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[ クライム/倒叙 ] 華麗なる大泥棒 |
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デイヴィッド・グーディス | 出版月: 1974年01月 | 平均: 7.00点 | 書評数: 1件 |
角川書店 1974年01月 |
No.1 | 7点 | 人並由真 | 2018/06/28 17:43 |
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(ネタバレなし)
第二次大戦前夜のアメリカ。天涯孤独の17歳の若者ナタニエル(ナット)・ハービンは、心優しき中年の泥棒ジェラルドに救われる。ジェラルドから息子のように扱われ、泥棒の技術を仕込まれたハービンだが、やがてジェラルドは裏稼業のなかで死亡した。ハービンは、ジェラルドの遺児で14歳年下の少女グラッデンを父代り兄代りとして養育。やがて大戦を経て、34歳になった現在のハービンは、20歳の愛らしい娘に育ったグラッデン、さらに二人の仲間、盗品の流通に長けたジョー・ベイロック、錠前破りの名人ドーマーとともに流血を避けた慎重な泥棒稼業を続けていた。だがある仕事を契機に、彼らの運命は大きな変化を見せることに……。 原書は1953年に刊行。1973年に本書と同題のJ・P・ベルモンドのクライムコメディ映画が日本で公開される際、その原作として邦訳された。とはいえ本書の訳者後書きでも触れられているが、小説の内容は「華麗なる」という修辞とはまったく無縁な、非コメディ系のシリアスノワール。 ハービンたちが最高価格11万ドルの大粒エメラルドを奪い、その横取りを企む謎の影、ハービンの心を揺さぶるファム・ファタールの美女デラの出現、仲間達の間に走る亀裂、そして何より、養父ジェラルドへの恩義からグラッデンを見守り続ける主人公ハービンの思いと、そんな彼に対して自分を妹や娘ではなくワイフとして恋人として見て欲しいグラッデンの苛立ちなどが、わずか200ページちょっとの物語を高い密度で盛り上げていく。ストーリーはシンプルだが、会話と客観描写を多用した叙述は強烈なテンポを保ち、物語の加速感は並ではない。余韻のあるクロージングまでひと息に読み終えられる50年代クライムノワールの佳作~秀作。 |