皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
していません。ご注意を!
いいちこさん |
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平均点: 5.67点 | 書評数: 541件 |
No.14 | 6点 | 死ねばいいのに- 京極夏彦 | 2021/08/18 19:54 |
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本作に底流する著者の問題認識は有無を言わさぬ鋭さがあり、プロットも非常によくできているが、6人の登場人物は如何にも多すぎた。
プロットのオリジナリティがもたらす衝撃・緊迫感が徐々に薄れていくなか、想定の範囲を出ないエンディングを迎える竜頭蛇尾の作品であり、その点で減点。 もっとコンパクトに作って、エッジを利かせるべきであった点で、もったいない作品 |
No.13 | 5点 | 巷説百物語- 京極夏彦 | 2018/12/07 20:15 |
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短編であることを差し引いても、作品に奥行き・重厚感・リアリティが不足しており、この評価 |
No.12 | 6点 | 百器徒然袋 風- 京極夏彦 | 2018/08/10 13:11 |
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前作の雨と全く同じ性格の作品。
プロットの完成度・堅牢度、コメディとしての面白さは増しているが、本格度はやや低下している。 同じく6点の上位 |
No.11 | 6点 | 百器徒然袋 雨- 京極夏彦 | 2018/03/30 14:16 |
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キャラクター小説としての色彩が強く、長編ほどのスケール感・完成度に達していない点で、百鬼夜行シリーズの同人誌的なスピンオフ作品という評価が妥当だろう。
それでも本格ミステリとして一定の水準に達しているし、何より読物として抜群に面白く、6点の上位 |
No.10 | 5点 | 百鬼夜行 陰- 京極夏彦 | 2017/09/28 11:43 |
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各登場人物の心理を丹念に描写しつつ、それを妖怪とオーバーラップさせる手法は長編と同様。
さすがの冴えを見せているが、紙幅の不足から長編に比してスケールと説得力の見劣りは否めない。 悪い作品ではなく5点の最上位 |
No.9 | 5点 | 邪魅の雫- 京極夏彦 | 2017/08/08 16:49 |
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本シリーズは、これまで「やたら長いが無駄はない」計算された構築美に見どころがあったが、近作はいずれも完成度が低下し、「やたら長くて無駄が多く感じる」。
とりわけミステリとしては、真相解明が論理的とは言えない点に加え、その核が小さい割りには事件・登場人物のいずれもが、余りにも多すぎる。 読物としての主題のまとめ方には唸らされる面もあるが、真犯人(?)の人物造形が魅力に乏しい点も大きな減点材料 |
No.8 | 4点 | 陰摩羅鬼の瑕- 京極夏彦 | 2017/01/26 21:38 |
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作者に本格ミステリを執筆する意思がないのは、もとより承知しているが、それでもなおミステリとしては強く不満が残る作品。
冒頭に提示された謎の不可解性は十分であるが、明かされた真相は衝撃的というより、乱暴な印象が強く納得感がない。 その真相を成立させるための構築力の高さはさすがだが、そのために膨大な紙幅を割くことを余儀なくされ、そのボリュームが読後の不満に拍車をかけている。 榎木津・京極堂が犯行を阻止しなかった理由も、前者は安易、後者は不可解であるし、この真相が関係者の間でこれほど長く露見しなかったというのも無理筋の印象が強い。 読物としての面白さは引き続き一定水準を保持しているが、本作の本質的なあり様を考えれば、批判的な評価とならざるを得ない |
No.7 | 6点 | 嗤う伊右衛門- 京極夏彦 | 2016/08/29 19:11 |
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作品の性格上、本サイトではこれ以上の評価は難しいが、名作「四谷怪談」を現代風にリメイクした手際に、作者のセンスが光る佳作 |
No.6 | 6点 | 塗仏の宴- 京極夏彦 | 2016/04/20 14:34 |
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明かされた真相の衝撃はある程度認めるものの、ミステリとしての核はその1点で、拡げられた風呂敷と本作のボリュームに比して、かなり物足りないというのが正直なところ。
真相解明のプロセスは、京極堂が「知っていた」要素があまりにも強く、解き明かすカタルシスは弱い。 犯行プロセスは、大掛かりすぎ、手間が掛かりすぎ、難易度が高すぎで、めざす効果(犯行動機)との関係で強い違和感。 ストーリー展開は、キャラクターの個性を活かしたキャラ小説の色彩を強め、それがミステリとして評価したときに、前作までにない夾雑物(無駄)と映った。 以上、水準はクリアしているものの、佳作揃いの本シリーズの中では最低の評価とせざるを得ない |
