皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
していません。ご注意を!
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HORNETさん |
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| 平均点: 6.33点 | 書評数: 1208件 |
| No.808 | 5点 | 或るギリシア棺の謎- 柄刀一 | 2021/06/12 17:21 |
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| 短編集「或るエジプト十字架の謎」に続くシリーズで今回は長編。
南美希風とエリザベスの2人に縁の深い篤志家・安堂朱海の訃報が届いた。多くの会社をもつ企業グループのトップである安堂家は、装飾や習慣の諸所にギリシア様式を取り入れている風変わりな実業家一族。高齢であった朱海の死に悲しみを抱えて出向いた2人だったが、朱海の死に際して発見された謎の脅迫状が、自殺あるいは他殺の疑いを生むことになり― 作者らしい、精緻なロジックによる丁寧な進め方が本長編ではまどろっこしさに。劇場的な展開でもない中で、この長さで興趣を維持し続けるのは難しかった。前回の短編集の方がよかったかな。 |
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| No.807 | 7点 | 白昼の死角- 高木彬光 | 2021/06/12 17:04 |
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| こういう戦後間もない頃を舞台とした話は、なんか力がある。ましてや「光クラブ事件」という、実際にあった東大生による金融の事件がモデルとなっているとあっては…良くも悪くも、この時代にはパワーがあるなぁ。
基本的には天才的知能犯・鶴岡七郎が犯罪を企て、警察の目をかいくぐりながら実行していく展開の繰り返しなのだが、その時代らしいバタ臭い犯罪の在り様が面白く、今読んでいても全く飽きない。ビル内にあるオフィスを密かに(かつ堂々と)利用してしまう手口や、銀行のロビーを拝借した手口など、何気ない風景の盲点を突いたトリックは感嘆に値する。 著者の名作に数え上げられるのも納得した。 |
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| No.806 | 5点 | 探偵Xからの挑戦状!- アンソロジー(出版社編) | 2021/05/23 19:50 |
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| ものすごく評価が低いね。3人の方が書評して、平均2点台ってスゴくない?(私が書評するまで)
私はちょっとしたクイズ本ぐらいの感覚でそれなりに楽しめました。そもそもこういう企画ものは、作家の方々も小ネタを出すぐらいの熱量しかもてないんじゃないかとも思うし…まぁ、だからこそ多少無理のあるトリックもあるのは否めないが。 とりあえず「Season 2」も読もうと思えるぐらいの引きはあった。 |
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| No.805 | 7点 | 日没- 桐野夏生 | 2021/05/16 20:08 |
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| 小説家・マッツ夢井のもとに、「文化文芸倫理向上委員会」と名乗る政府組織からの召喚状が届いた。出頭先に向かった彼女は、断崖に建つ海辺の療養所へと強制的に収容される。そこで待っていたのは、マッツの書く小説を社会悪と断じ、「更生」と称して服従を誓わせようとする軟禁生活だった。脱出を試みるマッツの孤独な闘いの行く末は―。
人の俗的欲求や汚れを一切許容せず、非現実的な潔癖さを求める不寛容な現代社会や、その風潮を利用して従順な国民をつくり上げようとする政治への、アンチテーゼとも受け取れる本作。主人公・マッツ夢井の慟哭は、ご都合的な正義主義に息苦しさや怒りを感じている人たちには共鳴するのでは。 「粛清」を大義名分として、社会で成功している人間たちへの日ごろの妬みややっかみをぶつける療養所の職員は、「自分正義」を振りかざして日ごろの鬱憤をネットで書き散らす人たちに重なるものがある。 組織への反抗と従順を繰り返すマッツの行く末が非常に気になって一気に読んでしまったが、結末は……賛否が分かれるところだろう。 |
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| No.804 | 7点 | 雪に撃つ- 佐々木譲 | 2021/05/15 19:16 |
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| 翌日から雪まつりを控える札幌。盗犯係の佐伯と新宮のコンビは、自働車窃盗事件の捜査に。機動捜査隊の津久井卓は、住宅街で起こった発砲事件の現場へ。一方、生活安全課の小島百合は家出少女が札幌に向かっているという電話を受け、動く。
