皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
していません。ご注意を!
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レッドキングさん |
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| 平均点: 5.29点 | 書評数: 1014件 |
| No.714 | 5点 | ハーモニー- 伊藤計劃 | 2023/06/28 06:36 |
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| 近未来ユートピア=ディストピアのSF。疫病と核戦争の「大災禍」以後、人類は、生府(政府でなく)による完全なる衛生と福祉と慈愛の世界を生きていた。そこは、ブッダ言うところの四苦・生老病死・のうち、「病」がほぼ駆逐され、「躰」のみならず「心」の病すらも、完全に予防・治療・ケアされるシステム完備のユートピア世界。だが、ブッダ四苦の「生」の苦悩の解決には、意志・意識の軋轢を除去せねばならず、「生の苦悩」=「意識の軋轢」の駆除は、結果、意識そのものの消失を意味した。そんなユートピア世界をディストピアとして拒否し、「私」の自由を証しする唯一の行為:自殺を決行した女子高生と、彼女の軌跡を追うヒロイン霧慧(キリエ)トァン。これは反「幼年期の終わり」ミステリとして評価。
※そういえば、「悪霊」のキリーロフ(キリエで思い出した)も、自己が、「神人」=自由である事を証明するだけの為に自殺しちゃったなぁ。 |
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| No.713 | 5点 | 幼年期の終わり- アーサー・C・クラーク | 2023/06/28 06:32 |
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| 現実世界を、見ることなき上位次元への憧憬に置き去りにする超進化論SF。壮大にしてタイトなWhyWhatミステリとして評価。※超越的異星人Overlord達の風貌が、ヤギづら悪魔って設定が良く。 | |||
| No.712 | 7点 | 混沌の王- ポール・アルテ | 2023/06/24 21:34 |
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| メインは過去の密室殺人で、サブに現在進行の不可思議な雪上殺人が付く。メインの密室・・Locked Room3/4にして雪密室1/4・・は4/4完全密室(しかも凶器消失付き)にもできたのに、あえて、1/4を「雪足跡不可能」に開け放った所が、Très Merveilleux !(^^)!
サブの雪原不可能トリック及びオマケ諸事件のバカミス度、もうバカ超えてアホ (;O;)・・・素晴らしい! |
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| No.711 | 5点 | デス・コレクターズ- ジャック・カーリイ | 2023/06/21 23:09 |
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| 作者第二作。タイトルからして、ディーヴァー系?思わせて、あんなアクロバティックツイストはないWho・Whyワン落ちミステリで、むしろ、楽しいエルロイ、スマートなフロスト。スター殺人鬼達の遺品・関連品を、モネセザンヌの如く高価買取愛玩する「死の蒐集家」達と、彼らを逆手に取って操る殺人犯。マンソン麻原カリスマを連想させるカルト犯罪グループの、甦りの如き連続殺人事件を求めて、主役刑事・相棒・ファンキーな女ジャーナリスト・コレクター老女・やなヤツ上官・サイコお兄さんetc・・劇画にしたら、まぁ、ジツに絵になりそなキャラ達・・のミステリ活劇。
「人生はあまりに短いが、一日はあまりにも長すぎる」・・うーん、まさしく・・ |
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| No.710 | 3点 | フレンチ警部の多忙な休暇- F・W・クロフツ | 2023/06/14 12:17 |
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| クロフツ第二十三作。豪華賭博船を運営するチーム内の撲殺事件、というより、殺人事件オマケ付きの英国沿海クルージング小説。フレンチの奥さんを・・器量は悪いが人の好さそうな白髪交じりの、て・・シオ描写の作者・(*_*; | |||
| No.709 | 3点 | 復讐の協奏曲- 中山七里 | 2023/06/11 23:17 |
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| 元「殺人鬼」弁護士シリーズ第五弾。二作目以降は、主役弁護士と因縁ある人物・・被害者遺族・少年院恩師・実母・・が、殺人罪被告として依頼人となる法廷物シリーズ。今回の依頼人は、シリーズの癒しキャラの事務員の女で、交際中の男が刺殺され、凶器のナイフには女の指紋のみが残されていた。如何にもな、女の幼児期の叙述で始まり・・あんな様なパターンか・もう一捻りか・いやウラ行ってその逆かぁ・・いろいろ思わせて、結局、指紋トリックのワンオペミステリ。
※作者、何か「リンリ」の類を見せたいの分るが、ハードボイルド強面キャラが、偽悪的強がりタフガイを経て、徐々にお茶目ナイスガイへ劣化して行くざまは、見たくないな。 |
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| No.708 | 7点 | アミダサマ- 沼田まほかる | 2023/06/09 17:03 |
