皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
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HORNETさん |
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平均点: 6.32点 | 書評数: 1148件 |
No.188 | 4点 | オーダーメイド殺人クラブ- 辻村深月 | 2012/01/29 11:06 |
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クラスのヒエラルキー内で、「リア充女子」のアンと、「昆虫系男子」の徳川。どこを立ち位置として自分を保っていくか、そのために乗り越えなければいけない女子の陰湿な権力闘争。そういうリアルな中学生の現実がよく伝わり、臨場感もあって面白い。が、その中で生きていくのか、それを超越したいのか、中途半端な主人公にだんだんとやきもき(イライラ)してくる上に、肝心のオーダーメイド殺人も結局は・・・って感じでラストに消化不良の思いが残った。ミステリと言うよりはブラックな青春小説という感じ。 |
No.187 | 7点 | 毒入りチョコレート事件- アントニイ・バークリー | 2012/01/29 10:46 |
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チョコレートによる婦人毒殺事件の真相を、「犯罪研究会」のメンバー6人が順に推理する。それぞれの推理がまさに六者六様で楽しませてくれる。物語全体が事件の謎解きに終始しており、無駄のない文章であることも読み進めるにあたって心地よかった。
「理論的推理小説」と銘打ってあるように、6人のメンバーが順に推理を開陳することで、フーダニットのロジック品評会のような様相を呈しているため、ロジックを楽しむタイプの読者にも好まれるのでは。 そのロジックは、「こういうことをするのは・・・な人だ」的な、多分に主観的な要素もあるが(例えば3人目の発表者・ブラッドレーが挙げた犯人の条件など顕著である)、物理的・客観的な視点でそれらの難点を指摘することは、こういう古典作品にはそぐわない。彼らのいわば「プロファイリング」を受け入れたり、時には疑問を抱いたりしながら、味わうことに楽しみがある。主人公のロジャー・シェリンガムが4番目で、それさえも覆されていく展開に作者の独創性も感じ、今読んでも十分に楽しめる一冊だと思う。 |
No.186 | 7点 | 真夏の方程式- 東野圭吾 | 2012/01/22 07:48 |
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それなりによくできた話だと思うのだが、採点を見てもさほど高評価でないのは、作者に対する期待が大きいからだろう。ミステリの出来としては並か、よくて中の上程度だと思うが、湯川と恭平少年のやりとり、心温まるつながりが色づけされている点で物語の味わいが増した。少年との別れの場面で、湯川が少年に伝えた一言に素直に感動した。学者然とした難解な物言いが小学生によく理解できるな、という無粋な感想はこの際置いておこう。
個人的には、成実に思いを寄せる男たちの結末も多少気になった。ミステリとしては、関係者の過去を探っていく段階がちょっとうまくいきすぎな感じもしたが、かといってそこで右往左往するさまを描いても無駄に長くなるだけなので納得する。 |
No.185 | 10点 | 本格ミステリ・フラッシュバック- 事典・ガイド | 2012/01/22 07:25 |
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町の図書館で、背表紙の「ミステリ」という言葉が目に留まって借りてみたら、どうしても手元に置いておきたくなり、その後購入した。本格衰退期と言われる、清張の「点と線」から綾辻「十角館の殺人」までの期間にあえてスポットをあて、埋もれた名作を掘り起こすという趣旨がよい。変に編者の嗜好を反映させず、マニア好みの本格作家から多作の売れっ子作家まで幅広く取り上げている点も、自分の嗜好でその中からつまみ食いができてありがたい。
その年に発刊されたもののランキング本、作家が自身の好みで選定したガイド本、ミステリ史に残る名作を挙げたガイド本などと一線を画す本書の存在意義は大きい。最近の話題作からミステリにめざめ、これから過去の作品を読んでいこうという人にもその道標になるだろう。私も、このサイトに次いで貴重な読書案内を得た思いである。 |
