皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
していません。ご注意を!
take5さん |
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平均点: 6.58点 | 書評数: 361件 |
No.301 | 7点 | 流星ワゴン- 重松清 | 2024/08/16 15:32 |
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後書きを、斎藤美奈子さんにわざわざ
お願いしたという文庫版を読みました 新聞で読み慣れている論調よりかは、 だいぶ優しいですが分析がもう鋭くて だからではないですが一層父親として というか男として身につまされる話。 重松清さんも父親になって書けた作品 とおっしゃっているのはまさに納得。 私ファンタジーは得意でないのですが これはファンタジーの力を借りないと 気付けない事ばかりなので必然です。 重松清作品を息子と共有したいですが その発想も押し付けかもしれませんし 特にこの本は難しいのでやめときます 『きみの友だち』などがよいかなと。 |
No.300 | 8点 | 夏の庭- 湯本香樹実 | 2024/08/15 12:41 |
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世の中で最もミステリアスな事
私は死についてだと思います。 小学生の三人組がある老人との 一夏の関わりを通して、死とは 何かを見つめて成長する物語。 1993年日本児童文学者協会新人賞 1993年児童文芸新人賞 1997年ボストン・グローブ=ホーン・ブック賞 1997年ミルドレッド・バチェルダー賞 老人を通して語られる戦時中の事 また作者の後書きにも共感でき、 豊かな読書となりました。 |
No.299 | 7点 | 墨のゆらめき- 三浦しをん | 2024/08/14 11:28 |
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主人公のホテルマンと対役の書家の関わり
書家の遠田の人物像が魅力的で読ませます 遠田はなぜ主人公の続力を受け入れ、また 最後に突き放すのかという小さな謎解きは 末節で、バディものとしての魅力、そしで 文字に魅せられる者の描かれ方が大変よく 人の生き直しの描かれ方もまた素敵です。 オーディブル向けの書き下ろしだそうで、 本にすると225ページで高濃度でした。 |
No.298 | 4点 | 君に読ませたいミステリがあるんだ- 東川篤哉 | 2024/08/13 15:32 |
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夏休みYA本第三弾は高校生青春ミステリ
連作でそれぞれに作中作があり無理矢理に それらを主人公の女子高生が読ませる展開 連作なのですがそれぞれは繋がらないです 第一見た目がいけてる主人公が一人文学部 ないです。コミュ障でもないのにないです リアリティがなさすぎてギャグにもならず 受け止めが難しいです。YA本としてまず そこが弱点。若い頃にミステリの入り口に 適した本は他にもあるし、全5章を通して 生み出されたオチも今一。最後に全体像が 浮かび上がる作品って他に何十もあるし、 とにかく残念。夏休みなのでよしとします |
No.297 | 5点 | ガリレオの事件簿1 ポルターガイストの謎を解け- 東野圭吾 | 2024/08/10 10:04 |
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夏休みYA本シリーズ第二弾
ガリレオシリーズから短編集 お馴染な4篇が収録されます ポルターガイストや時差落下 などの初期のもの4つです。 既読のもののおさらいなので 200ページ30分で完読。 息子に進めるが反応今一で草 |
No.296 | 7点 | あと少し、もう少し- 瀬尾まいこ | 2024/08/10 08:30 |
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中学生の駅伝競走を巡る六章からなる物語
主人公たち6人のそれぞれが葛藤を抱える。 一区設楽は、なぜあれほど臆病で速いのか 二区太田はなぜあれほど切れてしまうのか 三区ジローのムードメーカーたる所以は? 四区渡部がクールでなきゃいられない訳は 五区俊介は、なぜ桝井をあれほど慕うのか そして六区の桝井が駅伝に込める思いは? 構成がよくて一章一区ずつ回想込みで進み 背景が明らかになりながらゴールを目指す 要所で素人監督上原先生が良い味出します 中学校のスポーツは技術以上に学ぶものが あるっていうの、今までぴんと来なかった。 だけど、今はわかるんだ。」と先生の言葉、 この夏実感するならこの1冊、YA本です |
No.295 | 7点 | 幻夏- 太田愛 | 2024/08/02 12:42 |
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// =│という残された暗号にまつわる謎解きやら
1と10が釣り合っていないという世の中への提言が 一気に押し寄せるお馴染みの三人が登場する作品。 今回の主人公は相馬です。小さい頃の思い出と今が 重なって複雑な様相を見せてきます。社会派として マスコミや法曹界への鋭い視線は相変わらずですが 太田愛さんの作品の中では相対的にイマイチかな。 それでも一気に読める筆力は健在ですけれどね。✨ |