それぞれの管轄で動いている案件が、やがてつながりを見せ、一つに収束していくというのは本シリーズでもはやパターン化しているといってもよいが、そこに強引さは感じられず(それらに佐伯、小島、津久井が上手いこと関わるという点はあるが…まぁシリーズものだしそれは物語として当然)、相変わらず巧みな展開。ただ、3本の線が入れ代わり立ち代わり描かれるので、混乱しやすいというのはある。 本シリーズの複線として、佐伯と小島の関係の進展もあるのだが、ラストにはこちらにも展開があり… やや複雑な本作ではあったが、シリーズ愛好者としては満足。 |
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| No.803 | 6点 | 汚れた手をそこで拭かない- 芦沢央 | 2021/05/09 14:14 |
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| 無理を言う客に、工務店がしぶしぶ譲った脚立で起きた転落死亡事故。うっかりミスでプールの水を流出させてしまい、その隠蔽に奔走する小学校教師。間違って来ていた「電気料金督促」の葉書、それを本人に渡せないうちに、電気代未納によりエアコンを付けず熱中症で亡くなった隣人……。
一般人の日常(全作ではないが)から面白い着眼点で「怖さ」を生み出し、一編に編み上げる巧さはさすが。特に「埋め合わせ」(プールの水流出)は、軽微なミスを何とかうやむやにできないかと苦悩する人の葛藤や焦りが非常にリアルに描かれていて面白かった。 |
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| No.802 | 7点 | 夜がどれほど暗くても- 中山七里 | 2021/05/09 14:04 |
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| 「週刊春潮」編集部・副編集長の志賀倫成は、タレントの不倫疑惑記事など、芸能関係のスキャンダルを暴く記事作りを生業としていた。だがある日、離れて暮らしていた大学生の長男が、大学講師の夫婦宅に押し入り、夫婦を殺害して自身も自死。「加害者の親」として一転、世の好奇の目、社会的非難の「的」となる。「本当に息子がそんなことをしたのか―?」信じられない思いにくれる間もなく、世のバッシングにさらされる日々。そんな中、志賀の前に現れたのは、被害者夫婦の一人娘・14歳の奈々美だった。
「社会正義」を大義名分に、自身の日々の鬱屈をぶつけて留飲を下げる大衆の「悪意」。これまでも氏の作品ではたびたび描かれているが、そうした人間の暗部についての描写説明がことさら上手く腑に落ちる。本作では、加害者の親である志賀と、被害者の娘である奈々美が次第に心を通わせていくのだが、現実にはそんなことは難しいだろうと思うからこそ、物語りとして面白い。 夫婦殺害事件の真相ももちろん用意されているが、物語全体の主軸は謎解きよりも人間ドラマ。相変わらずぐいぐい読ませる展開で、満足のいく一冊だった。 |
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| No.801 | 3点 | ホテル・ネヴァーシンク- アダム・オファロン・プライス | 2021/05/09 13:43 |
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| 一代で隆盛を極めたホテルが、幼子の失踪・致死事件であっという間に没落。その後を引き継いだ息子や親族の人生が描かれつつ、失踪事件の真相が明らかにされる。
長々と絵が描かれる一族の人生はそれなりに面白いものの、最後の真相解明にはほとんど寄与しない。明かされる真相も、物語の早々に振った伏線をずっと放置したまま最後にシュっと回収しただけのような印象。 時代や世情に翻弄される成り上がり一族の栄枯譚として読んだ方がよいかも。 |
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| No.800 | 7点 | パリのアパルトマン- ギヨーム・ミュッソ | 2021/05/09 13:32 |
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| アメリカの劇作家・ガスパールは、次の戯曲の執筆のため、クリスマス休暇はパリの貸家に籠ることにしていた。今回の滞在先は、昨年急死した天才画家・ショーン・ローレンツの元アトリエ。ところが仲介業者の手違いで、マデリンというイギリス人女性と予約が重なっていた。最初は対立した二人だったが、あるきっかけから画家が最後に描いたとされる、未発見の遺作3作を一緒に探すことになる。調べを進めていくうちに、数年前に起きた、画家の息子の誘拐殺人事件にも嫌疑を抱くようになり―
当初、ダブルブッキングで火花を散らした二人が、次第に手を取り合って捜査を進める関係になっていく様は面白い。天才画家の遺作を探すことで始まったのだが、遺作を発見してから「ショーンの息子は生きている?」という次の謎が提示され、より深いミステリーになっていく展開が良い。後半は、出来事の時系列から真犯人を類推することができたが、思った通りであってもラストまで楽しみは尽きなかった。 |
