皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
していません。ご注意を!
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斎藤警部さん |
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| 平均点: 6.69点 | 書評数: 1433件 |
| No.453 | 8点 | 黒い樹海- 松本清張 | 2016/01/08 12:10 |
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| こりゃぁ滅法いい、真実(マジ)面白い。目次に見える各章のシンプルな題名から一々魅力的だ。如何にも含蓄の吹き込まれたオープニングの失踪顛末を経るとそこには、厳格の著者にして意外なゲーム性が拡がる。誠実感あるロジック考察も適時現れ、存外な迄の遊戯興味を唆す。物語が進んで朧気に全体像も見えかける辺りから堰を切って「或る人物」への抵抗感ある疑惑が微量ずつ静かに噴出するのだが。。 古(いにしへ)の南武線沿線、多摩川沿いの惡暗いムードも昭和30年代ノスタルジーを誘う、作者初期の好篇です。 さて、これは清張流の、厚み有る通俗小説トライアルなのだろうか? ともあれ、エンディングには幾つかの意味でホッとしましたよ。。
或る人物の「握手です。」云々には笑ったなぁ。キャバレーだかクラブの一節でキン・シオタニ(イラストレーター)の得意芸を思わす漫画家が出て来るのは面白い。実際の樹海が舞台にならないのが若干寂しかったかな。でも満足。祖父の遺品にて読了。 【逆ネタバレ、というかネタバレ】 わたしゃ途中から「まさか『幻の女』じゃないだろうなぁ」とハラハラし通しでしたよ。 |
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| No.452 | 4点 | 棺の中の悦楽- 山田風太郎 | 2016/01/06 12:30 |
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| *長篇単体です。光文社文庫「傑作選凄愴篇」の方ではなく。
好きな風太郎だけど、本篇は微妙なところで自暴自棄の奇想連射がいまひとつ上滑り。最後の反転、そこに至る前にこれだけ暇無く箍の外れた乱脈奇行を鼻先で見せ付けられた後では驚くに驚けず嘆くに嘆けず。 |
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| No.451 | 5点 | 深夜の弁明- 清水義範 | 2016/01/06 12:03 |
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| 間延びしたショート・ショートめいた人間くさい短篇集。半分(?)は珍しくミステリ、残り半分は専門のパスティーシュ、と著者が明言しています。さて、どれどれどれがミステリなのか、題名の並びを見ただけで見当付くかな? ミステリ篇の中に一つ、ちょっとフレンチなチェスタトンみたいのがあり、目を引いた。もちろんパスティーシュ篇もフルスロットルで快調ですよ。
喋るな/乱心ディスプレイ/茶の間の声/百字の男/よく知っている/超実践的犯罪論/黄色い自転車/岬の旅人/浮かばれない男たち/シャーロック・ホームズの口寄せ/解説者たち/父より一言/コップの中の論戦/三流コピーライター養成講座/欠目戸街道を辿る/深夜の弁明/二十一世紀新小説応募作品 |
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| No.450 | 7点 | 王を探せ- 鮎川哲也 | 2016/01/06 07:31 |
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| 亀取二郎が容疑者だけで四人もいると思ったら何と「第五の亀取二郎」まで登場するという実にカメトリィでトレンディな不可思議プロットを誇る作品。しかし最初から同姓同名に必然性が与えられている安定感は頼もしい。
ま、若干お遊びカラ回りの感もありますがね。 |
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| No.449 | 8点 | 死びとの座- 鮎川哲也 | 2016/01/06 02:39 |
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| ATJT(鮎川哲也の叙述トリック)! 見事に釣り吊り上げられました!
