皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
していません。ご注意を!
いいちこさん |
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平均点: 5.67点 | 書評数: 557件 |
No.277 | 3点 | 眩暈- 島田荘司 | 2016/08/29 19:09 |
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冒頭に提示される謎の不可解性・不可能性は相変わらず抜群で、傑作を予感させるのだが、肝心の真相解明でその予感が見事に裏切られた。
明かされた真相は決してアンフェアではないのだが、登場人物の不可解極まる行動や、必然性のない異様な偶然の集積でしかなく、言葉を選ばずに言えば「作者による強引な辻褄あわせ」とさえ感じる。 肝心のメイントリックは、作品中盤以前に明らかにされ、しかもそのヒントが露骨すぎるために、解明されるまでもなく察せてしまう。 その後、膨大な紙幅を費やして解明されるのは、作品の本質から言えば枝葉・ディテールであり、読者が作品冒頭のテンションを維持することは難しい。 作者の高い力量を認めるが故に酷評しているが、「暗闇坂」以降、文字どおり坂を下っていく作者の低迷期を象徴している作品 |
No.276 | 5点 | ボーン・コレクター- ジェフリー・ディーヴァー | 2016/08/20 18:46 |
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犯行プロセスを丁寧に追っていくスタイルには好感が持てたのだが、それが十全に活かされた真相とは思えなかった。
サプライズを優先してやや無理をしたことで、チグハグした印象を与える惜しい作品 |
No.275 | 5点 | 顔 FACE- 横山秀夫 | 2016/08/20 18:44 |
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凡庸な作品ではないものの、1個の読物としても、ミステリとしても、作者の他の作品と比較して見劣る印象 |
No.274 | 8点 | 幻の女- ウィリアム・アイリッシュ | 2016/08/20 18:42 |
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主人公が「幻の女」の特徴を全く記憶しておらず、犯行プロセスがリスキーかつチープであるなど、プロット・真相がややリアリティに欠ける点は難点。
ただ、叙述スタイルとプロットの高い親和性等を活かして、作品世界を反転させ、鮮烈な衝撃を演出した手際は見事。 翻訳物としては異例とも言える高いリーダビリティも評価 |
No.273 | 6点 | マリオネットの罠- 赤川次郎 | 2016/08/01 18:23 |
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考え抜かれたタイトル、完成度の高いプロット等、作者に対する世評をよい意味で裏切る佳作。
サスペンスではなく、本格ミステリとして執筆されていたら、さらに加点の余地もあった |
No.272 | 6点 | 新世界より- 貴志祐介 | 2016/08/01 18:22 |
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近未来の日本を舞台に、古代日本の世界観を壮大なスケールで表現。
リーダビリティや1個の読物としての完成度も高い。 一方、思わせぶりな後日視点からの叙述や、我々の倫理観では考えられないオープンな性行為等から、大胆などんでん返しを期待していたが、それはなし。 執筆に至った作者の課題認識や、「新世界」が指し示すものは見えて来ず、エンタテインメントの域を超える印象はない |
No.271 | 8点 | アクロイド殺し- アガサ・クリスティー | 2016/07/26 14:40 |
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事前にトリック・真犯人を了知したうえでの読書にも耐え得るクオリティは流石の一言 |
No.270 | 7点 | ジェノサイド- 高野和明 | 2016/07/26 14:39 |
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多くのみなさんが指摘されているとおり、ハリウッド映画を彷彿とさせる、緻密でスケール感のあるプロット、高いリーダビリティは評価。
一方、本サイトの位置付けから詳細な言及は避けるが、作者の歴史観に裏打ちされた極端な人物造形やエピソードの挿入には、強く違和感が残り非常に残念な印象 |
No.269 | 3点 | まほろ市の殺人 冬- 有栖川有栖 | 2016/07/11 20:32 |
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当代を代表する一流の作家を揃えながら、あまりにも冴えない作品ばかりの本シリーズ。
本作に関しては、みなさんがすでに指摘されているとおり、サスペンスタッチは買うものの、明かされた真相と解決があまりにもひどく、この評価 |
No.268 | 5点 | まほろ市の殺人 秋- 麻耶雄嵩 | 2016/07/11 20:31 |
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当代を代表する一流の作家を揃えながら、あまりにも冴えない作品ばかりの本シリーズ。
本作に関しては、著者特有のキレ味は感じさせるものの、未回収の事件や犯行の論理性等に瑕疵を感じ、水準には達していない印象 |
No.267 | 5点 | まほろ市の殺人 夏- 我孫子武丸 | 2016/07/11 20:31 |
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当代を代表する一流の作家を揃えながら、あまりにも冴えない作品ばかりの本シリーズ。
