海外/国内ミステリ小説の投稿型書評サイト
皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止 していません。ご注意を!

レッドキングさん
平均点: 5.29点 書評数: 1014件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.774 7点 名探偵のはらわた- 白井智之 2023/11/30 09:55
ラストで突然に名探偵へ飛翔する助手:原田亘(はらだわたる≒はらわた)が主役の四中短編集。「阿部定事件」「津山三十人殺し」「帝銀事件」等、日本犯罪史上のレジェンド達の「魔界転生(!)」トンデモ設定に、目も眩むばかりに豊富なロジックの百花繚乱・・よくぞここまで・・。「阿部定事件」「津山事件」の史実を、フィクションで再構築して新事件に繋げる手管も見事。出て来るキャラはいつも同じ・・人物造形の抽斗小さい・・だけどね。
(※表紙画は、三話の「チェシャ」が、四話の猟銃を持ったコンセプトと思われ。)

No.773 5点 ガラス箱の蟻- ピーター・ディキンスン 2023/11/28 22:38
ピーター・ディキンスン処女作。ロンドンに集団移住し半ば耶蘇教に改宗したニューギニアの架空種族。酋長が殺され、SF設定でないまでも異世界コードミステリ?と振っといて、現世的なWho・Why落ちだった。同じWhyなのに、「エンジェル家の殺人」の方は何か「面映ゆかった」が、こっちは「腑に落ちた」。邦題の「異生物を観察する支配者」センス以上に、原題(Skin Deep)の醸し出す「どうしようもない宿命感」が痛い。にしても、ニューギニアの原住民もアフリカ系も一緒くたに「黒人」と呼び下す何と「らじかる」な言語センス・・半世紀前といえ・・

No.772 3点 二重の悲劇- F・W・クロフツ 2023/11/27 22:21
クロフツ第二十八作。狷介な資産家の遺産相続に絡んだ、身代りアリバイトリック付き連続殺人。序盤1/3は倒叙ノワール、中盤にフレンチ「正」叙本格に転回し、終盤は交互カットバックサスペンス。安定のオモシロ(つまらな)さは流石。

No.771 5点 エンジェル家の殺人- ロジャー・スカーレット 2023/11/22 22:01
乱歩「三角館の恐怖」の元ネタと言うより、ほぼ原作(「幽鬼の塔」の場合と違って)。見どころは二点。エレベーター刺殺トリック・・島荘「斜め屋敷」より精確度感高いが、カー「仮面劇場」と同様に凶器有効感に乏しく(殺せる?)・・と、Whyダニット・・憧れ女へのストーカーならまだしも、あの執着は、ちとピンとこず・・の二点。面白いが、乱歩の読んどきゃ十分だな、逆でもいいけど。

No.770 6点 サン・フォリアン寺院の首吊人- ジョルジュ・シムノン 2023/11/20 22:10
意味不明の自殺と大量の首吊り画。怪奇にして貧寒、神秘にして俗臭の謎を追うメーグレ(メグレでなく)警部。行き着いたのは、浪漫的ニヒリスト、ボヘミアン気どりだった嘗ての若者達。残酷な青春の支配から卒業できなかった彼らの、「超俗的行為」の明かされた真相は・・・「ところが、ただの子供だったのさ」 ※「幽鬼の塔」の方は、「青春」ではなく「カルト」だったな。でも、同じ様なもんか、「カルト」と「青春」。それを喝破した「夏と冬の奏鳴曲」は見事だった。

No.769 6点 ナイトホークス- マイクル・コナリー 2023/11/17 07:48
ボッシュシリーズその一。ロサンゼルス警察の一匹狼刑事:Hieronymus Bosch・・ルネサンス期の有名なシュール怪奇コミカル画家と同姓同名・・が主役のハードボイルド(?) マーロウ直系筋なんだろが、第一人称語りでないのがよい(中高年男の、上から目線グダグダ長語りはウザく・・) 訳題「ナイトホークス」にして原題「The Black Echo=暗闇のこだま」で両方とも意味あるが、「トンネル鼠」「闇よ鼠たちの為に」てのもよく。相棒のFBI女のセリフを、「~だったわ ~なのよ」等、女言葉に訳したのは失敗・・あの女には「~だったんだ ~なんだ」と喋らせねば。ドンデン返し・・見えすいてるけど・・面白かった。愉しみなシリーズが一つできた(^o^) ので、初回サービスで点数オマケしちゃう。

No.768 6点 わが職業は死- P・D・ジェイムズ 2023/11/14 11:53
犯罪証拠を検査判定する研究所を舞台にした殺人事件。始めから、Whom:被害者が誰になるかは明らかで、容疑者達に如何に納得できる動機があるか詳述されて行く。固陋・頑迷・小心な科学者達より、女達のキャラ・・猟色家の美女、愛されて育った愛すべき娘、愛されずに育った狷介な女、人好きしない女流作家、病的な少女(この娘の将来を憂える)、哀れっぽい街娼・・女達のキャラ描写がユニーク。秘儀的情事・兄妹相姦・レズビアン等の爛熟した珍味を醸しながらも、直球・・「捻り」さえストレート・・で進行するWhoダニットミステリ。

