海外/国内ミステリ小説の投稿型書評サイト
皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止 していません。ご注意を!

HORNETさん
平均点: 6.30点 書評数: 1074件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.174 5点 ミステリが読みたい! 2012年版- 雑誌、年間ベスト、定期刊行物 2012/01/04 20:06
 大衆的だが、いつも「このミス」は買う人間で、以前原書房の「本格ミステリ・ベスト10」も買ってみたら、内容的に似たり寄ったりで無駄遣いした気がした。この「ミステリが読みたい!」は今年初めて購入したが、こちらは買ってよかったと思えた。ランキング内容等はどうしても(なのか?)似通ったものになってしまうが、そのあとに100冊まで内容紹介・解説がされている点が大きく違う。ジャンル、テーマ別にランキングがされているのも興味深い。ミステリ読書の指針として実用性が高い一冊だと感じる。

No.173 5点 このミステリーがすごい!2012年版- 雑誌、年間ベスト、定期刊行物 2012/01/04 19:48
 私はAmazonやBOOKOFFで中古本を買ったり、図書館を利用したりと、書店で最新刊を購入することはめったにないので、今後読む本の参考になっている。ランキングは、他の方も書いているように独自色がなくなってきている=つまり、かなり一般的な人気投票になってきている感は確かにあるが、まぁ周りの人が多く読む本も読みたい庶民なので、個人的にはさほど不満はない。
 「私のベスト6」が結構好きで、とても個性的なベスト6を選んでいるものに興味を引かれる。巻末の読みきり短編も、暇つぶしに読むにしてもなかなか質の高いものだった。

No.172 5点 ゴーグル男の怪- 島田荘司 2012/01/04 19:31
殺人事件の周辺に見え隠れする、ゴーグルをして町を疾走する謎の男・・・という、怪奇小説といってもいいような設定は、江戸川乱歩の少年探偵団シリーズみたいな雰囲気。(表紙の絵もそんな感じ)もともとはTV番組の企画で作られたものを加筆修正したらしいので、そういう仰々しい、絵的にインパクトのあるものにしたのかな。
 さまざまな登場人物の思惑や過去が倒錯する展開は、それなりに読み応えがあって面白かった。結末は一抹の消化不良感が残らないこともないが。

No.171 8点 警官の条件- 佐々木譲 2011/12/03 22:14
 前作「警官の血」の3代目、安城和也を主人公としたシリーズ2作目。前作で、上司・加賀谷の暗部を告発する役目を務め、辞職に追い込んだ和也が、捜査一課の係長に抜擢され、薬物ルートの摘発に取り組むことに。しかし、大きく様変わりしてきた麻薬ルートに対応できず、威信が失墜しつつあった警視庁がした決断は、加賀谷の復帰。加賀谷は一課としのぎを削る五課につくことになり、先を越されまいとやっきになる和也だったが・・・
 ミステリというよりは警察小説。謎解きが主体ではないので、そういう意味での評価は高くないかも。しかし、和也と加賀谷の交錯する思い、衝撃(でもないかな?)の結末と、読み応えは十分。読後の満足感はかなり高かった。

No.170 8点 転迷- 今野敏 2011/12/03 22:03
 前作「疑心」の竜崎が恋に揺らぐ様はちょっと見たくなかったが、久しぶりに「原理原則」に則って迷いなく突き進む竜崎らしい竜崎を見て快感だった。降りかかる4つの困難を、一貫した姿勢で対処していく姿に胸がすく。楽しめた。

No.169 6点 メルカトルと美袋のための殺人- 麻耶雄嵩 2011/12/03 21:56
 嫌味で子憎たらしいメルの推理も筋道だってきちんとしており、ミステリとしての質は高いが、「水難」のように超科学的な要素や偶然がからむこともある点では好みが分かれるかも。メルと美袋の決して友好的とはいえない関係も同じく。私も推理は楽しめたが、メルの非人道的な価値観にはちょっとついていけない感じも受け、必ずしも読後感がよいものばかりではなかった。

No.168 5点 謎解きはディナーのあとで- 東川篤哉 2011/12/03 21:44
1作目「殺人現場では靴をお脱ぎください」が、推理の筋書きとしても、この作品の売りの宝生と執事の関係を知る驚きからも一番。2作目以降は、設定が分かった以上、パターンは分かるので、あとはトリック、謎解きの面白さにかかるわけだが・・・。まぁ1作目以上のものはなかった。でもそこそこは面白かった。

