海外/国内ミステリ小説の投稿型書評サイト
皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止 していません。ご注意を!

[ 本格 ]
犯人殺し
ジョナサン・グッドマン 出版月: 1979年10月 平均: 6.00点 書評数: 1件

書評を見る | 採点するジャンル投票

画像がありません。
文藝春秋
1979年10月

No.1 6点 人並由真 2018/07/01 17:49
(ネタバレなし)
 1948年。ロンドンの骨董商の妻で30代前半の女性ディーリア・ウィリスが自宅で殺害された。殺人の嫌疑は彼女の夫ジェイムズに掛けられたが、彼は裁判の末に無罪釈放。しかし真犯人は不明なまま、釈放からそう経たぬうちにジェイムズは病死してしまう。それから30年後の現在、ある日突然、ジョージ・パレルモなる初老の男が、実はディーリア殺害の真犯人は自分だったと告白した。30年前にジェイムズの弁護士を務めて、今は引退した法曹家ヘンリー・カルー。その義理の息子である犯罪研究家「わたし」は、かつてディーリア殺害事件を調査した縁もあってパレルモの告白に関心を抱くが、そんな矢先、何者かによって当のパレルモが毒殺されてしまう。

 1978年のイギリス作品。作者グッドマンは現在でも本書しか邦訳がないが、作中の「わたし」同様の犯罪研究家であり同時にミステリ作家としての著作も(当時の時点で)何冊かあったようである。
 本書も「わたし」の一人称視点から過去と現在の二重殺人(パレルモ殺しの方は、その状況がかつてのディーリア殺しに相似する部分が多いことから「カーボン・コピー殺人事件」「複写殺人」などとも称される)の謎に迫っていくドキュメントノベルタッチのフーダニットで、地味っぽい内容ながら登場人物の配置はきちんと整理され、会話が多めの本文ということもあってリーダビリティは高い。
 個人的には終盤で明らかになる真犯人の正体と、そこに至るまでの隠し方はなかなか意外で、ほどよいサプライズが味わえた。伏線や手がかりの張り方も、何気ないところが読み手の気持ちにどっか引っかかる感じでこれも良い。ラストの締め方も妙な余韻がある。

 ちなみにこの本、大昔にミステリファンのサークル内の仲間から「変な作品だった」とだけ感想を聞かされ、その一言が心の片隅にどこか引っかかっていた一冊。今回はウン十年ぶりに思い立って読んでみたが、良くも悪くも思ったよりフツーのミステリであった。小説としてのまとまりを含めてなかなか悪くなかったけれど。それだけ昨今の東西には、変化球っぽいミステリが増えたということだろうか。


キーワードから探す
ジョナサン・グッドマン
1979年10月
犯人殺し
平均:6.00 / 書評数:1