皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
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蟷螂の斧さん |
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平均点: 6.09点 | 書評数: 1668件 |
No.628 | 6点 | 国会議事堂の死体- スタンリー・ハイランド | 2014/07/12 09:29 |
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裏表紙より~『英国国会議事堂の時計塔、ビッグ・ベンの改修工事中、壁の中からミイラ化した死体が発見された。後頭部を打ち砕かれ、着衣等から100年前のものと推定されたこの死体をめぐって検屍裁判が開かれたが、事件に興味を感じた若手議員ブライは調査委員会を組織し、謎の解明に乗りだした。やがて少しずつ集まりだしたデータから、19世紀の国会議事堂建設をめぐる秘話と、激しい愛憎の物語が次第に明らかにされていく。個性豊かな国会議員の面々が推理の饗宴を繰り広げる「時の娘」風の歴史推理の前半から、後半にいたって物語は思わぬ展開を見せはじめる。読み巧者フランシス・アイルズ(アントニー・バークりー)がただ一言「真の傑作」と評した50年代の知られざる名作』~ 「時の娘」(1951)<英国ベスト1位、米ベスト4位>をかなり意識して書かれた作品であると思います。会話の中でも「時の娘」(リチャード3世が題材)が出てきます。3分の2を占める前半、100年前の事件が冗長であり、読みにくい文章であるので我慢が必要か?(笑)。後半、確固たる推論が反転するさまが本作の最大の見せ所ですね。ラストはある人物の機転による一本勝ちといったところでしょうか。 |
No.627 | 4点 | 虎の首- ポール・アルテ | 2014/07/08 10:01 |
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アンチミステリーなのか?。本作のプロット自体が読者にとって面白くはないのでは?。1部、2部と別れているところがミソなのかもしれないが・・・。読み物としては決してつまらなくはない(いろいろな謎が提示される)のですが、読後は脱力感が残ってしまいます。ラストでのツイスト博士の行動もアンチミステリー的なのかも。 |
No.626 | 5点 | 武家屋敷の殺人- 小島正樹 | 2014/07/06 12:14 |
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満腹過ぎて、どれが美味しかったのか判らなくなってしまいました(笑)。2章の玲子の独白あたりは非常に楽しめましたが、どんでん返しは、かなり無理では?の印象。三津田信三氏の「首無・・・」を読んだ印象と似ています。過剰な反転で訳が分からなくなってしまいました。それ以来遠ざかっています(苦笑)。 |
No.625 | 5点 | 殺す手紙- ポール・アルテ | 2014/07/04 18:49 |
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ストーリーはサスペンスフルで非常に楽しめた。だだ、ラストのどんでん返しは有名作品を思い起こさせるもので減点。伏線がほとんどないので唐突な感じを受ける。むしろ、どんでん返しがない方が作品として面白かった。 |
No.624 | 6点 | 終わりの感覚- ジュリアン・バーンズ | 2014/07/02 12:09 |
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裏表紙より~『穏やかな引退生活を送る男のもとに、見知らぬ弁護士から手紙が届く。日記と500ポンドをあなたに遺した女性がいると。記憶をたどるうち、その人が学生時代の恋人ベロニカの母親だったことを思い出す。託されたのは、高校時代の親友でケンブリッジ在学中に自殺したエイドリアンの日記。別れたあとベロニカは、彼の恋人となっていた。だがなぜ、その日記が母親のところに?―ウィットあふれる優美な文章。衝撃的エンディング。記憶と時間をめぐるサスペンスフルな中篇小説。2011年度ブッカー賞受賞作。』 60代になった主人公トニーの青春の回想録で、純文学的な作品でした。前半はイギリスの60年代の若者の性意識を中心に描かれています。それは日本と同じようなものだったので逆に驚きました(笑)。哲学的な言い回しがありますが、あまり気にせずに読むことができます。後半はミステリーらしくなり、遺贈されるはずの友人エイドリアンの日記を元恋人ベロニカは渡そうとしません。ベロニカと会うのですが「あなたは、昔と同じで何もわかっていない」といわれ、無視され続けるのです。なぜベロニカの母親が日記を持っていたのかの謎がラストで明かされます。殺人のない作品もたまにはいいのかも。 |
No.623 | 4点 | コリーニ事件- フェルディナント・フォン・シーラッハ | 2014/07/01 19:20 |
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本来、重い題材なので、もっと他に料理の仕様(サスペンスフル等)があったような気がします。感情の起伏や葛藤が描かれなていないため、単に歴史的事実を知らされたという感じです。教科書を読んでいるようで、小説としての味わいを感じることが出来ませんでした。残念。 |