No.5 | 7点 | 絡新婦の理- 京極夏彦 | 2016/02/04 12:05 |
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作者に本格ミステリを執筆する意図がないのは前提として理解しているが、真犯人があまりにもわかりやすく、犯行のフィージビリティがほぼ皆無である点で、本格読みとしては高い評価は付けられない。
本作の要諦は犯行の構造にあり、それを活かすために複雑極まるプロットが組み立てられているのだが、その構造が作品中盤に明らかになってしまうなど、プロットの完成度の点でも疑問。 作品の持つ力作感や1個の読物としての面白さを最大限評価してこの評価 |
No.4 | 6点 | 鉄鼠の檻- 京極夏彦 | 2015/10/26 16:20 |
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禅に関する薀蓄の面白さはシリーズ随一とも言えるレベルにあり、読物としてはさすがのデキ映え。
一方、こうした衒学とプロット、とりわけ犯行の態様と動機にあまりにもストレートに直結していて、作品としての奥行きには欠けている。 舞台設定自体がご都合主義の産物というより現実味に乏しい点、犯行のフィージビリティがほぼ無視されている点、振袖の少女はじめ解明されない謎が存在する点など、本格ミステリとしては不満の残る仕上がり |
No.3 | 7点 | 狂骨の夢- 京極夏彦 | 2015/08/07 20:47 |
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前2作のファンタジックな世界観が影を潜め、よりリアリスティックな、いわば土着的な色彩が濃くなったためか、本格ミステリとしての性格を強めており、その点で嗜好にフィット。
登場人物・事件が丹念かつ網羅的に描写され、披露される衒学と事件が一体感を増していることから、これまで以上に「やたら長いが無駄が少ない」構成となっており、1個の読物としての完成度・リーダビリティは明らかに向上。 一方、提示された謎の怪奇性は抜群なのだが、事件をあまりにも複雑にしすぎたのが大きな難点。 こうした謎がすべて一点に収斂する解決は圧巻であり、伏線の回収の妙は以前にも増して見事ではあるのだが、真相があまりにも壮大すぎてリアリティに乏しく、無理筋の印象が非常に強い。 以上を総合すれば、世評では前2作に見劣ると言われているものの、互角以上の力作と評価 |
No.2 | 7点 | 魍魎の匣- 京極夏彦 | 2015/01/06 20:11 |
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「そう。動機とは世間を納得させるためにあるだけのものに過ぎない。犯罪など―こと殺人などは遍く痙攣的なもんなんだ。
真実しやかにありがちな動機を並べ立てて、したり顔で犯罪に解説を加えるような行為は愚かなことだ。 それがありがちであればある程犯罪は信憑性を増し、深刻であればある程世間は納得する。そんなものは幻想に過ぎない。」 真実はそうなのかもしれないが、動機の合理性を構成要素の一角として認めてきたミステリの歴史と読者に対する強烈なインパクトではないだろうか。 これが著者の持論なのか、主人公の想いなのか、 プロットの一環として淡々と描いたものか、麻耶雄嵩を彷彿とさせるようなミステリのあり様に対する痛烈な皮肉なのか。 この点は他の作品も追いながら確かめたい。 ただこの一節が本作の真相を示唆する秀逸な伏線となっているのは間違いない。 「姑獲鳥の夏」も同様で、「本筋に関係ない蘊蓄が長い」と批判されるが、著者の作品は一見して本筋に無関係と思える部分が、真相を導く伏線やプロットの前提条件となっており、量は多いが無駄ではないというのが公平な評価だと思う。 場面を転々とさせながら事件を断片的に語っていく前半部分も、確かに読み辛い構成ではあるものの、事件解明の効果を最大化するための構成の妙と解し評価。 ただ真相の衝撃度は高いものの、プロットの合理性・納得感、謎解きの論理性、トリックの実現可能性等の点で減点せざるを得ない。 著者がそこで勝負していない点は百も承知のうえで。 作品自体が難解であること、世評があまりにも高いこと等も含め、評価が非常に難しいが、一個の読み物としては評価したうえで本格ミステリとしてはこの評価に落ち着いた。 読み手の志向によって評価が分かれる作品 |
No.1 | 6点 | 姑獲鳥の夏- 京極夏彦 | 2014/07/31 09:34 |
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京極堂が延々と語る薀蓄が単なるペダンティズムではなく、作品世界の説明や真相の伏線として必要不可欠である点等、想定以上に緻密に構成されている印象。
確かに乱暴な点はあるものの、許容できないほどアンフェアだとは思わない。 冒頭の認識論における心と脳の共犯関係は真相を強く示唆するものだし、榎木津の「見たままじゃないか。謎なんかない。馬鹿馬鹿しい。帰る」はミスディレクションとして強烈に機能しており鮮やかな印象。 ただ、使用されている複数のトリックはことごとく、夢オチ同然とまでは言わないまでも、それを持ち出したらどんな不可能犯罪でも説明可能という類のもの。 事態の不可解さが圧倒的であるだけに、それとは裏腹に解決がチープに感じられる点は否めない |