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レッドキングさん
平均点: 5.29点 書評数: 999件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.999 5点 ガラスの鍵- ダシール・ハメット 2025/11/13 12:03
街を裏で仕切る「顔役」二人、上院議員、トバク胴元、検事、新聞屋、情婦や娘達・・。顔役二人の抗争が、殺人事件と選挙に絡んでモツれ、その間を戦略的に狡猾に、それでいて、あまりにも愚かに暴発的に関わる、賭博者探偵。クールでもダンディでもニヒルでもない、ホットで見苦しく愚直なクレイジーガイが、最後の最後に、ちょびっとハードボイルドヒーローする。

No.998 4点 天井の足跡- クレイトン・ロースン 2025/11/10 09:06
クレイトン・ロースン第二作。島(孤島でないが)・旧屋敷・オカルト儀式・天井の足跡・海賊財宝・奇病兄妹・死体出現「密室」・・・本格大道具は魅惑的で、話の展開もなかなか。これで、複数者の思惑・行為が複雑な歯車となって、偶然に驚くべき仮象を生ぜしめ・・ならヨかったが、出来上がった映像が「天井をツタう足跡」だけってのがチト淋しく。せめて、ホテル部屋の死体出現密室をキチンと拵えてほしかった。※その他、アリバイや弾道の明確なトリックねたも付いてる。

No.997 6点 ネズミとキリンの金字塔- 門前典之 2025/11/08 22:36
門前典之第九作。冒頭に建築図面が何枚も付いていて、うーん、「エンデンジャード」良かったな「建築屍材」はツマランかったなぁ、と読み始めた。「社会派」文法・・リアリズム描写ではなく、不正糾弾ジャーナリズム文法・・が、ダマになって混入しててイタダケない、島荘同様、読んでて鼻白む悪い要素だな、ジュンスイに「本格」を楽しませてくれい、と文句を呟きながら読み進めていったら・・・なんと素晴らしき本格ドンデン返し! タイトルと何枚もの図面の伏線回収も鮮やかで、期待どおりの門前典之であった。( 密室は大きくズッコケだけどね ^^; )

No.996 7点 女囮捜査官 5 味姦- 山田正紀 2025/11/05 09:02
オトリ役の女捜査官、五感シリーズ最後は「味覚」の巻。トランクを持ってバスに載った女の死体が、トランクの中から発見され、渋滞のトンネル車中での扼殺事件で、犯人は「衆視」の中を消失した・・二つの「密室」事件を含み、本格度はシリーズ最高。とりあえず、シリーズ最高点としよう。が、グルメねた・・「美食倶楽部」って・・ともかく、巨悪征伐の組織内抗争展開てのが、ちと異味気味で、鍋が煮詰まってしまったかなと。本格に絞った方が美味しかった。

No.995 6点 女囮捜査官 4 嗅姦- 山田正紀 2025/11/03 22:05
オトリ役の女捜査官、五感シリーズ「嗅覚*」の巻。ミカ(リカ)ちゃん人形見立て殺人と外車放火事件、二つの連続事件の連立方程式解答や如何に。本格ミステリとしてはイマいち(に・さん)だが、さりげない「白夜行」「火車」清張風物語が拾い物だった。戦後昭和・・誰もが貧しく、勤勉に働き、健気に生き、あるいはコスカラく立ち回り、「リカちゃんハウス」の様な生活を夢見て、結局、誰も夢の世界には至れなかった・・昭和後期と言う、胸塞ぐ様な時代の哀歌。嗚呼!

