皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
していません。ご注意を!
蟷螂の斧さん |
|
---|---|
平均点: 6.09点 | 書評数: 1667件 |
No.1187 | 5点 | 終着駅殺人事件- 西村京太郎 | 2019/03/11 09:44 |
---|---|---|---|
トラベル・ミステリー以前の作品から比べると、トリックはかなり落ちると思います。というより、警察の怠慢さが際立ってしまった作品ですね。動機の謎をメインにして、倒叙式にしたら大傑作になったかも。まあ、雰囲気は良かったです。なお、血液型の問題は1980年でもこれが常識だったのかなあ?。 |
No.1186 | 6点 | グリーンリバー・ライジング- ティム・ウィロックス | 2019/03/08 10:48 |
---|---|---|---|
「BOOK」データベースより~『あらゆる悪が正気を飲み込もうとするグリーンリバー刑務所。完全に秩序を失った囚人たちの暴動は、情夫をめぐる痴情のもつれから始まった。―本当に狂っているのは誰なのか―暴動で仮釈放が霧散した囚人医師は、ぎりぎりの理性をゆるがせながらも、巨漢の精神分裂症患者の「啓示」の声に導かれ、善悪の彼岸を彷徨する…。黙示録的プリズン・サスペンス。』~
監獄の暴動を描いた作品です。バイオレンス&セックス描写は半端ない(笑)。筆力があります。エンタメ要素は8点から9点献上。その点から、映画化の企画があったようですが頓挫したみたいです。よほどオブラートに包まないと無理か?。ラストは意外と爽やかでした。 |
No.1185 | 5点 | 女相続人連続殺人事件- 山村美紗 | 2019/03/03 14:41 |
---|---|---|---|
会話主体の文章で読み易い。2回ほどTVドラマ化されているようです。ラスト近くで、サブストーリーが方向違いのようになってしまい、肩透かしを食らった感じ。メイントリック(真相)は、容疑者が少ないので分かり易いかも。動機はどう見てもご都合主義でしょう(苦笑)。 |
No.1184 | 5点 | 亜愛一郎の狼狽- 泡坂妻夫 | 2019/03/02 20:31 |
---|---|---|---|
(東西ミステリーベストの16位)
①DL2号機事件(4点)・・・奇妙な論理 ②右腕山上空(5点)・・・マジックショー的 ③曲った部屋(8点)・・・本格的 ④掌上の黄金仮面(4点)・・・勘違いされた男 ⑤G線上の鼬(7点)・・・雪密室 ⑥掘り出された童話(4点)・・・暗号 ⑦ホロボの神(5点)・・・文明の差 ⑧黒い霧(5点)・・・アリバイ バラエティに富んでいますが、これは!というような突出したものはなかった。著者の作品では幻想的な長編の方が好みですね。 |
No.1183 | 7点 | ユリゴコロ- 沼田まほかる | 2019/02/27 18:39 |
---|---|---|---|
サイコ系で恋愛ものという不思議な感覚の作品でした。ほとんど描かれていないのですが、妹さんが一番哀れで仕方ない。 |
No.1182 | 6点 | 真昼の悪魔- 遠藤周作 | 2019/02/25 10:29 |
---|---|---|---|
裏表紙より~『患者の謎の失踪、寝たきり老人への劇薬入り点滴…大学生・難波が入院した関東女子医大附属病院では、奇怪な事件が続発した。背後には、無邪気な微笑の裏で陰湿な悪を求める女医の黒い影があった。めだたぬ埃のように忍び込んだ“悪魔”に憑かれ、どんな罪を犯しても痛みを覚えぬ虚ろな心を持ち、背徳的な恋愛に身を委ねる美貌の女―現代人の内面の深い闇を描く医療ミステリー。』~
ミステリー的には一応フーダニットの形式なのですが、あまり効果は出ていなかったような。ミステリー作家ではないので致し方ないところ。「罪と罰」のラスコリニコフと同じことを考えている女医が主人公です。寝たきりの老婆を人体実験にすれば、何人もの人が救えるというような・・・。倒叙式心理ミステリーとでもいうのかな?、楽しめました。 |
No.1181 | 6点 | 翼竜館の宝石商人- 高野史緒 | 2019/02/23 21:57 |
---|---|---|---|
1662年のアムステルダム。密かに葬られたペスト患者が、レンブラントの絵の中から復活?・・・。その真相とトリックは大満足です。しかし、アムステルダムの雰囲気の描写が、ややくどかったかなとの印象。トリックを欲張り過ぎたためか、その分だけ伏線の描写をしなければならず、その点が逆効果でかなり散漫に感じられてしまった。また、回収されない部分も・・・。非常に勿体ない。 |
No.1180 | 7点 | 恐怖小説キリカ- 澤村伊智 | 2019/02/20 20:06 |
---|---|---|---|
