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[ ハードボイルド ] 標的 名無しの探偵 |
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ビル・プロンジーニ | 出版月: 1988年08月 | 平均: 5.00点 | 書評数: 1件 |
徳間書店 1988年08月 |
No.1 | 5点 | 人並由真 | 2018/07/07 03:31 |
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(ネタバレなし)
先の事件で、諮問委員会から私立探偵のライセンスを無期限剥奪された「私」。そんな「私」は15歳年下の恋人ケリーとの関係も、破局の危機に晒されていた。一方で「私」の親友であるサンフランシスコ市警のエバハート警部補も、30年連れ添った妻ディナが彼を捨てて大学教授との同棲を開始。その心をすっかり疲弊させていた。傷を舐め合うようにエバハートの自宅でバーベキューパーティを開く二人の中年男だが、突如現れた男がエバハートを銃撃。「私」も巻き込まれて負傷する。病床で生死の境をさまようエバハートを背に「私」は親友が狙われたその背後の事情を探り始めるが。 1982年に原書が刊行された「名無しの探偵(オプ)」=「私」シリーズの長編第9作目。 本シリーズに関して評者は、新潮文庫で第1作から順々に翻訳された初期の分はすべて消化し、長編第7作目の『脅迫』までは読了していた。 ところがその後の邦訳紹介の順番がなぜかてんでバラバラになったため(新潮文庫と徳間文庫と翻訳権を分け合ったせいか?)、興が醒めて読まなくなっていた。 ということで個人的には実に久々の本シリーズとの再会である。まあ本当は、現在は翻訳されていてしかも未読の長編第8作目『迷路』から改めて読み始めれば良かったんだけど、その辺がどうでもいいやという程度にはスーダラでお気楽な心根で本書を手にしている(笑)。あ、それから本書のあとのシリーズはたしか一冊も読んでない……ハズ(読んでおいて忘れてるかもしれんが)。 でもってミステリとしては、探偵が関係者たちの間を順々に歩き回っていれば向こうの方が普通に情報をくれ、その間合いを取るように死体が転がっているというアホな作りだが、この作者でこのシリーズならそんなのもアリだろうという感じで、あんまり腹は立たない。 例によって「私」=オプのいい年して青臭く、今で言う厨二的に自意識の高い思考にも「ざわざわ」させられるが、まあこういうキャラじゃなくなったらオプじゃないもんね(笑)。 ちなみにシリーズの流れを再確認するためにWikipediaの記事を見たら、名無しの探偵について「主人公はシリーズの進展と共に成長している」との記述があり、爆笑してしまった。だってこのキャラ、本作の時点で53歳だよ(笑)。シリーズミステリの主人公として成長がどうとか言えるレベルの年齢じゃない。神坂一先生の『スレイヤーズ』のどこかの巻のあとがきで「30過ぎてまだ修行中とかって言ったら、もう救いようがないんじゃ……」とかなんとか書いてあったのを思い出しました(笑)。 とはいえ本書のなかでは、ハードボイルド探偵小説のある種の定型性というかお約束の展開を作者なりにひねろう&洗い直そうという部分が見受けられて、そういう妙に真面目な作劇の姿勢は嫌いになれないんだよね。 オプの青臭い世間ずれしてないキャラって、これ以降、どこまで続いたのかなあ。まあまた、そのうちいつか、この後の作品も読むであろう。 |