No.167 6点 出雲伝説7/8の殺人- 島田荘司 2011/09/18 22:08
 吉敷竹史シリーズ。山陰地方を走る6つのローカル線と大阪駅に、流れ着いた女性のバラバラ死体が。なぜか首はついに発見されなかった・・・。
 犯人は作中でほぼ確定し、路線・時刻のトリックを解明するハウダニット。とはいえ、時刻表のややこしさを単純化する配慮が要所になされ、割とややこしくて面倒臭いという感じはなく読み進められた。
 「天才肌の名探偵」御手洗潔と対照的な、地道で泥臭い吉敷竹史のキャラクターがよく出ている。よって、ストーリーの展開もまさに地道な捜査をそのままなぞるようだが、それが分かりやすい。トリックの妙もさることながら、犯人をあぶり出す最後の過程も趣向が凝らされていて、メイン以外にも謎解きが楽しめる作品と言える。

No.166 9点 人形はなぜ殺される- 高木彬光 2011/09/18 21:56
 このサイトで非常に評価が高いので中古で購入して読んだ。期待にたがわず、人形が殺されるという舞台設定、首なしや轢断死といった事件の陰惨さ、これぞ本格という雰囲気が存分に楽しめた。
 「推理を楽しむ」タイプのミステリ愛好家の大好物、「読者への挑戦状」もあり、そういう点でも楽しめたが、その挑戦状が親切すぎたのか、タイトルが親切すぎたのか、「好きな割には推理音痴」の私がほとんど真相を看破できた。そういう意味で、読者の思惑をはるかに凌駕する「参りました!」という爽快感ではなく、「神津恭一郎の推理に肉薄できた」という自分への満足感で読後感もよかった。
 それもすべて、精緻なプロットと、後出しなどのないフェアな作品展開によるものだと感じる。氏の他の作品も、是非読みたいと思えた。

No.165 5点 フランス白粉の秘密- エラリイ・クイーン 2011/09/18 21:34
 国名シリーズ第2作。百貨店社長サイラス・フレンチの妻、ウィニフレッドが,衆人注視のデパートのウィンドウで死体となって出てきた。事件当日から姿を消しているウィにフレッドの娘・カーモディ,明らかになるその素行,アパートに残された統一性のない書籍,ブックエンドの白い粉・・・さまざまな要素をつないで推理を組み立てるエラリイ―。
 劇場型的な事件の幕開けに本格志向の期待が高まったが、その後の展開は正直そこそこ。些細な異変に目を向け、そこから推理を組み立てるエラリイの知見には圧巻だが、物証から人物の限定へと進む過程に大味さを感じる(つまり「このことができるのはこの人しか・・・」の部分が完全に物理的ではない気がする)が、時代を考えればいたしかたないかも。
 少なくとも本格黄金期を飾った作者の名には恥じない、よく組み立てられた話であったことは間違いない。

No.164 8点 離れた家―山沢晴雄傑作集- 山沢晴雄 2011/09/18 21:20
 砧順之介の事件簿として「砧最初の事件」「銀知恵の輪」「死の黙劇」「金知恵の輪」、短編「扉」「神技」「厄日」「罠」「宋歩忌」「時計」、中編「離れた家」。アリバイトリック等をメインにした、基本に忠実というか、飾り気や無駄な伏線のない、リアリズム描写による質実剛健な作品群。作者の愛好家振りが表れた、将棋を題材にした「銀知恵の輪」「金知恵の輪」、二話が照応している「神技」「厄日」など、シリーズ的な趣向も面白いが、人間消失・瞬間移動のトリックを扱った表題作「離れた家」がやはり一番よかった。

No.163 7点 秋期限定栗きんとん事件- 米澤穂信 2011/09/18 21:18
 互恵関係を終わらせた小鳩君、小山内さんの煮え切らなさにやきもきするが、そっちのほうも、本筋の事件のほうも、ラストにすっと胸がすく。学園ものというライトな設定、事件も本格のような重さはないが、伏線もよく考えられ、下手な本格よりミステリ的にも面白かった。

No.162 5点 こめぐら- 倉知淳 2011/09/18 21:01
「Aカップの男たち」ブラ愛好家たちのおばかで大真面目なやりとり、「さむらい探偵血風録 風雲立志編」いちいちカメラをにらむ主人公の侍が最高。バカミスの面白さを堪能。ミステリ的には・・・かもしれないが、つまみ食いのように読書するにはオススメの一冊。

No.161 5点 なぎなた- 倉知淳 2011/09/18 20:55
それぞれに趣向の違った仕掛けがあって、楽しめる。アンソロジーなどでお目にかかった作品もあったが、読んでいるうちに「何か覚えがあるなあ」と思い出した。「ナイフの三」「闇ニ笑フ」がよかった。

No.160 6点 ミミズクとオリーブ- 芦原すなお 2011/05/05 16:50
 このサイトでの評価から,どんなものか読んでみたいと思い読んだが,それぞれの方の評価に納得がいった。とにかく「面白い!」。主人公と奥さん,そして河田のとぼけた会話が最高。事件に対する奥さんの推理は,推測やときには勘に基づくものであるため,ミステリの書評サイトとして採点は抑え目にしたが,文句なく気に入った作品となった。同シリーズの他作品も必ず読みたい。