殺されたミッキー中野は人気絶頂のロック歌手ジャッキー上野のそっくりさんタレントやて、誰やねんそれ、ミッキー吉野の立場は?? 一般にあまり評判芳しくない様子ですが、わたしはとても好き。 でもまあ、ファンを自認するひと向けですかね。氏の長篇最終便。(その後に「白樺荘」を完遂させて欲しかった。。) |
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| No.448 | 7点 | 寝台特急「はやぶさ」1/60秒の壁- 島田荘司 | 2016/01/06 01:18 |
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| いやぁ、寝台特急ってそんなに壁薄いんだぁ、参ったなぁ音が漏れちゃうよ、色々と。
などとあらぬ誤解をしていた中学生の頃が懐かしいです。嘘です。だいたい「秒」は幅というか長さの単位じゃないだろ、っていう。 人によっては’邪道’と受け取るかも知れない、ガッツ溢れる豪速変化球のTM(トラベル・ミステリー)ですね。 色々盛り込んで、ひとまず成功と言えましょうよ。 社会派要素は期待(ないし警戒)しなくていいよ。 |
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| No.447 | 7点 | 消える「水晶特急」- 島田荘司 | 2016/01/06 00:57 |
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| バカだが、美しさがある、この豪腕トリックには。
それはそうと、小説もかなりの面白さだ。 見逃すな! ←いろんな意味で(?) |
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| No.446 | 6点 | シタフォードの秘密- アガサ・クリスティー | 2016/01/05 11:21 |
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| 探偵役は二組三人(ポアロ等有名人は不在)。登場人物表に書ききれない程のキャラクター群が雪深い静寂の郷に賑わいの空気を震わす。寒空の冬を舞台とした古典ミステリは素敵にcozyな味わい。真相糾明に驚きも無し。それでいい。呆気ない尻すぼみは飽くまで謎解きの領域だけ。
しかし、真犯人当てられなかった。。登場人物表瞬殺でまず間違いないと思ったんだがなぁ。。まさかの動機まで一瞬で思い当たったのに。。’意外な結末’にも騙された感まるで無し。それでいい(w)。 '負け手’を数えた馬鹿話のくだり、これはただの小休止だろうか? まさかね。。と思えば直後、二手の探偵役が合流、かと思いきややはり三人二組のまま、一人がサイドを乗り換えただけ.. これはいったい結末の何に繋がる動きなの? と気を引くプロットのギミックも効いた。 真犯人弾劾とはまた別の、意外な結末もある。真犯人ならぬ真探偵が最後は物語の襞に埋れた形になるを潔しとするも粋だ。予想外の二人による最後の会話がキラキラ素敵で、雪焼けしそうだったぜ。。 裕次郎のデビュー年、昭和三十一年初版の創元社世界推理小説全集(箱カバー)で読みました。巻末解説、中島河太郎先生の”そして誰もいなくなった”に託す推理小説の未来への期待が眩しかった。まるでロックンロールの未来をスプリングスティーンに見たジョン・ランドーの時めきの様な、されど胸中に鎮めた深い興奮が垣間見えて、泣けました。 |
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| No.445 | 6点 | 自負のアリバイ- 鮎川哲也 | 2016/01/04 11:14 |
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| 随分と遅れて来た鮎川ファンの私としては、昔の角川文庫鮎哲名作選に入ってた様な短篇は大抵、後発の創元推理文庫や光文社文庫(集英社もね!)のアンソロジーで読み漁ったものでありますが、これらの作品群を再読するに当たりわざわざ(ささやかな)プレミア付きの角川古本を買ってすると言うのは「道楽読み」以外の何物でもありません。そもそも鮎川を読む事自体道楽に決まってるだろってなもんでありますが、それに輪を掛けてのメタ道楽をせずにいられないのが鮎川ファンの宿命、いや単に私の趣味趣向というものであります。前述した後発文庫繚乱のお陰か本気のプレミアまで付いていない(安い)のがついついの購買欲を誘うのも看過すべからぬ要因ですね。
で、この一冊。「鮎川哲也名作選」と銘打った短篇集で「自負のアリバイ」と来たらこりゃ相当に大きな期待が掛からないわけがありません。事実、LPレコードを樽やトランクの様にアリバイの媒体に使った(かの作品達ほど複雑じゃありませんが)表題作は氏の音楽趣味露出と相俟って興味津々のトリック展開を垣間見せてくれますが。。 偽装の露見が、伏線は充分あったにしても、まさかそんなトリックと何の関係も無い拍子抜け。。 これだったら倒叙形式にせず普通の順叙本格ミステリで、挑みゃ解けそうなアリバイトリック詳細に想いを馳せさせてくれた方が良かった。「自負のアリバイ」なる重みある題名は別の傑作短篇用にとっておいて良かったのでは。。でも詰まらなヵぁないんですけどね。 てんてこてん/声の復讐/憎い風/離魂病患者/自負のアリバイ/灼熱の犯罪/錯誤/尾のないねずみ/冷雨 (角川文庫) さて他に個別コメントしとくと、本格色の強い「離魂病患者」は意外な結末に意外と気付かせない文章技巧が見事。ほとんど小学生向け推理クイズの様な”どうしてバレたんでしょうか?”の「灼熱の犯罪」は内容だけ取れば鮎哲らしからぬエロさ横溢で小学生には不向き。某作品に登場する、浪曲出身流行歌手が唄う架空のヒットソング「涙のスットコドッコイ」って一体どんな歌なんだよ!!(笑)と読むたびに思いを馳せてしまいます。「てんてこてん」、バッドエンドじゃなくて良かったよ、それが意外で面白いんだけどね、ハハ。 さて、うーん、全体通して倒叙推理クイズみたいなのが多いなあ。それをわざわざ小説の意気込みで書き上げるのが良いのだけれど、「これってもしかして昔学研の小学生用学習雑誌に書いてた小学生が主人公のミステリークイズを大人向けに書き直したんじゃないの!?」と思ってしまう作品が目立ちますね。でも好きよ。 |
