皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
していません。ご注意を!
レッドキングさん |
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平均点: 5.28点 | 書評数: 933件 |
No.633 | 4点 | ホッグズ・バックの怪事件- F・W・クロフツ | 2022/10/17 12:14 |
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クロフツ第十四作。寒村に隠遁した老医師と遠地の看護婦の、駆落ちを連想させる唐突な失踪。さらに一人の女の失踪が続き、過去の毒殺疑惑を巻込む連続殺人事件へと急転するが、容疑者達には結構なアリバイが・・・共犯者達のアリバイトリック・・略図付き、分単位時間表付きの、眩暈を誘うようなトリックは緻密だが、車の「手押し」てのは・・・ |
No.632 | 6点 | ユリ迷宮- 二階堂黎人 | 2022/10/12 21:35 |
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二階堂蘭子シリーズ第一短編集。と、言っても「劇薬」は、長に近い中編。
「ロシア館の謎」 雪上館の完全消失物。が、錯視トリックの類ではなく、麻耶雄嵩「夏と冬の奏鳴曲」並みの 啞然超絶トリック 6点。 「密室のユリ」 完全な密室物。わお、敢えてそのトリック使うか! 「皇帝のかぎ煙草入れ」風味の犯人指摘 のロジックが良い。7点。 「劇薬」 トランプゲームスコアからの毒殺事件の犯人指摘。4点。 |
No.631 | 7点 | 巨大幽霊マンモス事件- 二階堂黎人 | 2022/10/12 08:08 |
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二階堂蘭子シリーズ第十弾。 題名からして「双面獣」類の化け物話・・ではなく、ちゃんと本格復活!
首切り足跡トリックに、3点(満点)。※これ、足跡でなく完全密室にできたのに・・・そうしたら、 麻耶雄嵩「翼ある闇」のバカみすトリック完成形に成れた・・・ 雪館の皆殺し足跡トリックは、1点。 叙述トリックに、2点。※手記「…」中で虚偽を記すのはアウトだが、手記叙述者の主体を巧妙にずらすのは、 傑作「殉教カテリナ車輪」「首無の如き祟るもの」の如く、立派なトリック。 怪物トリックは、1点。※ドイル怪獣物や「双面獣」の妙ちくりんなSFバケモノ話よりミステリしてる。 ※それにしても、これ、一部に、短編「ロシア館の謎」を入れて、二部で、シャム多重児の首無殺人を、密室トリックに作りこむことに特化していれば、「人狼城」に次ぐ傑作になれたんじゃないか・・・実に残念 |
No.630 | 6点 | モース警部、最大の事件- コリン・デクスター | 2022/10/08 13:32 |
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デクスター短編集。 長さからしても、本格より小噺・ファルス・コントの匂いがして・・・
「エヴァンズ、初級ドイツ語を試みる」 超ルパン級脱獄名人のテク噺し。6点 「ドードーは死んだ」 半世紀昔の幻の女を求めて・・知らぬが華とも言うが・・6点 「世間の奴らは騙されやすい」 懐かしき映画「スティング」思わせるカモり譚。5点 「近所の見張り」 警部・博士・怪盗、三つ巴の「赤毛連盟」合戦 7点 「花婿は消えた」 ドイル「(花婿の)正体」の変奏曲「女の正体」に、二重ツイスト楽章が追加され・・8点 「内幕の物語」 夫・妻・夫の愛人・妻の愛人、作中作をはめた二重騙し絵パズルが見事。8点 「偽物」 堀の中でしか生きられない囚人のドンデン返し小噺。5点 「最後の電話」 教授、妻の学者、高級娼婦の愛人・・殺人ドンデン(でなくトントン)返し劇。5点 その他、「信頼できる警察」「モンティの拳銃」及び表題作は・・うーん、採点対象外。 |
No.629 | 6点 | 死の鉄路- F・W・クロフツ | 2022/10/05 15:11 |
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クロフツ第十三作。海沿い鉄道作業現場での連続不審死事件。作業量の嵩増し偽装「社会派」風ネタ巻き込んで、地味なアリバイトリックで収束する。が、クロフツでは、この作まではなかった「意外な真犯人」感があってなかなかにGood。あと、「製材所の秘密」「紫色の鎌」よりも不正行為の費用対効果感がランクアップしててよいネ。 |
No.628 | 6点 | 神の街の殺人- トマス・H・クック | 2022/10/04 08:32 |
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ユタ州ソルトレイクシティ。モルモン教と呼ばれる教団・・カルトと見なすにはメジャーすぎるが、耶蘇教一宗派と言うには異端すぎる教団が、残酷な弾圧と過酷な逃亡の末にたどり着いた約束の土地。驚異的な労苦の末に打ち建てた、「美しく穢れなき」街。そこでは起こるはずのない、起きてはならない血に汚れた連続殺人が起きて・・。黒人娼婦、老人記者、教団幹部、モルモン教史学者・・被害者達の「環」を追うのは、ニューヨークから移住して来た、心は既に朽ち果てつつある警官。荒廃した東部の大都会も、美しき南西部の神の街も、彼にとっては、いずれも、それぞれに冷酷な絶望の光景に過ぎなかった。 |
