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人並由真さん
平均点: 6.33点 書評数: 2106件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.206 6点 魔性の眼- ボアロー&ナルスジャック 2017/09/18 15:59
(ネタバレなし)
『魔性の眼』
 柑橘類の輸入業を営む富豪エチエンヌ・ヴォブレ。その息子のレミは12年もの間、麻痺した体を自宅で療養させていた。だが、辛く長いリハビリを終えて18歳の時にようやく自由に動けるようになる。かたやエチエンヌの仕事は、彼の弟でレミの叔父にあたるロベールが支えていたが、その叔父はレミに、実は父の会社はいまや倒産寸前なのだと語る。外出が可能になったレミは、亡き母「マミ」ことジュヌビエーブの墓参に向かうが、そこで彼が見たのは意外な情景だった…。

『眠れる森にて』
 1818年の欧州。少年時代にフランス革命で父を処刑され、母親とともにイギリスに亡命したフランスの貴族、ピエール・オーレリアン・ドウ・ミュジャック・デュ・キイ伯爵。成人した彼は苦渋の人生を送った母の遺言を受け、現在は別人の手に渡っている実家の古城を買い戻すため、故郷の山村に舞い戻る。土地の優秀な公証人メニャンの助力もあり、城の現在の持ち主ルイ・エルボー男爵から物件を譲ってもらう話はスムーズに進んだ。そんななか、伯爵は男爵家の妙齢の美少女クレールに恋をしてしまう。だが夜半に城を訪れた伯爵が目撃したのは、一晩のうちに死と復活をくり返すエルボー男爵家の面々の怪異な姿だった!
 
 まったく毛色の違う二本の中編が収録された一冊。原書は1956年に同じ収録内容で刊行され、日本では昭和32年にポケミスの初版が刊行。

『魔性の眼』は、長年にわたる病床の場というある種の非日常から現実に復帰した少年の視点で綴られる心理サスペンス風の作品。アルレーあたりの作風に通じる感触もあり、その意味でいかにも文学派フランスミステリっぽい一篇。ちなみにキイワードの「魔性の眼」についてはたぶん大方の読者を裏切る形で作中で語られて、最後は、まあ、そういうことなんだろうね、という読後感に落ち着く。水準作~佳作。

 もう一篇の『眠れる森にて』の方は、本作がまだ未訳のころ、かつて都筑道夫が日本語版EQMM誌上で絶賛した、J・D・カー風の怪奇趣味とそれと裏表の不可能犯罪? 性に満ちた作品。実はこっちが今回の興味の本命であり、それゆえツンドクの一冊を手に取った。
 19世紀の伯爵が遺した手記をもとにその不思議な謎を解くのは、現在の伯爵の子孫である青年アランの婚約者エリアーヌで、世の中の怪異など信じない明るい現代っ娘が過去の不思議な事件に論理的・現実的な推理を行う。
 解明は、後年にやはり都筑が好きだったE・D・ホックのよくできた短編をなんとなく思わせるような手際で決着。ゾクゾクする御伽話・民話的な怪異がズバズバと明快に真相を暴かれていく感覚は快い。ちょっと強引な部分も無いではないが、こちらは中編パスラーとしての秀作。  

No.205 7点 リスとアメリカ人- 有馬頼義 2017/09/17 20:04
(ネタバレなし)
 循環器系医療の権威で、現職総理大臣や警視総監などの主治医でもある著名な開業医・深草太郎。その深草はある夜、秘書の丘左記子を先に帰宅させて診療所に残っていたところ、複数の人物に誘拐される。連れ込まれた場所で命令のままに数名の男性を診察した深草は、患者たちが近年の日本では信じられない伝染病=ペストに罹患している恐るべき現実を認める。医師の謎の失踪事件は小さな新聞記事にもなり、深草と縁があった高山検事はなじみの老刑事・笛木時三郎とともに捜査に及んだ。そしてそんな彼らが間もなく直面したのは、十万単位の人々を襲う可能性のあるペストの脅威と、その災厄の陰に潜む謎の犯罪であった。

『四万人の目撃者』に続く、高山検事&笛木刑事シリーズ第二弾(作中でも繰り返し、前作『四万人』事件の話題が語られる)。元版は昭和34年に講談社から箱入りの単行本で刊行された。