No.294 | 9点 | 天上の葦- 太田愛 | 2024/07/28 15:37 |
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鑓水、繁藤、相馬三人が主人公のシリーズ
上下巻ハードカバーで800ページの長編 戦時中の言論統制がこの時代のメディアと シンクロする、重厚な社会派ドラマです。 それでもどこか軽妙に読み進められるのは キャラのもつ力、太田愛さんの筆力です。 最終章、喜重の手紙は落涙必至の総まとめ 出会ってよかったこの夏の血肉となる名作 白狐が誰か問うミステリー、更に死の直前 老人の指差したものの意味を回収する展開 広く皆様に読んでいただきたい作品でした。 |
No.293 | 8点 | 犯罪者 クリミナル - 太田愛 | 2024/07/20 17:22 |
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脚本家、太田愛氏の小説デビュー作品。
上下巻1000ページがダレる事なく進む その筆力に脱帽。冒頭の通り魔事件、 そのスピード感に名作の予感。主人公 3人の人物も次第に輪郭がはっきりして 絵が浮かぶようです。犯罪者側の得体の 知れなさがあれに似てるな~と思ったら 帯には書いてあるそうです。ディーバー 級というお勧めが(私は図書館本につき 帯なし)。 通り魔事件の他にも、政財界の癒着や、 政治のパワーバランス、食品安全問題、 市民運動、裁判の大変さ等、多くの話題 を含む満足度の高い読書となりました。 次の作品からも、主人公3人がそれぞれ 中心となっていくという事で楽しみです。 |
No.292 | 7点 | りら荘事件- 鮎川哲也 | 2024/07/15 10:05 |
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新装版のリラ荘事件で読みました。
久しぶりに読んで覚える既視感は、 その後の作品が鮎川大先生の影響を 多分に受けているからでしょうし、 (色盲の作品は平成でもありますね) トランプの下りは、大先生も先人の 影響を受けているのが分かります。 ミステリー系譜の早い位置に存する とても重要な作品と言えるでしょう。 私が一番心に残ったのは、砒素です 美白に砒素という事がさらっとあり これは現代でもいけるのか?興味あり 星影先生のキャラも立っていてよき。 いずれにしても昔の人は推理小説に 新星現ると確実に思ったでしょうね。 |
No.291 | 8点 | 未明の砦- 太田愛 | 2024/07/07 17:36 |
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600ページ超えなのに、一気読みでした。
作者はTRICK2等の脚本も手掛けています 本作品は超社会派です。熱量が凄いです。 元は新聞に連載されていたということで、 ジャーナリズムもまだ死んでないのかなと だが作品の中では散々な書かれようですが 金権政治、労働問題、警察組織の問題また 戦後日本の民主主義の問題と、多岐に及び 読者に問う作者自身が、取材をしっかりと されているのがよく分かります。読み手の 自分が自分事で日本の問題を捉えているか 問われていると身の引き締まる思いです。 日本国憲法に触れているところでも、自身 教育に携わる者として大変心に残りました ミステリー要素は高くないかもしれません しかし各人が何を考えて行動するのかは、 最後に回収されていきますし、ご都合主義 そう読む方もいるかもしれませんが私には 清々しい希望を感じる終わり方でよいです 東京都知事選挙に出かける事のみ読書休憩 以後一気読みが本作品のもつ力の証明です✨ |
No.290 | 8点 | 地雷グリコ- 青崎有吾 | 2024/06/30 15:54 |
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ギャンブル&青春&どんでん返し小説。
各ゲームが非常にロジカルで、人間も、 高校生らしい心の揺れがよく描かれて、 エンタメとして、第一級の作品でした。 5話の短編が徐々に加速していきます。 結局は真兎が勝つんですわかってます。 それでも二転三転にワクワクできるのが 青崎有吾さんの才覚、ドラマのシナリオ そして漫画の原作も担当しているようで シンプルに魅せ方を知っている方です。 因みに、裏技以外の各ゲームの推論は、 難関中学の入試問題を感じるんですよね これ分かる方きっといらっしゃるはず。 この時点で本サイトの3位にランクされ、 皆様にお勧めできますが、かわりに名作 連城三紀彦氏の戻り川心中が6位に…残念 次回作、早く出ないかなと願っています。 |
No.289 | 5点 | 猿の手- 富安陽子 | 2024/06/29 16:04 |
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ジェイコブスの「猿の手」
カットナーの「不思議な下宿人」 ウェルズの「魔法の店」 を収録しているミステリーホラー 猿の手は人間の性が出ています。 |
No.288 | 7点 | 名探偵のままでいて- 小西マサテル | 2024/06/23 12:35 |
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正直、終章を含む全6章のうちの、