*昔、もし、やむを得ずして、五感のうちどれか一つ失わずを得ないとしたら、どれを?といった話になり、「んー、嗅覚かなぁ・」とか思ったが、嗅覚って、哺乳類(爬虫類以上?)の最も根源的な感覚らしい。だからこそ、遥か昔、四つ足から二足歩行に「進化」した我ら人類にとって、嗅覚に頼って地面を嗅ぎまわる豚は、軽蔑対象の生き物であり宗教的禁忌であり、そして、「ブタ!」は、人類普遍の罵倒語なのだとか(̂•͈Ꙫ•͈)̂

No.994 4点 デイン家の呪い- ダシール・ハメット 2025/11/01 22:18
「赤い収穫」「マルタの鷹」に味占めて、長編第二?作のこれも・・と思ったが、統一された長編と言うより、連作中編集てな趣きで・・
  「デイン家」 宝石盗難事件を釣りにした、家族の伝奇譚風、連続殺人事件ドンデン返し解釈。
  「寺院」 カルト教団施設が舞台の、怪奇殺人事件Whatダニット。
  「クェサダ」 海岸小村を舞台にした、官憲及び官憲モドキ達の爆弾アクション付きドタバタどんでん返し劇。
※面白くないことはなかったが、この一人称探偵、ちと、饒舌すぎ。

No.993 4点 マルタの鷹- ダシール・ハメット 2025/10/30 22:21
「赤い収穫」が予想外に面白かったので、これも。チャンドラーやロス・マクドナルドよりもポップなセンスがグッド。劇画と言うよりアダルトコミックな疾走感がよい。見えすいた・・逆に驚いた・・「真犯人」だが、「グリーン家」とかも含め、この頃はこの手の設定で充分驚きだったんだろな。一見ラスボス、結果サブボスの、ぶよんぶよん肥満男が実に愉しい。” 結構ですな、口の固い男は信用できません "” 息子なんてまた作ればいいですが、お宝はそういうワケにはまいりませんな ”・・実にケッコウですな・・

No.992 6点 巨人たちの星- ジェイムズ・P・ホーガン 2025/10/27 21:28
「星を継ぐもの」「ガニメデの優しい巨人」に継ぐ、”巨人たちの星("巨人の星"♪重いぃコンダぁラ♪ ではない)”シリーズ第三弾。「この屍体どこから?」「巨人たち何故に優しいの?」に続く第三弾テーマは、「進化上、優しいはずの巨人たち、及び彼らに善導される人類に、何故、軋轢あんの?」。当初テーマ・・ホモサピエンスの地球原生 → 異星移植 → *地球帰還・・の「*」部分の捕逸と、その後の人類とガニメアンのSF叙事詩が展開し、散りばめられたSF絵面が素晴らしい。
※二十一世紀においてアメリカと対峙する超大国が、「ソヴィエト」ってのが鼻白むが、ま、近未来SFの宿命てことで。

No.991 8点 カササギ殺人事件- アンソニー・ホロヴィッツ 2025/10/26 01:01
フーダニットと伏線の絶品本格ミステリにして、苦く、かつ、驚嘆すべきアンチ*ミステリ。

*知識人としての名声が傷つくことを恐れ、ペンネーム出版に拘った「探偵小説」作家、ミステリ小説ではなく「神曲」英訳を己の経歴の誇りとした女流ミステリ作家、我が国でも、「ミステリ風」で世に出ながら、後にそれを否定して「普通の」小説への転向を宣言した女流作家がいたなあ。それらに比べると、自分が産み出した名探偵(史上三番目に高名な)を「毒殺したい」位に嫌ってしまった大女流ミステリ作家や、生涯、半ば冗談の様な「密室」トリックを紡ぎ続けた、酔いどれの大ミステリ作家はユニークだったなぁ。
にしても、A Stupid C●●t って・・(;O;)

No.990 4点 赤い収穫- ダシール・ハメット 2025/10/22 05:00
黒澤明「用心棒」の元ネタ筋なのね、あるいは「仁義なき戦い」「アウトレイジ」・・あれらよりプロットは若干、複雑にして怪奇。” 殺しに充分関わると、後は二つに一つ、気分が悪くなるか、殺しが好きになるか・・"  うーん、まさしく「全員ワルモノ ☼Д☼」。タッパ170cm余の情報屋女や、華奢ボーイ風のトバク元締め等、キャラ達の造形が劇画並みに面白い。で、なによりも主役探偵、ハードボイルド探偵言うより「こいつも悪党」。自分語りなき第一人称がよい。

