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[ ホラー ] メキシカン・ゴシック |
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シルヴィア・モレノ=ガルシア | 出版月: 2022年04月 | 平均: 6.00点 | 書評数: 1件 |
早川書房 2022年04月 |
No.1 | 6点 | 麝香福郎 | 2024/09/05 21:50 |
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舞台は一九五〇年のメキシコ。資産家の娘ノエミのもとに、イギリス人のヴァージル・ドイルと結婚した従姉のカタリーナから手紙が届く。その文面によると、カタリーナは夫の毒を盛られているのみならず、屋敷内を彷徨う亡霊に脅かされているというのだ。従姉の身に何が起きているのかを確認するため、ノエミはドイル家の人々が住む人里離れた「山頂御殿」へと赴く。そこなヴィクトリア朝様式の古風な建物であり、住人達も異常なほど窮屈な規則を守りながら暮らしていた。やがてノエミは、この屋敷で過去に起きた忌まわしい出来事を知る。
陰鬱な大建築、そこに住む因習の一族といった道具立ては、歴代のゴシック・ロマンスの名作と共通する要素だ。しかし、英米のゴシック・ロマンス的な道具立てを、そっくりそのままメキシコという地に持ち込むことで、そこには別のニュアンスが生じる。メキシコは長きに亘って植民地だったが、ドイル一族は旧時代の記憶に固執する白人至上主義であり、先住民の血を引くノエミに差別的な態度を示す。また、ヴァージルの父ハワードを頂点とする彼らは家父長制の権化でもあり、この二つの思想が縒り合わさったような邪悪な企みを秘めている。彼らの慇懃無礼な圧迫を受けつつ、ノエミがその企みをいかにして暴くかが本書の読みどころであり、シャーロット・パーキンス・ギルマンの「黄色い壁紙」を踏まえたゴシック・ロマンスのフェミニズム的再解釈の試みとなっている。 |