No.622 | 5点 | 緑衣の女- アーナルデュル・インドリダソン | 2014/06/30 20:26 |
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裏表紙より~『住宅建設地で発見された、人間の肋骨の一部。事件にしろ、事故にしろ、どう見ても最近埋められたものではない。現場近くにはかつてサマーハウスがあり、付近にはイギリス軍やアメリカ軍のバラックもあったらしい。住民の証言の端々に現れる緑の服の女。数十年のあいだ封印されていた哀しい事件が、捜査官エーレンデュルの手で明らかになる。CWAゴールドダガー賞/ガラスの鍵賞同時受賞。究極の北欧ミステリ。』~ 家庭内暴力を扱った社会派ミステリーといえるのかも・・・。救いのないような家族の描写と捜査が交互に語られます。発見された骨が誰なのかという謎はあるのですが、読者に推理させるという形はとっていません。捜査の状況が淡々と語られてゆくので、推理好きの方には不向きな作品かもしれません。 |
No.621 | 7点 | 緋色の記憶- トマス・H・クック | 2014/06/28 07:49 |
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文学的要素の強い作品でした。老弁護士の回想録なのですが、前半は事件の内容が小出しなのでイライラさせられます(苦笑)。ミステリー部分の真相は、半分当たり、半分外れといったところでした。「言葉の綾」で人生までもが大きく変わってしまう恐ろしさが伝わってきました。 |
No.620 | 5点 | 三幕の殺人- アガサ・クリスティー | 2014/06/25 19:02 |
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最初の殺人の動機は特に問題なし。全体的にはプロットもよし、恋愛の駆け引きもあり面白い作品であると思います。大幅減点対象は、第2の殺人での執事の絡み方でした。 |
No.619 | 4点 | ダイナー- 平山夢明 | 2014/06/23 13:00 |
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『ひょんなことから、プロの殺し屋が集う会員制ダイナーでウェイトレスをする羽目になったオオバカナコ。そこを訪れる客は、みな心に深いトラウマを抱えていた。一筋縄ではいかない凶悪な客ばかりを相手に、カナコは生き延びることができるのか? 次々と現れる奇妙な殺し屋たち、命がけの恋──。』 第13回(2011)大藪晴彦賞。第28回日本冒険小説協会大賞。 脱出できないダイナーで、いつ殺されてもよいような状況のカナコ。助けてくれるはずの殺し屋もやがて・・・。人がバタバタ殺されるグロ描写には、やや食傷気味となります(苦笑)。サスペンス感や主人公の心情がいま一つ伝わってこないのが痛いところ。ラストもよくあるパターン?。他サイトで評価が高かったので残念な結果。 |
No.618 | 6点 | 霧の迷宮から君を救い出すために- 黒田研二 | 2014/06/22 10:29 |
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裏表紙より 『動くものが見えない・・・。高原に建てられた災害用のシェルター。その近くで“僕”は暗闇の中、何者かに襲われて崖から転落し、頭を打った。包帯が取れたとき目の前に広がったのは、一面、白い霧の世界。脳を損傷し、動くものを認識できなくなってしまったのだ。そして、密室のシェルターの中からは女性の死体が発見されて…。霧は最後に晴れ渡る!』 著者らしい特異設定(六秒間ごとにしか現実を認識できない。動くものが見えない)でのフーダニットものです。前半は、僕(28歳)の従妹(結婚して子供もいる)を慕う気持ちと、事故の見舞に来てくれる女性に恋をするという恋愛物語のようでもある・・・。中盤は活劇もあり後半へ。ラストは特異設定と本格ものが融合した解決へと導かれます。ブラックな味わい(好きなタイプ)が待ち受けていました。 |
No.617 | 5点 | 萩・津和野殺人事件- 中町信 | 2014/06/20 12:42 |
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裏表紙より『サラ金から3千万円が強奪され、逃走中に犯人が交通事故死した。だが、現金は車中から発見されなかった。当然、事故現場を目撃した3人の男女に横取りの嫌疑がかかる。しかし、無実を主張する容疑者たち。やがて、1人が自殺をとげ、1人は草津行きの特急列車で刺殺される。残る1人が観光で萩へ向かった時、事件は…。小京都を舞台に連鎖する3千万円をめぐる殺人。』 意外な真相・犯人で読者を騙してやろうという意気込みは感じられるのですが、メインの事件(猫ババ)そのものがあまり面白くありませんでした。連結列車のトリック、ダイイングメッセージなどありますが、あまり驚きはありません。まあ、意外な真相ではあるのですが、伏線が弱かったような気がします。 |
No.616 | 5点 | 密室の鎮魂歌- 岸田るり子 | 2014/06/18 11:06 |
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真相は面白いと思いましたが、全体的に後出しの印象が強いですね。伏線が弱いことと、探偵役が不存在?(推理が弱い)の点が原因か?。倒叙物であれば、第2の密室を仕掛けることにより、犯人を追いつめるということが読者に伝わるのですが、ミスリードのためとなればあまり効果はなかったような気がします。密室自体も面白くはありませんでした。女性の心理(嫌な面)はさすがにうまく描かれています。 |