著者の「ぼぎわんが、来る」が日本ホラー小説大賞を受賞。彼の妻・霧香(キリカ)や仲間から祝福される様子などが描かれ、また、ゲラの校正から校了までの苦労話等々、私小説かのような展開です。出版社、選考委員も実名で登場しますし。そして第一部のラストで事件が起こります。この第一部ではある仕掛けが施してあるのですが、勘のいい読者は途中でわかってしまうかも。それはプチサプライズ。第二部では妻・霧香の視点で物語が進行します。ところがまさかのルメートル的展開に。さらに虚構か現実か?読者はけむに巻かれることに・・・。前作品のネタバレがあるので発表順に読んだ方がいいですね。そして、この作品の読者は上から目線で「時間の無駄」などと辛辣な投稿(批評)はできないようになってしまう?!(笑)。 |
No.1179 | 6点 | 重婚- 夏樹静子 | 2019/02/18 17:38 |
---|---|---|---|
裏表紙より~『清水市の三保の松原の砂地で船越広勝の死体が発見された。死因は一酸化炭素中毒。船越は旅行会社社長の四十二歳、二年前、バーに勤める玲美を入籍したが、実際は先妻の寿子の同意を得ないで離婚届を出しただけの重婚であった。玲美には恋人がおり、また寿子には船越の生命保険という動機があった。しかし、犯行時間のアリバイは二人ともに崩せない―(「重婚」)』~
7作の短篇集。誘拐もののトリックの先例があるということで拝読。後発の作品はそのトリックを応用したのではなく、まったく本作があるのを知らなかったようです。まあ、いずれにせよ先例には敬意を表したいと思います。表題作他、意表を突くようなアリバイものの作品があり楽しめました。 |
No.1178 | 7点 | 嘘ですけど、なにか?- 木内一裕 | 2019/02/16 17:26 |
---|---|---|---|
「BOOK」データベースより~『水嶋亜希、三十二歳独身。文芸編集者としてトラブル処理に飛び回る日々。仕事を頑張ったご褒美のように、ある日高スペックのエリート官僚と偶然出会い恋が始まる予感が。だが新幹線爆破テロ事件が発生すると、明らかに彼の態度が怪しくなっていく―私、騙されてる?痛快でドラマティックな反撃が始まる!』~
トラブル回避のためなら平気で嘘をつく亜希。偶然出会ったエリート官僚は殺人者???。クライム・コメディというのかな?。スピーディーな展開、爆笑もありで飽きさせない。キャラクターがお気に入りなので甘めの採点。(*表紙は著者による鉛筆画) |
No.1177 | 5点 | RANK- 真藤順丈 | 2019/02/14 23:02 |
---|---|---|---|
裏表紙より~『監視カメラのネットワークによって国民に絶えず順位を付ける制度―『RANK』によって管理された近未来・日本。『RANK』の圏外に落ちた人間は抹殺される。国家が企む本当の目的、そして隠された真相は!? 社会の崩壊を前にして、人間の未来と希望を描く物語。』~
祝!直木賞受賞、驚愕の真相が待ち受ける、新感覚ミステリーとの帯に釣られました(苦笑)。2009年の発表で2019年を描いている作品です。監視システムにリアリティが感じられないのが惜しいところ。 |
No.1176 | 6点 | 作家刑事毒島- 中山七里 | 2019/02/11 09:34 |
---|---|---|---|
(ネタバレあり)
5篇の短篇集。ミステリー的には、完全なアリバイものと意外な犯人ものが楽しめた。共犯は好みではないが、共犯を逆説的な観点から捕らえた物語は新鮮に感じられた。また、サイン本の仕組みや、初版、第2刷版が作家にとってどういう意味を持っているのか等の専門的なディテールから真相を導き出す作品もあり、勉強になりました。なお、本作は「毒島」の名の通り、全篇ブラックユーモアに満ち溢れています。ある女性書評家が登場。彼女は書評なるものを始めたが至極簡単で、自己顕示欲を満足させられる。現実の世界では自分の意見を聞いてくれる者など誰もいない。しかしネット書評でベストセラーをこきおろす時だけは世界の女王になったような優越感を味わうことができる。点数をつけるのは裁判官になったような陶酔を覚える。しかも図書館から借りているので投資額はゼロだ。耳が痛い(爆笑もの)。 |
No.1175 | 8点 | あした天気にしておくれ- 岡嶋二人 | 2019/02/09 14:21 |
---|---|---|---|
身代金受け渡しのトリックに前例があり、江戸川乱歩賞を逃したとのこと。惜しいですね。本作の肝は、倒叙形式からフーダニットへの展開にあると思うのですが・・・。”私が誘拐計画を立てた二日前に、第三者がその計画を予知することができるのか?”という謎は秀逸です。「前例」はリスペクトしますので、早速読まなければ(笑)。 |
No.1174 | 6点 | チャーリー・チャンの追跡- E・D・ビガーズ | 2019/02/03 23:54 |
---|---|---|---|