No.184 | 6点 | 死にぞこないの青- 乙一 | 2012/01/22 06:13 |
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いじめが生まれていく過程、その描写が妙にリアルで、読んでいて目が離せない。大学生と変わらないような若くてガキっぽい担任教師、はじめ人気があったが次第に評判を落としていく様子、その教師の意図的な個人攻撃にのっかる生徒たちなど、ありそうで怖い。単純で短いストーリーなのであっという間に読めるし、それなりに楽しめる。手元に読む本が尽きたときなどにオススメ。 |
No.183 | 7点 | 点と線- 松本清張 | 2012/01/22 05:56 |
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派手さのない、現実的な作品だが(そりゃそうか)、「空白の4分間」に気付く場面など、トリックの内容でハッとさせられ、楽しませてくれる。捜査以外の余分な展開がなく、地道に進められる捜査の進展に没頭して読めた。このまま鉄道でのアリバイトリックが崩されていくのかと思ったら、後半になって飛行機案が浮上してくるのにはちょっと拍子抜けしたが、全体的に複雑で難解な印象もなく、読み応えのある良作だった。 |
No.182 | 8点 | 丸太町ルヴォワール- 円居挽 | 2012/01/16 23:06 |
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「そんなことぐらい知ってて当然」とばかりに孔子や古典の言葉を引用しながら機知に富んだ会話を交わす登場人物に、初めは嫌味も感じたが、読み進めるうちにそんな世界観にも慣れてしまった。何より、本編の核である、現代の裁判にあたる「双龍会」の場面は読み応え十分。次に何が来るか、どちらがどんな攻め手でくるのか、臨場感あふれる展開を堪能した。そう考えると、法廷ミステリという側面もある。
どんでん返しに次ぐどんでん返しも、それまでに丁寧にちりばめられた仕掛けの賜物であり、作者の構想・構成の秀逸さに舌を巻く。フェアな仕掛けでありながら、「仕掛けありき」でそれ以外味のない文章ということはなく、人物のキャラクター・場面設定の面白さでも十分なリーダビリティがある。 ただ、終末はくり返されるどんでん返しに多少食傷気味でもあった。「ここで終わっていてもよかったのに」と思う部分もあり、やはり最終的には仕掛け偏重だったかな、とも感じた。 |
No.181 | 7点 | エジプト十字架の秘密- エラリイ・クイーン | 2012/01/16 22:09 |
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首なし死体、T字十字架への張り付け、連続殺人という、小説でしかありえない、陰惨で劇場的な展開は基本的に好き。エラリイの国名シリーズを読むのは4作目だがこれだけ事件が間断なく連続するのは、(「悲劇4部作」を除いて)珍しいのではないか。一事件を追う過程がじっくりと描かれているのもそれはそれでよいのだが、こういう、間断なく事件が続くことで謎が深まる(=逆説的だが、逆に真相が見えてくる)展開も停滞感がなくてよい。そういう意味で、飽きることなくページを捲ることができた。
ただし、真相解明への決定打の提示については、うーん・・・だし、何よりもこれだけの大掛かりで劇場的な犯罪を仕組むにしては動機が抽象的&大衆的過ぎる気がするのが難点(もっとはっきり言えば薄弱)。ツヴァール家とクロサック家の対立という、それらしい背景が用意されていただけに、それなりのものを期待していた。 |
No.180 | 6点 | 殺戮にいたる病- 我孫子武丸 | 2012/01/16 21:39 |
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(ネタバレあり)
このサイトの評価を見て思うに、この手の、読者にどんでん返しを食らわす叙述トリックものは、それがその人にとって「最初に読んだ『この手のもの』」かどうかが重要なのではないか。つまり、こういう叙述トリック作品は初めて接したときが最も衝撃が大きく、逆に言えば、以降は(同類の作品に接しても)その作品を越えることはできないのでは。綾辻行人の某作品、歌野昌午の某作品、乾くるみの某作品が、投稿者によって非常に評価が高いのは、(勝手な推測だが)その作品がこうした叙述トリックとの初対面だったのではないだろうか。 私にとってそれは綾辻氏の某作品だったし、だからその後こうした作品を読んでもその衝撃を越えることはできない。本作品もそうであり、加えて「そうなんじゃないかな・・・」と予測ができてしまっていたのでなおさらだった。 しかし、仕掛け方が予測できただけで、その中味はさっぱり分からなかったし、何より展開自体がリーダビリティに優れており、飽きたり、一足飛びに結論だけを見たいと思ったりせずに楽しんで読めた。結末の驚きはそれほどでもなかったが、そのメイントリックに全てをかけた作品という印象はなく、過程の部分もなかなか読み応えのある魅力的な作品と感じた。 |