No.627 | 7点 | 二つの密室- F・W・クロフツ | 2022/09/29 17:20 |
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クロフツ第十二作。どーせ、クロフツ「密室」なんて、ドイル・チェスタトンの類レベルだろ、て高をくくってたら・・あらら、ちゃーんと密室してて、しかも「黄色い部屋」なんかより、面白いじゃん! (^.^) |
No.626 | 5点 | 覇王の死- 二階堂黎人 | 2022/09/27 20:02 |
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二階堂蘭子シリーズ第九弾。かつvs魔王ラビリンス最終編
首くくり密室に、1点。(3点満点で採点) 少女射殺密室に、2.5点。(新機軸ありとの自賛付き) 人間はやにえトリック(なんちゅう島荘)は、0点。 村ごとホラー幻覚ネタ明かしに、1点。(狂犬病こええ) で、4.5点だが、ラビリンス編決着で、0.5点オマケ付けちゃう。双面獣と女ラビリンス、もっと見たかったなあ・・ |
No.625 | 6点 | 鹿の死んだ夜- トマス・H・クック | 2022/09/24 19:28 |
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クック処女作。定年を前に妻を亡くし、弁護士の息子一家とのワザとらしい親交ごっこと、心底の静謐な絶望に辛うじて耐えて生きるアラシクス(<60)のニューヨーク刑事。任された事件の被害者は、体中57ヶ所を斬られ惨殺された二頭の鹿と、同じく57ヶ所を斬られ惨殺されたレズビアンのカップル。サイコホラーの如きWhoダニット物語が・・不思議な事に・・リアリティを持った真相解明と、変に説得力ある苦い結末で終わる。ウディ・アレンにビル・クリントン、ドナルド・トランプを加味した如きキャラが、如何にも分かり安いラスボス風味で登場。 |
No.624 | 4点 | 英仏海峡の謎- F・W・クロフツ | 2022/09/21 21:40 |
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クロフツ第十一作。英仏海峡に漂うヨットには屍体が二体。大証券会社の倒産と役員達の逃亡劇が殺人事件へ変貌し、殺人者の時間アリバイ不可能トリックが、シンプルかつリアルに解明。※タイトル、「小指の曲った男」てのどお? |
No.623 | 7点 | 夜 訪ねてきた女- トマス・H・クック | 2022/09/19 21:14 |
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フランクシリーズ第三弾。第一弾で南部警官だったフランク、二でニューヨークへ引越し転職し、この三ではすっかり薄汚れ私立探偵が板につき、昼は、富豪よりの依頼仕事で挙動不審の妻の尾行、夜は自身の情念から、ジプシー女殺人事件の真相捜し。二つの事件は重なることなく、それぞれに真相解明へ・・が、出来過ぎた決着にも、「タクシードライバー」狂気エンドともならず、そこはトマス・H・クック、苦い結末かな・・と思わせといて・・ウァっと驚く技巧的な連結決着。思わずウーンと唸って拍手パチパチ・・
同じ警官あがりのニューヨーク探偵、ジェフリー・ディーヴァーのリンカーン・ライム・・住まう部屋の窓外に居を構えるのは、カッコいいハヤブサ一家。一方のフランク、事務所兼用の半地下部屋の外の階段下に寝てるのは、悪臭漂うホームレス老婆。フランクと一言の交流もなかった老婆の突然の死が、一番痛かったりする・・・ |
No.622 | 4点 | 双面獣事件- 二階堂黎人 | 2022/09/16 18:07 |
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二階堂蘭子シリーズ第八弾。クマゴリラの如き巨躯に、二つの頭と四本の腕、人間を引き千切る怪力を持ち、眼からは怪光、口から毒ガスを放つ怪物、双面獣。そしてドクロまんま風貌の髑髏人間たち、美女名探偵vs美女名悪漢。まんま化け物小説・・作者十八番の不可能・密室は一切抜き(「かがくてき」ネタ明かしあるけどねぇ)の・・SFバケモノ小説。
長くてアホらしくて、愉しいな。点数、オマケ付けちゃう!(^^♪ |
No.621 | 6点 | 過去を失くした女- トマス・H・クック | 2022/09/12 19:41 |
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フランクシリーズ第二弾。ニューヨークのしがない私立探偵に転身した元南部やさぐれ刑事。請け負った依頼は、殺害されたファッション業界老嬢の遺族捜し。極貧の移民ユダヤ少女が、縫製女工から労働運動の女神となり、謎の二十年の歳月の後に、手首切断惨殺死体に変じるまでの轍。世界恐慌30年代の苛烈な米国労働争議。縫製工場の娘達の過酷な労働環境が、わが「女工哀史」「あゝ野麦峠」に微妙に重なり、物語は、清張・「火車」・「白夜行」にホンワリかすり・・ |