 当時の日本ではおそらく珍しかったはずの、今で言うパンデミックテーマの長編ミステリ。
 東京都を主体にいきなり生じたペスト蔓延の危機。この脅威に晒される市民を守ろうとする関係者たち(感染経緯を探ろうと務め、同時に被害の拡大を防ごうとする厚生省や保健所の医療技師連、ペスト菌を研究してきた老科学者など)の奮闘や活動を視野に入れながら、冒頭の誘拐事件から発展するホワイダニット、ホワットダニットの謎(そもそも誘拐犯人たちはなんで秘密裡に深草に治療を強いたのか? そしてこの事態の陰にはどういう事件性が潜むのか?)が物語のキモになる。
 災厄パニックものの興味を抑えながら、わずかな手掛かりである夜間の二発の銃声から、事件の捜査対象を絞り込んでいくストーリーの流れは淀みなく、全編のリーダビリティは頗る高い。
 日本を含む東西の歴史上、ペストがいかに人類にとって危険な感染病だったかの検証も相応のデータを披露しながら丁寧に説明され、この辺りは80年代以降に隆盛した情報小説もしくはネオ・エンターテインメントの先駆け的な趣もある。

 さらに事件の周辺で展開される登場人物たちのさまざまな素描も味わいがあり、恋人との関係に夢と不安を覚える左記子の内面や、太平洋戦争から現在まで警察官としての複雑な記憶を改めて噛みしめる笛木刑事、充分な予算や設備も与えられないままペスト菌の研究を80歳まで続けてきた老科学者・名取ほか多くのキャラクターが鮮烈。(また、ほとんどモブキャラながら、当初は警察への協力に消極的だったものの、笛木が味噌作りの仕事ぶりに関心を示すうちに口が軽くなっていく老舗味噌蔵の主人なども妙にいい味を出している)。キャラクタードラマとしても随所で手応えがある一冊だった。
 なお国外からの病原菌の感染経緯を語るなかで、自国以外は結局はおざなりに扱う20世紀の先進大国アメリカへの批判が要所で盛り込まれており、そういうところには作者のある種のメッセージ性を感じさせる。

 肝心のミステリとしては先述の「ペスト騒ぎの裏にある事件の実態は?」の興味を求めて終盤の展開まで加速感は芳醇。ちょっと細部で気になる点はないでもないが、ドラマチックに終焉する秀作といえる。個人的には『四万人』よりも面白かった。
 高山&笛木シリーズは、あと長編が一本しかないらしいのがとても残念である。

No.204 7点 下宿人- ベロック・ローンズ 2017/09/16 01:42
(ネタバレなし)
 ビクトリア朝末期の英国。かつて上流階級の家庭に奉公していた男やもめのロバート・バンティングは、同じ職場の若いメイド、エレン・グリーンを後妻に迎えた。その後、地方で下宿屋を開業した夫婦。しかし好調だった下宿屋は流行病の影響で不振となり、彼らはロンドンの一角の古い住宅に転居。そこでまた下宿屋を営むことになる。だが現在、間借り人は誰もおらず、生活費に翳りが見えたとき、ある日、背が高く痩身の紳士・スルウス氏が現れた。人付き合いを避けて寡黙な言動ながら、部屋をまとめて借り受けて支払いを渋らないスルウス氏をバンティング夫妻は歓待する。しかしその頃、ロンドンでは謎の通り魔「復讐者」が、飽きることなく凄惨な殺人を重ねていた…。

 今さら語るまでもない現実上の近代史の謎<ジャック・ザ・リパー>事件(1888年に発生)をもとに、英国の女流作家ベロック・ローンズが著した長編サスペンススリラー。ヒッチコック監督の映画化作品でも有名で(筆者はまだ映画は未見)、ポケミスの解説によると原作は当初、原型の短編小説として著されたのち、1913年に長編(本作)にリライトされて刊行されたという。

 当初ははやらない下宿屋の福の神として迎えられた間借り人=スルウス氏に「まさか…」とバンディング夫妻の疑惑の目が向けられていく物語の流れは、読者の誰の眼にも自明の設定ではある。
 しかし主要登場人物はこの3人に加えて、ふだんは別居して親類の家で暮らす夫妻の19歳の娘(ロバートの先妻の娘で、エレンの継娘)デイジイ、その彼女に恋する若者で、ロバートの旧友の息子、さらに警官でもあるジョー・チャンドラーというわずか5人のみ。
 その場面のみのほとんど無名のサブキャラはほかにも数名登場するが、これだけのキャラクターで約250ページの内容を一気に読ませるのだから、一世紀以上前の作品ながら物語の求心力はかなり強い。

 特に、クラシック作品ながら小説技法的に「うまい」と感じたのは、最初に下宿人に疑惑を抱くエレンの内面をほとんど直接は描写せず(心の声で「まさかあの人が殺人鬼!?」とかわかりやすい叙述はしない)、当初は猟奇的な連続殺人をおぞましがっていた彼女が事件の情報の載っている朝刊を積極的に手にするようになったり、病院に行くと夫に嘘をついて、やはり事件の情報を求めて裁判所に出かけるなどの客観的描写を積み重ね、読者にも物語上ベクトルの変化を実感させていく手法。
 なるほど、これはヒッチコックが映像化に臨んだわけである。

 夫妻の家に出入りしながら下宿人に紙一重のところで接近するかそうでないかの緊張を続ける娘デイジイや警官チャンドラー青年の使い方も鮮やかで、その意味でもサスペンス感は十分。