No.179 | 7点 | 開かせていただき光栄です- 皆川博子 | 2012/01/04 21:49 |
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18世紀のロンドン、外科医ダニエル・バートンは私的解剖教室を開き、5人の若い弟子とともに解剖学の研究の励んでいた。研究のためと、非合法にも屍体を入手していたこの教室から、身に覚えのない四肢を切断された少年と顔を潰された男性の屍体が。
事件の解明が進められていく現在と、事件の背景となった過去とが交互に展開され、最後にそれが一致するという構成が妙。師匠との信頼関係・結束に嘘はないが、何やら不審な様子も窺える弟子たちとの真意の測りあいも見もの。そんな弟子たちも一方で「解剖ソング」なるものをつくり、口ずさむユーモアもあり、場が和む。 ミスリードなのか本当に真相を解明しているのか、見極めきれない展開にページをめくる手が早まる。そのはやる気持ちに応えるだけの、驚きと納得の結末。読後感も良◎でした。 |
No.178 | 5点 | 叫びと祈り- 梓崎優 | 2012/01/04 21:05 |
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「砂漠を走る船の道」…砂漠の一行に起きた連続殺人。一番よかった。 「白い巨人」…巨大な風車の塔に消えた人の怪。うーん、そんなオチ? 「凍れるルーシー」…聖人リザヴェール様にまつわる怪。雰囲気的には嫌いじゃない。ただ、宗教色の薄い我々には理解できない。「叫び」…アマゾンの小民族に起こった悲劇。これはミステりーなのか? 「祈り」…この連作のオチ。個人的にはなくてもよかった。
そんな感じでこの評価です。 |
No.177 | 6点 | ベンスン殺人事件- S・S・ヴァン・ダイン | 2012/01/04 20:55 |
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ヴァンスの高慢ちきな物言い、推理とは関係のないペダントリーはうっとうしい限りだが、「殺人犯の心理とはこういうものだ」「事件現場で大事なのはこういう点だ」などの持論の演説は(おそらくヴァン・ダイン自身の持論だろう)なかなか興味深く読めた。「犯罪の推理には物的証拠などより心理的根拠こそが最も重要」という考え、それによって真相に到達するフーダニットは、現代では通用しないだろうが、だからこそ今ではなかなかない作品とも言える。心理的要素から犯人をあばく過程もまたなかなか面白かった。 |
No.176 | 7点 | 麒麟の翼- 東野圭吾 | 2012/01/04 20:34 |
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冒頭の事件発生のシーンから引き込まれた。確かにミステリよりもヒューマンドラマの要素が濃い作品だが、それはそれで楽しめる。最初被害者として同情的に見られていた会社員家族が、事件の背景が明るみになるにつれ冷たくあしらわれていく様など、読み入ってしまう。
一応フーダニットの体はとられていると思うが、手がかりとなる情報があと出しになっている点は否めない。だが、結末の衝撃度は大きく、私としては「新参者」よりこちらのほうが(結末に限って言えば)好み。 やはり東野圭吾は加賀恭一郎シリーズがよい。 |
No.175 | 6点 | マスカレード・ホテル- 東野圭吾 | 2012/01/04 20:21 |
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警官がホテルマンに扮して一流ホテルでの予告殺人に対処するという設定、宿泊客のさまざまなエピソードが積み重ねられていく退屈させない展開、相変わらずの無駄のない軽快な文体など、高いリーダビリティで一気に読み進められた。
「新参者」のように、物語中の各エピソードがそれぞれにひとまず完結し、オチも用意されていて作者の構成の巧みさを感じさせられる。肝心の、本筋の殺人事件については、推理して読み進めるというより、進んでいく捜査を見物しているようになってしまうところはあるが、観客として楽しめるのでそれもまたよし。 |
