皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
していません。ご注意を!
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HORNETさん |
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| 平均点: 6.33点 | 書評数: 1208件 |
| No.668 | 7点 | ケイトが恐れるすべて- ピーター・スワンソン | 2020/01/04 17:45 |
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| この方の作品は、両方とも本サイトにある「そしてミランダを殺す」と本作品しか読んでいないが、この方がよいのか、訳者が優れているのか、非常に読みやすい。「海外作品はちょっと読みにくい」と感じられている人も、すいすい読めるのではないかと思う。
大学時代に偏執的な恋人にストーキングされたあげく同じ部屋で銃で自殺され、心に大きな傷とトラウマを抱えたイギリス女性、ケイト・プリディー。ある時、アメリカに住む又従妹のコービン・デルから「6か月間、住居を交換してほしい」との申し出が。心的障害を抱えるケイトだったが、勇気を出してその申し出を受けることに。ところが、コービンの住居に着いてボストンでの生活を始めたその日に、隣人の女性が不審死を遂げる― 主人公ケイト、コービン、同じアパートメントに住む男と、かわるがわるそれぞれの視点から物語が展開していく。しかし、持って回った複雑な言い回しなどがないので、すっと頭に入っていく。 本作品は「閉じた狭い空間で繰り広げられる、人に見られたくない人間性」という雰囲気を感じ、個人的にルース・レンデルの作風を彷彿とさせた。主人公ケイトの病的な神経質さも上手く描かれ、映画などで映像化されたらかなり映えるのではないかとも思う。 今後もこの作家の作品はチェックしたいな、と思える面白さはあった。 |
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| No.667 | 6点 | 国語教師- ユーディト・W・タシュラー | 2020/01/04 17:14 |
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| 教育委員会の企画で「作家と生徒の出会い」が企画され、54歳の国語教師・マティルダの学校に、十数年前、突然自分を捨てて行方を消した元恋人である作家・クサヴァーが来ることになる。久しぶりの再会を喜ぶクサヴァーと対照的に、「なぜ私を捨てたのか?」と冷たい態度のマティルダ。しかしメールのやりとりをかわすうちに、マティルダのもとを去ってからのクサヴァーの日々が明らかにされていき…
クサヴァーがマティルダと別れてから結婚した妻との間に出来た子は、誘拐されたまま行方が分からず未解決のまま。その真相が解き明かされていく点は一応ミステリの体にはなっているものの、大した真相ではない。過去・現在、または物語・現実とくるくる場面が変わる展開も、取り立ててそれが仕掛けになっているわけでもなく、ミステリという側面ではそれほど秀でているとは感じない。 しかしページを繰る手が止まらず、どんどん読み進めてしまう魅力は確かにある。それは年を経て若く情熱的な頃を回顧するノスタルジーからか、決して良い終わり方はしなかったのに笑って話せるようになった男女への共感からか。いずれにせよ、「ミステリ」としての評価であることを踏まえて何とか抑えめに採点したが、総合的にはとても楽しめた。 |
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| No.666 | 8点 | medium 霊媒探偵城塚翡翠- 相沢沙呼 | 2020/01/02 19:17 |
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| ラスト前までの各章は、確かにそれなりに面白くはあるが「各ランキングで1位を獲るほどか?」と思っていた。が、最終章を読んだら納得。この仕組み方は・・・新鮮だった。
メインの「連続死体遺棄事件」の真犯人は後半で分かり、「ああ、そういうパターンね・・・」と思っていたが、それを上回る仕掛けに見事にやられた。 とても楽しめた。 |
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| No.665 | 6点 | 潮首岬に郭公の鳴く- 平石貴樹 | 2020/01/02 19:10 |
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| 芭蕉の句になぞらえて美女三姉妹が次々殺されていくという、明らかに「獄門島」の本歌取りを意図した作品。