No.159 7点 アリアドネの弾丸- 海堂尊 2011/05/05 16:16
「本シリーズ(海堂作品)はミステリではなく,医療エンターテイメント」という評判を覆す快作。ロジカルモンスター・白鳥が,隙のないロジックで真犯人を追い詰めていくくだりは痛快であり,往年の探偵小説の解決編のようであった。各登場人物のキャラクターを描く腕は流石で,それぞれの個性が生かされ,うまくストーリーに絡んでいる。
 一つ目の事件の謎解きが少し突飛で雑な感じがしたが,なんといってもメインの事件の謎解きは,医療現場(というかMRI)の特質に基づいた納得のロジックで,現役医師である作者ならではの筋書きと感じた。シリーズを読み進めてきた読者はもちろん,「もうバチスタ・シリーズはいいかな」と感じ始めていた人にも,この作品は勧めるに値する。

No.158 8点 マリアビートル- 伊坂幸太郎 2011/04/24 18:15
 裏稼業の人物たちのコミカルなニックネーム(「蜜柑」「檸檬」「天道虫」・・・),ありえない偶然の重なり,など,現実離れしたストーリーと設定だが,エンタテイメントと割り切って読めば非常に楽しい。前作に登場した「槿(あさがお)」が登場し,クールに仕事をこなす姿も胸がすく。
 人生,人間理解について達観したような極悪中学生「王子」の言動に非常にストレスがたまるが,作者のことだから最後にどんでん返しをしてくれるだろう・・・という期待のみで読み続け,まぁその期待は裏切られなかった。数々の「ありえない偶然」も,逆にここまで全体の仕組みを考えた作者の腕に脱帽する。個人的には,前作「グラスホッパー」よりこちらのほうがさらによかった。

No.157 7点 午前零時のサンドリヨン- 相沢沙呼 2011/04/24 17:56
 学校では無口で人を寄せ付けない美少女,酉野初は実は凄腕マジシャン。一目惚れした須川くんの周りに起こる学園内の不思議な出来事を,初が見事に解決していく。
 他愛もないラブコメのように見えて,それぞれの場面での言動があとになって意味をもってくる。事件解決を前面に打ち出して物語が進行する本格推理物と違って,わざとらしさがないため,そうした手がかりや伏線がうまく物語にもぐりこんでいて余計に面白い。最後の,物語のメインとなる謎についても同様に,上手にそれまでに手がかりが散りばめられていて感心した。ただ,コンピュータ,ネットにかかわる知識が絡んできたのは少し難解だった。
 個人的には八反丸芹華がキャラ的にも,人間的にも好き。作品としても,受賞の名に恥じない名作だと感じた。

No.156 6点 アルバトロスは羽ばたかない- 七河迦南 2011/04/24 17:40
 児童養護施設「七海学園」の保育士,北沢春菜が施設の子どもとかかわる中で,いろんな謎を解いていく。一方,施設の子が通う七海西高校で起きた転落事件の真相解明に取り組む主人公。自殺として処理しようとする警察に対し,「自殺ではない」と信じ,自分なりに捜査をしていくが・・・。真相には確かに驚かされる。まぁうまいにはうまいけど・・・騙された感もぬぐえない(腑に落ちないほうで)。
 上記の謎のみを追究する一編ではなく,過去の施設で起きたさまざまな謎解きが回想として描かれ,それぞれに楽しめる短編のようになっているのがよかった。物語メインの謎は自分としては「・・・・・・・」だったが,そうした点で面白かったのでこの評価とした。

No.155 6点 死ねばいいのに- 京極夏彦 2011/04/24 17:32
「アサミ」という女性の死について,渡来という礼儀も何もわきまえない,いかにも今時の若者が,関係者に話を聞いて回る。「自分は頭悪いすから・・・」といいながら,関係者たちの心に入り込む言葉を投げつけ,それぞれの人生を否定(?)する。
 そのやりとりや,過程を楽しむのがメインになる。フーダニットの体をとっているとはいえ,事実・手がかりをもとに解明されるわけではないのでその要素は薄い。が,それぞれの関係者からどのような過去や内面が暴かれるのか,と楽しんで読むことが出来た。

キーワードから探す
HORNETさん
ひとこと
好きな作家
有栖川有栖,中山七里,今野敏,エラリイ・クイーン
採点傾向
平均点: 6.30点   採点数: 1074件
採点の多い作家(TOP10)
今野敏(48)
有栖川有栖(44)
中山七里(40)
エラリイ・クイーン(34)
東野圭吾(34)
米澤穂信(20)
アンソロジー(出版社編)(19)
島田荘司(18)
柚月裕子(17)
佐々木譲(16)