皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
していません。ご注意を!
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HORNETさん |
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| 平均点: 6.33点 | 書評数: 1208件 |
| No.548 | 8点 | 慟哭- 貫井徳郎 | 2018/09/02 08:57 |
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| <ネタバレ>
大きく2つの意味での「どんでん返し」がある作品だと思った。 一つ目は当然、交互に描かれる場面が、実は同じ時間軸ではなかったという叙述トリック。こちらについては、特に最近ではよく用いられる手法なので、ミステリに読み慣れている人ならばひょっとして途中で気付くかもしれない。私もそうだった。 ただ、仕掛け自体はなんとなく推理できても、その真相、真犯人は予想外だった。それは、読者の主人公への共感をひっくり返すという、もう一つの意味での「どんでん返し」があるからだ。 孤立しながらも冷静さを失わず、自身の信念のままに捜査を進める捜査一課長・佐伯にほとんどの読者が共感するだろう。そして、最後には周りの風評をひっくり返して事件を解決し、留飲を下げるという展開を期待して読み進める。 そういう読者の期待を完全に打ち砕き、真逆に落として物語を絞めるという、こちらこそが本作の「どんでん返し」のメインではないか。 これまでの書評にあるように、この展開は非常に賛否両論であろうことが予想される。「読後感が悪い」という感想もうなずける。 だが、ある意味「孤軍奮闘する刑事が、最後に真相にたどり着く」というオーソドックスな不文律をぶち破った本作は、なかなかない読者への(私としてはよい意味で)裏切りで、傑作だったのではないかと思う。 |
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| No.547 | 4点 | 彼女は存在しない- 浦賀和宏 | 2018/09/02 08:15 |
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| ありがちな多重人格モノ、というのが正直な感想。
多重人格をネタにしている時点でだいたいの目論見は分かるし、そうじゃない結末だったらスゴいのだが、実際その通りだったのでなんとも。 解離性障害の種類をとりあげてトリックに絡めている点はなるほどと思えたが、途中の主人公の言動や、携帯のストラップの描写のくだりでだいたいは分かった。 策を弄しすぎて「ややこしいな」と感じさせてしまうところもある。物語の描写自体は面白く、読ませるところもあるので、著者の他作品も機会があれば読んでみたい。 |
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| No.546 | 6点 | 顔に降りかかる雨- 桐野夏生 | 2018/08/25 19:08 |
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| ストーリーテラーとしての才はこのころから十分に感じられる。話、文章としては苦痛なく読み進められるリーダビリティがあり、その点では十分面白い。ただ、ミステリとして評価するとなると、やや厳しい評価になってしまうのも否めないかな。
でも自分は、一旦決着がついたかに見える終盤のくだりで結構騙されていて、その後の「真犯人」は予想外ではあった。つまり騙された。そのことが推理できる伏線もちゃんとちりばめられていた(気がする)ので、よく練られた作品であったことは素直に感じた。 それにしても、何をもって「ハードボイルド」というのか?昔からよく理解できていないが、本作が「ハードボイルド」と冠されることでますますわからなくなった。(決して「違うでしょ」という意味ではない。何せ、分かっていないので(笑)) |
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| No.545 | 7点 | 法月綸太郎の新冒険- 法月綸太郎 | 2018/08/25 17:21 |
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| 他で読んでいた短編が結構あったので、今回読んだ感想とそのとき読んだ記憶と混ぜた書評になるが、少なくとも謎解きパズラーが好きな御仁であれば一定の満足感は得られる改作集。
