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[ 警察小説 ] 棲月 隠蔽捜査7 |
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今野敏 | 出版月: 2018年01月 | 平均: 7.00点 | 書評数: 3件 |
新潮社 2018年01月 |
No.3 | 6点 | haruka | 2022/10/11 00:38 |
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大森署長として最後の事件。マンネリ感は否めないが、神奈川県警異動後の活躍に期待。 |
No.2 | 7点 | E-BANKER | 2020/09/12 20:33 |
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「隠蔽捜査7」。ついにシリーズも15周年に突入。
そして、竜崎伸也、大森署署長最後の事件! 2018年の発表。 ~鉄道のシステムがダウン。都市銀行も同様の状況に陥る。社会インフラを揺るがす事態に事件の影を感じた竜崎は、独断で署員を動かした。続いて、非行少年の暴行殺害事件が発生する。二件の解決のために指揮を執るなか、同期の伊丹刑事部長から自身の異動の噂があると聞いた彼の心は揺れ動く。見え隠れする謎めいた敵。組織内部の軋轢。警視庁第二方面大森署署長、竜崎伸也、最後の事件~ 15年経っても、竜崎伸也は決して変わらず、決してブレず。まさに管理職の「鑑」だ。 『管理者がしっかりしていないと、現場の者は存分に力を発揮できない。現場をいかに効率よく動かすかが、管理者の役目であり、キャリアはそのために全力を尽くすべきだと考えていた』・・・とここまではいつもの“竜崎節”と言えるのだが、左遷され赴任した大森署で署長職を全うしているうち、『・・・少しだけニュアンスが変わってきた。現場の動きを肌で感じるようになったのだ』という心境の変化に至ることになる。 妻の冴子からも、大森署での勤務が竜崎を人間として成長させたと言われるなど、まさに署長としての総決算的な作品が本作ということになる。 毎回感じるけど、管理職として竜崎に見習うことは大。大なのだが、これを真似するのは至難の業。今話題の半〇直〇もそうなのだが、「正しいことを何のためらいもなく正しいと言う」-これができる者だけが人間を、そして時代を動かすことができるのだと思う。 で、本題なのだが、「棲月」というサブタイトル。てっきりそういう熟語があるのだと思っていたけど、そうではなくて本作に登場するある人物を指す造語のようだ。「月」に「棲む=住む」とはこれ如何に? ネット犯罪自体は今さら感があるし、プロットとしても特段目新しさはない。 この当たりはシリーズを重ねるごとに作者の苦労が偲ばれるということなのだが、悪く言えば中盤の冗長さに繋がっているようにも思える。 まぁ謎解きがメインのシリーズでもないし、警察内部の抗争やゴタゴタを竜崎がバッタバッタとぶった切るという場面を多く入れる方がシリーズファンにとってはいいのかも。 いずれにしても、神奈川県警の刑事部長へ栄転となった次回以降の竜崎の活躍に期待だ。次回もまた、私に管理職としての心得を伝授していただきたい。よろしくお願いします! |
No.1 | 8点 | HORNET | 2018/03/11 11:30 |
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近隣の私鉄と銀行のシステムが次々にダウンする妙な事案が発生。万一、ハッカーによるシステム攻撃のことも考え、念のため署員を向かわせる竜崎だが、管轄外での事案に口を出すことになるその動きに、警視庁生安部長から横槍が入る。
時を同じくして、管内で少年の殺人事件が発生。一見関連のない二つの事案だったが、関わった少年グループたちが「ルナリアン」と呼ばれるカリスマハッカーを恐れているらしいことが分かってくると、竜崎は二つを結び付けて考えようとする。突飛に思える発想だったが、結果的にその読みが事件を解決へと導いていく― ・・・と、「関係があるのではないか」「気がする」というような感覚的な、曖昧なスジ読みで捜査を進め、結果的にドンピシャという一足飛びの捜査過程は相変わらずだが、本シリーズに地道で精緻な捜査やロジックは期待していないので問題ない。それよりも原理原則を崩さない竜崎の一貫性と、始めはそれに戸惑いながらも次第に強く惹かれていく周囲の人間とのドラマが醍醐味。 本作でも、捜査会議で「署長はキャリアなので、現場の捜査は分からないのでは…」というニュアンスの言葉が他部署から出た時に、戸高が「何もわかっちゃいないのはそっちのほう。署長がこれまでどれだけの事件を解決してきたかも知らないくせに」というようなことをボソッと言う場面がある。普段は反抗的ともとれる態度の戸高のこの一言は、シリーズを読んできた者にとって「最高!」と拍手したくなるものだった。 シリーズ2作目から続いていた大森署長も本作が最後。ついにキャリアに復帰する。馴染みの大森署メンバーと別れるのは読者も寂しいが、新しい場でまた信頼ある人間関係を築いていくであろう竜崎の今後も、楽しみにしたい。 |