皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
していません。ご注意を!
レッドキングさん |
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平均点: 5.27点 | 書評数: 888件 |
No.448 | 7点 | 予告殺人- アガサ・クリスティー | 2021/04/14 20:43 |
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悪ふざけとしか思えない「殺人お知らせ」に興味津々釣られ集まる近隣者達。お知らせ時間通りに現前で生じてしまった殺人劇は、事故か自殺で処理されるべきところ、遺産相続をめぐる第二第三の連続殺人へと発展して・・・。
第一殺人のトリック解明や第三殺人のサスペンス展開もなかなかだが、読ませどころは第二殺人の「愛憎悲劇」。 「自分の過去を覚えていてくれる最後の人間がいなくなると、人はひとりっきりになるんです。・・・私の少女時代を覚えている人は、もう誰もいません・・もう、誰も・・・」 ※1950年発表作品なので、時代的に、明確には書かれてないが、ヒンチクリフとマーガトロイドって、間違いなくレズビアンのパートナーだよね。この主題、第二殺人にも無意識的に働いていて、クイーン「最後の女」でのこの手のテーマの扱い方よりも遥かに素晴らしい。 |
No.447 | 7点 | 忘られぬ死- アガサ・クリスティー | 2021/04/06 22:14 |
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場所と「見えない男」の毒殺不可能トリックを機軸に、異性への情念と金銭への渇望を燃料に、様々な・・姉と妹、夫と妻、主人と秘書、母と息子・・様々な人間関係を意匠に、ロマンミステリ幻燈が鮮やかに儚く回転する。
てことで、アガサ・クリスティー40年代の長編ミステリ全13作の採点修了したので 私的「40年代アガサ・クリスティー」ベスト5 第一位:「ゼロ時間へ」 第二位:「書斎の死体」 第三位:「忘られぬ死」 第四位:「ホロー荘の殺人」 第五位:「五匹の子豚」 |
No.446 | 6点 | 弓弦城殺人事件- カーター・ディクスン | 2021/04/03 18:43 |
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ゴシックな旧館どころか、おどろおどろしき古城舞台の連続殺人もの。「密室」状態の部屋で見つかった奇怪な姿態の絞殺死体。被害者以外ただ一人室内にいた人物には実行不可能な犯行手口だった・・フーハウ?
「カーター・ディクスン」名義第一弾。まだヘンリー・メリヴェール卿は登場せず、ゴーントていう一発屋探偵・・いまいち魅力ない・・が事件を仕切り、解明ロジック実に鮮やかで、密室トリックもなかなか。城内見取図ほしかった。 |
No.445 | 6点 | 毒のたわむれ- ジョン・ディクスン・カー | 2021/03/31 12:36 |
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ゴシックの亡霊の様な館。「古き良き」価値信仰者の老いたる元判事と彼に支配される一族。連続する毒薬毒殺事件。「好きなミステリ作家は?」と聞かれれば「ジョン・ディクスン・カー!」と反射的に答えてしまうが、残念なことに彼の「毒殺好き」だけには共感できない。が、この作品の毒の差異による犯人特定ロジックは目からウロコだった。
※バンコランとフェル・メリヴェールをワンポイントで繋ぐこれ一作のみ登場の探偵、奇人青年:ロシター・・おそらく、金田一耕助御手洗潔の祖先筋なんだろな。 |
No.444 | 7点 | 書斎の死体- アガサ・クリスティー | 2021/03/28 14:30 |
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残酷な独裁者には反抗することができるが、慈悲深い独裁者に対してはそれも難しく、「奴隷」は真綿で首を締められるように、独裁者の慈愛に窒息させられて行く。孤独な帝王が、己の夢想の国から住民達が逃亡しようとしていることに気づき、縋りついた夢の少女は・・死体となって他家の書斎で見つかった。いかにもな遺産相続をめぐる殺人と匂わせて、動機ある容疑者にはアリバイがあり、犯行可能な人物には動機がなかった。疑う気にもなれない程の偽悪な男二人と怪しげなワキ役達、筋骨隆々の身障者爺さん、「自宅で死体が発見されたんなら、その状況を楽しまなくっちゃ」婆さん、そして、二組の人間関係トリック・・見事なる煙幕。「爪」と「ドレス」のロジックがGood! |
No.443 | 4点 | 動く指- アガサ・クリスティー | 2021/03/25 16:54 |
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療養のために田舎の旧館を借りた若者と付添いの妹。都会風な裕福兄妹を待っていた村中巻き込む醜聞怪文書騒ぎ。騒ぎはやがて自殺・殺人事件へと発展し・・。本来は一番に怪しまれる立場の人物に煙幕をはる為の「いかにも~が行いそうな」偽装行為。加えて一人称叙述・・「アクロイド」以降、読者にとっては拭い切れない疑惑・・の二重煙幕。
※「女はたいがい、自分の子供のことを、あまり好きではありません」・・嗚呼、何という「残酷な真理のテーゼ」 |
