皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
していません。ご注意を!
いいちこさん |
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平均点: 5.67点 | 書評数: 557件 |
No.437 | 7点 | 災厄の町- エラリイ・クイーン | 2020/02/09 16:49 |
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真相判明時におけるプロットの反転の鮮やかさは高く評価する。
評価するのだが、3通の手紙の存在とか、妻の訪問と滞在とか、とにかくご都合主義的な舞台設定が鼻に付くのは如何ともしがたい。 作品全体に中弛みの印象が強く、これだけのボリュームが必要であったかどうかも疑問。 世評の高い作品だが、これ以上の評価は難しい |
No.436 | 5点 | 皇帝と拳銃と- 倉知淳 | 2020/01/25 18:15 |
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2人の探偵の人物造形は奇をてらっているものの、魅力に乏しく、奏功しているとは言い難い。
各短編のロジック・トリックは堅実である反面、全体にインパクトが小さく、サプライズを演出できていない。 最終話の真相は、作品中盤で察することができるレベルであり、完全に想定の範囲内。 全体として悪い作品ではないものの、一読の価値がある水準には達しておらず、5点の下位 |
No.435 | 6点 | スウェーデン館の謎- 有栖川有栖 | 2020/01/21 17:38 |
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足跡のトリックは、フィージビリティにこそ難があるものの、シンプルで鮮やかな斬れ味を評価。
折れた煙突の謎は、あまりにもシンプルで身も蓋もない真相だが、だからこそリアリティは強い。 真犯人は、本作のプロット・人物造形から、まるで意外性がなく、サプライズの点で強く物足りなさが残る。 以上、作者らしさが発揮された硬質な作風で、突出した美点はないものの、水準以上に達していると評価 |
No.434 | 6点 | ガール- 奥田英朗 | 2019/12/28 16:07 |
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「マドンナ」と主題・作風が非常に類似した作品。
人間観察眼の確かさは相変わらず素晴らしいのだが、人物造形と各短編の結末が類型的すぎて、同作より共感性の点で強く見劣りを感じ、この評価 |
No.433 | 4点 | デパートへ行こう!- 真保裕一 | 2019/12/15 10:49 |
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作品の立ち位置は理解しているが、「登場人物が多すぎて整理されていない」「緊迫感がまるでない」「フィージビリティに無理がありすぎる」等、あまりにも減点材料が多く、この評価 |
No.432 | 5点 | スタイルズ荘の怪事件- アガサ・クリスティー | 2019/12/01 17:53 |
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「とにかく犯人を捻ってやろう」と無理をしすぎていて、多すぎるガジェット、細かすぎる手がかり、明快さに欠けるプロット等、その副作用が強く目に付く。
その結果、誰が犯人と言われても納得せざるを得ないような、著者によるお手盛り感満載の作品になっている。 それでいて真犯人を決定づける証拠が無粋で面白味がない。 捜査プロセスにおける論理性の高さ等から5点の最上位と、水準には達しているものの、著者の作品としては凡庸であり、その後のすばらしい成長を逆説的に印象付ける作品 |
No.431 | 3点 | 完全なる首長竜の日- 乾緑郎 | 2019/11/03 20:08 |
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「SCインタフェース」を体験したことにより、それを使用していない時にも「憑依」、つまり意図せざる「センシング」が発生するという設定は、さすがに許容できない、あり得ない。
つまるところ、一人称の叙述で進行する本作の内容がまるごと信頼できないということではないか。 こんな設定なら、いかようにでも着地できるのは当然だろう。 荘子の「胡蝶の夢」、サリンジャーの作品から着想を借りてみたが、著者自身が考案した「SCインタフェース」のご都合主義が構成を破綻させた。 着想は似ているが、傑作「クラインの壺」の足元にも及ばない作品 |
No.430 | 4点 | 天に昇った男- 島田荘司 | 2019/11/03 20:05 |
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1個の物語を構成し、読ませる筆力はあるものの、ラストシーンには愕然とした。
変化球でゴマカシてはいるものの、その本質は夢オチそのものではないか。 読後に本作の全体像を俯瞰すれば、結局ファンタジーの枠組みを借りた死刑廃止論文でしかなく、この評価が妥当と思料 |
No.429 | 5点 | 聖女の毒杯- 井上真偽 | 2019/10/19 11:39 |
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前作より「多重解決」における仮説の数を増やそうとしたことによる副作用が強すぎる。
犯行の機会が限定されにくい毒殺を採用した結果、奇蹟の証明と言えるような、前作ほどの強烈な不可能状況ではなくなってしまった。 常識的には考えられない証拠隠滅が平然と行なわれている点は非常にいただけない。 多くの仮説を成立させるために、大量の伏線を配さなければならず、作品として不自然さが否めない。 以上、構想時点での大きな失敗が強く印象に残る作品 |
No.428 | 6点 | さよならドビュッシー- 中山七里 | 2019/10/19 11:38 |
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まず、青春小説としては叙述の拙劣ぶりが目に余る。
