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蟷螂の斧さん
平均点: 6.07点 書評数: 1573件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.25 6点 美術ミステリ- 松本清張 2022/06/07 09:16
①真贋の森(1958) 7点 俺は見事な贋作を発見した。その画家を探し出し、ある計画を実行に移すが・・・自尊心、心の機微
②青のある断層(1955) 6点 一流の画商は青年の持ち込んだ我流で稚拙な絵を買うという。その意図は?・・・インスパイア
③美の虚像(1966) 8点 若手美術評論家は、画壇の権威である遠屋の鑑定書つき素描画が贋作と指摘した。なぜ、遠屋は偽物を本物と折紙をつけたのか?・・・過去の出来事
④与えられた生(1969) 4点 画家は女性編集者のおかげで医療ミスから救われた。やがて既婚の彼女に惹かれてゆくが・・・愛憎劇 

本作に登場した主な画家
①浦上玉堂
③ファン・ダイク、ドラクロワ、セザンヌ

No.24 8点 霧の旗- 松本清張 2021/12/02 16:50
映画化が2回、TVドラマ化が9回と人気作品ですね。11名の女優さんが桐子役を演じているわけですが、その一覧を見て一番しっくり来たのは堀北真希さんでした(笑)。この逆恨みと理不尽さが本作の肝ですね。そしてラスト。それは今の時代とは異なり、昭和30年代の女性の決意であり、本作にとってなくてはならないものでしょう。

No.23 4点 ガラスの城- 松本清張 2021/03/13 09:41
(ネタバレあり)



二部構成
①「三上田鶴子の手記」~的場郁子は入社して20年にもなるが、あらゆる男性社員を軽蔑している。吝嗇で貯蓄に熱心な彼女・・・~
②「的場郁子のノート」~三上田鶴子は、性質に可愛げがないうえに、服装の好みも野暮ったくて陰気な感じ・・・~
 さて、どちらに肩入れするか?(笑)短篇「草」(黒い画集第3集に所収)と同様に○○ものに挑んだようですが失敗ですね。アリバイトリックのためのバラバラ死体の謎は、まあどうでもいいようなという感じでした。

No.22 6点 事故- 松本清張 2021/03/11 20:43
①事故 5点 二つの殺人事件の関連性は?というものですが、構成が面白くなかった。謎解きものでもないし、サスペンスとも言えないような
②熱い空気 7点 「家政婦は見た!」の原作となった小説とは知りませんでした。殺人などは起こりませんが、家政婦の悪意ある覗き趣味が現在のイヤミスに通じるかも

No.21 6点 陸行水行- 松本清張 2021/03/11 20:41
①形 6点 道路計画の土地を売らないのは、そこに死体が埋められているのでは?逆転の発想が面白い 
②陸行水行 5点 邪馬台国はどこ?結末はミステリー的には面白くない。歴史に興味のある方にはお薦めなのかも 
③寝敷き 5点 心中事件に刑事は疑問を持つのだが・・・へえ~そんな事例があるんだ 
④断線 6点 うまい死体隠し場所を見つけ安心したのだが・・・男のエゴ丸出しの作品

No.20 5点 黒い画集3- 松本清張 2020/08/31 18:04
本書は、新潮文庫版「黒い画集」では未掲載の2作品が掲載されています。
①凶器 6点 別途評価済み 後書きでは、クリスティ女史にも同様な作品があるとのことで調べてみましたが、それは単なる凶器の使用でトリックではなかったようです。
②濁った陽 6点 1960年の中編作品。汚職事件に絡むアリバイ崩しです。出だしは「点と線」を彷彿させます。トリックは既視感のあるもので、後発は何点かの作品は覚えていますが、先発があるかどうかあやふやです。
③草 4点 病院院長と婦長が駆け落ち?。あるいは無理心中?。○○を狙ったのでしょうが大失敗。慣れないことはやらない方がよかったような(笑)。

No.19 7点 張込み- 松本清張 2020/08/15 14:00
唇の厚い男が二編に登場しています(笑)。⑦⑧について、背景・テーマは社会派的ではありますが、短篇のため深く掘り下げられてはいなかったですね。

①張込み 7点 刑事のやさしさと女の性 
②顔 7点 人間の記憶なんて・・・皮肉 
③声 7点 当日、雨が降っていたとは・・・アリバイ崩し 
④地方紙を買う女 6点 社会派の原点か? 犯罪に至る動機 
⑤鬼畜 6点 TVドラマの方が泣けるようです 心理描写 
⑥一年半待て 8点 女性評論家としては「それは推論でしょ」と言いたくはなる(笑)これぞ短篇の切れ味 どんでん返し 
⑦投影 6点 事故死には、やはりこれだけ手数をかけなければならないだろう 物理的トリック 
⑧カルネアデスの舟板 6点 法的な緊急避難ではなかった点が残念。男心と秋の空 