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| No.799 | 7点 | わたしが消える- 佐野広実 | 2021/05/01 20:27 |
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| 元刑事の藤巻智彦は、同僚の陰謀により濡れ衣を着せられて警察を退職してから、マンションの管理人として細々と生きていた。とある日、妻と離婚して疎遠になっていた、介護士を志す娘から、研修中として担当している身元不明の老人の身元捜索を頼まれる。渋々引き受けた藤巻だったが、それ以来身辺に不穏な動きが。老人の身元にはどんな秘密があるのか?第66回江戸川乱歩賞受賞作。
「軽度認知障碍」と診断された元刑事が、どこか共感を覚えながら認知障害になった老人の出自を探る。はじめは娘の頼みを聞く程度の調べものだったのだが、調べていくうちに身辺に危険が及んだり、知人が不審な死を遂げたりと抜き差しならぬ状況に。何も語らない老人の過去に何があったのか?新鮮な設定ではないけれども、隠された真実を追う展開は目が離せなく、ぐいぐい読み進めてしまう。 巻末の選評では筆者の警察組織への知識の浅さが大きな瑕疵であると指摘されているが、本作はそれは修正されているのか?ただそんなことは気にせずに読んでいたので十分面白かった。 |
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| No.798 | 8点 | 盤上の向日葵- 柚月裕子 | 2021/04/29 20:57 |
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| 埼玉県の山中で身元不明の白骨死体が発見された。一緒に埋められていたのは名匠作の伝説の将棋駒。かつて棋士を目指していた佐野巡査は、県警捜査一課のベテラン刑事、石破と組んで駒の持ち主をつきとめるべく、地べたを這うような捜査を進める。
交互に展開される章で同時進行するのは昭和四十六年から始まる一人の少年、桂介の物語。幼いうちに母を亡くし、父親からは虐待を受けて育った彼だが、元教師がその人並みならぬ将棋の才能に気づき、東京へ出てプロを目指すよう助言するが、桂介は父親の支配から逃れられない――。 相変わらず上手い、読ませる。白骨死体の正体は誰か、超のつく名品の将棋駒が一緒に埋められていたのはなぜなのか、その捜査と交互に進行する過去の物語が、最後に一つに結び付いていく。巧みなストーリーテーリングと力強い筆致に一気読み。 とても楽しめた。 |
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| No.797 | 5点 | 白が5なら、黒は3- ジョン・ヴァーチャー | 2021/04/29 20:48 |
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| 青1995年、ピッツバーグ。ボビーは幼い頃からの親友、アーロンが出獄してきたところに出会う。以前は黒人のスタイルにあこがれを抱いていたアーロンだったが、出獄した彼は白人至上主義者に変わり果て、ある黒人青年に対し傷害事件を起こしてしまう。期せずして旧友の逃走に手を貸してしまったボビーは捜査に怯え、アーロンに怯える。そんなとき、黒人である死んだはずの父親が姿を現しーー
短く読み易い。アメリカの黒人差別問題がメインテーマ、ミステリとしてはそこそこ。 |
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| No.796 | 6点 | 蒼海館の殺人- 阿津川辰海 | 2021/04/25 19:56 |
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| 高校生の田所信哉は、「紅蓮館」の事件以来学校に来なくなってしまった名探偵・葛城に会うため、葛城家の別荘「蒼海館」を友達の三谷と共に訪れる。そこには葛城の両親・兄姉を始め、叔父・叔母夫婦など一同が揃っていた。折しも強大な台風により帰れなくなった田所と三谷は、蒼海館に泊まることに。しかしその晩、大雨により出入りのできない館で、葛城の兄・正が殺され、閉ざされた空間での連続殺人の幕が上がる―
複雑であるが精緻に織り込まれたロジックには感心するが、ちょっとやり過ぎではないか?とも思う。しかも要所要所で、「ある人物に何かをするように仕向ける」という要素があるが、そんなに思惑通りに人が動くとはとても思えない。真犯人を特定していく過程はロジカルなのだが、犯行手段にちょくちょく織り込まれているそうした要素が腑に落ちず、手放しで賞嘆する気にはなれなかった。 とはいえ、令和の時代に館もの、クローズドサークルものに真っ向から挑む作風には非常に好感がもてる。是非、今後も書き続けて欲しい。 |
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| No.795 | 8点 | 悪の芽- 貫井徳郎 | 2021/04/25 19:37 |
