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[ 本格/新本格 ]
名探偵誕生
似鳥鶏 出版月: 2018年06月 平均: 6.00点 書評数: 1件

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実業之日本社
2018年06月

実業之日本社
2021年12月

No.1 6点 人並由真 2018/06/29 18:13
(ネタバレなし)
「僕」こと小学校四年生・星川瑞人は、級友達とともに高速道路の向こうにある「幽霊団地」の周辺に出没する怪人「シンカイ」を調べに行く。だがシンカイは、どこにも出口のないはずの袋小路の中で消失してしまった。やがて、瑞人を「みーくん」と呼ぶ隣人の美少女高校生「お姉ちゃん」こと波多野千歳によって解き明かされる事件の謎と意外な真実。そしてこれは、年上の憧れの名探偵・千歳に思いを寄せる瑞人の長い恋路の幕開けでもあった。

 全5編の連作謎解きミステリで、同時に千歳にひそかな思慕を抱き続ける主人公・瑞人の成長(終盤の二編では大学二年生になる)ドラマを描く青春小説。
 昨年の新刊の連作ミステリ『彼女の色に届くまで』で、雑誌掲載時に一度、一応のきちんとした解決をつけた各編の真相を、書籍にまとめた際にさらにまたひっくり返すという技巧的な大技を見せた作者だが、今回もまた同様のギミック「謎と真相の二重構造」が随所に効いている(ただし今回は『彼女』と違って、書き下ろしでの刊行)。
 数年をかけた主人公とメインヒロインの青春恋愛(片思い)ドラマの推移と、1~3話の足固め編を経て4・5話でクライマックスを迎える連作謎解きミステリという双方の要素も、この物語のなかではとても親和性がよい。評者はこれまで似鳥作品は、乗り入れしやすいノンシリーズものしか読んでないのだが、そのなかではベストのひとつだと思う。
 ちなみにおなじみの饒舌な本文中の註釈がなぜか第一話にはまったく登場しないので、今回はナシなのかな、と思ったら第二話からやっぱり野放図に始まった(笑)。このマイペースぶりもとてもいい。あとがきも、独自の考えのミステリ愛、そして21世紀の作家としての挑戦的なスピリットを感じさせて、マル。  


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