No.442 | 2点 | まほろ市の殺人 冬- 有栖川有栖 | 2021/03/23 14:08 |
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架空都市「まほろ市」お題シリーズ「冬の巻」 偶然手にした大金を巡り、双生児兄弟を殺めてしまった男の倒叙サスペンス。殺したはずの兄弟が現前するミステリの真相は・・双生児ネタのひねり損ねだった。
てことで、このお題シリーズ。秋:麻耶雄嵩>春:倉知淳>>夏:我孫子武丸>冬:有栖川有栖、て、とこかな。 |
No.441 | 6点 | まほろ市の殺人 秋- 麻耶雄嵩 | 2021/03/23 14:05 |
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架空都市「まほろ市」お題シリーズ「秋の巻」 屍体の左耳を焼く連続殺人鬼に対するは、妻:耿(秋ならず)子の「あなた優しくない」冷眼に憂える刑事。どぎつい赤の様な女流作家探偵とのドタバタ道中と「普通の殺人」に目を眩まされたあげく、いかにも麻耶らしいトンデモな(だが変に説得力ある)動機のミステリが待っていた。殺人鬼が己の「作品」たる屍体に記す「署名」のイカれ具合は、「神様ゲーム」の猫文字と並ぶ麻耶の二大(何と言うべきか)・・。 |
No.440 | 3点 | まほろ市の殺人 夏- 我孫子武丸 | 2021/03/23 14:04 |
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架空都市「まほろ市」お題シリーズ「夏の巻」 双子ネタを半ひねりしたミステリアスホラーファンタジー。犯人が出所して、主人公に再会し・・もう一ひねりしていれば・・ホラーファンタジックミステリになれた(かな)。 |
No.439 | 5点 | まほろ市の殺人 春- 倉知淳 | 2021/03/23 14:00 |
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架空都市「まほろ市」お題シリーズ「春の巻」 マンション7階ベランダからの人間消失、殺害時刻と目撃時刻の齟齬、二重の不可能トリック。高校生探偵によるトリック解明の解釈は・・.・嫌いじゃないぞ、こういうの。 |
No.438 | 7点 | カッティング・エッジ- ジェフリー・ディーヴァー | 2021/03/21 15:54 |
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ライムシリーズ第14弾。今回の敵はダイヤ原石へ異常に執着する「約束人」・・ダイヤのカット宝石化への憎悪から、指輪を手にする男女を襲撃する、イカレているが、どこか「人間臭い」猟奇殺人鬼。客観叙述と独白倒叙を交ぜて犯行が描写されるが、こんな単純な進行のまま終わるわけない、どこでどうツイストするんだ?思ってたら・・新エネルギー開発とエコ運動、地震兵器にメキシコ麻薬王ネタと続々出てきて、真の目的・影の主役(分かりやす過ぎ)、さらに裏の裏の目的・真の操り者へと多重に捻って発展して・・見事に収束。
※やっぱり最後に出てきた「あいつ」をここまで完璧なものにして、いつか来るであろう「ライム最後の事件」うまく完結できんのかチト心配。 |
No.437 | 5点 | ブラック・スクリーム- ジェフリー・ディーヴァー | 2021/03/19 13:32 |
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ライムシリーズ第13弾。今回の敵は、犠牲者の声で奏でるワルツを伴奏に、ジワジワと絞殺仕掛けを施すサイコ殺人鬼「作曲家」・・と読者を誘導しておいて、操り者による真のホワイ意図展開へとツイスト・・と思わせて、操り者Bによる別のホワイ企図割込みへと再ツイスト。本拠地ニューヨークからイタリア古都ナポリへ舞台を移し、何でナポリ?目先変え?観光オマケ?と思ったが、そのホワイ展開自体に密接に絡んだ場所なのだった。
※ところでディーヴァー、リベラルとは言え米国白人。難民・テロへのスタンスは、左翼でなく中道左派だった。 |
No.436 | 5点 | スティール・キス- ジェフリー・ディーヴァー | 2021/03/16 18:20 |
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ライムシリーズ第12弾。今回の敵は、家電重機に内在するコントローラーにハッキングし誤作動させ、凄惨な事故を生じさせる殺人鬼「民衆の守護者」。シリーズ中、ウォッチメーカー登場以前の分かり安い展開の倒叙や手記で、スンナリと犯人御用に・・・しかし、いくらなんでもあれでライムものが終わるわけなく、どんなツイスト待ってんのかな、と期待してたら、何か古典的な真犯人操りと叙述トリックおちが待っていた。
※それにしてもディーヴァー、「リベラル派」ての分かるが、「ネーダー風消費者運動」はチト未練かな。 |
No.435 | 6点 | スキン・コレクター- ジェフリー・ディーヴァー | 2021/03/13 20:04 |
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ライムシリーズ第11弾。今回の敵は、骨執着「ボーン・コレクター」ならぬ、皮への執着「スキン・コレクター」。