No.174 | 5点 | ミステリが読みたい! 2012年版- 雑誌、年間ベスト、定期刊行物 | 2012/01/04 20:06 |
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大衆的だが、いつも「このミス」は買う人間で、以前原書房の「本格ミステリ・ベスト10」も買ってみたら、内容的に似たり寄ったりで無駄遣いした気がした。この「ミステリが読みたい!」は今年初めて購入したが、こちらは買ってよかったと思えた。ランキング内容等はどうしても(なのか?)似通ったものになってしまうが、そのあとに100冊まで内容紹介・解説がされている点が大きく違う。ジャンル、テーマ別にランキングがされているのも興味深い。ミステリ読書の指針として実用性が高い一冊だと感じる。 |
No.173 | 5点 | このミステリーがすごい!2012年版- 雑誌、年間ベスト、定期刊行物 | 2012/01/04 19:48 |
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私はAmazonやBOOKOFFで中古本を買ったり、図書館を利用したりと、書店で最新刊を購入することはめったにないので、今後読む本の参考になっている。ランキングは、他の方も書いているように独自色がなくなってきている=つまり、かなり一般的な人気投票になってきている感は確かにあるが、まぁ周りの人が多く読む本も読みたい庶民なので、個人的にはさほど不満はない。
「私のベスト6」が結構好きで、とても個性的なベスト6を選んでいるものに興味を引かれる。巻末の読みきり短編も、暇つぶしに読むにしてもなかなか質の高いものだった。 |
No.172 | 5点 | ゴーグル男の怪- 島田荘司 | 2012/01/04 19:31 |
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殺人事件の周辺に見え隠れする、ゴーグルをして町を疾走する謎の男・・・という、怪奇小説といってもいいような設定は、江戸川乱歩の少年探偵団シリーズみたいな雰囲気。(表紙の絵もそんな感じ)もともとはTV番組の企画で作られたものを加筆修正したらしいので、そういう仰々しい、絵的にインパクトのあるものにしたのかな。
さまざまな登場人物の思惑や過去が倒錯する展開は、それなりに読み応えがあって面白かった。結末は一抹の消化不良感が残らないこともないが。 |
No.171 | 8点 | 警官の条件- 佐々木譲 | 2011/12/03 22:14 |
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前作「警官の血」の3代目、安城和也を主人公としたシリーズ2作目。前作で、上司・加賀谷の暗部を告発する役目を務め、辞職に追い込んだ和也が、捜査一課の係長に抜擢され、薬物ルートの摘発に取り組むことに。しかし、大きく様変わりしてきた麻薬ルートに対応できず、威信が失墜しつつあった警視庁がした決断は、加賀谷の復帰。加賀谷は一課としのぎを削る五課につくことになり、先を越されまいとやっきになる和也だったが・・・
ミステリというよりは警察小説。謎解きが主体ではないので、そういう意味での評価は高くないかも。しかし、和也と加賀谷の交錯する思い、衝撃(でもないかな?)の結末と、読み応えは十分。読後の満足感はかなり高かった。 |
No.170 | 8点 | 転迷- 今野敏 | 2011/12/03 22:03 |
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前作「疑心」の竜崎が恋に揺らぐ様はちょっと見たくなかったが、久しぶりに「原理原則」に則って迷いなく突き進む竜崎らしい竜崎を見て快感だった。降りかかる4つの困難を、一貫した姿勢で対処していく姿に胸がすく。楽しめた。 |
No.169 | 6点 | メルカトルと美袋のための殺人- 麻耶雄嵩 | 2011/12/03 21:56 |
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嫌味で子憎たらしいメルの推理も筋道だってきちんとしており、ミステリとしての質は高いが、「水難」のように超科学的な要素や偶然がからむこともある点では好みが分かれるかも。メルと美袋の決して友好的とはいえない関係も同じく。私も推理は楽しめたが、メルの非人道的な価値観にはちょっとついていけない感じも受け、必ずしも読後感がよいものばかりではなかった。 |