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[ 警察小説 ] 無明 警視庁強行犯係・樋口顕 |
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今野敏 | 出版月: 2022年03月 | 平均: 5.00点 | 書評数: 1件 |
![]() 幻冬舎 2022年03月 |
![]() 幻冬舎 2024年10月 |
No.1 | 5点 | パメル | 2025/02/21 06:47 |
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警視庁強行犯係。樋口顕シリーズ第七弾。
ある日、樋口は東洋新聞の女性記者・遠藤に相談を持ち掛けられる。三日前に荒川の河川敷で発見されたのだ高校生の水死体が自殺と断定されたことに両親は納得していないというのだ。しかしそれは千住署の担当であり、その決定に対して今さら口を挟めるはずもなかった。だが、樋口は気になり藤本由美巡査部長とこの事実を慎重に洗い直していく。その行動に対し、石田理事官からは激しく叱責され、懲戒免職もほのめかされる。組織の秩序と真実の追求の狭間で苦悩する様子は、現代社会における個人の倫理観を問うテーマとして深みを与えている。 誤認逮捕、冤罪を生む要素はいつだって潜んでいる。そういうことを絶対に許してはいけない。また同様に、他殺の痕があるにもかかわらず、それを無視したり間違った捜査をしたり、あるいは無かったものとして隠蔽したりという行為も許せないと樋口は心の底から思っている。 本書では、個人として絶対に譲れないその正義を敢然と貫こうとする樋口の姿が何とも凛々しく描かれている。また娘に対し父親としての対応を妻の恵子に迫られる場面が各所に散見できる。本シリーズならではの家族の団欒、理想のひとつの家族形態がある。不満な点は、事件の解決が急展開過ぎる点と、敵対するキャラクターの動機描写がやや物足りないところ。 |