初めの2つからは残念感を抱いて、 中盤の2つからは、おや中々!然し そこまではと思ってしまいました。 このミスってこんなものかとさえ。 作者の散りばめられた過去の名作愛 それは最初から伝わります。幻の女 冒頭の名言、出たねって感じです。 しかし最後の2章でギヤが上がって、 一気に人物のディテールが露わに! 見事でした。主人公の祖父が紫煙を 超えて、いや私怨を越えた所で真相 いやみんなの心想も描くという構成 が素晴らしかった。タイトルの改訂 くさ過ぎるので改訂は正解でしょう。 とにかくあえての前2章で此方の側の バイアスをさらすことそのものが伏線 だとしたら驚異的です。←読み過ぎ? 装丁も美しくお勧めできる作品です。 ウイリアムアイリッシュもお勧めですw |
No.287 | 7点 | ずっとそこにいるつもり?- 古矢永塔子 | 2024/05/27 10:07 |
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人間、特に女性が大変よく描けており
こちらの内面まで見すかされるかの様 叙述の反転は多少の域で、しかし粋で ミステリーじゃないという批判は正論 しかし読めばホウと唸る事は請け合い まあ読後感はドロっとしてはいますが 時に視点を変えることも大切ですよね |
No.286 | 9点 | 13歳からのアート思考- 末永幸歩 | 2024/05/05 18:17 |
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皆さんGW後半の読書に勤しんでます?さて、
選書の際は、ミステリーの範疇を考えますか それとも良書にミステリーを見出しますか? そもそもミステリーとはどの様な定義ですか 文体に隠された秘密、物の見え方が反転する または、作者の伝えたい事を技法で知る事? 私がミステリーを好む理由を深堀りすると、 どうやら視野を広げるとかメタ認知的な思考 いや嗜好がありそうだと考えが至りました。 価値観、見えている世界が広がる至高の時を 求めているようです。極めて私考的ですが。 さてこの本、そもそも中高学校の美術教諭が 書いていますので、作り物のミステリーでは 全くもってないのですが、とにかく目から鱗 ボロボロ落ちまくりです。これまで美術とは どう捉えていたかのバイアスが外れまくりの 人生の伏線回収本として大変お勧めします。 激動する複雑な現実社会を生きる全ての人に 必読の書といわれて読まずにはいられない、 そんな一冊です。さてミステリーとの接点は と不審に思っても騙されてお読みください。 接点を見出す事で、読書は晴れて完結です。 |
No.285 | 9点 | きみの友だち- 重松清 | 2024/04/28 18:17 |
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短編が最終話に向けて収束していく様
どれもが不可欠で落涙必至、見事です。 主人公達の小学生から大人までの時間 どの作品を読んでもその時間の流れが 厳しくて、切なくて、そして優しくて、 重松清は然るべき頃にこそ出会うべき 稀有な作家さんと私見ですが思います。 それぞれの作品は「きみ」を見つめる 誰かによって紡がれているわけですが、 その誰かの眼差しを借りて、私たちも また各人と共に主人公と出会うという 構造になっています。私にはこの事が 重要だと感じます。それは読書を終え この現実社会を一人称で見つめる時に 自身が身近な家族や友達をどう捉えて 向き合っているか、それを否が応でも 突き付けられるからです。千羽鶴なら 自分のために折っていると気付かされ この読書が自分のために生かされる様 これからが問われるのだと気付きます。 |
No.284 | 6点 | Q- 呉勝浩 | 2024/04/27 10:58 |
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人並さんの書評から興味を持ちました
コロナ禍の始まりとリンクする600頁 カリスマ的存在,Qをウイルスと重ねて 描かれている世界がリアルでよいです 個人的には作者の他作品では爆弾やら ライオンブルーやらの方が好みですが 力作大作であることは間違いないです 余談ですが最近手にした本の中で特に 装丁が美しく個人的に満足しています |
No.283 | 5点 | 私雨邸の殺人に関する各人の視点- 渡辺優 | 2024/04/14 11:42 |
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いわゆる藪の中的な多重視点作品
クローズドサークルでの殺人事件 素人探偵も登場、各々が推理する すみません極めて私見なのですが 人物の描写にあまり魅力を感じず 最後の真相もあまりぱっとせず… 殺人が抑圧された心情の開放なら もう少し人間を描かないと厳しい 300ページは極めて読みやすく 深みを求めなければまあ良しかと |
No.282 | 7点 | 人魚の眠る家- 東野圭吾 | 2024/04/06 21:31 |
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脳死を巡る家族の物語
子供を持つ身に滲みる 内面の葛藤は共感必至 500頁以上一気読み 東野=リーダビリティ 生死の線引は人知の外 と考えさせられました 包丁を振り回し問う件 やり過ぎだけど必須? 最後の伏線回収も同樣 テーマを鑑みてもっと 静かに終わるも良し! |