No.18 6点 告訴せず- 松本清張 2020/08/01 13:44
主人公と温泉旅館の女中・お篠との出会いは、「飢餓海峡」(1963年水上勉氏)を彷彿させます。また「赤いダイヤ」(1962年梶山 季之氏)を意識してか?前半はかなり「小豆相場」にページを割いています。株やFXなど相場に興味のある方は楽しめるかも。しかし、その結果、後半のエピソードや解決篇がやや大雑把になってしまった印象を受けました。そういえば、昔、金融機関では偽名預金もOKだったんですね。


【ネタバレ】記憶喪失のエピソードはトリックとしても面白かったので、もう少し騙し合いの場面を見てみたかった(笑)。

No.17 8点 黒い画集- 松本清張 2020/01/26 10:42
①「遭難」10点 プロット、ロジック、心理描写、ラストと申し分なし。
②「証言」6点「嘘には嘘が復讐する」には思わずニヤリ。
③「天城越え」9点 30年前を思い起こすシーン。その余韻は味わい深い。
④「寒流」7点 上司に愛人を取られ、そのうえ左遷までさせられた男、さてどうする?。笑えます。
⑤「凶器」6点 ロアルド・ダール氏の「おとなしい凶器」のオマージュなんでしょう。
⑥「紐」9点 二転三転する真相。一捻りがにくい。
⑦「坂道の家」6点 キャバ嬢に貢いだ中年男の悲哀。ミステリー的には弱いが、男心はわかる、わかる(笑)。

No.16 8点 疑惑- 松本清張 2019/11/13 19:48
裏表紙より~『雨の港で海中へ転落した車。妻は助かり、夫は死んだ―。妻の名は鬼塚球磨子。彼女の生い立ち、前科、夫にかかっていた高額な生命保険についてセンセーショナルに書き立てる記者と、孤軍奮闘する国選弁護人の闘い。球磨子は殺人犯なのか?その結末は?』~

 TVなどでは、悪女・鬼塚球磨子がメインとして描かれてますが、原作では記者がメインです。原題「昇る足音」の意味がよく分かりました。当時(1982年)の車は、水圧で窓ガラスが割れてしまったんですね。車内にあったスパナや、脱げた靴などの小道具の扱い方が巧い。本格ものの匂いがプンプン(笑)。なお、ジャンルはリーガルがないのでサスペンスに一票。

No.15 6点 内海の輪- 松本清張 2019/11/11 18:10
(再読)裏表紙より~『新進の考古学者・江村宗三は、元兄嫁の西田美奈子と十四年ぶりに再会し、情事を重ねていた。彼女は二十も年上の男と再婚していた。ある日、宗三は美奈子から妊娠を告げられる。夫と別れ、子を産む決意だという。順風満帆の生活が瓦解する恐怖に、やがて宗三の心に殺意が芽生えていき……。』~
 これほど手垢のついた内容を小説にするということは、よほどの自信の表れなのでしょう。解説(阿刀田高氏)で、著者の作品には考古学者、不倫、偶然が多いと言っています。本作も偶然が重要な要素なのですが、これは許せる範囲(笑)。殺人までの心理描写よりも、事件後の考古学者らしい心の動きがポイントですね。

No.14 5点 Dの複合- 松本清張 2019/11/06 18:12
(再読)この道はあまりにも遠回りではありませんか?。まあ、「一気に殺すよりも、その秘密を知る第三者が、この世にいることを思わせて、徐々に恐怖に陥れたほうが効果が強い。」と犯人に言わしめてはいますが・・・。浦島伝説や羽衣伝説などを絡ませていますが、その効果は如何に。

No.13 3点 花実のない森- 松本清張 2019/11/04 17:14
(再読)裏表紙より~『会社員の青年・梅木隆介はある夜、夫婦と名乗るヒッチハイクの男女を車に乗せた。高貴さをも漂わせる美女と粗野な中年男は、まるで不釣り合いなカップルだった。好奇心が燃え上がる梅木は、車に残された万葉の古歌が彫られたペンダントから女の正体を突き止めようとする。だがそれは、甘い死の香りが漂う追跡行だった。謎が謎を呼ぶロマンチック・サスペンスの傑作!』~
今では単なるストーカーの話ですね。身元の分かるような小道具を、二人とも車の中に落としていたというのは、偶然過ぎて笑ってしまいます。そして謎の女性に、どうしてそんなに駆り立てられるのかが伝わってこないのが弱いところです。そしてその正体も、うーんどうなんでしょう・・・といったものです。残念。

No.12 6点 時間の習俗- 松本清張 2019/11/01 19:00
(再読)本作は、「点と線」と同様に書かれた時代(1962年)を考慮しなければならないでしょう。その時代でなければ成立しないような物理トリックがあります。反対に心理トリックはいつの時代でも通用するのが強みかもしれません。今となってはトリックよりもアリバイ崩しの過程や、崩しの爽快感を楽しむ方がベターな作品と言っていいでしょう。