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| No.444 | 8点 | Wの悲劇- 夏樹静子 | 2015/12/24 12:49 |
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| (ネタバレと目くじら立てる程でもない、かな。。)
Watsujiと聞いてWatusiを踊り出す年配のファンキィな方はいらっしゃるかしら。。 これはもしや、倒叙サスペンスの皮を被ったガチガチのハード本格でねえべが、と疑惑を抱かせる微妙な空気が早い段階から芬々。青臭さとも絵空事臭さとも無縁のクローズド・サークル設定が得も言われず素敵だ。過失致死(或いは殺人??)の現場偽装も、これだけ利害の一致する大人数で役割決めてシステマティックにアイディア出し合いながら遂行するとなるとなかなかのものだ、読む方としても興味津々。しかし、その利害一致の筈の集団の中で、単数或いは複数の者が何かを企んでいたり、裏切っていたりする事は無いのかな。。 さてしかし本職の警官がやって来れば瞬殺で違和感察知。(しかし公式見解は。。) 中盤の前半、探偵役と見える警察官が偽装の瑕疵に気付く一連の気配が巧まざるか巧んでか妙にユーモラス。早い段階であっけなくスタートする警察対一族の隠密な真相暴露対決に溢れ出す滋味。チューブが発見された瞬間の疑惑のスリルよ。。中盤より、とある人物、そして一見ダミー風のもう一人別の人物への疑惑が否が応でも高まり行くのだが。。 中盤の半ばあたりで早くも警察側が核心をつつき始める。このタイミングの前のめりは、やはり物語にはもう一段深い企みがあるという報せか。。 まさか! 。。いや、まさかな。 何度も再利用されるあのトリックの逆を張ったなんて事があり得るだろうか? まさか、全ては某氏に罪をなすりつける為の大きな悪魔的二重底アリバイトリック、って事は無いよな?? 真の主犯格が誰にしろ。。 案の定、警察の真相暴露劇はぺージをふんだんに残したまま始まった。案の定、物語は途中からフーダニット応用編に舵を切り始めた。どうやら、当初から読書に晒されていただけでも二重底、物語全体で三重底という構造具合の様だ、少なくとも。三重底の偽造トリック、そしてアリバイトリックと見て良いのだろうか。ひょっとして、更にまだもう一つくらい。。 読了してみれば、「W」には その意味も込められていたのですか、なるほどねえ。現代の作家だったら更に「(笑)」のニュアンスまで含めやしないかとちょっと心配です。 新本格の代表格である某超人気・高評価作はひょっとして本作のある一部分から一気にパッーーンとインスパイアされてその核心部分が出来上がったのではないかな? な~んてね。 小説Wと映画Wの関係はポンスンとペトロフの関係に少しだけ似ている、かも。複雑化の仕方そのものが複雑化していますが、そのへんも含めて。 そういやあの映画の頃は既に薬師丸ひろ子のファンではなくなっていたなあ。だけどあの主題歌は好きだった。今も素晴らしい楽曲であり歌声だと思う。 Xmasの前日だけに、Wの書評をしてみました。 |
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| No.443 | 8点 | エラリー・クイーンの冒険- エラリイ・クイーン | 2015/12/22 12:46 |
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| これは読んでて大変に楽しかった。こだわりの論理構築が事件の突飛な不可思議性とカラフルに絡み合い、最初から最後まで実に美味しく味わえる。意外な真相、意外な真犯人に軸足置いたストーリープランも嬉しい。たとえば無双の切れ味で魅了する初期ホームズ物とは違う、好ましい安定感が底に敷かれた本格短篇集だ。だいたい、題名眺めてるだけでわくわくして来ちゃうでしょ。
アフリカ旅商人の冒険/首つりアクロバットの冒険/一ペニイ黒切手の冒険/ひげのある女の冒険/三人のびっこの男の冒険/見えない恋人の冒険/チークのたばこ入れの冒険/双頭の犬の冒険/ガラスの丸天井付き時計の冒険/七匹の黒猫の冒険 (創元推理文庫) |
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| No.442 | 7点 | 七人の証人- 西村京太郎 | 2015/12/18 12:30 |
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| ものすごォー~く特殊なJKK(状況下)で進行するCCM(クローズド・サークル・ミステリ)の豪腕変化球!冒頭提示される奇妙千万な舞台設定と、その裏側で芬々匂わされる謎の切れ端群はあま~ァりにも魅力的。何しろ、十津川警部+見知らぬ七人、都合八人の人間が目覚めると全く見知らぬ街角に、後に知れば何と無人島の中に徹底して緻密に再現されたという原寸大街角模型(ボルヘスの斜め先を行く3D原寸大地図か!)の中に、移動されていた、という。。何なんでしょうこの、有り得ない世界に有りえる側代表の十津川警部がスリップ・インしてしまう幻惑感は!