ピアノのパフォーマンスの凄さを伝えようと力が入っているのだが、陳腐な言葉が上滑りし躍るばかりで、読んでいて興が醒めること、甚だしい。 一方、ミステリとしては既視感、フィージビリティの低さ、ご都合主義等を指摘されているものの、一定のサプライズを演出できたと評価してよいのではないか。 毀誉褒貶の激しい作品だろうが、力作感を好意的に評価して6点の下位 |
No.427 | 5点 | 無理- 奥田英朗 | 2019/10/19 11:34 |
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格差社会の実態を迫真のリアリティをもって描き切った、綿密な取材と高い筆力は手放しで評価する。
一方、本作の着地、ラストシーンには落胆した。 散々、発散してきたストーリーを収束させきれず、処置に困って投げ出したというだけにとどまらず、1個の作品全体として何の意味も残さないのである。 「負け組」にカテゴライズされる人々、「いまはそうではないものの、いつしか自分も負け組になるかもしれない」という不安を抱えている多くの人々が本作を読んでいる。 著者はこんな絶望的な、何の救いもない未来を描くことで、こうした人々に何を伝えたいのだろうか。 それがまるで見えてこない。 「よく書けてますね。So What?」という評価にならざるを得ない |
No.426 | 6点 | Wの悲劇- 夏樹静子 | 2019/09/07 16:57 |
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よく考えられたプロットと、手堅いストーリーテリングは買うのだが、本作の核となる法令が紹介された瞬間に、真犯人が看破できてしまうのが大きな難点 |
No.425 | 6点 | 夜よ鼠たちのために- 連城三紀彦 | 2019/09/07 16:55 |
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各作品の終盤における伏線の回収は見事だが、舞台設定・プロットがリアリティに欠け、ご都合主義が目立つ印象からこの評価 |
No.424 | 5点 | 返事はいらない- 宮部みゆき | 2019/08/03 17:23 |
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いずれの短編も上手にまとめているが、ふみ込みが足りない。
リアリティも弱いし、何より胸に迫る、強い印象を残すものが何もない。 軽量コンパクトな作品群 |
No.423 | 6点 | 消えたタンカー- 西村京太郎 | 2019/07/30 19:47 |
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タンカーの消失に秘められた真相は、サプライズこそ不十分であるものの納得性は強く、それがもたらすプロットの反転は鮮やか。
「赤い帆船(クルーザー)」と類似した、スケールの大きいハリウッド映画的なプロットではあるが、その点で本作の方を断然上と評価する。 ただ、タンカーの消失も連続殺人事件もやや大味で、合理性やフィージビリティの面では難があると言わざるを得ない。 それが両者が1個の事件として融合しきれていない、1つのプロットとしてこなれていない印象を生んでいて、減点材料とした |
No.422 | 4点 | 友達以上探偵未満- 麻耶雄嵩 | 2019/07/28 14:23 |
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各短編にはややスムーズさを欠き、無理が感じられる部分もあるものの、本格ミステリとしてそんなにデキが悪い訳ではない。
ただ、それらを1個の作品として見た時に、「オーソドックスではあるが平凡」と映るのである。 悪いところはないのだが、尖った、エッジの効いたところもまたない。 著者への期待感が高すぎるが故に、この評価 |
No.421 | 5点 | エジプト十字架の秘密- エラリイ・クイーン | 2019/07/05 20:31 |
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推理プロセスの一部における論理性の高さには、目を見張るべきところがあるのは事実。
一方、本格ミステリとしての骨格に比してプロットが冗長すぎ、かつ一部に破綻が感じられる点、ご都合主義の印象が強い点等があり、世評ほどの傑作とは感じられなかった |
No.420 | 4点 | 豆腐の角に頭ぶつけて死んでしまえ事件- 倉知淳 | 2019/06/26 18:42 |
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著者の日常の謎系作品は、真相が飛躍する衝撃とリアリティの絶妙なバランス、それを解明するプロセスの論理性が特色であるが、そのいずれにおいても本来のポテンシャルが発揮されていない。
最近の読了作は軒並み同様の評価であり、近年における低調ぶりを裏付ける作品 |
No.419 | 5点 | ○○○○○○○○殺人事件- 早坂吝 | 2019/06/26 18:41 |
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チャラけた作風であり、真相の一部には無理も感じるものの、伏線やトリックには妙味も感じられ、思った以上に本格の出来栄え。
メイントリックも趣向こそ目新しさはないものの、そのために用意された舞台設定や、底流する思想には好感。 ただ問題は、本作が持つ唯一無二のオリジナリティと言うべき「タイトル当て」の解答に全く面白みがなく、その趣向自体に意味がないのである。 「タイトル当て」が我々読者が期待するような、メタレベルのミスディレクションになっている訳ではなく、タイトルが判明したところで作品世界に何らの影響も与えないのである。 これでは話題性を狙って奇をてらったものの、消化不良な作品という誹りは免れないだろう。 以上を総合考慮して5点の上位 |
No.418 | 4点 | 死の枝- 松本清張 | 2019/05/11 18:47 |
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例によっていずれの短編も、小さな瑕疵や偶然から事態を反転させ、真相を判明させるというプロットであるが、犯人の行動に合理性が感じられず、またはご都合主義的に感じられる等、どの作品からも違和感が拭えない。
この点で「黒い画集」はもちろん、「張込み」「影の車」にも遠く及んでおらず、この評価 |