「背信の交点・・・作中にも書いてあるが、清張の「点と線」を思い起こさせるような、駅での列車のすれ違いを題材にした話。どんでん返しもあり、◎。 「世界の神秘を解く男」・・・綸太郎が仕掛けたフェイクの実験の、真の狙いのくだりに感心した。〇。 「身投げ女のブルース」・・・後半の急展開、ひっくり返し方はこれが一番◎。「偶然が過ぎる」点には目をつむって楽しみたい。 「現場から生中継」・・・これもまた(というかこっちのほうが)「偶然が過ぎる」が、ネタの発想が面白い。◎。 「リターン・ザ・ギフト」・・・単純な交換殺人に見せかけて、その裏に複雑に絡んでいた仕組みの解明が面白い。〇。 と、少なくとも△はない。楽しめる短編集だった。 |
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| No.544 | 6点 | 幻夏- 太田愛 | 2018/08/19 22:22 |
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| 「天上の葦」を読んでから、遡って読んでいる。
鑓水たちが調べていくうちにどんどん謎が深まっていって、「何だ?真相はどういうことなんだ?」と早く知りたくなりページを繰る手が止まらないリーダビリティはある。 ただ、「被害者がやむを得ず加害者になってしまった」ことに同意・共感できるのも限度があり、ためらいなく無辜の人間を屠ったり、唯一無二の肉親を屠ったりするところまで行くと、本作のテーマである「冤罪被害者」への思いも薄れてしまう。 一方で、その冤罪を生み出した警察組織側の人物の終末も消化不良で、まぁそれが現実と言えば現実なんだけど、ある程度の勧善懲悪ぶりを貫いてほしかった。 |
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| No.543 | 9点 | 天上の葦- 太田愛 | 2018/08/19 11:00 |
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| 正午の渋谷交差点で、歩行者が皆渡り終え、歩道へと引いていった後、中央に一人の老人が残って立っていた。車のクラクションが飛び交う中老人はまっすぐに点を指差し、そのまま絶命。奇しくもその様子は、いつも冒頭映像として渋谷スクランブルの中継映像を流している正午のニュースにより、全国にライブ中継されていた。
「老人が何を指差していたのかを解明せよ」―訳あって倒産目前となっていた鑓水探偵事務所に、そんな依頼を持ち込んできたのは天敵ともいえる政治家の使い。依頼元には不本意な思いしかないが、鑓水はその依頼を受け、仲間と共に真相解明に乗り出す― 上記の老人の死の真相解明と並行して、失踪した警察庁公安刑事の行方を追うストーリーが描かれる。やがて両者は交差し、日本の暗黒の歴史を背景とした物語へと広がっていく。 非常に読み応えがあり、厚みのある内容に満足した。今の政治社会情勢を鑑みると、いろんな意味で考えさせられる作品。 |
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| No.542 | 5点 | ドロシイ殺し- 小林泰三 | 2018/08/19 10:35 |
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| このシリーズも3作目。別世界の住民と、アーヴァタールという関係で同一人物(?)としてつながっている、という設定にも慣れてきて、読み易くなったが、同時にトリックも見えやすくなってきた。
今回のトリックも、当然この世界設定を生かした一種の叙述トリックだが、予想の範疇で「あぁ、やっぱり」という感じだった。 登場人物のおバカなキャラクターと、その呑気なやりとり中に淡々と描かれる残酷な描写、というミスマッチな感じが読んでいて楽しいが、ミステリとしては1作目以上の驚きをもたらすのは難しいのではないかと思う。 |
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| No.541 | 5点 | 罪びとの手- 天祢涼 | 2018/08/19 10:24 |
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| 廃ビルで中年男性が、頭部を打撲して死んでいた。争った形跡もなく、事故で処理されようとするが、現場に駆け付けた一課刑事・滝沢は、死亡推定時刻よりも2日も前で止まっている腕時計に不審を抱く。そんな中、身元不明だった遺体の身元が偶然判明する。一時保管のために遺体の引き取りに来てもらった葬儀社の社長・御木本が、「この遺体は私の父だ」と言ったという。この奇妙な偶然に、ますます滝沢の疑念は深まる。これは事故ではない、殺人だ、だとすれば犯人は―?