文章自体は読みやすいのだが、何しろ登場人物(=容疑者)が多くて、いとこやらなんやらの親族関係も複雑で、把握しながら読み進めるのに苦心した。 要所要所で散りばめられる謎も割と細かくたくさんあり、それらが収束していくラストは素晴らしかったが、そこに行きつくまで事件の背景や構図をたくさん吸収していかなくてはならず、最後はとにかく真相を読んでしまいたい、という気持ちだった。 純粋な本格ミステリとしては十分に楽しめた。 |
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| No.664 | 7点 | イヴリン嬢は七回殺される- スチュアート・タートン | 2019/12/28 13:22 |
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| ある時突然、森の中にいる自分。自分が誰なのかもはじめは分からず、何が起こっているのかもわからない。すると怪しい風貌の人物が現れて告げる。「ここで夕刻に起こる殺人事件の真犯人を解明せよ。それができるまで、お前は違う人物に入れ替わって何度も同じ日をループすることになる」―
主人公がさまざまな人物になり、同じ日を何度も繰り返すうちに少しずつ事件の裏にある過去や人間関係が分かっていくのだが、なにせややこしくて複雑。多くいる登場人物を頭に入れるのにも苦労して、少し前を見返すことを何度も繰り返して読み進めた。 ようやく物語の設定に慣れてきたころはもう終盤だったが、複雑な構造で仕組まれたストーリーが収束するさまは素晴らしかった。中盤、敵・味方がくるくる入れ替わっていくのだが、最後に用意された結末には驚かされた。 |
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| No.663 | 5点 | 神さま気どりの客はどこかでそっと死んでください- 夕鷺かのう | 2019/12/28 12:00 |
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| 「今日は天気がいいので上司を…」の「縁切り神社」が出てくるから、一応シリーズ作品ということなのかな。登場人物は毎回違うけど。
今回は、いわゆるクレーマー(最近はカスタマーズハラスメントともいうそうな)に対応する客商売の人たちを描いたもの。結婚相談所相談員、クレーマー対応のコールセンター(これはショート短編)、コンビニ店員、の3話。 非常識な要求をしてくる相手に主人公が内心で毒を吐く、というスタイルは前作同様でそのくだりは面白い。だが、最後「縁切り神社」で結末というのがちょっと単純で、前作の方が工夫があったなぁと思った。 この小説ほど極端ではなくても、いろんなところでこういう人たちが増えてきた昨今である。残念な世の中だ。 |
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| No.662 | 5点 | アリバイ崩し承ります- 大山誠一郎 | 2019/12/28 11:40 |
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| 時計屋の娘が、「アリバイ崩し」も副業(?)として謳い、そこに現職刑事がアリバイがらみの事件を持ち込むという設定の連作。謎解き以外の描写はほとんどなく、ラノベ的な設定ではあるが扱う事件は殺人など本格的で、純粋なパズラーを手軽に楽しめる短編集。
ただ披露されるトリックは手が込み過ぎていたり、都合のいい偶然が絡んでいたりして、非常に線の細いトリックにあとから物語を付け足していった印象を受けるものが多い。何というか、捜査側の思考経路を犯行側があまりに限定的に想定していて、そしてそのとおりの思考を捜査側が辿って壁にぶつかる、みたいな……「そんなに犯人の思惑通りに捜査側が動く?」と感じてしまう。 とはいえ、1冊読むのにほとんど時間もかからないので、割り切って読めばそれなりに楽しむことはできた。 |
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| No.661 | 7点 | 罪の轍- 奥田英朗 | 2019/12/28 11:05 |
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| 終戦から約20年、戦後日本の復興の象徴ともなった前回東京オリンピック直前の時代を舞台に描かれた犯罪小説。
北海道の礼文島から東京へと逃れてきた空き巣常習犯が、生きていくために、金を得るために、無軌道に次から次へと犯罪に手を染めていく様が描かれている。捜査の手法や技術、社会の様相に時代らしさがよく表れていて面白かった。 構造としては警察捜査vs容疑者というオーソドックスなもので、ミステリ・謎解きという類の作品ではない。いかにも昭和の時代らしい刑事たちが活劇を繰り広げる様を楽しむ、というのが主体。 奥田英朗は、コメディタッチから武骨で重厚な作品まで見事に書き分けられるスゴい作家さんだと思った。 |