しかし。。。またしてもキョータさんの悪い癖が露呈!ACMX(アンチクライマックス)を誘発するKDKK(小出し解決)が引き起こす、もはや運命的と言って良い尻すぼみのストーリー展開が、早くも物語中盤あたりからレッツ・ビギンの掛け声を轟かせ始めるんです。。ってのと、もひとつ、その小出しにされて結局ぜんぶ暴露されちゃう真相自体がちょっと。。あんだけ派手なオープニング・ギミックで隠蔽した割には、特に天地もひっくり返らないというか、普通というか。(評者はアユテツのRSJやアガサクのSDNNさえ同様の理由で2点も減点しちゃうような奴なんで、そのへんの癖を勘案していただければ幸いです) ま、わざと好きな人の悪口並べちゃったけど、そうは言ってもね、とても現実世界の警察官が巻き込まれるとは考えられない荒唐無稽度MAXな本格桃源郷に、あの渋い10TG(十津川)のおじさまが、目覚めたら、放り出されていた。。という初速で快調に飛ばす本作はやっぱり見逃せない面白さでいっぱいなんです!サスペンスが思ったほど持続しないのも味のうちって事で、京太郎クローズド独特のやり過ぎ世界を是非あなたも堪能していただきたいのです。ジャンルはこのさい新本格でいいでしょう。 |
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| No.441 | 7点 | 輪廻の蛇- ロバート・A・ハインライン | 2015/12/18 01:23 |
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| 左脳が混乱する割に右脳で理解しやすい素敵な物語6篇。内1つは中篇。
ミステリファンに受けのいいSF本。 ジョナサン・ホーグ氏の不愉快な職業 象を売る男 輪廻の蛇 かれら わが美しき街 歪んだ家 (ハヤカワ文庫) ミステリと呼びたいのは「ジョナサン」「輪廻の蛇」「かれら」の3つ。 SFと呼びたいのは「ジョナサン」「輪廻の蛇」「わが美しき街」「歪んだ家」の4つ。 ファンタジィと呼びたいのは「ジョナサン」「象を売る男」「わが美しき街」の3つ。 泣けるのは「象を売る男」。笑えるのは「歪んだ家」。 通底するムードは’少し乾いたファンタジー’とでも言ったあたり。気の効いたユーモアはいつも準備万端、必要な場所に適量ごとドロップされます。 映画のイメージを引き摺ってさぞかしおぞましさ炸裂のダークファンタジーかと思われた『輪廻の蛇』が思いのほかちょっとしたタイムパラドックス小噺風だったのは快い肩透かし。原題が日本語題とずいぶんイメージの違う”All You Zombies”(フーターズ!)ってのも頷けました。とは言うもの、印象的な最後の台詞”無性にあなたが恋しいわ(I miss you dreadfully)!”に込められた孤独の遠大さに想いを馳せれば、この物語が放射し続ける存在の力にとことん圧倒されてしまうこと請け合い! そうそう、この物語は連城三紀彦の「喜劇女優」と通じるような通じないような、0と1の関係だからやっぱり違うような、でもちょっと思い出すような。 数学的SFとすっとぼけドタバタのおかしな融合『歪んだ家』は、本短篇集の中ではセンチメンタルな感動要素が際立って薄いのだが、印象深い。冒頭部に語られる四次元立体(過剰空間)のレクチャーが分かりやすくてグッドジョブ。 最後に、排卵日にハインラインを読んでも頭に入らないんですって!? (←セクハラの疑い有り) |
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| No.440 | 7点 | アリバイ崩し- 鮎川哲也 | 2015/12/16 12:24 |
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| 北の女/汚点/エッセイ 時刻表五つのたのしみ/下着泥棒/霧の湖/夜の疑惑/エッセイ 私の発想法
(光文社文庫) 鮎川本で堂々『アリバイ崩し』と銘打つ割には巻頭「北の女」を除き比較的薄味の作が並ぶが、選集ではなく熱心なファン向け拾遺集なのだから、まして二本のエッセイを小説群の間にはさんだ贅沢なプレゼントなのだから、文句は全くありませんよ。鬼貫・星影は出て来ないよ。 |