生前に「俺の葬式は挙げないでくれ」と言っていた父の意向を無視して、大々的な葬儀を行おうとする御木本、遺体と対面した際に強い違和感を感じた、長男である御木本の兄など、謎めいた登場人物の言動により不可思議さは膨らんでいく。 しかしそれを受け止めるラストがやや期待外れだった。「それはナシになったんじゃなかったのか?」と感じられるネタだったのと、葬式の場での参列者を前にした真相解明というのがパフォーマンス感が強すぎて、鼻白んだところがあった。 |
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| No.540 | 7点 | 悪魔を憐れむ- 西澤保彦 | 2018/08/19 09:57 |
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| 匠千暁シリーズの中・短編集。本格志向の作家さんらしい、趣を凝らした作品ぞろいでよかった。
私としては4作品のうちの後半2作品が気に入った。 「意匠の切断」は、3人が殺された殺人事件で、そのうちの2人だけが頭部と両手首を切断され、別々のところに遺棄されていた謎から真犯人を追う。遺棄されたそれぞれの場所と、第一発見者の共通点を糸口にしてその意味を解明し、真相へと辿りつく過程は読み応えがあった。 「死は天秤にかけられて」。ボアン先輩と飲んでいた時、店の公衆電話で話している男の言葉が聞こえてきた。男の話す内容も気になるものだったが、さらにその男は千暁が先日あるホテルでも見かけ、印象に残っていた男であることを思い出す。その時の様子と、今聞こえてきた男の言葉から、状況を推理しだす2人―と、「9マイルは遠すぎる」的なスタイルの話。これは、ありがちな人間の心理を非常に上手く取り上げて仕掛けがされていて、作者の着眼点の面白さに楽しませてもらった。 |
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| No.539 | 7点 | 殺意の隘路- アンソロジー(出版社編) | 2018/08/05 21:40 |
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| 青崎有吾「もう一色選べる丼」
赤川次郎「もういいかい」 有栖川有栖「線路の国のアリス」 伊坂幸太郎「ルックスライク」 石持浅海「九尾の狐」 乾 ルカ「黒い瞳の内」 恩田 陸「柊と太陽」 北村 薫「幻の追伸」 今野 敏「人事」 長岡弘樹「夏の終わりの時間割」 初野 晴「理由ありの旧校舎」 東野圭吾「ルーキー登場」 円居 挽「定跡外の誘拐」 麻耶雄嵩「旧友」 若竹七海「副島さんは言っている 十月」 ・・・とまあ、少しでも近年の国内ミステリに通じている人ならば、目を見張るような豪華布陣。 どれも他誌に掲載されたものを集めているので、ひょっとすると既読のものもあるかもしれないが、当然すべて一定の質が担保されていて間違いはない。 青崎有吾、今野敏、初野晴などは、著者の一つのシリーズ物の短編なので、もちろんそれを知っていなくても内容は分かるが、読んでいるシリーズだとなお面白さが深まる感じはあると思う。 |
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| No.538 | 8点 | 希望が死んだ夜に- 天祢涼 | 2018/08/05 18:57 |
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| 古い空き家の洋館で、女子中学生・春日井のぞみが首吊り死体で発見された。警察は現場から走り去ろうとした冬野希(ネガ)を逮捕。ネガは「自分が殺した」と言い、それを受け入れればそのまま翌日には送検となる。ただ、ネガは犯行を認めつつも、その動機に関しては一切語らない。捜査を担当した捜査一課の真壁は、初陣となるこの件にケチをつけたくないという思いで全容解明に臨む。しかし一緒に捜査をすることなったのは、生活安全課の女性警官、仲田。少年犯罪を多く手掛けてきた仲田は、何かにつけて当事者であるネガら若者たちの心情を「想像」することを重んじる。そんな仲田のやり方に歯がゆさを感じる真壁だったが―
スタートは動機を探る「ホワイダニット」のようでありながら、実際はそれにはとどまらない奥深さがありそうなのが読み進めるにしたがって分かりだす。少年少女の気持ちを汲み取ることを重んじる仲田に始めは反発を感じていた真壁だが、事件の真相に迫るうちに次第に彼女を信頼していく。 一旦事件が収束したように思わせた後のひっくり返し方も見事で、よく練られた構成と、瑞々しい十代の世界を描き切る筆致に吸い寄せられて一気に読めた。 |
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| No.537 | 7点 | 婚活中毒- 秋吉理香子 | 2018/08/05 18:08 |
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| 「婚活」をテーマにした短編集。結婚を渇望する男女が、いろんな思惑で婚活をする中で騙し騙されるというミステリ。
「理想の男」「婚活マニュアル」「リケジョの婚活」3本は、何というか「女の怖さ」を描いたミステリ。いかにもありがちな婚活風景の中で、上手く仕掛けを施していて、読み易いし面白い。最もミステリ的なのは最初の「理想の男」かな。 「代理婚活」は、本人はその気がないのに親が息子の婚活に励む話。父親が暴走して危うい展開になるのだが、ラストにどんでん返しがある。 それぞれに技巧が感じられる、良質な短編集だと思った。 |