被害者に猛毒タトゥー施して惨殺する連続殺人鬼。猟奇行為それ自体のホワイ展開が、他の目的のハウへとツイストするのはいつものパターンたが、そのハウが別のハウへと横ずれし、最後は鮮やかにフーダニットへと収束する。 たーだ、「あいつ」による操りってオマケは、さすがにもうクドくて・・・ ※ところでディーヴァー、親「リベラル」ての分かるが、こんな露骨に「宗教右翼」おちょくって、身辺大丈夫か? |
No.434 | 5点 | フロスト始末- R・D・ウィングフィールド | 2021/03/07 20:31 |
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シリーズ第六弾にして最終話は、フロスト追放を目論む「フロスト殺し」の話。第一作よりの憎まれ役マレット署長は、めっきり精彩を失い、新たなる敵役は他署より上司として転勤してきた主任警部スキナー・・汗はかかず手柄だけ狙う露骨にヤナ奴。物語は相変わらず、軽重の多重犯罪が、立て続けに手に汗握る平行展開で進み、決して本格物のごとく一つ焦点に綺麗に収まる訳でないが、複数事件が微妙に重なり、最後には見事な全解決を見る。で、圧倒的に追い込まれたフロストの対敵役戦果は・・最後の一頁での驚くべき土俵際うっちゃり痛快勝利。
※あーあ、これでシリーズ終わっちゃった。 |
No.433 | 5点 | 五つの箱の死- カーター・ディクスン | 2021/03/01 23:01 |
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飲料毒混入の不可能トリック。①大容器に入った酒に毒は混入してなかった。②各グラスにも混入しておらず、③グラスに注がれる際にも混入は無かった。にも拘らず、酒を口にした全員に毒がまわった・・どうして?
昨日、4点採点したものの、書評に、このトリックはカーのオリジナルとあり、それ信じて、特許権の1点を加点。 ※仲間由紀恵「トリック」に、同じ物を口にした一族の一人だけが毒死するって話あったなあ。 |
No.432 | 3点 | パンチとジュディ- カーター・ディクスン | 2021/02/25 21:11 |
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「パンチとジュディ」ってドタバタ人形劇のことなのね。ドリフ大爆笑みたいなんかな。結婚前夜にH・M卿から怪しげな任務を命じられた元諜報員。殺人死体二体と偽札事件に出くわし、警官隊に追われて、女連れで逃げ惑うドタバタ劇を演じる羽目に。フー・ハウよりも、そもそも一体何が起こってたの?ホワットダニットだった。劇のカラクリ解体は鮮やかだが、早川文庫の二階堂黎人解説「カー初心者向け作品」てのには・・・大いに異議あり。 |
No.431 | 5点 | もの言えぬ証人- アガサ・クリスティー | 2021/02/21 21:28 |
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ヴィクトリア朝の生き残りの様な狷介だが情誼あふれる大富豪老女。莫大な遺産を巡る遺族達・・小賢しい甥、傲慢な姪、いじけた姪、温柔な外国人医師の婿、無垢で鈍重なメイド・・。事故死と判断された老女の怪死と書き換えられた遺言。配達の遅れたポアロへの事件解明依頼の手紙。最小限の容疑者で老女殺害フーダニットを引っ張るが、ちとズッコケるハウダニット小粒ネタ・・ヒモと燐光って・・のオマケが付く。ポワロのポロリ「スタイルズ荘」「アクロイド」等ネタバレおまけも付く。老女の友人の毒舌老婆の諧謔が実にいい。「当たり前の事でしょ。誰か死んだら必ずゴタゴタがあるに決まってますよ。死人が棺桶の中で冷え切らないうちに、生き残った連中はお互いに爪を立てて財産争いさ」 ※ところで、あの犬、ヘイスティングスに貰われるんだね。
てことで、アガサ・クリスティー30年代の長編ミステリ全17作の採点修了したので 私的「30年代アガサ・クリスティー」ベスト5(6) 第一位:「ポワロのクリスマス」 第二位:「シタフォードの秘密」 第三位:「メソポタミヤの殺人」 第四位:「そして誰もいなくなった」 第五位:「死との約束」 同五位:「ABC殺人事件」 |
No.430 | 7点 | メソポタミヤの殺人- アガサ・クリスティー | 2021/02/17 23:37 |
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舞台はイラク(首都名バグダッドの方が雰囲気出る)だが、建物の見取り図と容疑者達の行動時刻表がしっかりした「本格館もの」。犯人のアリバイトリックを構成する殺人トリックが単純明晰に決まり、「アクロイド殺し」等より、これとか「ポアロのクリスマス」「シタフォードの秘密」等の方が素晴らしいと思っている。
プライドとマゾヒズム、支配欲と異性愛、憎悪と挺身・・男女間の情念錯綜の物語が、ミステリの型式を粉砕してしまうことなく、むしろ構成しているところも見事。 |
No.429 | 4点 | なぜ、エヴァンズに頼まなかったのか?- アガサ・クリスティー | 2021/02/13 17:07 |
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ラスボスわかり安すぎ。にしても、植民地経営を約束された貴族令嬢と退役軍人青年なんて・・こっちこそ悪役設定にせんとねえ。 |