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[ ホラー ]
汝の名
明野照葉 出版月: 2003年08月 平均: 6.00点 書評数: 3件

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中央公論新社
2003年08月

中央公論新社
2020年12月

No.3 4点 2014/08/28 09:47
主たる登場人物は、陶子と久恵の二人。
陶子は人材派遣会社の経営者。見た目が派手で、やや気分屋のところがある。久恵は精神的に弱く、人間関係のもつれで会社を辞め、陶子のマンションに居候し、陶子に仕え、家事全般をこなす。そんな二人だから、家の中でも上下関係ができ、いわばサド、マゾの間柄になっている。そして、その関係が徐々に変化していく・・・。

途中までは読みやすいも退屈な感もある。中ほどからは、読み手が感じられる恐怖感はほどほどとしても、サスペンスでうまく引っ張りながら読ませてくれる。
本サイトでは好まれないタイプの小説なのだろうが、個人的には守備範囲に入るし、夢中にもなった。

ただ不満も多い。
陶子が経営する人材派遣会社は、依頼人を見栄えよくするための恋人役や、老人が家族旅行を装うための孫娘役などの演技者を派遣する、かなり胡散臭い派遣業。この設定に意味があるのだろうか。演技者と依頼人との間でやがて心が通じ合うようになるラヴ・コメディの類だったらいいのだが。
中途に明かされるサプライズ(というほどでもないが)は、ほとんど意味がなく、なくてもいい。でもこれが売りのようでもある。最後のオチも読みやすい。
女性二人は見かけも性格も対照的でわかりやすく、そこが読者を惹きつけてくれるが、男性たちは、誰が誰だか記憶にとどめるのも困難。男はどうでもいいと思って描いたのか。

で、結論は。
読んでいてその場は楽しめるが、ただそれだけ。中短編で十分。
別々の事象を強引に結びつけ、さらに枝葉をつけて長編のプロットを構築したという感じがした。

No.2 5点 蟷螂の斧 2014/07/30 18:17
裏表紙より~『若き会社社長の麻生陶子は、誰もが憧れる存在。だが、その美貌とは裏腹に、「完璧な人生」を手に入れるためには、恋も仕事も計算し尽くす女だ。そんな陶子には、彼女を崇拝し奴隷の如く仕える妹の久恵がいた。しかし、ある日から、二人の関係が狂い始め、驚愕の真実が明らかになっていく…。』~                                                              女性の嫉妬心、執念深さを描いたホラー系作品でした。スラスラと読め楽しめました。中盤で題名に係るプチサプライズとラストでも同様のサプライズが用意されていますが、おまけのようなものでしょう。

No.1 9点 akkta2007 2009/09/03 12:57
性格が全く違う対照的な2人の女性(陶子と久恵)が登場するミステリーというよりも、サスペンスに近い作品であった。
女の情念というか容姿へのコンプレックス等に対する描写が読んでいて非常に上手いなと何度も思った。
作品の展開の中で、亮介に心を奪われてからの2人の関係の変化と物語の進展、進み具合にはとても感心した。
男勝りの気性(陶子)ではあるが、本当に恋をする設定などはこの作者ならではのうまい書き方であると思う。
必ずしも陶子の生き方が勝ち組ではないということなんであろうが・・・・
本作で出てくるESTの業務内容は、なんかすぐそこに本当に実在してそうな感じであった。
薬物使用はもちろんのこと、久恵が老人を手玉に取る過程は現実味を感じさせる、ゾクゾクさせるような展開であった。
それにしても作品の途中の展開はある程度予想出来たが、最後の結末までは読みきれなかった。
“女はこわい”と認識を深めた1冊であり、非常に満足できた作品であった。


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明野照葉
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