 なおラストは刊行当時にして未解決の四半世紀前の事件をもとに、小説上の勝手な結末を許さなかった感じだが、詳細はネタバレになるので控えよう。最後の最後まで十分に面白いし、読後の余韻もある。

 ちなみに半世紀以上前の翻訳はやや硬く古めかしいが、読み進むうちにそんなに気にならなくなる(翻訳家の加藤衛は、ほかにペリー・メイスンものなどもわずかながら訳出)。
 ただし新訳でさらに読み易く再刊してくれれば、確実にもっと評価や知名度は上がる一冊だろうね。

No.203 7点 シャワールームの女- 荒木一郎 2017/09/13 16:18
(ネタバレなし)
 一年前に刑事を辞め、私立探偵となった四十男の一条精四郎。しかしあまりにも依頼客が来なくてこの稼業も先がないと考えた彼は、最後の贅沢として、いかにも私立探偵らしい女性秘書の雇用を考える。人材募集の広告を見てやって来たのは三十代前半の冴えない容姿の砂護妙子だった。そんな妙子には、近々に大財閥の玉の輿に乗る予定の妹・恵子がいた。妙子は、恵子の元の彼氏・鈴木茂の捜索を精四郎に依頼する。だが調査を始めた精四郎が遭遇したのは、密室状況のシャワールームの中での変死だった。

 82年に大和書房の<大和ミステリシリーズ>の一冊として刊行された長編。同叢書は「幻影城」から刊行できなかった天藤真の『遠きに目ありて』や、日本推理作家協会賞を受賞した辻真先の『アリスの国の殺人』、さらには著名な劇作家・別役実の連作集『探偵物語』など、なかなかマニアの注目度も高い作品群を網羅していた。
 そんななかで発売された本書は日本歌謡界の巨匠として知られ、文筆活動も精力的な作者が書いた唯一のミステリであった。

 体裁は三人称一視点の国産ハードボイルドで、しょぼくれた(でも人間として探偵として芯の強さを感じさせる魅力のある)主人公・一条精四郎の造形もふくめてなかなか良い仕上がりになっている。
 文体も生硬な感じはたまにあるが総じて様(さま)になっており、例えば多数の人を集める葬儀の描写
「花輪の数だけでも、金銭に換算すれば死人の命が買えるほどの額になりそうだ。黒い服を着た人々が獲物にたかる蟻のようにどこからか詰めかけて来ては、寺のあちらこちらへ各グループごとに分けられて行く。」
 など、うん、これは悪くない。

 さらに加えて、本作は誰も中に入り込めないはずのシャワールームという密室を舞台にした正統派の謎解きミステリであり(ちゃんと殺害現場の精密な俯瞰図入り)、シンプルながらもなかなか創意を感じさせる大技のトリックが最後の最後に明かされる。その犯行を支える小さなトリックも巧妙な伏線が随所に貼られ、そういう意味でも出来が良い。
 登場人物も少なく文字数もそんなに多くないので三~四時間あれば一読できるが、国産ハードボイルド私立探偵小説と謎解きパズラーが良いバランスで融合した秀作といえる。(ちなみに本書の徳間文庫版のあらすじは絶対に読まないこと。あまりにも大きなネタバレをしている。)

 惜しむらくは「一条精四郎シリーズ」という肩書や帯の「一条精四郎登場」などの惹句を見ると、本来はシリーズ化を想定していた気配もあるものの、刊行後30年以上、続編はいまも書かれていないこと。作者も高齢で一条精四郎の復活はもうないと思うが、叶うことなら、ラストシーンで歩み去っていったこの主人公との再会を今からでも強く願っている。

No.202 7点 月長石- ウィルキー・コリンズ 2017/09/12 16:13
(ネタバレなし)
 ああ、読んだ。読んだ。ミステリ史における本作の重要度をはじめて意識してからウン十年目についに読んだ(笑)。創元文庫版で本文およそ760ページ(しかも同じ創元文庫のほかのいくつかの作品に比して活字の級数は小さめで、そのぶん一ページの字組はぎっしり)。思い立って手に取ってから、読了までにほぼ一週間かかった。

 感想としては、古式で冗長な小説作法と、時代を超えた古典ロマンミステリの面白さが拮抗。21世紀のいま読んでも十分に楽しめるけれど、あまりに丁寧な叙述は人を選ぶかもしれないな、という感じである。