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| No.660 | 7点 | ブラック・スクリーム- ジェフリー・ディーヴァー | 2019/12/07 21:51 |
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| ニューヨークの路上で男が拉致されるのを少女が目撃した。やがて被害者の苦痛のうめきをサンプリングした音楽とともに、監禁されて死に瀕している被害者の姿が動画サイトにアップされた。アップロードしたのは「作曲家(コンポーザー)」を自称する人物。捜査を依頼された科学捜査の天才リンカーン・ライムは現場に残された証拠物件から監禁場所を割り出し、被害者を救出したものの―
猟奇的な犯罪事件が、意外な方向へ。意外性という点では面白いのだが、「イカれた動向でありながら頭脳は優秀な犯罪者VSリンカーン&サックス」というシリーズ定番のパターンではないのはちょっと消化不良感かも。 どちらかというとスピロ検事の印象の変わりようと、エルコレの恋の行方の結末の方が読んでいて楽しかった。 |
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| No.659 | 7点 | キンモクセイ- 今野敏 | 2019/12/07 21:30 |
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| 法務省の官僚が殺される事件が起きた。現職官僚の殺人に奮い立つ警察だったが、なぜか警視庁は捜査本部を縮小、公安部も手を引くことに。警察庁警備局の31歳若手キャリア、隼瀬順平は、それを不審に思い深入りしようとする上司・水木を疎ましく思っていたが、いつの間にか同調して独自捜査に身を入れる。極秘で探りを入れるうちに、隼瀬は被害者が“キンモクセイ"という謎の言葉を残していた事実を探り当てる―
小説という虚構の世界なのか、それとも現在の日本のリアルな暗部なのか。昨今の政治情勢や法整備を題材にして、その行く先を憂える内容のようにも思える。オーソドックスな捜査物語ではなく、警察内部の暗黒を描くパターンの作品。佐々木譲の同タイプの作品にも似て、惹き込まれる作品。 |
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| No.658 | 6点 | そして誰も死ななかった- 白井智之 | 2019/12/01 00:05 |
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| 亡き父親の遺品にあった試作的ミステリを自分が書いたことにして出版し、一儲けした似非推理作家・大亦牛汁は、現在はデリヘル店の店長。そんな大亦のもとに、覆面作家・天城菖蒲から絶海の孤島への招待場が届いた。大亦の他にも4人の推理作家が招待され、その中には自店のデリヘル嬢・あいりも。招待に応じて島へ赴いた5人だが、館に招待主の姿はなく、食堂には不気味な泥人形が並べられていた。クリスティ「そして誰もいなくなった」まんまの状況の中、「事件」の幕が開く。
ゲテモノやら汚物やら、氏の作品らしくあいかわらずグロい。設定も「おやすみ人面瘡」のようなフィクション病理の特殊設定だが、推理はロジカルなのが面白い。可能性の一つ一つを細かな手がかりで潰していくさまは本格さながらで、しかもその仕掛けが二重三重になされている点では緻密さを感じる。ただそれでたどり着く真相がちょっとバカミスレベルの仕組みで、およそ現実的ではないので読者の推理は不可能(だと思う)。ある種の呆れを感じさせながら、巧みに仕組まれた筆者の技巧に関心もさせられる、そんな一冊だと思う。 |
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| No.657 | 6点 | 極上の罠をあなたに- 深木章子 | 2019/11/30 23:42 |
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| 「人には頼みづらいが、自分でやるのはちょっと……そんな問題でお悩みのあなた。便利屋を利用してはいかがですか―」そんな文面で届けられるダイレクトメール。うさん臭さを感じながらも、他に頼めるところもなく、悪事を依頼する依頼者たち。P県・槻津市を舞台に繰り広げられる様々な人間の悪意。裏にはさらに裏があり、互いを欺きあう人間模様が底知れず繰り広げられる―