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| No.439 | 6点 | 江戸川乱歩の推理教室- アンソロジー(ミステリー文学資料館編) | 2015/12/16 12:06 |
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| 時は昭和三十年代真っ只中! 乱歩さんの要請を受けた豪華な執筆陣と興味を誘う各篇題名。。を眺めている時が一番ワクワクする(笑)という、遠足前夜のような困った本。しかしやっぱり読んで愉しい。雰囲気だよね~。有名どころがずらり並んだ中で記憶に残っているのは名も知れぬ作家、大河内常平氏の「サーカス殺人事件」。この豪快びっくり物理トリックには目を白黒させたもの。「バカミス」なんて言葉が流行り出すより前でしたが「バカだなぁ~(笑)」としみじみ思ったものです。
樹下太郎「孤独な朝食」 鷲尾三郎「ガラスの眼」 多岐川恭「眠れない夜」 永瀬三吾「四人の同級生」 宮原竜雄「湯壺の中の死体」 楠田匡介「影なき射手」 山村正夫「見晴台の惨劇」 鮎川哲也「不完全犯罪」 仁木悦子「月夜の時計」 宮原竜雄「消えた井原老人」 大河内常平「サーカス殺人事件」 鷲尾三郎「バッカスの睡り」 楠田匡介「表装」 永瀬三吾「呼鈴」 飛鳥高「薄い刃」 佐野洋「あるエープリール・フール」 大河内常平「競馬場の殺人」 飛鳥高「無口な車掌」 山村正夫「孔雀夫人の誕生日」 |
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| No.438 | 6点 | 三十六人の乗客(旺文社文庫版)- 有馬頼義 | 2015/12/14 19:40 |
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| 三十六人の乗客/白い道の少女/霞と眼鏡/女は階段を下りたか/謀殺のカルテ/この手が人を殺した/現行犯
(旺文社文庫) 何度も映画やTVドラマになった”紛れ込んだ犯人探し”の表題作(こりゃ映像化したくなる魅力のストーリーだわなぁ)を始めとし思わせぶりなタイトルの作品が幾つかあるがさほどの捻りは見当たらず。。 とは言え、本格味は割あい薄くとも適量の社会派要素が刺激剤として働き、時代の空気を嗅ぐに良い一冊。 昭和三十年代フェチなら(もし見つけたら)手を出そう。 調べてみたら表題作'69年のNHKドラマでは主題歌がピンキーと殺し屋共の「恋の季節」だったんですって! 素敵ねェ~ ところで同氏の代表作に「四万人の目撃者」なるやはり人数タイトルの長篇がありますが、この四万って三十六の何倍に当たるか分かります? 電卓かスマホで4,000÷36を叩いてみるとすぐ分かりますが、ちょっとした驚きの数字になりますね。。。 |
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| No.437 | 10点 | 美女- 連城三紀彦 | 2015/12/14 14:56 |
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| 性愛、それも同性愛や異常性欲(異常心理?)を大いに含んだ枠組みで進行する、文学性豊かな超絶反転ストーリーの数々。本格あり、サスペンスあり、日常の幻想あり。
そろそろ物語も切り上げの頃合いかな、それだと物足りないな、とふと思うタイミングで更に延びるストーリーの嬉しさ。ショートショートの感覚でサラッと終わってくれない嫌らしい快感。そして読者の進む先で作者が待ち構えているのに何度も遭遇する感覚、しばらく読み進んでから「ええっ!?○○=××だったの!?(←一人二役とは限らず)」等々。氏の偉大なる特徴の一つである’反転’も単純に最後の最後で引っくり返したよ、又は更にもっかぃやったよ、更に更にもっかぃもっかぃやったよ、ってのとは中身の上でも外形の上でも立脚点からまるで違う味わい深さ。そして本書にくっきり伺い見えるのが、本格興味を唆る、謎や伏線や解決の’対称性’への企画性あふれるこだわり。。 