 とまれ物語の中身はキーアイテムであるタイトルロールの月長石の盗難事件と同時に、主要登場人物の群像劇(その主体は錯綜するラブロマンス)にも重点が置かれている。さらに物語の語り手が交代する趣向が(登場人物によって担当パートの長短の差はある)ストーリーの起伏感をうまく加速させている。
 最初の記述を担当するのは、好人物ながら『ロビンソン・クルーソー』への偏愛ぶりがちょっと奇人っぽい老執事ベタレッジ。このキャラクターも良いが、一番笑ったのは二番目の語り手となる貧乏なオールドミスで、キリスト教の狂信者でもあるクラック嬢。誰もがいらないという入信のパンフレットを十数冊持ち込み、屋敷の部屋部屋のなかに、念のため念のためと一冊ずつ置いていくくだりは、ほとんど高橋留美子のギャグコメディキャラである(中島河太郎の解説によると、語り手のなかではこのクラック嬢がいちばん当時の人気があったそうで、さもありなん)。
 逆にいちばん胸打たれたのは、後半で事件の深層に迫っていく医学者のエズラ・ジェニングス(劇中、五人目の語り手を担当する)。容姿の悪さと不遇な半生ゆえに世間からつまはじきにされた彼が、ある人物へのほとんど片思いの友情のため、自分が培ってきた医療技術を全力で傾けるあたりは、その後の去就ともあいまって、夜中に読んでいて大泣きさせられた。
 たぶん作者コリンズが一番感情移入していたのはこのジェニングスか、あるいは前半の重要なサブヒロインのロザンナだろうな。まあいかにもディッケンズの薫陶を受けた著者らしい、古典ロマン的な叙述であった(どちらも外見こそ醜いが、その分、とても人間らしいという共通項がある)。

 んでもって肝心のミステリとしては、なんか時代があまりにも早すぎるアンチ・ミステリを書いちゃったという感じ。しかしその一方で最後の<意外な犯人>(第5~6話)にも余念がなく、作者は当時にあっても、とてもお行儀のいい推理小説の作法も忘れなかった。そんなソツのない作り。
 少なくともこういう作品が150年前にすでに書かれていた興味もふくめて、海外ミステリファンなら一度は読んでおいた方がいいです。俺はウン十年かかったが。
 先のジェニングスのくだりなど、もっと若いうちに読んでいたら、彼のことは、さらにさらに思い入れできるミステリ分野でのマイ・フェイバリット・キャラになったかと思う。 

No.201 7点 スターヴェルの悲劇- F・W・クロフツ 2017/09/12 15:31
(ネタバレなし)
 りゅうぐうのつかいさんのレビューがとても的確で、あまり付け加えることはないのだが、私的にとりわけ印象的だったのは、事件の関係者たちが情報を語り、そのなかである者(たち)は事情から真実を隠そうとする、そのパーツを埋めていくフレンチの手際。これが丁寧な筆致で語られていて、まったく退屈しなかったこと。
 後半のある場面での(フレンチが痛手を受ける意味での)逆転劇も地味にショッキングで、これは捜査陣(名探偵)の介入まで予期した犯人側の見事な工作だよね。この辺も面白い。たしかに手掛かりの少なさや真相発覚前の情報の撒き方などを考えると、パズラーというより、フレンチと彼を支える上司・仲間たちの警察小説であるのだが。
 あと本書前半での不遇なゴシックロマンのヒロイン風のルースが後半ほとんど物語の表に登場しなくなり、フレンチの捜査主体になるのに若干の違和感も覚えたが、これは自分がクロフツの作品をバラバラな順番で読んでるからだろうな。
 たとえば後年の『船から消えた男』あたりとかは、クロフツ自身も違ったこと(フレンチとは別に、その作品オンリーのメインキャラクターをちゃんと最後まで動かす)をやってみたくなったのかと思う。

 ちなみに本作はポケミス版(井上良夫のたぶん抄訳版)も番町書房のイフノベルズ版(たぶん本邦初の完訳)も持ってるのだが、例によってブックオフで(税込み105円当時に)買った創元文庫版でついこないだ初めて読んだ(苦笑)。
 そしてその創元文庫版の巻末の座談会は圧巻の読み応えだけど、瀬戸川猛資さんが言っていたという「クロフツは好きなので老後の楽しみにとっておく」というお言葉に感無量。少しでも多く生前に楽しんでくださったことを心から願う。

No.200 6点 追尾の連繫- 山村直樹 2017/09/12 14:57
(ネタバレなし)
<チャンネル1>
 国文学者・書道家・写真家など多才な顔を持ち「日本のダ・ヴィンチ」と呼ばれる大学教授・妹尾耕作(63歳)。その妹尾が行方を断った。妹尾は、旧知の友であるアマチュア書道家・浅岡(61歳)と対面した直後だったが、その後、彼は川の側で変死体で見つかる。妹尾の担当編集者だった青年・田方直哉は、故人の足取りを追うが。
<チャンネル2>
 F電機の社員・井沢守を夫に持ち、出産を控えた若妻・抄子(27歳)。だが彼女が留守の間に自宅は全焼。自宅にいた守は死体となって見つかった。だがその死には不審な点があり、さらに彼の遺体の下にはダイイングメッセージと思われる見た目で囲碁の碁石が並べられていた。抄子は身重の体で夫の関係者を訪ねて回り、事件の真実に迫ろうとするが……。