邪な思いで、便利屋さえも自身の策略の中で利用しようとする依頼者。しかしさらにその上をいく便利屋。そんなこんなで「最終的に盤を動かしているのは誰なのか」みたいな感じになっていくタイプの連作短編集。都市伝説まがいの話ではあるが、一話ずつにどんでん返し的な仕組みもあって、そのへんはさすが深木氏といったところ。 でも氏の真骨頂である法廷モノに比べると厚みのなさは否めず、エンタメ的なミステリとしてさっと楽しむ類の作品ではないかと感じた。 |
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| No.656 | 8点 | 紅蓮館の殺人- 阿津川辰海 | 2019/11/23 21:23 |
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| 高校2年生の田所は、友人の葛城と共に学校の勉強合宿を抜け出して山中に隠棲した憧れの推理作家・財田雄山の屋敷を探しに。しかしその途中で落雷による山火事に遭遇、結果として雄山の館にたどり着いたものの、救助を待つはめに。なんとか館の人たちとも打ち解け、救助が来るまで滞在することになった2人だったが、翌朝、仕掛けのある部屋の吊り天井で雄山の孫・つばさが圧死しているのが発見された。
これは事故か、殺人か。葛城は真相を推理しようとするが、タイムリミットは35時間。生存と真実、選ぶべきはどっちだ― 閉ざされた空間に居合わせたのはいずれもいわくつきの人々。典型的な吹雪の山荘モノである。居合わせた内の一人、保険会社調査員・飛鳥井光流の過去も事件に関係してくるなど、偶然が過ぎるとも言えるが物語としては面白い。 奇妙な仕掛けがしてある館、山火事により迫るタイムリミット、過去の事件の因縁と盛りだくさんだが、それらを上手く絡めて王道ミステリに仕立てられている。 |
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| No.655 | 7点 | スウェーデン館の謎- 有栖川有栖 | 2019/11/23 20:16 |
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| 雪に残った足跡からの密室、という古典的な設定ながら、(当然)新味を出していてそれなりに面白かった。
むしろ「折れた煙突の謎」の種明かしの方が面白かった。てっきり密室の構成に関わっているものと思い、その方向でいろいろ推理していたのだが、そうくるとは。ある意味肩透かしだが、ある意味うまいミスリードだったとも言える。 本道のフーダニットだが、犯人は冒頭から何となく「そうなるのでは」と思っていた通りだったので意外性はなかった。しかし犯行のからくりと動機が謎として十分に魅力的だったので、謎解きを堪能できた。 |
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| No.654 | 7点 | 泥濘- 黒川博行 | 2019/11/17 17:05 |
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| 「疫病神シリーズ」というのですか。このシリーズは初めて読んだけど、飽きずに読ませる面白さはさすがで、抵抗感なく堪能した。
にしても桑原の手の早さは病気だなぁ。こんな四方八方でやりたい放題やる極道、とても生き延びられそうにないけど。桑原と二宮の掛け合いは絶妙で、ハードなバイオレンスを絶妙なコミカルで味付けていると感じる。 仕組まれている企みがやや複雑で、慣れていないと何度か前のページを繰るハメにはなる(私がそうだった)が、まぁ理解しきれていなくても場面場面の展開で楽しめるとは思う。 シリーズものということだが、初読でも弊害なく楽しめた。 |
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| No.653 | 6点 | 東京クライシス 内閣府企画官・文月祐美- 安生正 | 2019/11/17 16:37 |
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| 文月祐美は、内閣府の防災担当企画官。真夏の東京で、荒川の決壊が懸念される豪雨が発生。竜巻が変電所を襲い発生する大規模停電、鉄道機関の麻痺、溢れる帰宅困難者。刻一刻と洪水の危険性が高まる中、対応に迷走する政府。そこに乗り込んだ文月は、政府勅命の顧問団が居丈高な態度で対応をかき回し、どんどん事態を悪化させている様子に怒りを抱く。いきり立つ文月だが、なぜか招集された謎の男にその姿勢を諫められ―
氏の作品はとかくこういった非常事態対応モノが多いが、昨今の日本の状況の中では奇しくもタイムリーな題材の作品となった。バカなトップ(首相)と、そのお抱えの顧問団が政府の対面だけを考えて動こうとする中、下位にある専門家が憤る―という構図はありがちではあるが、今回は首相のバカぶりが際立ってヒドい。最終的に、ヒロイン・裕美の活躍により首都が救われる、という体もハリウッド映画っぽいが、そういう意味で楽しいと言えば楽しい。 |