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| 主婦であり経営者であり僧侶 !でもあった作者。仏教救済説話とサイコホラーと吐き気を催すほど極限のクズ行為・真情の小説・・宮沢賢治と女流イヤミスと坂口安吾中上健次・・異次元を貫く超ヒモの如き「アミダサマの声」の小説。
「ミステリ」ではないが、「Mystery=神秘」の讃歌譚として大いにオマケ評価。 |
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| No.707 | 7点 | 人間の顔は食べづらい- 白井智之 | 2023/06/05 23:50 |
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| 面白かった。今まで「佐藤友哉舞城王太郎の類の作家」とヘンケン持って読まないで損した。「クローン人間」設定とグロ展開を煙幕にした、見事なる「生ける屍の死」「二の悲劇」「殺戮にいたる病」イイとこ取り。
(道尾秀介がこれ褒めたっての良く分かる・・彼自身、Brahms・Beatlesなみの良いとこ取り天才だからね) |
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| No.706 | 4点 | 智天使の不思議- 二階堂黎人 | 2023/06/04 07:34 |
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| 水乃サトル不思議シリーズ第四弾。
操り者の少女漫画家とシモベの男。実行者視点で、三十年を隔てた二つの殺人アリバイトリック・・一つは密室付き、もう一つは少々話が立て込んでる・・が描かれる、ま、倒叙の「白夜行」ね。普通の叙述展開だったら3点。が、倒叙展開面白く、乱歩風かつ「戦前〇〇者(今時チトあぶないか)物」風の外連味もミワク的なので1点オマケ。 |
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| No.705 | 6点 | ねじまき少女- パオロ・バチガルピ | 2023/06/03 05:45 |
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| 環境(何とCIAの如き強権「環境省」)・食料(カロリー企業!)・エネルギー(何とゼンマイ!が強動力)・・三拍子揃って危機の近未来世界。 「バンコク」・・あのバンコクなんだろなぁ・・を舞台に展開する、ペシミスティックでエロティックな、サイバーパンクSF活劇。「ブレードランナー」由来のジャパン(日本でなく)風味・・寂しげだが絶望にまでは至らせない湿気と諦念・・も、ほのかに心地よく、点数、大いにオマケ。 ※文庫本上下巻を横に並べた表紙絵が良い。 | |||
| No.704 | 5点 | ローラ・フェイとの最後の会話- トマス・H・クック | 2023/06/01 21:39 |
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| かつて神童と目され、偉大な歴史家となる将来を夢見たハーバード大卒の男。齢四十を前にした実像は、著作はパっとせず講義にも人気のない、離婚歴のある冴えない学者に過ぎなかった。父親の店の店員だった凡庸な見てくれの中年女との数時間の「対話」を通し、今は亡き不器用な田舎者だった両親と、女と、女の夫との間に起きた事件が回想され、男の生涯の痛い「真実」が焙り出される・・これが、クックのいつもの奴より地味に、でも、イタいんだなぁ(;O;)。
それでも、「人生の最後の希望は、己の犯した全ての誤りが、ふいになすべき良きことの全てを教えてくれること」てな救済エンドへ。最後の"Happy"割愛すれば、「惑星ソラリス」や「父、帰る」等、暗く美しいロシア映画。 一言で言えば、ミステリ妙味を犠牲にした・・もはや読者を釣るテクに過ぎず・・人生の「苦い文学」。 |
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| No.703 | 5点 | 百番目の男- ジャック・カーリイ | 2023/05/26 02:09 |
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| "軽口のハードボイルド"風刑事が主役のサイコもの。エルロイよりはライトで、ディーヴァーより全然シンプル。連続首無し殺人の被害者は、いずれもマッチョ男で、殺害順に屍体のマッスル度は上がり、ペニス付近に意味不明な文言が刻まれて・・意味を追わずカナ表記を音読しよう(訳者、工夫したなァ)・・。 相棒刑事・アル中の女検死医・憎まれ役上官等とのファンキー・ダーティなやり取り楽しく、ラストのサスペンス緊迫展開もよし。犯人解明後のサイコ描写ナカナカだが、真犯人判明の驚きがチト物足らず・・え、それって誰だっけ?となったが・・読み返したらチャンと初っ端近くから出てた・・。ドクターレクター役の殺人鬼サイコお兄さん、Very goo・・おっと、もとい・・badよ。 | |||
| No.702 | 5点 | 長恨歌 不夜城完結編- 馳星周 | 2023/05/22 21:47 |
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| 日台ハーフの主人公:劉健一物語の第三部にして完結編。第一部:「不夜城」の "傷だらけのダークヒーロー"が、第二部:「鎮魂歌」で "操りのアンチヒーロー"に反転し、この第三部:「長恨歌」では "暗黒のラスボス悪魔"の容貌さえ帯びる。
貧しき大地より経済先進国たる我が歌舞伎町に流れ込んだ、中国マフィアの凄惨な抗争・・は遠く前世紀の光景となり、今や我が国に十倍する人口相当の国力を蓄えつつある中国。それでも故郷からあぶれ、麻薬ビジネスを糧に、この異郷の地でネズミの様に棲息する中国プチマフィア達。歌舞伎町を舞台に日本ヤクザも絡んだグループ間抗争が、主人公:劉健一の戯画の様な脱中国チンピラをワトスン語り役に展開し、いったい、誰が何を目論んで何を起こしているのかの、Who・Why・Whatミステリが完結する。 |