No.989 7点 抹殺ゴスゴッズ- 飛鳥部勝則 2025/10/19 20:21
なんと久しゅう*飛鳥部勝則、新作ミステリ。ゴス・ゴッズ=ゴシックなゴッド達=奇怪な神々。十五年ぶり長編ミステリは、「大乱歩」オマージュと、十八番アートねた物の接合「大作」で、飛鳥部風の変態悪趣味**満載(それも、またよし)。本格具合は・・うーん、合格点はクリアかなぁ・・点数、復活ご祝儀相場。

* 近年、突然に短編出て来て、 嗚呼、無事に生きてたんだ(なんたる無礼 な "(-""-)" )と詠嘆。
** 二十歳そこそこで小説書いた麻耶雄嵩レベルの、「翼ある闇」超俗的とり澄ましと、「夏と冬の奏鳴曲」の眼を背けたくなる程の生臭い情感を、還暦過ぎに至るまで、払拭できない(であろう)感性。坂口安吾が書いてたな ” 青春二度と帰らず、は美しいが、青春未だ去らず、は情けない ”って。あと、誰だっけ? ” 十八歳でドストエフスキーに夢中にならない奴は見込み無いが、四十過ぎても夢中になってる奴はどうしようもない” とか。ま、いいや、これからも「本格」書き続けてチョ、門前典之とあんた(どーも麻耶はダメっぽく)にはキタイしてるヨ(ー_ー)!! 

No.988 9点 帽子から飛び出した死- クレイトン・ロースン 2025/10/14 23:15
これぞ本格! これこそ、ザ・ミステリ! 完璧な密室・人間消失・雪密室・・素晴らしい! また、ラスト一文がよく。(真相、チトこり過ぎてるが・・ ^_^;)

No.987 3点 ファイナル・ツイスト- ジェフリー・ディーヴァー 2025/10/13 06:56
コルター・ショウシリーズ第三弾。ツイスト&ツイストのライムシリーズとは違い、ノン・ツイストで、「正義の味方」 vs 「極悪の大富豪」構図が疾走するストレートバトル。とても、ファイナル「ツイスト」とは言えないが、のべつ幕なしにディーヴァー小ワザが炸裂し、ハラハラどきどき~拍手パチパチ。(ま、こういうのもワルくない)

No.986 6点 女囮捜査官 3 聴姦- 山田正紀 2025/10/11 23:05
オトリ役の女捜査官、五感シリーズ「聴覚*」の巻。乳児誘拐の、巻を措く能わないサスペンスをエンジンに、サイコ操りミステリがネットりと進行して行く。誘拐密室トリック(見せ方イマいち)とエロい叙述トリックと、変に合理的Whyの解明が付く。
*人間は、視覚より聴覚を失ったときの方が精神のバランスを損なうと聞いたことある。

No.985 4点 女囮捜査官 2 視姦- 山田正紀 2025/10/09 19:41
オトリ役の女捜査官、五感シリーズ「視覚」の巻。連続ホステスばらばら殺人事件が、耽美的・猟奇的色彩を帯び(ま、バラバラだけで充分リョウキ ๏Д⊙ だが) 、さらに、ん?「占星術」?匂わせて・・クロフツを半次元とばしたアリバイ錯視ネタ(おしい^^; もすこし見せ方工夫してチョ)と、耽美サイコ物の複合技であった。一気読みレベルの面白さ。

No.984 7点 アンデッドガール・マーダーファルス4- 青崎有吾 2025/10/08 06:07
生首美少女探偵シリーズその四は、主役トリオ「過去編」で、流れ的には「番外編」。
  「知られぬ日本の面影」 小泉八雲と「赤毛連盟」オマージュと妖怪ねたアクションと。7点
  「輪る夜の彼方へ流す小笹船」 如何に少女は「不死」となりし哉、の平安朝幻想譚、ロジック付き。6点
  「鬼人芸」 如何に落語マニアの不良孤児は半鬼となりし哉、の怪異浪漫冒険譚。(採点対象外)
  「言の葉一匙、雪に添え」 如何に不死少女は「生首」となりし哉、メイドの正体や如何、の鏡花風幻想譚。(同上)
  「人魚裁判」 生首少女探偵による、被告人魚の殺人冤罪をはらす無罪ロジック、見事。8点

第二~四編は、本格ミステリとは言えないが、こちらの方が面白い。特に、第三編は長編ロマン並みの充実感。
※はやく「その五(第六章 秘薬)」が読みたぁい!