No.11 8点 球形の荒野- 松本清張 2019/10/27 12:51
(再読)有名どころでは、本作が一番著者の力量が発揮された作品ではないかと思います。善悪の反転など、ストーリーテリングが秀逸ですね。またラストが泣かせます。なお、TVドラマ化の回数は今のところ「砂の器」「ゼロの焦点」「黒い樹海」などを抑え第一位。このあたりも作品の質の良さを表しているのでは?。ヒロイン役では栗原小巻さんが一番印象に残っています。

No.10 4点 波の塔- 松本清張 2019/10/22 08:20
(再読)~愛した女性は被疑者の妻だった。衝撃の事実は若き検事を悩ませる。現代社会の悪に阻まれる悲恋を描いたロマンチックサスペンス~とありますが、サスペンス色はほとんどありません。純愛不倫物語といって良いのでしょうか。 本作は「女性自身」に掲載されたもので、当時はこういったものが受けたのでしょう。時代を感じます。なおミステリーとしての採点です。

No.9 6点 黒い樹海- 松本清張 2019/10/20 17:04
(再読)~仙台へ旅行のはずの姉が、浜松のバス事故で死んだ。不審に思う妹が姉の交友関係を探る。~
社会派と言われる諸作品と趣を異にしており、旅情ミステリーに分類されるのか?と思います。本作は「婦人倶楽部」に掲載されたもので、当然と言えば当然なのですが、やはり女性を意識して書かれた内容になっています。「波の塔」(1960年)や「花実のない森」(1964年)も同様ですね。著者は「女性心理を描くのは得意ではない」と言っていたらしいのですが、そんなことはありません。なお、題名の「樹海」は登場しませんが、同年発表の別の作品で重要な舞台となっています。

No.8 5点 蒼い描点- 松本清張 2019/10/19 12:39
(再読)本作は若者向け雑誌に連載されたもので、著者らしい重厚さがあまり感じられないロマンチック・ミステリー風味な作品です。ジャーナリストの変死に始まり、その妻および女流作家とその夫が行方不明となる。章題は「誰もいなくなった」・・・と言っても本家のような展開にはなりません(笑)。

No.7 6点 眼の壁- 松本清張 2019/10/17 20:28
(再読)手形のパクリ事件は2年後(1960年)に発表された「白昼の死角」(高木彬光氏)の方が印象に残っています。本作の印象はやはり死体トリック!!(笑)。この作品が経済犯罪ものの走りであったようですね。「点と線」と本作で著者の人気が不動のものとなり、この作品の背景が以後に発表された「砂の器」に発展していったものと思います。

No.6 8点 小説帝銀事件- 松本清張 2019/10/05 19:37
(再読)「BOOK」データベースより~『昭和23年1月26日、帝国銀行椎名町支店に東京都の腕章をした男が現れ、占領軍の命令で赤痢の予防薬を飲むよう告げると、行員らに毒物を飲ませ、現金と小切手を奪い逃走する事件が発生した。捜査本部は旧陸軍関係者を疑うが、やがて画家・平沢の名が浮上、自白だけで死刑判決が下る。膨大な資料をもとに、占領期に起こった事件の背後に潜む謀略を考察し、清張史観の出発点となった記念碑的名作。』~
著者は、平沢氏には毒物の知識がなく犯行は不可能と冤罪を主張しています。そして真犯人は旧陸軍関係者である可能性を指摘しています。
読後の感想~平沢氏は実行犯ではないと考えますが、金品処理についての疑いは晴れないというのが正直な気持ちです。それは強奪された小切手の裏書の筆跡が本人とものと鑑定されていることや出所不明の預金があったことなどです。旧刑訴法により、自白と状況証拠のみで死刑確定しており、その後の再審請求はすべて棄却されていることは残念な点です。当時のGHQの圧力は相当なものであったと感じられます。
なお本作品(1959年)後の1985年にGHQの秘密文書が公開されました(読売新聞)。①毒殺犯の手口が軍科学研究所の作成した毒薬に関する指導書に一致。②犯行時に使用した器具が同研究所で使用されたものと一致。③1948年3月、GHQが731部隊の捜査・報道を差し止めた。
以上のこと、および生き残った目撃者の1人が一貫して氏は犯人ではないと証言していることより、実行犯ではないのは確実でしょう。しかし、この2年後の1987年5月、氏は刑務所で天寿を全うしました(享年95歳)。

蟷螂の斧さん
ひとこと
ミステリーは、作家中心では読んでおらず、話題作や、ネットでのお勧め作品を読んでいます。(2013.6追加~本サイトを非常に参考とさせてもらっています。現在は、読後、類似なトリック・モチーフの作品を探した...
好きな作家
ミステリー以外で「石川達三」、短編で「阿刀田高」、思想家で「荘子」
採点傾向
平均点: 6.07点   採点数: 1573件
採点の多い作家(TOP10)
アガサ・クリスティー(50)
折原一(47)
中山七里(33)
松本清張(25)
島田荘司(20)
歌野晶午(19)
東野圭吾(19)
パトリック・クェンティン(18)
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阿刀田高(18)