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レッドキングさん
平均点: 5.25点 書評数: 808件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.25 4点 騎士の盃- カーター・ディクスン 2021/07/22 22:09
ヘンリー・メリヴェール卿最後の事件。完全な密室内にあった莫大な宝飾的価値の盃。侵入者は何故にそれを「盗まなかったのか」のWhyダニット。密室トリックは、清張や東野が使ったら茶化したくなるレベルのシロモノだが、趣旨はあくまでもWhy。この作も明らかに短編向けのネタで、メリヴェール卿ドタバタ引延し劇は・・ちと息切れかな。

 で、カーター・ディクスン全長編(カー除く)25作の採点修了したので、私的カーター・ディクスンベスト7(9)
    第一位:「貴婦人として死す」
    第二位:「孔雀の羽根」
    同二位:「青銅ランプの呪」
    第四位:「九人と死で十人だ」
    第五位:「第三の銃弾」
    第六位:「一角獣殺人事件」
    第七位:「プレーグコートの殺人」
    同七位:「弓弦城殺人事件」
    同七位:「ユダの窓」

No.24 3点 恐怖は同じ- カーター・ディクスン 2021/07/14 16:36
冤罪殺人事件に巻き込まれ、二世紀昔にタイムスリップした男女。18世紀においても20世紀と全く同じ状況の殺人犯人として逃亡する羽目に・・・。世紀を跨いだ過去は、既にして別の世界だから、カー十八番のホラーとドタバタの融合が「熔合」にまで至っている「グロドタ」異世界描写はなかなか効果的。たーだ、密室トリック、ちとチンプすぎ。

No.23 6点 赤い鎧戸のかげで- カーター・ディクスン 2021/07/01 20:55
鉄の箱を抱えて衆視の中で姿を消す怪盗。属性「a」に規定される人物「A」、その「a」が消失する時「A」もまた消え去る・・・あっと驚く人間消失トリック(ロジック)・・・そこと拳闘シーン位しか見るべきところがないが、そこだけでこの点を献上しちゃう。

No.22 6点 魔女が笑う夜- カーター・ディクスン 2021/06/13 20:25
「あざける後家」と呼ばれる12mの奇岩のある寒村。住民達に郵送される数々の醜聞手紙が、自殺・密室幽霊事件・殺人を引き起こし・・クリスティー「動く指」と同じネタだが、「完璧な密室」も付いてて、こういうトリック大好き。

No.21 6点 墓場貸します- カーター・ディクスン 2021/05/30 21:18
プール水中からの人物消失トリック・・・短編ネタレベルなんだろが、やはり見事。
「野球場の土埃の匂いは、コカインの様に人を酔わせる」か、英国人以前に、米国ヤンキーだったなあ、カーさん。

No.20 5点 時計の中の骸骨- カーター・ディクスン 2021/05/27 22:02
タイトルがいい。舞台装置も素晴らしい・・廃墟刑務所の死刑部屋、移動見世物小屋、鏡の迷路・・ミステリ大道具はかくありたい。ホラーとドタバタの結合、グロテスクな滑稽風味、実によい。犯人像もなかなか。ただ、転落殺人トリックは・・この作より20年前の「孤島の鬼」や10年前の「曲がった蝶番」に半歩劣るかなあ・・刺殺時間トリックは、もっとショボいかなと。 ※メリヴェール卿と伯爵未亡人のバトル大爆笑に、1~2点おまけ付けちゃう。

No.19 4点 仮面荘の怪事件- カーター・ディクスン 2021/04/21 21:29
莫大な資産価値ある名画を飾った屋敷。忍び込み瀕死の重症を負った怪盗の正体は、屋敷の主人だった。当然に保険金目当ての狂言盗難疑惑呼ぶが、絵画に保険は掛けられておらず、主人の経済状態も悪くなかった。Why自分の絵画狙った? Who主人に暴行働いた? いったいWhat起きた? 
※ギデオン・フェル博士とヘンリー・メリヴェール卿の違い。クスりとさせるのフェル、爆笑させるのメリヴェール。