No.767 5点 赤朽葉家の伝説- 桜庭一樹 2023/11/11 06:10
「いつか採点しよ思ったまま数年過ぎた」作品その六。山陰地方を舞台にした、三部構成、女三代クロニカル。ミステリとしては、巻頭と終末の「人体ストップ映像」ドンデン返しに尽きるてのが、逆に凄い。※これも、オマケ点数。

No.766 6点 私の男- 桜庭一樹 2023/11/11 06:06
「いつか採点しよ思ったまま数年過ぎた」作品その五。生ぬるくかつ果てまで行っちゃったダークな男女・・何気に真の父娘(オトろしかぁ)なのね・・のピカレスク。時系列を逆に遡ったところが、ミステリ。※点数オマケ。

No.765 4点 幻の女- ウィリアム・アイリッシュ 2023/11/11 06:01
「いつか採点しよ思ったまま数年過ぎた」作品その四。「青い鳥はいつも傍にいた」ならぬ「黒い悪魔はすぐ隣にいた」落ちサスペンス。オープニング ” 夜は若く、彼も若かった(シビれるぅ)・・”と、女が被っていたカボチャ帽子のインパクトだけに、この点数あげちゃう。ミステリとしては、うーん・・・

No.764 5点 冒険の国- 桐野夏生 2023/11/09 06:30
「幻の処女作」とな (別ネームでロマンス小説だかがあるらしいが)。「第三の新人」(吉行淳之介安岡章太郎でなく島尾敏雄庄野潤三)の家庭危機小説や向田邦子ドラマ、後の沼田まほかる等と同臭の、一見、平穏な日常情景に潜む緊迫と狂気。本格では・・いや、そもそもミステリでさえないかもしれないが、点数オマケにあげちゃう、「この手」のに甘いんで。

No.763 5点 キリング・ゲーム- ジャック・カーリイ 2023/11/07 23:17
「刑事が追い求めた殺人鬼も、刑事を追い求めていた・・」 「ロカールの交換法則」「メンヘラ倒叙と驚きの操り・・」ジェフリー・ディーヴァー既視感、+フロストシリーズ十八番の vsやな奴上官バトル。(犯人の真の標的は上官だったんだよーん、てバラして、憎まれ役上官に赤っ恥かかせた方が、スッキリ面白かったと思うが・・)
※この作家の翻訳、滞っているねぇ。じゃんじゃん訳して出版してほしく。

No.762 6点 家蝿とカナリア- ヘレン・マクロイ 2023/11/01 22:28
ヘレン・マクロイ第五作。原題「Cue for Murder:殺しの合図」よりも、和題「家蝿とカナリア」の方が美的やね。
籠から放たれた小鳥が心理的な、凶器の柄に纏いつくハエが生理的な、犯人Whoの「証拠」てな結論を、初っ端に宣告するところがNice。糖尿病ネタが巧妙かつ鮮やかに伏線プレゼンされてたら、7点付けても良かった。

No.761 7点 少女を殺す100の方法- 白井智之 2023/10/28 22:17
5編から成る中短編集。全作に、「サトコ」と言う名の左半身赤痣(あしゅら男爵!)の女が登場するが、連作ではない。
    「少女教室」 クラス21人中20人惨殺から犯人1人を特定する、麻耶雄嵩ばり「超」ロジック。
    「少女ミキサー」 乙一「SevenRooms」にアニメ「Blood-C」をソースした、おぞましくもロジカルなサスペンス
    「「少女」殺人事件」 「超」ロジックは面白いが、「ノックス十戒」全部掲げとかなきゃ、「ふぇあ」でないじゃん。
    「少女ビデオ」 目を背け吐き気を催す、グロ・残虐・ヘド・・吉本隆明(古いか)なら「倫理」と表現した程の
           「果てまで行っちゃった」描写。ここまで行くと、過激表現と言う以前に、作者の心底に澱んだ
           何か、としか言いよう無く、それが・・信じがたいことに・・「救い」ある未来と両立する。
    「少女が街に降ってくる」 出ました、十八番のトンデモ「SF」設定・・真相解明、バタバタ立て込み過ぎだが。
文庫本の解説では、1編につき20人殺され×5編でタイトルの「100」だと・・ん?そーか?  全体で(平均でなく) 7点

No.760 2点 殺戮の狂詩曲- 中山七里 2023/10/25 23:06
御子柴礼司シリーズ第六弾。今回の依頼人は、老人施設入居者9人を惨殺した介護士。かたや、幼女バラバラ殺人犯14歳元少年あがり弁護士、こなた、悪びれず屈託もなく老人殺戮の「正義」を語る被告。まんま、「神戸少年生首事件」と「相模原身障者殺戮事件」がモデル。有罪明白で死刑判決以外あり得ない事件。何でこんな分かり切った裁判の弁護を引受けたの?Why? がミステリ主幹のはずが、「操り真犯人」落ち・・これが見え透いたネタで・・にシンプルに接ぎ木される。

