皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
していません。ご注意を!
HORNETさん |
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平均点: 6.32点 | 書評数: 1121件 |
No.161 | 5点 | なぎなた- 倉知淳 | 2011/09/18 20:55 |
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それぞれに趣向の違った仕掛けがあって、楽しめる。アンソロジーなどでお目にかかった作品もあったが、読んでいるうちに「何か覚えがあるなあ」と思い出した。「ナイフの三」「闇ニ笑フ」がよかった。 |
No.160 | 6点 | ミミズクとオリーブ- 芦原すなお | 2011/05/05 16:50 |
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このサイトでの評価から,どんなものか読んでみたいと思い読んだが,それぞれの方の評価に納得がいった。とにかく「面白い!」。主人公と奥さん,そして河田のとぼけた会話が最高。事件に対する奥さんの推理は,推測やときには勘に基づくものであるため,ミステリの書評サイトとして採点は抑え目にしたが,文句なく気に入った作品となった。同シリーズの他作品も必ず読みたい。 |
No.159 | 7点 | アリアドネの弾丸- 海堂尊 | 2011/05/05 16:16 |
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「本シリーズ(海堂作品)はミステリではなく,医療エンターテイメント」という評判を覆す快作。ロジカルモンスター・白鳥が,隙のないロジックで真犯人を追い詰めていくくだりは痛快であり,往年の探偵小説の解決編のようであった。各登場人物のキャラクターを描く腕は流石で,それぞれの個性が生かされ,うまくストーリーに絡んでいる。
一つ目の事件の謎解きが少し突飛で雑な感じがしたが,なんといってもメインの事件の謎解きは,医療現場(というかMRI)の特質に基づいた納得のロジックで,現役医師である作者ならではの筋書きと感じた。シリーズを読み進めてきた読者はもちろん,「もうバチスタ・シリーズはいいかな」と感じ始めていた人にも,この作品は勧めるに値する。 |
No.158 | 8点 | マリアビートル- 伊坂幸太郎 | 2011/04/24 18:15 |
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裏稼業の人物たちのコミカルなニックネーム(「蜜柑」「檸檬」「天道虫」・・・),ありえない偶然の重なり,など,現実離れしたストーリーと設定だが,エンタテイメントと割り切って読めば非常に楽しい。前作に登場した「槿(あさがお)」が登場し,クールに仕事をこなす姿も胸がすく。
人生,人間理解について達観したような極悪中学生「王子」の言動に非常にストレスがたまるが,作者のことだから最後にどんでん返しをしてくれるだろう・・・という期待のみで読み続け,まぁその期待は裏切られなかった。数々の「ありえない偶然」も,逆にここまで全体の仕組みを考えた作者の腕に脱帽する。個人的には,前作「グラスホッパー」よりこちらのほうがさらによかった。 |
No.157 | 7点 | 午前零時のサンドリヨン- 相沢沙呼 | 2011/04/24 17:56 |
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学校では無口で人を寄せ付けない美少女,酉野初は実は凄腕マジシャン。一目惚れした須川くんの周りに起こる学園内の不思議な出来事を,初が見事に解決していく。
他愛もないラブコメのように見えて,それぞれの場面での言動があとになって意味をもってくる。事件解決を前面に打ち出して物語が進行する本格推理物と違って,わざとらしさがないため,そうした手がかりや伏線がうまく物語にもぐりこんでいて余計に面白い。最後の,物語のメインとなる謎についても同様に,上手にそれまでに手がかりが散りばめられていて感心した。ただ,コンピュータ,ネットにかかわる知識が絡んできたのは少し難解だった。 個人的には八反丸芹華がキャラ的にも,人間的にも好き。作品としても,受賞の名に恥じない名作だと感じた。 |
No.156 | 6点 | アルバトロスは羽ばたかない- 七河迦南 | 2011/04/24 17:40 |
