにしてくるくる視点を移す書き方が、本作ではあまり生きていない。気分が乗った途端に場面転換してばかり。
 “来未” が幾度と無く “未来” に見えた。このネーミングは良くない。百のキャラクターはいいね。“小猿型” の設定でこんなに萌えるとは。
 で、持ち越されたままの三角関係はどうなるのかしら。


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結城充考
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