 1972年11月(奥付より)に<双葉社推理小説シリーズ>の一冊として刊行された長編パズラー。帯に鮎川哲也が本作の推薦と作者への今後の期待を寄せている。
 鮎川の著した帯のコメントと、作者のあとがきや著者紹介などの情報をまとめると、作者・山村直樹は1959年に「宝石」新人賞を受賞したのち、その10年後に自作『破門の記』で「オール読物新人賞」を受賞(鮎川はこの時点から話題にしている)。
 さらに本作の部分的な原型にあたる作品『死者の経路』ほかの短編(中編?)作品を発表したのち、この長編を上梓。そのまま文壇から去ってしまった。
(webでの情報を拝見するに、本書刊行以降~2017年現在は、書道家として活動されているようである。)
 
 鮎川が推挙した幻の作家の幻の作品ということで、後年も一部のマニアの注目を受けた本書。たしかどこかの<国産ミステリ幻の名作>的なリストにも加えられたような記憶がある。
 さらに刊行当時、1972~73年のミステリマガジンでは「かつてB・S・バリンジャーという(2つの物語を並行させる)作家がいたが、本作はそれを思わせる」という主旨の書評(国産ミステリの月評)も掲載されており、これもまた当時にしては異彩を放った趣向の、本書の印象を深めた。
 とまれ今では二つの物語を並行させるスタイルの作品など氾濫しているし、72年当時に過去の作家扱いされたバリンジャー(ヴァリンジャー)の方が、比較された山村直紀などよりはるかにミステリファン全般にもメジャーであろう。まさに歴史は巡る風車(かざぐるま)なのだが。
 
 はたして内容に関しては上記(バリンジャー風)のとおり、一見なんの接点もない二つの物語が、テレビの<チャンネル>の切り替えになぞらえた形で並行して語られ、やがてある経緯で関わり合っていく。その上でそれぞれの物語の流れにフーダニットやアリバイ崩し、ダイイングメッセージの謎解きなどの興味が用意されている。こんな構成のなかで一方の物語が、もう一方のストーリーに斬り込んで事件の大きな謎を崩していく作劇がなかなかで、この辺は作者の狙いがうまくいった感じだ。
(まあ両方の物語を連結する重要人物が作品の中盤で判明してしまうのはちょっと早い印象があり、近年の技巧派ミステリならもう少し上手な隠しようがあった気もするが。)
 一方で一番のメイントリックは印象的なものが設けられ、終盤のドラマのまとめ方も好感がもてる。複数の趣向を鑑みて、全体としては佳作~秀作の一冊。
 もし作者がもう少し創作を続けていれば、さらに面白いものが書けたかもしれない。そんな無いものねだりの可能性を感じさせる部分もあった。 

No.199 6点 ホロー荘の殺人- アガサ・クリスティー 2017/08/27 11:52
(ネタバレなし)
 登場人物の書き込みが妙に執拗で、クリスティーの中ではなかなか骨太な作品…と思ったけれど、nukkamさんのレビューを読んでとても納得しました。作者にしても意識的に文芸性を狙った一冊だったんですな。
 ただし訳者・中村能三の巻末解説(あとがき)の中の余計な一言もあって、犯人は途中で普通に気づいちゃいました。そういう趣向も加味してるのなら、この人物だろうと思ってまんま正解。これから読む人は解説は見ない方がいいです。
 あと凶器関係のトリックに関して、その思考ロジックはおかしいでしょ、というツッコミも多少。
 さらに言うならこの時代、まだ硝煙反応の鑑識技術は無かったんだろうか。あれば一発だよね。webで調べたけど、二十世紀の何年ごろ確立した技術かはわからない。
 ご存知の方がいれば掲示板などでご教示願えますと幸いです。

No.198 6点 旅人の首- ニコラス・ブレイク 2017/08/27 11:39
(ネタバレなし)
 死体の首がないという残虐な事件なれど、おぞましい感じはかなり希薄。被害者が関係者の多くから敬遠・嫌悪されていたらしい人物という設定も機能して、ふだんは平穏でヒマな田舎の地方に起きた、ちょっと悪趣味なお祭り騒ぎのようなニュアンスも感じられる。
 謎解きミステリとして鬼面人を脅かすような大トリックなどは無いが、登場人物たちの心理の綾が終盤の決め手になっていくあたりは流石ブレイク。

 ほかの話題としては、ナイジェルの先妻ジョージアの戦時中の死亡の状況がようやくわかりました。
 あと、作中に被害者の持ち物としてチェイスの『ミス・ブランディッシュの蘭』が登場したのがちょと印象的(ポケミスの翻訳では「ブランディッシ夫人にささげるランの花はない」と表記。まあ創元から翻訳が出る前だしね)。
 作者がちゃんと周辺のミステリ事情を見ていることの、さりげないアピールかもしれない。