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児童養護施設「七海学園」の保育士,北沢春菜が施設の子どもとかかわる中で,いろんな謎を解いていく。一方,施設の子が通う七海西高校で起きた転落事件の真相解明に取り組む主人公。自殺として処理しようとする警察に対し,「自殺ではない」と信じ,自分なりに捜査をしていくが・・・。真相には確かに驚かされる。まぁうまいにはうまいけど・・・騙された感もぬぐえない(腑に落ちないほうで)。
上記の謎のみを追究する一編ではなく,過去の施設で起きたさまざまな謎解きが回想として描かれ,それぞれに楽しめる短編のようになっているのがよかった。物語メインの謎は自分としては「・・・・・・・」だったが,そうした点で面白かったのでこの評価とした。 |
No.155 | 6点 | 死ねばいいのに- 京極夏彦 | 2011/04/24 17:32 |
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「アサミ」という女性の死について,渡来という礼儀も何もわきまえない,いかにも今時の若者が,関係者に話を聞いて回る。「自分は頭悪いすから・・・」といいながら,関係者たちの心に入り込む言葉を投げつけ,それぞれの人生を否定(?)する。
そのやりとりや,過程を楽しむのがメインになる。フーダニットの体をとっているとはいえ,事実・手がかりをもとに解明されるわけではないのでその要素は薄い。が,それぞれの関係者からどのような過去や内面が暴かれるのか,と楽しんで読むことが出来た。 |
No.154 | 7点 | 初陣- 今野敏 | 2011/04/24 17:22 |
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「隠蔽捜査」シリーズの伊丹俊太郎を主役とした,スピンオフ短編集。もともと伊丹は好きだったので,とても面白く読めた。刑事部長として判断に迷うとき,竜崎にアドバイスを求め,問題を解決していく過程に,相変わらずの竜崎らしさを垣間見る。一方的に親友と思っている伊丹と,なんだかんだいってかかわりを断ち切れない竜崎との,微妙な関係も好感が持てる。 |
No.153 | 7点 | 隻眼の少女- 麻耶雄嵩 | 2011/04/03 20:44 |
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水干姿の隻眼の女探偵,御陵みかげが二代に渡って活躍する物語。琴折家の女性は代々に渡って不思議な力を受け継ぐとされ,そのうちの一人が「スガル様」という神としてあがめられる。因習が色濃く残る村で,「スガル様」候補の少女が次々と殺されていく・・・といった,横溝正史や三津田信三のような設定,それでいて重苦しすぎないタッチ,一度は解決されたと思われた事件が二転三転する様相,と,雰囲気的にも筋書き的にも十分楽しめた。
が,残りのページ数や2部からの構成などにより,解決に向かうように見せかけられた部分はそれは「見せかけ」と分かってしまったり,1部のラストなどはどう考えても違和感を感じてしまうところがあり,純粋に騙されきれなかった。登場人物の一覧や家系図がなぜか2部にはなかったり,屋敷の見取り図がなかったりなどの点も,そうした違和感を助長してしまった。 |
No.152 | 6点 | 水魑の如き沈むもの- 三津田信三 | 2011/04/03 20:13 |
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三津田作品を読むのはこれで三作目だが,土俗的な雰囲気や因習はびこる山村という,現代離れした設定に自分の目が慣れてきたためか,はじめに読んだ「首なし」よりも読みやすかった。それは「水魑様」をあがめ,「増儀」「減儀」などの儀式によりその統治を願うという仕組みが複雑でなく分かりやすかったということもあるかもしれない。
しかし,読みやすいということは翻れば緻密さに欠けるということかもしれず,確かに「首なし」のような,ドミノが倒れていくように今までの謎が解決されていく怒涛の勢いは感じられなかった。結末がロジックとして完全とは言い切れない感じがあったこともその一因。 とはいえ,多くの登場人物を出しながら,どの人物にも極端な軽重をつけず,誰が真犯人となっても反則な感じがしないのは作者らしいフェアな感じを受ける。本格ミステリとしての名に恥じない,良作であることは間違いない。 |