エラリー・クインの探偵小説批判法で評価された作品ということで拝読。その評価は~プロット8、サスペンス9、意外な解決7、解決の分析6、文体8、性格8、舞台7、殺人方法6、手掛り7、フェアプレイ6、計72。 佳作。普通の水準は遥かに突破している。ビガース氏はすべての点で平均のとれたストーリイを書いた傑れた作家であった。(50平均、60やや佳作、70佳作、80秀逸、90クラシック)~
1928年の作品なので、やむを得ないのかもしれませんが、やや中だるみでスピード感に乏しいような・・・。中国のことわざ(論語など?)が結構出てきます。そのたび意味を斟酌するので、一時的に立ち止まってしまうのが難(苦笑)。ずっと、モヤモヤしていたものが、ラストで晴れるといった感じですかね。 |
No.1173 | 6点 | 能面検事- 中山七里 | 2019/01/31 16:44 |
---|---|---|---|
新しいキャラクター「不破検事」の誕生。彼は何事にも表情を変えない能面検事と言われている。他シリーズの「御子柴弁護士」(沈着・冷静)を更にバージョンアップしたような感じですね。こちらもシリーズ化されることが決定しているようです。本作は不破検事のキャラクターを前面に押し出している点や、検察官補佐の惣領美晴の成長物語でもあるので、お得意のどんでん返し度は「まあ、まあ」といったところです。ファンとしては被告人「有働さゆり」(カエル男に登場)、弁護士「御子柴礼司」、検事「不破俊太郎」の物語を読みたい!!!(笑)。 |
No.1172 | 7点 | 黙示録殺人事件- 西村京太郎 | 2019/01/29 20:12 |
---|---|---|---|
裏表紙より~『“現代の狂気”をダイナミックに描き出した力作推理長編』~
目的達成のためには自殺をも推奨するという狂気(洗脳)が描かれている社会的な要素の強い作品(1980年)。洗脳されてしまうと何を言っても無駄ということがよくわかります。恐ろしいことです。 |
No.1171 | 5点 | 盗まれた都市- 西村京太郎 | 2019/01/27 19:16 |
---|---|---|---|
設定(洗脳)が数百人の村であれば理解できますが、人口十万都市となるといかがなものか?という気持ち。SFチックな気分で読まざるを得ず、残念でありました。ドイツ、日本以外の国、例えばアメリカを舞台にした方がよかったのかも?。 |
No.1170 | 8点 | 監禁面接- ピエール・ルメートル | 2019/01/25 15:40 |
---|---|---|---|
「BOOK」データベースより~『重役たちを襲撃、監禁、尋問せよ。どんづまり人生の一発逆転にかける失業者アラン、57歳。企業の人事部長だったアラン、57歳。リストラで職を追われ、失業4年目。再就職のエントリーをくりかえすも年齢がネックとなり、今はアルバイトで糊口をしのいでいた。だが遂に朗報が届いた。一流企業の最終試験に残ったというのだ。だが人材派遣会社の社長じきじきに告げられた最終試験の内容は異様なものだった。―就職先企業の重役会議を襲撃し、重役たちを監禁、尋問せよ。重役たちの危機管理能力と、採用候補者の力量の双方を同時に査定するというのだ。遂にバイトも失ったアランは試験に臨むことを決め、企業人としての経験と、人生どんづまりの仲間たちの協力も得て、就職先企業の徹底調査を開始した。そしてその日がやってきた。テロリストを演じる役者たちと他の就職希望者とともに、アランは重役室を襲撃する!だが、ここまでで物語はまだ3分の1。ぶっとんだアイデア、次々に発生する予想外のイベント。「そのまえ」「そのとき」「そのあと」の三部構成に読者は翻弄される。残酷描写を封印したルメートルが知的たくらみとブラックな世界観で贈るノンストップ再就職サスペンス!』~
翻訳は2018年ですが、発表は2010年で、「その女、アレックス」(2011年)より前の作品です。物語は3部構成で、アレックス同様、先の読めないような展開となっています。サスペンスもののミステリーとして十分楽しめますが、作者の狙いは中高年失業者の悲哀を描くことにあったような気がします。 |
No.1169 | 7点 | 探偵の秋あるいは猥の悲劇- 岩崎正吾 | 2019/01/20 15:06 |
---|---|---|---|
「Yの悲劇」の本歌取りということで拝読。同書を読んでいなくともOKですね。4部作を読んでいれば、ラストで、さらにニヤリとすることができると思います。ミスディレクションがあからさまで楽しい。といっても犯人は分かりませんでした。『猥』の悲劇~なるほど、うまい!。 |
No.1168 | 6点 | ゼロ計画を阻止せよ- 西村京太郎 | 2019/01/17 20:13 |
---|---|---|---|
1977年の作品。同年発表に「華麗なる誘拐」があります。同じ誘拐ものですが、本作の方がやや下回るかな?といった印象。といっても、スピード感はあり、大胆な発想など読みごたえは十分ありますね。まあ、左文字探偵の「読み」が当たり過ぎの嫌いもありますが・・・(笑)。 |