No.197 6点 アメリカ銃の秘密- エラリイ・クイーン 2017/08/27 11:23
十年単位での再読。拳銃関係の隠し場所トリックは覚えていたが、ほかの情報はほぼ失念。その意味では、初読に近い感じで楽しめた(せっかくだから今回は角川の新訳版で読んでます)。
 改めて真犯人の正体は意外だが、みなさんのご指摘の通り、施条痕の解析の徹底ぶりに比べて、警察捜査陣の被害者の鑑識が、そして周囲の反応があまりにルーズでは? クリスティーの某長編も似たような事例で無理を感じたが、あちらは事象の間に経年があった分だけ、ぎりぎりには小説の枠組み内の説得力がある。
 動機の最後の問題が、とってつけたような仮説で終わるのも息切れ感を抱くし。
 それでも良い意味での軽快さと謎解きミステリの面白さは一定以上に感じられたのでこの評点。

No.196 6点 霧に包まれた恋人- ビクトリア・ホルト 2017/08/27 10:31
(ネタバレなし)
 19世紀後半。イギリス人の父とドイツ人の母リリーの娘で、英国国籍のヘレナ・トラントは十代後半にドイツに赴き、母の母校で過ごした。18歳のヘレナは森に迷いこみ、高貴な美青年「ジークフリート」に救われる。わずかな時間のなかで思いを寄せ合う二人だが、ヘレナはそのまま彼と再会することなく帰国。以来、ヘレナは彼を忘れられなかった。やがて成人したヘレナは、母リリーの親戚として現れた令夫人イルゼ・クライベルの招待で数年ぶりにドイツに向かい、想い出の地でかの美青年との再会を果たした。ジークフリートは自分の正体がロケンブルク伯爵マクシミリアンだと語り、互いを想い続けていた二人は結婚式を瞬く間に済ませる。急な展開に驚きながらも幸せの絶頂のヘレナ。ところが結婚して五日目の朝、ヘレナはイルゼの家で目覚めた。イルゼは、森の中で何者かに凌辱され、六日間も眠り続けていたと言う。伯爵と結婚したと訴えるヘレナを、誰も信じない。証拠となる住まいも廃墟であり、医者はヘレナの記憶は薬の副作用の妄想だと診断した。あの結婚はすべて夢だったのか? 愛する夫はどこへ!?

 20世紀後半の英国ゴシックロマンの巨匠で、日本でも多くのファンがいるらしいヴィクトリア(ビクトリア)・ホルトの1972年作品。ホルトは日本初紹介の『流砂』がSRの会のその年のベスト集計で上位に入ったこともあり、いわゆる<よくできた大衆小説的なパワフルさ(シドニイ・シェルドンの諸作あたりに近いかも)>も含めて、ミステリファンにも魅惑的な面白さを発揮する。
 物語の中盤からは失意のヘレナがさらに二十代後半に成長。みたび渡ったドイツで貴族の家庭教師の地位に就きながら、秘められた運命の深層に迫っていく。
 ゴシックロマンの王道として、古城を舞台に起伏ある展開を披露し、もちろん細部のネタバレは控えるが、終盤のクライマックスに至るテンションもたまらない。キャラクター面でもヘレナにも物語にも重要な人物となる老婦人ミセス・クラーベルなどの、善良なのか、悪意に満ちた心根なのか、妙な厚みを感じさせるのも作品の印象を深める。
 最後の決着にいたる部分でちょっと無理があるのでは? 先に書いた設定が忘れられたのでは? という疑問もあるが、まずは期待通りによく出来た娯楽作品。何より前半の大技の謎が読み手には蠱惑的。

No.195 7点 フラッド- アンドリュー・ヴァクス 2017/08/12 15:19
(ネタバレなし)
ヴァクスはこれまで『バットマン 究極の悪』(傑作)しか読んでなかったので、本シリーズも今回が初読。
確かにプロットはシンプル(凶悪犯を狩り出すだけ)ながら、そこに至るまでの筋立てに独特の迫力と臨場感があって堪能した。
重く辛い事件の題材なれど、良い意味でどっか陽性に軽妙によませる文体は強力で 、なるほどこれは日本でも人気が出たわけである。
(近年、シリーズの翻訳は中座しているみたいだけど。)
続編も少しずつ読んでいこうと思います。

No.194 7点 天空の蜂- 東野圭吾 2017/08/12 14:52
(ネタバレなし)
80年代に石上三登志が提唱したネオ・エンターテイメントの系譜に属する国産ミステリだけど、ただ面白いだけではなく最終的に作者らしい持ち味にまとめてあるところはさすが。核テロに対して国策的なポリティカルフィクションと警察捜査もものの興味が並行して進行するあたりは、まんまラピエール&コリンズの『第五の騎手』だけど。