『夜光の唇』。。 本作だけは普通に面白い普通作。ただ終結の心理的グロテスクさはなかなか。分かりきった不倫劇に加えて同性愛者のキーマンが登場し、本書全体の傾向をあからさまに匂わせる。 『喜劇役者』。。 サスペンス→本格→叙述→サイコ→神秘の書 という流れ ?? 疾風怒濤の告白展開に翻弄されつつ’○○と××が同一人物って、ありえねぐね?’と、どこかで気付く。 そういや主人公(と思われた人?)の造形が奇妙につかめない。。こういうしっかりした積み重ねの有る連続反転なら好きだが、どこまで続くのやら。。最後は「輪廻の蛇」を心のどこかで想い出した。フゥ○○イットではなくフゥズフゥ(ホヮット?)。 まさか、筆まかせか? それとも、クリスティの向こうを張る企画ありきか。。? 『夜の肌』。。 サスペンスの冷気と人を宥す力の温かみが弾き合い引き合う、好きな類の短篇。 『他人たち』。。序盤いきなりの大反転を前提とし、物語は続く。日常の幻想、或いは日常の社会派かも知れない。 『夜の右側』。。 本格系も最高のセンス。その純度の高さが終盤を回るにつれ予想を超えた領域へ。。こんなビッグアイディアを一つの短篇に凝縮しちゃうんだから、しみじみ贅沢だ。贅沢過ぎて、むしろ多少緩んでも構わんから長篇で読んでみたかった気もする。 『砂遊び』。。 一瞬の反転に うっ 『夜の二乗』。。 ありきたりからありきたらぬへの移行にスピーディな胸騒ぎ。何処と無く鮎哲の良品短篇を思わす。大枠も細部も。。と一種の油断をしていると後半あたりからぐんぐん鮎哲軌道から弾力を付けて遠ざかっている!! 最後は連城氏だけ隠し持つ蜂蜜壺の中へ放り出され。。奇妙な捩れくねりを見せてばかりの一方で、あわや絵空事一歩前の対称性へのこだわり。圧巻のハード本格と言えましょう。 『美女』。。 分からん奴には分かったつもりにさせて終わらせるのか。。と思えば最後に最高の優しさと寂しさで誰にも分かる〆。冷ややかで温かい話だ。いや、やはりこれは半分だけリドルストーリーなのだろうか。。 しかし秋田出身の不美人って。。故郷ではさぞかしマイノリティの悲哀を味わった事でしょうなあ。 振り返れば本作がいちばん心に残っています。 まとめよう。 演技・変態・対称性だ。 (LGBTを変態に包含する言葉の綾はまことに恐縮千万!) 反転に意味があって美しい。日本のクリスチアナ・ブランドはやはり彼だ。本当かな。 9.5点相当の10点を献上。 |
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| No.436 | 6点 | 学生街の殺人- 東野圭吾 | 2015/12/13 16:29 |
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| 何とかダニットの二重底がいい。そのわり何故だか印象が薄いが、読んでる間は愉しかったぜ。著者ならではの仕掛けもあったし。 | |||
| No.435 | 7点 | 放課後- 東野圭吾 | 2015/12/13 16:24 |
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| いっけん軽やか青春ミステリみたいな題名しといてからに。。ま乱歩賞作品がそんな軽いわきゃないんですけどね、このズシリと重くガチリと硬い結末はなかなかの怖さ。 伝説の龍はここから天空を翔け始めたのですね。。 | |||
| No.434 | 7点 | 緑は危険- クリスチアナ・ブランド | 2015/12/10 13:59 |
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| この人のユーモアセンスは相性が良くて大好きだが、本作はユーモアに比重が掛かり過ぎ。都会の野戦病院における中年男女達のグダグダ恋愛模様がなかなかにうざたぁい。真相解明もロジック偏重でスリルに欠けるな。。でも嫌いじゃありません。特筆すべきはやはりその、極めてリアリスティックに死と隣り合わせの舞台設定(しかも容疑者達は殺人と裏表の医療行為を続ける!)で論理ずくミステリを書き切った事か。 | |||