No.151 | 6点 | 密室の如き籠るもの- 三津田信三 | 2011/04/03 19:54 |
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短編3本と,表題作の中編1本の,刀城言耶シリーズ作品集。緻密に練られたロジックと舞台設定で重厚に読ませるこれまでの長編もよいが,このくらいの作品では,登場人物の数が限られているがゆえに推理を楽しみやすく,気軽に楽しめるというよさがある。「首切の如き裂くもの」の袋小路のトリックや,「隙魔の如き覗くもの」の学校を舞台にしトリックは面白かった。また,こうした短編や中編でも,因習や伝承などを必ず絡め,作者らしさを決して失っていないのもさすが。 |
No.150 | 5点 | ST 警視庁科学特捜班 為朝伝説殺人ファイル- 今野敏 | 2011/04/03 19:42 |
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STシリーズが再開されたことは嬉しいが,今回の話はSTメンバーの卓越した才能が生かされたとは言い難い内容に感じた。それぞれのキャラクターがもっと生かされ,引き出されれば・・・。文章は相変わらず読みやすく面白かったので,読んで損はないが,シリーズ作の中ではそこそこ。 |
No.149 | 10点 | 写楽 閉じた国の幻- 島田荘司 | 2011/03/20 15:31 |
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久しぶりの10点満点。
寛政6年に彗星のごとく現れ,その年の内に姿を消した謎の浮世絵師,東洲斎写楽。その正体についてはこれまで多くの研究者が諸説を唱えてきたが,それらとは全く異なった推理が本書で展開される。 氏としても初の長編歴史ミステリであったと思うが,私自身も読むのは初めてだった。しかも江戸時代の浮世絵文化という,ほとんど自分には知識のないジャンルが舞台とされているので,はじめは及び腰でもあったが,読み進めるうちに謎にどんどん引き込まれていった。作品で,写楽や歌麿の描き方について説明されているくだりがあるが,実際に見てみたいと,図書館で浮世絵や写楽の本まで借りて,夢中で読んだ。 述べたように,浮世絵文化や研究史に知識はないので,この島田氏の推理しか知らないわけで,これまでの諸説と比較することは出来ないが,少なくとも史実や文献に基づいた推理は非常に説得力を感じさせるとともに,見事なまでに一本につながっていくさまは,何か背筋が震える感じさえした。 虚構ではない,史実の謎を追う楽しみと,自分の見聞が広がっていく楽しみを存分に味わえた。 |
No.148 | 5点 | イニシエーションラブ- 乾くるみ | 2011/03/02 16:15 |
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「この恋愛話から何か事件が起こっていくのだろう」と純粋にミステリ的な展開がどこかで起きるのだとばかり思い,そうした先入観のもと「事件が起きるのはいつか?いつか?・・・まだか?・・・おかしいな・・・」と訝りながら最後まで読んでしまったので,まったく途中で気付きませんでした(情けない)。なので,一瞬意味が分からず,分かった後も,それまでそういう目で読んでいないので,あとで読み返してみてやっと仕掛けのうまさに気付いた次第です。しかしやはり,作中で謎が謎としてちゃんと提示され(たとえこうした事件を題材としたものでなくても),読み進めながら解いていくスタイルのほうが私は好きなので,ミステリとしての評価はイマイチです。
ただ,「イニシエーション・ラヴ」という恋愛概念や,登場人物の心情描写,さらに80年代をリアルに描いた作風など,昔を懐かしく思い出してしまい,それはそれで楽しめました。 |
No.147 | 6点 | 夏期限定トロピカルパフェ事件- 米澤穂信 | 2011/03/02 15:45 |
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ミステリの楽しみ半分,小鳩くん,小佐内さんの「小市民に徹するコミカルなやりとり」の楽しみ半分の作品なので,小佐内さんのダークな部分が見えたのは意外でした・・・(どう考えても「小市民」のやることではない)
しかしその分ミステリの要素が高まったため,結果として採点は前作と変わらずです。この作品でますます堂島健吾が好きになりました。 |