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| No.536 | 8点 | 硝子のハンマー- 貴志祐介 | 2018/07/28 15:45 |
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| 「密室トリック」というのは既にやり尽くされてしまったという諦観を、吹き飛ばしてくれた。こんな斬新なトリックが生まれるのなら、まだまだ捨てたもんじゃないなぁ、と思った。数ある密室ものの中でも、印象に残る作品。
作者としても満を持して臨んだ様子がうかがえ、前半では別解が一つ一つ丁寧につぶされていく。ミステリとして非常にフェアだとは思うが、ちょっとその部分が長いなぁとは感じた。 後半は犯人の視点から、犯罪を犯すまでの過程が描かれていくのだが、こちらは非常に引き込まれる展開で、長い作品ながらも飽くことなく読み進めることができた。 「鍵のかかった部屋」や「狐火の家」などのシリーズの後発作品を先に読んでから読むと、榎本と青砥弁護士の関係性(というか榎本の青砥への態度)が、始めは微妙に違うなーと感じた。簡単に言うと、青砥弁護士の評価(能力的にも女性としても)が、結構この最初の作品では高い感じがする。後発作品ではどちらかというと、「トンデモ推理をする天然弁護士」と「理知的で冷静な泥棒探偵」というイメージが強いのだが・・・ 何にせよ、本作品の密室トリックはとてもよかった。介護ロボット等、周辺の設定も無理なく、そして必然性をもって筋に絡んでいて、非常に上手いなぁと感じた。 |
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| No.535 | 5点 | 狐火の家- 貴志祐介 | 2018/07/28 15:29 |
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| 密室殺人を題材とした、トリック重視の短編集。防犯探偵・榎本&女性弁護士・青砥純子のシリーズ。謎解き主体のミステリをお手軽に楽しむにはよい一冊。
私としては2つめ「黒い牙」と3つめ「盤端の迷宮」が面白かった。どちらも、トリックとそれが解明されていくプロセスが、本格ミステリらしいものだった。 最後の「犬のみぞ知る」は完全にギャグ。読んでいて笑いが止まらない。「硝子のハンマー」で登場した元秘書が登場するのだが、その元秘書も含めて劇団のメンバーがホントにおバカで・・・読んでいると、一人で笑ってしまう。さぞかし周りからは変に見られるさまだっただろう。 |
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| No.534 | 6点 | 消えた断章- 深木章子 | 2018/07/16 17:57 |
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| 「交換殺人はいかが? じいじと樹来とミステリー」の、樹来が大きくなったバージョン。有栖川有栖の「学生アリスシリーズ」に対する「作家アリスシリーズ」みたいな感じ?そうとは知らずに読んだから、そうと分かって嬉しかった(笑)
大学生になった樹来のところに、妹の麻亜知が友人を連れてくる。友人の名は夕夏。なんと彼女は、幼いころに叔父に誘拐されたという経験を持つ。その誘拐事件は夕夏も無傷で戻り、家庭内のいざこざということで処理されていたのだが、事件から10年たった今になって、警察が当時のことを改めて聞きに来たという。そして警察は何故か、ある少年の写真を見せ、「この子のことを知っているか」と聞いたという。警察には「知らない」と答えた夕夏だったが、実は記憶の中にその少年の顔はあった。そして夕夏は樹来たちに言った「私、その子を殺したかもしれないんです」― 当時の状況の調査から、樹来と樹来に協力する捜査一課刑事・中村の推論によって推理が進められていくのが物語の中心。ちょっと一足飛びに推理を進め過ぎな感じはあるが、警察の捜査本部主体の話ではないのでまぁ致し方ない部分もあるかも。 事件の真相は面白かったが、目から鱗というほどの意外性はなく、ある意味予想の範疇ではあった。 |
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| No.533 | 6点 | 真実の檻- 下村敦史 | 2018/07/09 20:53 |
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| 大学生の石黒洋平は亡くなった母の遺品を整理中、隠されていた手紙から、自分は今の父の子ではないことを知る。本当の父親は、母が結婚前につきあっていた別の男性。それだけでも十分ショッキングだが、なんとその本当の父親は、母の両親、つまり洋平の祖父母を殺害した罪で収監されている死刑囚だった―
事実を受け入れられない洋平は、実父が無実であることを信じ、冤罪を晴らすべく調査を始める。 上記のような怒涛の展開で、飽くことなく読み進められることは間違いない。物語の面白さは、我々も含めた世間が根拠なく信奉している日本の裁判制度、というか裁判官の正義。しかし物語を読み進めるに、裁判官もいち人間であり、司法の世界も所詮「人間社会」であるという当たり前のことに気づかされる。そういう点で面白い。 真犯人は早々に推測できたし、見事その通りだった。それを裏切るもう一枚があってもミステリとしては面白かったのでは、と思う。 |