それにしても3.11以降、これほど一冊の価値が変わった国産ミステリは他にそうないだろうという皆さんの意見には、深く同意。
執筆刊行時期を思いやると、作者の先見性と取材力、構成力にうならされる。
あえて細部で不満を言うなら、共犯者格の女性がいきなり登場するところくらいかな。それらしい伏線とミスディレクションを用意して、軽いフーダニットっぽくしても良かったのではとも思うんだけど。

No.193 5点 善良な男- ディーン・クーンツ 2017/08/09 17:09
(ネタバレなし)
面白かったけど、良くも悪くもフツーに面白いだけだった(汗)。

個人的にクーンツは最後の観念の一押しがポイントで、その意味ではクライマックスに主人公の切ないあのー一言が用意された『バッド・プレース』か、すべての構図が見えてからなんとも言えない壮大な展望が心に染みてくる『ストレンジャーズ』が今のところのマイベスト。
主人公の過去に関しては蟷螂の斧さんの言うとおり、最後までヒロインや読者に秘匿しないでもいいのではないかと思う。そりゃ当人が自分から述懐するのもアレだが、相棒の刑事ピートあたりがその辛い昔日を主人公本人にかわって語ってやっても良かったのじゃないかと。
まあ最後の最後の勧善懲悪の大技は、良い意味のホラ話めいて悪くはない。

No.192 7点 死体置場で会おう- ロス・マクドナルド 2017/08/08 18:20
(ネタバレなし)
リュウ・アーチャーものが一皮剥ける少し前の時期に書かれたノンシリーズだが、最後まで読んでひときわ際立ってくるそれぞれの登場人物の陰影と、その一方であくまでハイテンポに進むストーリーの弾み。これは隠れた秀作ではないだろうか。

のちのロスマク作品の全面に開花する人間関係の錯綜ぶりや、その核となる内面のコンプレックスなどは本書でも地味に重要な要素となるが、ミステリとしてはこのくらいの弁えた扱いでも良いのかな 、という気もちょっと。そういう意味でバランス感も良い。

法の正義と過ちを犯した人間 、その双方の間に立つ身を自認する主人公ハワード・クロスにはアーチャーとまた一味違う魅力があり、彼の主役編をもう何冊か読みたかったな。まあ本書のラストの完結感、決着感は頗る心地よいものなんだけど。

No.191 6点 死のジョーカー- ニコラス・ブレイク 2017/08/08 17:53
(ネタバレなし)
隠遁した61歳の老教授ジョン・ウォーターソンは、36歳の若い後妻ジェニーとともに片田舎のネザープラッシュで余生を送ろうと考える。だが村の人々とは次第に親しくなる一方、奇妙な怪事が続発。やがて中傷文を書き添えたトランプのジョーカーカードが村のあちこちに送られてくる。

ひとことで言えば自由奔放な一冊で、ブレイクの話術の妙味も実感させる長編。レギュラー の名探偵ナイジェルもの自体が相応にバラエティ感豊富だが、本作はさらに英国ミステリの定型を外した印象が強い。

主人公が老齢、村に潜む悪意などの設定や主題から、読む前は暗めの内容を予期していたが、実際にページを捲ると意外に軽妙にどことなくユーモラスに ストーリーが進むのも嬉しい驚きではあった。

なお後半4分の1の物語の捩れ具合は正に本作のキモで異様な迫力に満ちているが、 謎解きパズラーとしては登場人物の少なさから、どうしても意外性を欠くのが弱点。キーアイテムのジョーカーのカードの説明不足もどうかと思う。全体的には面白かったけどね。

No.190 7点 ナヴァロンの要塞- アリステア・マクリーン 2017/08/08 17:24
(ネタバレなし)
こんなものもまだ読んでませんでした、の一冊。
思えばマクリーンは初期作を何冊か堪能して、後期作もそれなりに読んだけど、『ユリシーズ』を初めとして未読の大物もまだ何冊も残ってる。
ちなみに映画『ナバロンの要塞』も、基本的に映像化作品は先に原作ミステリを読んでから、のヒトなのでまだ観ていません。

つーわけでかなり新鮮な気分で読み進めましたが、いや、いま読んでも十分に面白かったですな。
まあ正直、島に辿り着くまでの前半3分の1だけでも、描写が濃厚すぎてゲッソリしちゃう部分もあったけど、中盤の山場となる登坂の件からもう食いつくように一気読み。
特に最も若手のメンバー、スティーブンズが己の秘めた恐怖心と懸命に対峙するくだりは他のメディアではなかなか得にくい小説ならではの緊張感と迫力に満ちており、のちの80年代に北上次郎が冒険小説の重要なポイントとした内面の恐怖への克己がここでもきちんと押さえられている。
後半の展開や登場人物の配置も起伏や工夫に富む一方、あくまで焦点を主人公チームから外さない構成もスキがなく、満腹感いっぱいの一冊でした。
あえて不満を言うなら、逆説的に、長編第二作としては成熟しすぎてる感じかな。まあ、序盤から投げた渾身の豪速球的な魅力ともいえるんだけど。