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| No.701 | 7点 | あやかしの裏通り- ポール・アルテ | 2023/05/18 22:59 |
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| 迷い込んだ裏路地。奇怪な男女と謎の建物。室内から窓越しに見える幻の光景。逃走し、かえり見れば・・路地自体が消えていた・・・。ドイル・カー風怪奇叙景の合理的解決で、フレンチ風に洗練された(島荘だとウルトラ野暮になる)Who・Why・Whatミステリ調理が完成、見事。 | |||
| No.700 | 4点 | 稀覯人の不思議- 二階堂黎人 | 2023/05/15 22:03 |
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| 水乃サトル不思議シリーズ第三弾。手塚治虫マニア団体で起きた稀覯本を巡る密室殺人。メインの「家と部屋」二重密室トリックは、イマイチな短編ネタだが、手塚治虫の稀覯・希少本ウンチク(なかなか面白い)と、第二事件の「意外な」Who・Whyネタが付いて、長編として読ませてくれる。(手塚漫画に関心ない人には・・退屈かなぁ)
※コバルトってアトムの兄貴じゃなかったっけ?作者の勘違いじゃね?・・思ったら、漫画の方では弟で、あってた。 |
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| No.699 | 7点 | ナイチンゲールの屍衣- P・D・ジェイムズ | 2023/05/14 21:46 |
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| おぞましい因縁のある、厳めしく陰鬱な総合病院で起きた看護婦連続毒死事件。他殺?自殺?恐喝?情事?金銭目的? 婦長から看護学生に至る容疑者十数人のみならず、ほんの脇役・・死亡した看護婦をはらませた作家志望青年や、恨みある警官を頭韻罵倒する女中、息子の死亡保険金もダンス費用につぎ込むダンス狂い老女・・までもの描写が見事。
驚きのエンドは、ミステリとしては捻り無さすぎにして堂々たる文学的王道の真犯人Who、ミステリとして「難解」過ぎにして素晴らしき文学的な、Why。ミステリとして4点・文学として8点。間とってオマケ付けて7点 ※つくづく、英国・・独逸でなく・・の女って、怖そうだなア・・実物は知らんが。 |
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| No.698 | 6点 | 友が消えた夏- 門前典之 | 2023/05/07 23:31 |
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| 門前典之第八弾。「閉ざされた館・男女学生・密室・連続殺人」と、「三十路女タクシー誘拐事件」、二つの事件が、同じ日付で交互叙述される。あえて同日付で別エピソード描かれりゃあ、どうしても、因果捜し・叙述トリック注意、となり、結果、・・麻耶雄嵩等の人物叙述トリックと違って・・キチンとミステリ意味をなしてた。
二つの密室トリックは、最初のペケ(~_~)だが、二番目のはグッド(^.^)よ。 終盤の、女流イヤミス系の臭いは、チトいただけないが。 ※「携帯電話」「椎名林檎」「安室奈美恵」・・・「イニシエーションラブ」思い出すなぁ。 |
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| No.697 | 5点 | フレンチ警部と毒蛇の謎- F・W・クロフツ | 2023/05/06 20:04 |
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| クロフツ第二十二作。機械毒蛇トリックともかく、アリバイ構成の方がなあ。共犯にして倒叙主役を、クロフツにしては珍しや心象掘り下げして、ちょびっと「罪と罰」させてて、点数オマケ。 ※にしても、あれで死刑てのは・・・ | |||
| No.696 | 6点 | invert II 覗き窓の死角- 相沢沙呼 | 2023/05/01 21:49 |
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| 城塚翡翠シリーズ第三弾。中長編2作の倒叙作組み合わせ。
「正者の言伝」侵入した別荘で刺殺犯となる少年の倒叙・からのドンデン返し。履物とバッグと雨のロジックに6点。 「覗き窓の死角」探偵を証人に利用した殺人アリバイトリックの解明と紛失宝飾品からの犯人特定。7点。 超美女にして「てへぺろこっつんさん」ブリっ子キャラの探偵ヒロイン。コロンボ「あと、一つだけ・」、古畑「ん~・・」同様、犯人サイドから倒叙されると、基本、ヒールにして鬼の嚇かし役になってしまい、酉乃初・マツリカに比べると、ちといただけないなあ、ヒスイちゃん。「殺人は絶対だめですぅ」倫理キャラ設定が失敗っだったんじゃないか。ま、好みの問題だけどネ。 |
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| No.695 | 3点 | 真夜中の密室- ジェフリー・ディーヴァー | 2023/04/26 21:00 |
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| ライムシリーズ第15弾。今回の敵は、どんな錠前も簡単に解錠し、女の部屋に侵入するピッキング達人。ディーヴァーだもの、当然に操り真犯人ツイスト来るけど、分かり易くあっけないネタなんだなァ、これが。さすがにこれでは弱いと自覚したのか、vs「ウクライナから来た暗黒ボス」ネタ付くんだが・・そっちのが面白い位なんだが・・二つのネタ、絡まないんだなぁ、これが。 | |||