No.983 6点 抱く女- 桐野夏生 2025/10/06 23:16
敗戦から二十数年を経て、政治・闘争だけでなく、精神・情念においても、ようやく、旧権威へのアンチ衝動が煌めき出した、60年代末~70年代初頭。が、反権威それ自身もまた、新たな権威として己を紡いで行ってしまった時代。
そして、人類史(おそらく哺乳類のレベルで)に普遍的にながれて居る、「男 - 女」の「支配-被支配」構造。フェミニズムという概念は知られず、せいぜい「ウーマンリブ」という、好奇・嘲り・冷笑の視線で迎えられた女達の抵抗表現。ジャズ喫茶・新左翼セクト・雀荘・・前衛の衣を纏った、旧態依然たる文化装置。曙光の幻影をチラつかされながら、閉塞した制度を生きざるを得なかった女達への苦い哀哥。(全然ミステリでないが、まあ、いいや、点数、大おまけ)

No.982 5点 リアルワールド- 桐野夏生 2025/10/06 23:13
母親を殺して逃亡した17歳の高校生「ミミズ」、少年と偶然に関わった四人の女子高生グループ「ホリニンナ」「テラウチ」「ユウザン」「キラリン」、五人の一人称叙述で進行する・・サスペンスともノワールとも違う・・限りなくダークに近いグレイ、ざらついた不協和音の青春ブンガク・・・(あんまりミステリしてないが、まあ、いいや、点数オマケ)

No.981 3点 魔のプール- ロス・マクドナルド 2025/10/01 21:45
リュウ・アーチャー(どうしても、「竜・あチャぁあああ 乁( •_• )ㄏ 」ってなB級カンフー連想する) シリーズ第二作。劇団役者の妻からの不倫脅迫手紙の調査依頼。依頼者周辺の探索が、型通り殺人事件に出くわして・・妙にリアル感あるワケ有り一家の「ワケ」判明が、まんま事件の答えであった。(※オトコならコブシで来な ! ᕙ(°°)ᕗ・・アメリカンやね)

No.980 7点 アンデッドガール・マーダーファルス3- 青崎有吾 2025/09/29 23:05
生首美少女探偵シリーズその三。その一そのニは、一応、中編二章構成だったが、その三の「人狼」章は長編。ドイツの深い森に、滝と崖を隔てて並存する人間寒村と人狼集落。両村で時を同じくして起きる少女連続殺害事件。特殊設定の本格ロジックミステリであり、人狼集落を舞台にしたSFであり、主役トリオが、保険機構の殺戮者男女やモリアーティ派遣の化け物達、村人や人狼達と、五つ巴でバトルする活劇でもあり・・この作家、人気漫画・アニメの超売れっ子原作者になれる力量ありそ。

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レッドキングさん
ひとこと
ミステリは戦前の乱歩の様に 子供が親に隠れてコッソリ読むような、恥ずかしい存在でありたい。 ミステリ書きという驚異的な作業に神経を減らし 結果報われることの無いミステリ作家たちに心から崇敬を捧げます。 ...
好きな作家
ジョン・ディクスン・カー  PD・ジェイムズ  トマスH・クック  沼田まほかる
採点傾向
平均点: 5.29点   採点数: 999件
採点の多い作家(TOP10)
アガサ・クリスティー(88)
ジョン・ディクスン・カー(55)
エラリイ・クイーン(51)
F・W・クロフツ(34)
二階堂黎人(30)
ジェフリー・ディーヴァー(28)
アーサー・コナン・ドイル(26)
カーター・ディクスン(25)
トマス・H・クック(23)
麻耶雄嵩(21)