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| No.652 | 7点 | カナダ金貨の謎- 有栖川有栖 | 2019/11/16 18:07 |
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| 私の嗜好的にオーソドックスなミステリを定期的に読みたくなるのだが、それを提供し続けてくれる点で有栖川有栖は非常に好きで、頼りにしている。
本短編集も、安定した水準で楽しませてもらった。(直前に読んだ「こうして誰もいなくなった」が玉石混交の印象だったので、その反動で実際以上に良く感じたかもしれないが。) やはり表題作「カナダ金貨の謎」が一番よかった。金貨が持ち去られたことの意味を問い続けることで真相にたどり着く推理は「これこそが火村英生」という典型的な様相であり、満足した。 その他、私としては「船長が死んだ夜」が好き。以前にも別のアンソロジーで読んだけれど、再読しても面白かった。 |
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| No.651 | 3点 | 荒野の絞首人- ルース・レンデル | 2019/10/22 10:06 |
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| 自分だけの秘密の領域を隠し持っている主人公、というスタイルの作品がこの頃のレンデルの特徴とのこと。本作もそういう類に入るのだが、なぜか頭に入って来難かった。特に前半の、主人公・スティーヴンの荒野に対する偏愛は冗長で、物語が動き出すまでが退屈な感じがした。
本作は一応、最後に前半の事件の真犯人も明かされる謎解きミステリにもなっていて、私としては意外性も感じられたが、閉じた世界の物語であるがゆえに犯人候補の範囲が狭く「わかっていた」という読者が多いのもうなずける気がする。 |
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| No.650 | 8点 | 犯罪者 クリミナル - 太田愛 | 2019/10/22 09:30 |
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| 駅前広場で人待ちをしていた5人が暴漢に襲われる。4人は次々に殺されたが、最後の1人・繁藤修司の抵抗を受けて犯人は逃げ出し、やがて近くでヤク中毒で死んでいるのが発見された。イカれたヤク中の通り魔事件として処理されかけた事件だったが、ただ一人生き残った修司のところに一人の男がやって来て「あと10日、生き延びてくれ。君が最後の一人なんだ」と必死の形相で訴えていく。これは単なる通り魔事件ではない、狙われた5人は偶然ではない―?
その言葉を裏付けるように、修司は自宅で再び襲われる。所轄の刑事・相馬は間一髪でその場に間に合い、修司を救うものの、襲った男には逃げられてしまう。事件には大きな背景があることを感じ取った相馬は、悩んだ挙句に旧知の鑓水七雄を頼ることに。鑓水、相馬、修司の3人が、背後の巨悪に立ち向かう。 さすが脚本家出身、というのだろうか、臨場感のある展開が上下巻尽きることなく続けられ、圧倒的なリーダビリティである。「あと一歩遅かったら、命はなかった」のような紙一重のタイミングが多いのも、ある意味テレビ的な感じはするが、話の作りも非常にしっかりしているので安っぽくは感じない。 食品会社の重大な過失から「それが生んだ奇病と被害者」「隠蔽しようとする業界関係者と政治家」「正そうとする内部社員」といった各立場が生まれ、それぞれの立場の人間描写も非常に読み応えがある。 鑓水ら3人組の活躍もさることながら、社会・組織の中で人としての矜持を貫く真崎省吾と中迫武の2人の姿が非常に印象的だった。 |
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| No.649 | 5点 | 鏡じかけの夢- 秋吉理香子 | 2019/10/22 08:47 |
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| 願い事を念じながら磨くと、その願いが叶えられるといういわくつきの大鏡が、人から人へ渡っていくという連作短編集。
まぁありがちなパターンなのだが、屋敷に住む良家からはじまり、長屋住まいの下町、サーカス団、外国と、舞台がいろいろ変わっていき、一話一話にそれなりの仕掛けは施されていて面白かった。 |
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