No.18 6点 弓弦城殺人事件- カーター・ディクスン 2021/04/03 18:43
ゴシックな旧館どころか、おどろおどろしき古城舞台の連続殺人もの。「密室」状態の部屋で見つかった奇怪な姿態の絞殺死体。被害者以外ただ一人室内にいた人物には実行不可能な犯行手口だった・・フーハウ? 
「カーター・ディクスン」名義第一弾。まだヘンリー・メリヴェール卿は登場せず、ゴーントていう一発屋探偵・・いまいち魅力ない・・が事件を仕切り、解明ロジック実に鮮やかで、密室トリックもなかなか。城内見取図ほしかった。

No.17 5点 五つの箱の死- カーター・ディクスン 2021/03/01 23:01
飲料毒混入の不可能トリック。①大容器に入った酒に毒は混入してなかった。②各グラスにも混入しておらず、③グラスに注がれる際にも混入は無かった。にも拘らず、酒を口にした全員に毒がまわった・・どうして?
昨日、4点採点したものの、書評に、このトリックはカーのオリジナルとあり、それ信じて、特許権の1点を加点。
※仲間由紀恵「トリック」に、同じ物を口にした一族の一人だけが毒死するって話あったなあ。

No.16 3点 パンチとジュディ- カーター・ディクスン 2021/02/25 21:11
「パンチとジュディ」ってドタバタ人形劇のことなのね。ドリフ大爆笑みたいなんかな。結婚前夜にH・M卿から怪しげな任務を命じられた元諜報員。殺人死体二体と偽札事件に出くわし、警官隊に追われて、女連れで逃げ惑うドタバタ劇を演じる羽目に。フー・ハウよりも、そもそも一体何が起こってたの?ホワットダニットだった。劇のカラクリ解体は鮮やかだが、早川文庫の二階堂黎人解説「カー初心者向け作品」てのには・・・大いに異議あり。

No.15 7点 青銅ランプの呪- カーター・ディクスン 2020/10/27 19:16
不可能トリックはミステリの華だ。いや、花火と言うべきか。それが一瞬の幻とわかっていても、儚く美しく魅惑的な・・やはり花火だ。「三つの棺」の素晴らしき犯人消失幻影、密室こそが、密室からの人物消失こそがトリック中のトリック・・・
それを手にした者は塵と消えるという呪いのランプ。密室状態のゴシック大屋敷より相次ぎ消失する大富豪の娘と父。
衆視の中、人物「A」が「消失」するためには、①瞬間早わざで「非A」に入れ代る。②同じく「その他大勢」に紛れ込む。③「A」に偽装していた「非A」が偽装を解いて「非A」に戻る。④もともと幻影だった「A」の幻影を解く。⑤一瞬にして誰も気づかない落とし穴に落っこちる。⑥同じく「くぐり抜けワープ」で瞬間移動する・・・イカン、不可能トリックと言えない不純物が混じってきた。

No.14 4点 青ひげの花嫁- カーター・ディクスン 2020/10/23 21:54
ホラー童話「青ひげ」の如く、結婚した女が次々と行方不明となり、殺人鬼の疑いのかかる謎のモテ男。その殺人鬼から送られてきた台本を、実人生で実験的に演じようと興じる俳優といぶかる女演出家。俳優自身にも当の殺人鬼である疑いが掛かり、読者もその疑いを捨てきれない。はたして殺人鬼青ひげの正体は誰か。花嫁達の死体が埋められているはずのゴルフ場は、掘り返せば痕跡が一目瞭然となる地形で、隠ぺいは不可能のはず。しかし、唯一例外の場所があった・・・そこはかとなくホラー感はあるが「青ひげ」タイトルから期待されるほどの怖さはない。H・M卿登場の場面は相変わらずドタバタ笑かしてくれるが。

No.13 3点 かくして殺人へ- カーター・ディクスン 2020/10/05 20:40
撮影所のシナリオライターに採用された牧師の娘。通話管からの硫酸浴びせ掛け、窓越しの銃弾、毒入りタバコ混入と様々な手段で命を狙われる羽目に。フー・ホワイというより、いわばフーム・ダニットのミステリ。フー自体のひねりも効いてはいるが、別にカーがこんなの書かんでもなあ。

No.12 7点 第三の銃弾<完全版>- カーター・ディクスン 2020/07/01 18:18
「密室状態」の室内に射殺された被害者と銃弾を発射した容疑者の二人。だが、被害者を殺した弾丸は、容疑者が撃った銃Aの銃弾aでも、室内で発見された別の銃Bの銃弾bでもなく、第三の銃弾cであり、銃Cは室内のどこにも無かった。トリックテーマ以外の余剰部分を極力そぎ落とした無駄のない長編ミステリ。
おそろしく手の込んだ、無意味で非現実的な「密室のための密室」「トリックのためのトリック」・・・素晴らしい!