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| No.532 | 6点 | ワルツを踊ろう- 中山七里 | 2018/06/30 09:53 |
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| 題名から中身が想像しにくい(笑)。中山氏のことだから、音楽関係のエンタメかとも思ってしまうが、ちゃんとミステリです。
職を失い、20年ぶりに溝端了衛が帰った故郷は、7世帯9人の限界集落。静かな田舎での、村民と触れ合いながらの生活に期待を寄せていた了衛だったが、閉鎖的で曲者ぞろいの住民たちを相手にその期待は崩れる。それでも地域に溶け込もうと奮闘する了衛の身辺で、不審な出来事が次々と起こりはじめる。 一連の出来事の黒幕は早々に想像がついた。それにしてもこの作品は、絵的には「津山三十人殺し」をイメージしているのではないかな。 |
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| No.531 | 6点 | ネメシスの使者- 中山七里 | 2018/06/30 09:24 |
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| この作品のメインテーマである「死刑制度の是非」や「犯罪者の更正を主眼にした現在の刑罰」といったことは、しばしば氏の作品内で論じられる。少なくとも中山氏は罪に応じた厳罰を科すべきという考えを持っているように感じる。
残酷な殺人を犯しながら、死刑を回避して懲役囚となり、刑務所に収監されている囚人の家族が相次いで殺害された。現場には血文字で「ネメシス」と書かれたメッセージが。渡瀬警部は、過去の事件の関係者を洗うとともに、その事件の判決に関わった法曹関係者にも目を向ける。すると、「ネメシス」の標的になった過去の殺人事件は、「温情判事」と名を馳せた渋沢判事が判決を下しているという共通点が見つかった。そして、一つの事件では検事側に岬検事の名も。 家族を殺された被害者による復讐か、それとも義憤を謳う第三者の犯行か。現行司法制度への反逆とも言える犯行に、渡瀬らは警察の威信をかけて捜査にあたる。 捜査過程で描かれる被害者遺族の慟哭と、渡瀬の煩悶と矜持が作品の柱。一応フーダニットではあるが、読者が手がかりを追って推理をする余地はほとんどなく、真相の意外性という点で楽しむタイプのもの。 個人的には、渋沢判事が最後に言った「死刑は極刑などではない」という論調にはうなずける部分があった。 |
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| No.530 | 8点 | 闘う君の唄を- 中山七里 | 2018/06/10 12:04 |
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| 喜多嶋凜は、新任幼稚園教諭として埼玉県の神室幼稚園に赴任した。
子どもを愛し、理想とする教育の実践に意気込む凜だが、その壁として立ちはだかったのは保護者会の存在だった。エゴイスティックな我が子愛から、教育の理念とはかけ離れた要求を園にしてくる保護者たち。強い反発を感じる凜だが、何故か園長の京塚はそれらの要求を全て受け入れる。たまりかねた凜が園長を問いただすと、神室幼稚園では15年前、送迎バスの運転手が3人の園児を殺すという大事件があり、それ以来保護者会には頭が上がらない状況が続いているとのことだった― 物語の後半には、15年前の事件の真相解明という、ミステリ要素も入っては来るが、基本的に物語の幹は、新任幼稚園教諭の対保護者奮闘記。「全員主役の劇」「競争のない運動会」など、世の中でも話題になった歪な教育観とまっこうから闘い、子どもたちと心を通じ合わせていく話は胸がすき、心温まる。 物語後半には読者も驚く背景が明らかにされ、ストーリーは急展開する。そこで描かれる人間模様も読みごたえがあり、ホントにこの人は何でも書けるなぁと感動する。 出版レーベルがメジャーじゃないのでシチリストもあまり知らないかもしれないが、読んだらまず満足できると思う。 |
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| No.529 | 7点 | ご用命とあらば、ゆりかごからお墓まで- 真梨幸子 | 2018/06/10 11:34 |
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| 大塚佐恵子は、万両百貨店外商部のトップコンシェルジュ。顧客に呼ばれればすぐに行き、「いついつまでに何々を用意してほしい」という注文に、たとえそれが難題であっても必ず応えることで絶大な信頼を得ている。注文は商品購入にとどまらず、「何々を調べてほしい」「誰誰を説得してほしい」など、もはや何でも屋の域に達するときもあるが、大事な顧客のため、可能な限りそれらにも応える。そうした外商部の顧客対応の奇譚を集めた連作短編集。
作者の作品はこれまでも読んだが、どちらかというとホラーテイストで劇場的な作品が主だったので、このようなパターンは意外な感じがしたが、一つ一つの話のオチと、それらを絡ませて全体でまとめ上げる術は非常に巧みで、とてもよかった。 最初はデパート外商を舞台とした「日常の謎」のような雰囲気だったのだが、最後まで読むとさすが真梨幸子、それだけでは終わらなかった。 面白かった。 |
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