No.759 6点 吸血鬼の仮面- ポール・アルテ 2023/10/24 00:25
ドラキュラ・青髭・カーミラ・幽霊といったホラーの定石に、密室殺人や降霊会・・ディクスン・カー十八番を重ね、そこへ、カー定番ベタドタLOVEろまん混ぜて、カー必殺「鏡トリック」サービスまでも付けちゃって・・・

No.758 4点 死体をどうぞ- ドロシー・L・セイヤーズ 2023/10/20 09:47
ドロシー・セイヤーズ第七作。人好きのしない気難しい女流作家と、贅を極め、女の嗜好も悪食珍味(「フクザツなお味ぃ」)志向になったか、彼女のストーカーと化した大富豪「貴族探偵」。偶然出くわした死体を巡る真相を求めて、計34章に及ぶ「証言?」が続く。退屈な前作「五匹の鰊」と違い、超高級(一見お断り)床屋などユーモア小説として面白い。ミステリとしては・・クロフツtrafficアリバイトリック標準。あの時、女が死体を見つけていなければ、犯行目的は外していたが、ばれることもなかった、てなヒネリ落ちがgood。
※最新中華ミステリの「色覚異常」、90年前の当作の「血友病」、相も変わらず優性遺伝ネタが好きね、ミステリ。

No.757 8点 厳冬之棺- 孫沁文 2023/10/17 22:28
” ついに現る!中国のジョン・ディクスン・カー ”
て、ことで、お通し2皿に、大皿3ディッシュの密室フルコース、さらに犯人Whoツイスト一皿付き・・太好了!
      「地」見立て、入口水没密室に、1点。
      「水」見立て、犯人消失密室に、3点。 
      「空」見立て、頭部切断密室に、2点。                 
      そこに、先付け密室と嬰児殺しネタへ+2点。犯人ドンデン返しは・・むしろ残念で -1点。
      さらに、密室を前面に出す態度に好感、1点おまけ。計、8点。
このサイトで知り初めて読んだが、何か大らかやね、中華ミステリ。大和民族よりも人間がスレてないのか、漢民族。猟奇殺人SMネタは許されているのね、中共検閲。
※「ガンダム」「ウルトラマン」日本料理店etc・・作者、日本マーケット狙ってんのかな、考えすぎか・・・再見!

No.756 6点 髑髏の檻- ジャック・カーリイ 2023/10/15 23:17
親に捨てられ地下へ売られ、拷問の様な過酷な幼少期訓練を得て、ローマ剣奴や闘犬闘鶏の如く、「地下格闘家」となった男達・・タイガーマスク「虎の穴」やね。残虐ここに極まる連続殺人との連結や如何に・・肛門から腸内にぶち込まれた灼熱コテ棒!(๏Д⊙)!!って・・・。今回は相棒の女刑事と情事に落ちる主人公・・女検死医や女報道記者、毎度ながら三十路四十路の曲者女がお好きで、大人の男やねえ・・。 あのペットの超混血犬「ミックスアップ(!)」がよいな。
※「永遠の仔」「白夜行」アンドリュー・ヴァクス、このところ同主題の小説を偶々思い出すが、巷でも新興宗教・アイドル事務所の、似た様な茎=年少者「虐待」報道が喧しい・・今までがスルーし過ぎだったのかもね。

No.755 4点 屍鬼- 小野不由美 2023/10/13 08:09
「これ採点しよ思ったまま数年すぎた」作品その三。半ば閉ざされた山里集落を舞台にした、人間vs「吸血鬼」「人狼」のサスペンスロマン。生血しか食せず闇でしか生きられない吸血鬼はイヤだが、人間の食生活も可能で日光も平気、その上に永世可なら、もう神状態じゃん「人狼」。

キーワードから探す
レッドキングさん
ひとこと
ミステリは戦前の乱歩の様に 子供が親に隠れてコッソリ読むような、恥ずかしい存在でありたい。 ミステリ書きという驚異的な作業に神経を減らし 結果報われることの無いミステリ作家たちに心から崇敬を捧げます。 ...
好きな作家
ジョン・ディクスン・カー  PD・ジェイムズ  トマスH・クック  沼田まほかる
採点傾向
平均点: 5.29点   採点数: 1014件
採点の多い作家(TOP10)
アガサ・クリスティー(88)
ジョン・ディクスン・カー(55)
エラリイ・クイーン(51)
F・W・クロフツ(34)
二階堂黎人(30)
ジェフリー・ディーヴァー(28)
アーサー・コナン・ドイル(26)
カーター・ディクスン(25)
トマス・H・クック(23)
麻耶雄嵩(21)