No.620 | 5点 | マギル卿最後の旅- F・W・クロフツ | 2022/09/09 21:56 |
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クロフツ第十作。老資産家の失踪殺害事件。共犯者達の役割分担と列車・船・車を巧みに機能させたカラクリ仕掛け。カラクリ解剖分解は見事で、トラップ逮捕劇もなかなか。が、カラクリ現象が、「不可能」でも「不思議」でもなく、殺しの時間・場所ゴマカシによる冤罪擦り付けってのがチト淋しく・・そりゃ、クロフツにカーを期待するのもなぁ |
No.619 | 7点 | 魔術王事件- 二階堂黎人 | 2022/09/06 21:08 |
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二階堂蘭子シリーズ第七弾。 これも不可能トリックひとつにつき、3点満点加点法で・・
対面部屋消失トリックに、1点。 楽屋密室トリックに、2.5点。 石室トリックAに、2.5点(勉強になりました) 石室トリックBに、-1点(この手の幾何学、ツマンねぇ) 病院密室トリックに、3点満点(模範的やね) 雪足跡ネタに、0点。 少年消失トリック、3点満点だが・・せっかくのGood idea、効果が全く機能せず-2(>_<)で、1点。 宝石すり替えトリックに、0点、で、合計、9点。 トリックが多彩・賑やかで実に楽しい。が、どれも効果が薄い。散らし過ぎなのかな。 ので、-2点、結局、7点。 不可能トリックは、ストーリーをその内にネジ入れてしまう程の、強烈な渦巻きであってほしく。特に、少年屍体の消失トリック、「妖魔の森の家」+「チェスタトン」の複合技でナイスなのに、話に活かせず、不思議効果0に近く、残念。 |
No.618 | 5点 | だれも知らない女- トマス・H・クック | 2022/09/03 10:23 |
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フランクシリーズ第一弾。何不自由ない環境のハイクラス美少女の謎の死。事件を追い求める虚無的な刑事と、描かれて行く米国白人男女の静かなる絶望感・・「信仰深くて楽天的、能天気」に見える米国人の心の底に潜む静寂なる虚無。
※そう言えば、「The Sound of Silence」は、「暗い日曜日」の欧州や、「ラバー・ソウル」Beatlesの英国ではなく、米国産だった。 |
No.617 | 7点 | 兇人邸の殺人- 今村昌弘 | 2022/08/30 21:36 |
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女学生探偵:比留(ヒル!)子シリーズ第三弾。「我らの敵はジェイソンであって、モリアーティでない・・」
第一殺人の絞殺者Whoロジックに、1点・・加点法で採点 第二殺人のアリバイ時間ロジック及びSFコードトリックに、2点。 紛失キー取返しHowダニット(面白い!)に、1点。 建物構造設定(よくぞこんなの)に、2点。 SFホラーWhoダニット倒叙に、1点。・・で、合計、7点。 ※この作者のみならず、女学生ホームズに隷属する男子学生ワトスンて、どうしても「この手」の匂いを振り撒くのね。 ※既刊三作中、読んでて一番ワクワクさせられた。次は来年かな、楽しみだ。(^.^) |
No.616 | 5点 | ミステリの女王の冒険- エラリイ・クイーン | 2022/08/30 07:00 |
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クイーン自身が脚本を書いたTVドラマシナリオ集かと思ったら、ここの「エラリー・クイーン」て、「さいとう・たかお」みたくプロジェクト集団の標章なのね。もともとプロト「クイーン」自体が「藤子不二雄」とは言え、原案者でさえない となると・・なんか拍子抜けやね。 |
No.615 | 3点 | 殺人をもう一度- アガサ・クリスティー | 2022/08/28 19:58 |
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人間存在の本質は実存(≒自由)だから、トリックやロジックのミステリコードで拘束されない限り、誰にも殺人者となる可能性があり、どんな物語も在り得る。あとは、その物語が各読者の趣味に合うか否かだけで・・(自分は否やね)
ところで「五匹の子豚」、真犯人は記憶にあるままだが、他のキャラ達、こんなだったっけ?・・読み返そかな |
No.614 | 5点 | 悪魔のラビリンス- 二階堂黎人 | 2022/08/27 19:45 |
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二階堂蘭子シリーズ長編第六弾・・・といっても、一部と二部は別話で、実質中編が二作やね。
第一部の死体入代り密室は、「入代り」の方なかなかだが、肝心の「密室」がズッコケて、3点満点で2点。 第二部の父子無理心中密室の方は、模範的な完全密室で3点。・・で、全体合計で5点。 ※ラビリンス2図の付録付き。 ※その「密室才能」認めるの全然やぶさかでないが、相変わらずガキが傷口見せびらかすみたいな露悪グロ描写好きな作家やねえ・・・そこがまたクサヤ風味いうかシュールストレミング風味いうか・・・ |