No.615 | 4点 | ふたり探偵―寝台特急「カシオペア」の二重密室- 黒田研二 | 2014/06/16 08:42 |
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裏表紙より『ムック本取材のための北海道旅行からの帰路。向河原友梨ら取材班は、寝台特急カシオペアの車中にいた。一方、友梨の婚約者で刑事のキョウジは、連続殺人鬼Jを追っていた。が、殺人鬼の罠にはまり、意識不明の重体となってしまう。やがて、友梨の頭の中に彼の声が聞こえてきて…。Jはこのカシオペアに乗っているというのだ』 SF的設定は好みではないのですが、その点はあまり気にならず読むことはできました。真相はあるトリックの応用で、面白い試み(氏の特徴が出ている)とは思いますが、いまいち納得性(リアリティ)の面でこの評価。 |
No.614 | 4点 | ドーヴァー4/切断- ジョイス・ポーター | 2014/06/13 08:19 |
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評価に悩む作品。短編であれば、ブラックユーモアとしてラストのオチ(終わり方)は高評価としたいところ。結構好きなタイプです。ただし、長編であるので犯人?側の心理描写(面白い動機)や、ある程度の証拠(伏線でも可)が欲しい。ダメ刑事のひらめきだけでは物足りない感じがしました。 |
No.613 | 7点 | 鬼火島殺人事件- 天樹征丸 | 2014/06/09 16:41 |
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中表紙より『殺戮の光景!探偵は、鍵穴ごしにそのすべてを確かに目撃したのだ。なのに・・・。駆けつけた管理人が、合鍵でドアを開けると、そこには何もなかった。誰もいなかった。煙のように、幻のように、全てが消え失せていたのだ。この”密室”から。青ざめた死体も、恐るべき殺人者さえも・・・。』
密室の物理的トリックはあまり好みではありませんが、本作は初物で楽しめました。意外な犯人も目新しいものではないのですが、見せ方や伏線の使い方がうまいと感じました。 |
No.612 | 5点 | 二枚のドガの絵- リチャード・レビンソン&ウィリアム・リンク | 2014/06/09 08:46 |
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初のコロンボものです。犯人の計画は、3か月かけたもので自信満々なのですが、かなり杜撰なところがありましたね。完全犯罪を崩すところを期待したので残念です。犯人を追い込むこと(逮捕)が主体のようで、犯人が苦労した?アリバイも崩していないし、共犯者の殺害にも触れられず終了。自白させるということなのでしょうか。物足りなさが残りました。まあ、TVを見ているようで面白いのですが・・・。 |
No.611 | 5点 | 襲名犯- 竹吉優輔 | 2014/06/07 22:41 |
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第59回江戸川乱歩賞受賞作。「デス・コレクターズ」「二流小説家」で連続殺人者の信奉者が描かれており、日本ではこの手の作品は難しいのでは?と思っていたら本作がありました(笑)。
「BOOK」データベースより『十四年前、ある地方都市で起きた連続猟奇殺人事件。逮捕後、その美貌と語り口から、男には熱狂的な信奉者も生まれたが、やがて死刑が執行される。彼の「死」は始まりにすぎななかった。そしていま、第二の事件が起きる―。』 著者の意気込みが感じられる作品で、ストーリーは面白いと思います。しかし、冗長な部分があること、回想が読みにくいところが難点でした。動機の異常性を読者に納得させる描き方や叙述テクニックを磨けばという感じがしました。 |
No.610 | 6点 | 煙の殺意- 泡坂妻夫 | 2014/06/05 14:52 |
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①赤の追想~恋愛の機微とは?②椛山訪雪図~ダリのような騙し絵か?③紳士の園~浮浪者の死体までも片づけられる公園とは?④閏の花嫁~閏年の結婚式の意味は?⑤煙の殺意~火災と殺人の関連は?⑥狐の面~狐の憑き物の退治方法は?⑦歯と胴~完全犯罪成立か?⑧開橋式次第~15年前の事件とそっくりだが? ⑦が一番の好みですね。阿刀田高氏の最もお気に入りの作品(1978)と同じモチーフでした。氏のファンとしては、本作より1年前の発表でホッとしています(笑)。④はロアルド・ダールの「奇妙な味」的な雰囲気。②はダリの騙し絵が取り上げられていますが、マニアックな作品で同ファンとしては、おもわずニヤリとしてしまいました。短編は余程のインパクトのある作品でないと高評価は付けづらいので、やや辛目です。 |
No.609 | 6点 | 白い僧院の殺人- カーター・ディクスン | 2014/06/01 19:29 |
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雪密室の古典ということで拝読。先駆的ということでの評価です。雪密室のトリック(トリックとは言えないのかも?)のため、犯人設定などプロットにかなり無理があるように思いました。犯人が仕掛けたトリックを探偵が解き明かすに醍醐味を感じる派なので、そういう点では物足りなかったですね。あと、文章が読みにくい(スチエーションが頭に入ってきませんでした<苦笑>)。 |