No.189 7点 女王陛下の騎士ー007を創造した男- 伝記・評伝 2017/08/06 19:49
ドキュメント風フィクション『ジェイムズ・ ボンド(ジェイムズ・ボンド伝)』でも知られる作者ジョン・ピアーソン(ピアースン)が、同作に先駆けて厖大な取材を積み重ねて綴った、イアン・フレミングの伝記。
本書が刊行されたのが1965年で半世紀以上前。21世紀の現在ではすでに別の資料やwebで参照できる情報も少なくないとはおもうが、007神話の黎明期を語り綴ったまとまった評伝としてやはり面白い。
たとえば第二次大戦中 、ナチスのルドルフ・ヘスのオカルト衒学趣味に着目したフレミングが、かのアレイスター・クロウリーのカリスマを利用して懐柔を考えたという逸話など、実に興味深い(ル・シッフルのモデルの一人がそのクロウリーだということも本書を読んで初めて知った)。
フレミングの若すぎる晩年、007神話の立役者がすでに創造者からショーン・コネリー に完全に切り替わっていた事実も、ある種のドライな趣を込めて綴られ、その辺も感慨深い。
惜しむらくは007の原作小説シリーズ後半についてフレミングがどのような意識で取り組んだかの記述が、シリーズ前半に比して駆け足すぎること。
特にあの『わたしを愛したスパイ 』 のような異色編をフレミングがどういう心境のなかで著したかの観測は、ぜひとも読みたかった。
無い物ねだりは山ほどあるが、007ファン、フレミング小説世界に魅せられた者なら一度は目を通しておくべき一冊。

No.188 6点 さよならの値打ちもない- 笹沢左保 2017/08/06 17:39
(ネタバレなし)
丸甲毛織の営業部長で社長令嬢・澄江の夫・ 五味川大作。体調不良の彼は欧州への営業周りの役職をその澄江に任せたが、彼女はスペインで毒による変死を遂げた。死の直前、妻から送られてきた絵葉書には、旧友・ 野添美沙子にスペインで会った旨の記述があり、五味川は情報を求めて福島の美沙子をたずねる。だが彼がそこで認めたのは、美沙子がすでに2年前 に死んでいるという驚愕の事実だった。そんな彼は、自分の運命を変える美貌の人妻・井石麻衣子と出会い……。

死んでるはずの人間の目撃、という佐野洋の「砂の階段」を思わせる導入部で始まり 、大小のトリックを組み合わせて、物語はかなり思わぬ方に流れていく。作者のファンには本書を最高傑作とするものもいるらしく、確かに密度感は相応のもの。一読後には、ひとつひとつのパーツはシンプルながら、それらを自在縦横に組み上げた作者の手際に唸らされた。
一方で中盤からサブヒロインの一人となる会社OLの描写など、ああ、兎にも角にもいつもの笹沢節だな、という独特の味付けを感じさせて。

No.187 5点 豹の呼ぶ声- マイクル・Z・リューイン 2017/08/06 17:04
( ネタバレなし)
上流階級の社交パーティーの余興で名探偵役を演じたり、なりゆきからケーブルテレビでCMを流したりしたことで、仕事が入り出した私立探偵アルバート・サムスン。そんな彼のもとにとびこんできた新たな依頼は、環境保護の過激派集団「アウトロウ戦線」からのもので、仕掛けた爆弾が何者かに持ち去られた。被害を出すのは本意でないので、見つけてほしいというものだった。

アルバート・サムスンシリーズの後期でまだ未読のものがあったはず。この作品からだっけ、と思って古本で文庫版を購入して読み出したら、20数年前にリアルタイムでポケミスで読了済みと途中で気づく。チャンチャンw

そもそも事件のネタ自体が、藤子・F・不二雄先生の作品みたいな感じで 、まあゆるいキャラクターものとしては楽しめるんだけど。残念ながらシリーズのたけなわはすでに去ってしまった感じ。
残る一冊もミステリ味は薄いという噂だし、そういう意味では最後の方まで一応のレベルを保った感のあるリュウ・アーチャーシリーズってやっぱ凄かったんだろうな。もちろん、作者の経歴も、それぞれのミステリ界の状況も単純に並べちゃいけないのはよくわかってますけど。

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人並由真さん
ひとこと
以前は別のミステリ書評サイト「ミステリタウン」さんに参加させていただいておりました。(旧ペンネームは古畑弘三です。)改めまして本サイトでは、どうぞよろしくお願いいたします。基本的にはリアルタイムで読んだ...
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