No.11 7点 孔雀の羽根- カーター・ディクスン 2020/02/22 00:23
秘教結社オカルトを匂わせた不可能殺人が二つ。一つ目の死体には、至近距離からでしかあり得ない銃痕が二つ。だが部屋は完全な監視下にあり、被害者以外の出入りは不可能だった。二人目は背中にナイフを突き立てられて殺されたが、やはり犯人出入りは不可能で、その上、死体が消失していた。ナイフトリックの方は、後年、ポール・アルテが、同じアイデアをもっと切れあじよく再現した。嬉しいことに「人間椅子」サービスも付いてる。

No.10 6点 殺人者と恐喝者- カーター・ディクスン 2020/02/07 23:16
左手でトリックを仕込む際には、右手に観客を惹きつけるってのが手品の鉄則と知ってるが、目を凝らして読んでても騙される。あの緊迫の場面での来客闖入が手品の目くらましとは分かるが、ネタバラしには茫然。トリック、〇〇ο〇ハ〇〇って・・・嗚呼!! もう一個の手品の方はオーソドクスにして地味に見事。
ヘンリ・メリヴェール卿の自伝口述に無茶苦茶爆笑。

No.9 5点 読者よ欺かるるなかれ- カーター・ディクスン 2019/12/25 18:41
念力殺人を公言しながら法的無実を主張する超能力者とヘンリ・メリヴェール卿(なんたら総裁というモノモノしい肩書と禿頭巨漢のギャップが良い)の対決。仲間由紀恵「トリック」を連想し、超能力のハウダニットばかりに頭が行ってフーダニット決着に驚く。すっかり「作者に欺かれた」よ「warned=警告された」のに。
でも超能力トリック自体は飛鳥部勝則「レオナルドの沈黙」の方がずっといいな。

No.8 3点 赤後家の殺人- カーター・ディクスン 2019/09/20 12:29
魅惑的なオカルト冒頭から十八番の密室殺人展開に広がり、フランス革命にまで辿る歴史浪漫溢るる物語を経て、竜頭蛇尾な尻つぼみ感たっぷりな結末で終わる。まあ、あんだけ毎度毎度「密室」「不可能」やってんだから、たまにはこんな「脱力感」あふれる「スカ」なトリックもあるだろう。

No.7 7点 九人と死で十人だ- カーター・ディクスン 2019/08/23 14:06
喉を切り裂かれた女の死体に残された指紋は、登場人物の誰とも適合しなかった・・ 航海中の船上という舞台が連続殺人の緊張感を煽る。しかも戦時中の航海ときてはなおさらに。指紋トリックの方は「へえ、そうなんだ」って感じだが、人物入れ代りトリックは読み返してみると「ああ、本当だあ」とただただ感心。
※いまさらだけれども、フェル博士とヘンリ・メリヴェール卿のキャラの違いって「えっへん、おっほん」するかしないかだけだよね?それとも両方ともしたっけ?

※2021/5追記。メリヴェールも咳払いの「えへん」位はしてた。あと、メリヴェールの方が、爆笑度が高い。

No.6 6点 一角獣殺人事件- カーター・ディクスン 2019/08/09 21:49
絶対に銃弾ではありえない死体の額の穴。だが状況的に刺殺もありえない不可能殺人。まるで見えないユニコーンの角に突き刺されたような・・。 人間と人間、人間と死体のすり替わりという大技手品。魔術師カー(「カーターディクスン」名義だが)の面目躍如たる一篇。

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レッドキングさん
ひとこと
ミステリは戦前の乱歩の様に 子供が親に隠れてコッソリ読むような、恥ずかしい存在でありたい。 ミステリ書きという驚異的な作業に神経を減らし 結果報われることの無いミステリ作家たちに心から崇敬を捧げます。 ...
好きな作家
ジョン・ディクスン・カー  PD・ジェイムズ  トマスH・クック  沼田まほかる
採点傾向
平均点: 5.25点   採点数: 808件
採点の多い作家(TOP10)
アガサ・クリスティー(88)
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