No.146 | 6点 | 春期限定いちごタルト事件- 米澤穂信 | 2011/03/02 15:41 |
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日常的な高校生活の中で,些細な謎にめぐり合いそれを解いていくというほのぼのしたミステリ。肩に力を入れずに読めて,こういうのもアリかな・・・気に入りました。小鳩くんと小佐内さんはもちろん,個人的には堂島くんのキャラもよい。それにしても,小鳩くんの過去は作中である程度示されていますが,小佐内さんはいったいどんなだったのか・・・気になります。 |
No.145 | 6点 | あなたが名探偵- アンソロジー(出版社編) | 2011/03/02 15:30 |
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泡坂妻夫「蚊取湖殺人事件」・・・湖の氷上の死体の謎。
西澤保彦「お弁当ぐるぐる」・・・空の弁当箱と,蔵に所蔵されたお宝の謎。 小林泰三「大きな森の小さな密室」・・・密室状況の必然をもつのは誰か。 麻耶雄嵩「ヘリオスの神像」・・・ガスとエアコンと水道が使用されっぱなしになっていたわけは。 法月綸太郎「ゼウスの息子たち」・・・双子同士の二組の夫婦の謎。 芦辺拓「読者よ欺かれておくれ」・・・欺かれました。 霞流一「左手でバーベキュー」・・・遺体から切断された左手が焼かれていた謎。 やはりフーダニットはミステリの王道。それを手軽に味わえるこういうアンソロジーはいいですね。 |
No.144 | 7点 | 気分は名探偵 犯人当てアンソロジー- アンソロジー(出版社編) | 2011/02/13 15:28 |
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読者の「犯人当て」を主眼とした企画アンソロジー。夕刊フジに連載され,読者から解答を募ったものだそうで,その正解率も各短編のはじめに示されていて謎解きの意欲を掻き立てられます。私なりに難易度を示してみました。
◇有栖川有栖「ガラスの檻の殺人」:普 一番分かりやすかった。描写の中に含まれている推理の手がかりも気付きやすい。 ◇貫井徳郎「蝶番の問題」:超難 被害者の手記をいかように読むかがポイント ◇麻耶雄嵩「二つの凶器」:普 短時間に起こった出来事をいかに時系列に整理できるか。 ◇―霧舎巧「十五分間の出来事」:難 これも描写にヒントが隠されています。 ◇我孫子武丸「漂流者」:普 これも主体は被害者の手記。犯人というより,人物当て。 ◇法月綸太郎「ヒュドラ第十の首」:難 ちょっと科学的というか医療的な知識も要るが,常識の範囲。 私は2勝4敗でした。しかも1勝は,犯人と大体のトリックは分かりましたが,犯人の行動の「なぜ」について完全に説明は出来なかったので,本当は「敗」かも・・・。何にせよ,まさに「気分は名探偵」の楽しい一冊です。 |
No.143 | 6点 | お前が犯人だ- エドガー・アラン・ポー | 2011/02/13 15:08 |
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資産家シャトルワーズィ氏が殺害され,次々と明らかになる状況証拠から,甥に疑いがかけられ,甥は収監される。しかし,事件が解決したと思われたそのときに,死体となったシャトルワーズ氏が表れ,「お前が犯人だ」と名指しする。
話の展開からも,タイトルにより最後に真犯人が示されるのだという予測からも,読んでいるうちに大体の筋書きは読めてきてしまう。それでも,その最後の瞬間が楽しみで,興味は失せない。真犯人が最後に明らかにされるという形からも,一応ミステリの体をとっている作品といえるのではないだろうか。 |
No.142 | 5点 | 盗まれた手紙- エドガー・アラン・ポー | 2011/02/13 14:53 |
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殺人は起きませんが,ポーの推理小説は三篇とする説によれば,「モルグ街」と「マリー・ロジェ」とこの作品だそうです。(初期は「探偵小説」と言われていただけに,単にデュパンが登場するのがこの三作品だからかもしれませんが)盗まれた手紙がどこにあるか?をデュパンが推理するのですが,その種は(特に今では)単純といえば単純です。しかし,この視点というか手法は,手を変え品を変えその後多くの作品に応用されたことを考えると,最初にこの視点を生み出したポーの力量の高さ,頭の良さは十分に感じられると思います。 |