本作に関しては、相応の完成度に達しているものの、前半時点で真相をある程度予見できるため、サプライズの演出としては減点 |
No.266 | 4点 | まほろ市の殺人 春- 倉知淳 | 2016/07/11 20:30 |
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当代を代表する一流の作家を揃えながら、あまりにも冴えない作品ばかりの本シリーズ。
本作に関しては、軽妙なストーリーテリングとの親和性があるとは言うものの、やはりトリックが無理筋と言わざるを得ない |
No.265 | 4点 | 名探偵はもういない- 霧舎巧 | 2016/07/04 16:16 |
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稚気あふれる企みは好意的に受け止めるものの、技術不足が強く目立つ印象。
まず文章自体がうまくないのは紛れもない事実。 そのうえでプロット自体が、驚くべき偶然性と合理的に行動しない登場人物に支えられている点が大きすぎる欠点。 ブックカバーの煽り、空白の登場人物表、読者への挑戦状など、過剰に期待感を盛りあげた分、高いハードルを超えられなかった |
No.264 | 7点 | シャーロック・ホームズの冒険- アーサー・コナン・ドイル | 2016/07/04 16:15 |
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本作が佳作揃いであり、探偵小説の歴史に巨大な影響を与えたことは、敢えてここで指摘するまでもない。
一方、探偵の推理があまりにも独善的で、読者が推理に参加する余地がほとんどないなど、1個のミステリとして食い足りなさを感じるのも確か。 本作は、従来型のミステリとは異なり、19世紀英国の社会風俗の見事な描写、超人シャーロック・ホームズはじめ登場人物の個性と気の利いたジョークや皮肉を楽しむべき作品であろう |
No.263 | 5点 | 綺想宮殺人事件- 芦辺拓 | 2016/06/23 17:43 |
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容疑者の人物造形が甘く、明かされた真相に安易さを感じるものの、ミステリのありように一石を投じようとする狙い・意欲は買える。
ただ、その主張を作品に織り込めず作品外で主張するなど、作品として未成熟な印象は否めず、その狙いが成功しているかは疑問。 またリーダビリティが高く、平易であるために、却って「奇書」には当たらない印象 |
No.262 | 6点 | ブラウン神父の童心- G・K・チェスタトン | 2016/06/21 11:31 |
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佳作揃いであることに疑いの余地はないのだが、新本格を渉猟してきた立場からすれば、やはりいささかの「古さ」を感じざるを得ない。
また、原文にあたっていないため、本作に帰責するか否かは不明だが、翻訳の読み辛さは相当なもの。 本作の歴史的価値を考慮せずにこの評価 |
No.261 | 6点 | 鏡の中は日曜日- 殊能将之 | 2016/06/14 17:13 |
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本格ミステリへの深い愛情や、その愛情故にミステリの破壊に向かうスタンスには好感。
もはや作家の立場を超え、評論家の立場から著された作品とさえ感じる。 トリックの二番煎じに対する指摘も散見されるが、作品の性格やプロットにおける位置付けを考えれば、有名すぎる代表作よりは高く評価したいところ。 トリックの副作用であるご都合主義があまりにも強すぎるため、大きく減点してこの評価とするが、上記性格から本格ミステリとしての評価に相応しい作品とは言えない |
No.260 | 6点 | 長いお別れ- レイモンド・チャンドラー | 2016/06/09 16:15 |
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ハードボイルドとは端的に言えば、主人公の一人称視点から登場人物の行動を描くことに主眼を置き、直接的な心理描写を極力廃した作品群と理解。
その点、本作は事実関係を掴み切ることができず、ハードボイルド作品を翻訳で読むことの限界を感じた読書であった。 私が読んだ清水俊二訳とは別に、より逐語訳寄りの村上春樹訳が存在するとのことだが、当該作の評価も賛否両論が分かれている状態。 英文で読むべきであろうが、表面的には意味を取れても、真の意図を過たず汲み取れるとも思えない。 結局、ネイティヴスピーカー以外には、真に理解するのは困難な作品なのだろうか。 当方の理解力不足に起因しており申し訳ない気もするが、格調高い叙述の一端を垣間見たことと、ミステリとしての不完全燃焼を相殺してこの評価 |
No.259 | 6点 | 九マイルは遠すぎる- ハリイ・ケメルマン | 2016/05/24 11:13 |
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安楽椅子探偵モノの宿命とは言え、真相解明に至る推理にかなりの飛躍を感じるし、収録作品数が多いこともあり、手際にやや単調さも感じるところ。
あまりにも有名な表題作は正直期待を超える水準とは言えないが、当該作よりも高い水準にある作品も散見。 全体として一定のクオリティは維持しているが、世評ほどの作品とは感じなかった |
No.258 | 10点 | そして誰もいなくなった- アガサ・クリスティー | 2016/05/17 18:35 |
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舞台設定とプロットの奇想が余人の追随を許さない。
多数の登場人物の描き分けと心理描写の手際、スピード感とサスペンスに満ちた筋肉質な骨格、登場人物の合理性を欠く行動、納得感に欠ける動機等々、そのディテールには毀誉褒貶があろうが、大胆極まる着想がそれらを問題にさえしていない。 明かされる衝撃の真犯人とそのトリック、印象的で美しいラストシーンを含め、ミステリの歴史における1つの金字塔 |