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| アニコンに殺到する人たちを標的にした無差別殺人事件が起きた。大手銀行で出世街道を歩む銀行員・安達は、そのニュースを見て戦慄を覚える。というのも、犯人は小学校時代の同級生で、自身がいじめのきっかけを作った子だったからだ。メディアは小学校時代に受けたいじめが、犯人の人生を狂わせたと報じる。自分は無差別殺人の原因なのか―。仕事も手につかなくなってしまった安達は、独自に調べ始める。
無差別殺人はなぜ、アニコンを標的に行われたのか?ホワイダニットの謎解きを核としながらも、いじめの構図、社会の格差、日本人の階級意識など、さまざまな社会的テーマに切り込みながら進められていく物語に釘付け。さすが、貫井徳郎である。 ベテランの域に入った作家だと思うが、昨年の「罪と祈り」に続いて、昨今ますます脂が乗ってきた感があるなぁ。 |
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| No.794 | 7点 | 揺籠のアディポクル- 市川憂人 | 2021/04/25 19:23 |
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| タケルは、病原体に極度に弱い病気になり、「クレイドル」と呼ばれる無菌病棟で生活する。クレイドルには同じ年頃の女の子、コノハがいた。毎日顔を合わせるのは医師と看護師だけの隔絶された毎日。ある日、台風により病棟が孤立し、タケルはコノハと二人だけに。そこで、コノハが何者かに刺殺された―
意を決して、「クレイドル」の外にタケルが出てから、怒涛の展開が。よくここまで考えて仕掛けたものだと唸らされる。 面白い! |
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| No.793 | 7点 | 元彼の遺言状- 新川帆立 | 2021/04/04 20:07 |
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| 「僕の財産は、僕を殺した犯人に譲る」―弁護士の剣持麗子が学生時代にか月だけ交際していた「元彼」森川栄治が遺した奇妙な遺言状。栄治は遺言状の中で、犯人に与える財産とは別に、これまで交際してきた女性にも財産を分け与えるとし、その名前を律義に一人一人挙げていた。麗子も元カノの一人として軽井沢の屋敷を譲り受けることになっており、避暑地を訪れて手続きを行なったその晩、くだんの遺書が保管されていた金庫が盗まれ、栄治の顧問弁護士が何者かによって殺害されてしまう――。
ミステリとしての出来もさることながら、「男が何度変わっても女ともだちは変わらない。そんな私たちの、当たり前の日常を日常を伝えたくて書きました」との筆者のコメントが示すように「元カノ」として集められた女性たちの関わり合いがなかなか楽しい。敵愾心を露わにし、マウントをとろうとする女性、はなから勝利者のように超然としている女性、さまざまなタイプの女性たちが、事件を通して次第に近しくなっていく様を楽しむのも一興。 遺言状がらみの遺産相続にスポットが当たりながら、犯人の一番の動機の視点がそこではなかったことも上手かった。その点からももちろん、ミステリとしても上々の出来である。 |
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| No.792 | 6点 | ドラゴンスリーパー- 長崎尚志 | 2021/04/04 19:34 |
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| “パイルドライバー”の異名をとる元刑事・久井重吾の元に訃報が届いた。元上司だった諸富幸太郎が残酷な手口で殺害されたというのだ。しかも十三年前の未解決少女殺害事件の手口と酷似していた。イマドキの刑事・中戸川俊介とコンビを組み、アドバイザーとして捜査を開始した久井。やがて、諸富が引退後も追っていた未解決事件の裏に、不法滞在中国人―鼠族の存在が浮かび上がり、県警警備部も事件を追っていることが判明。直後、第二の殺人が…。謎が謎を呼ぶ事件の犯人の正体は?進化を遂げた警察ミステリー。(「BOOK」データベースより)
読ませる。中国系の犯罪結社の話はちょっとややこしかったり、やや短絡的な感もあったが、それらと中学時代のいじめの話との関わらせ方はなかなか面白かった。何より展開がスピーディかつ読み易く、前作「パイルドライバー」に続いて著者の作品には好感がもてる。 |
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| No.791 | 9点 | エラリー・クイーンの新冒険- エラリイ・クイーン | 2021/03/16 19:55 |
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| とてもよかった。これまでの方も書いているように、中編『神の灯』が世評の高い作品ということだが、それはもちろんのこと、その他の短編も押しなべて面白く、私としては「冒険」より印象に残る作品が多かった。
後半の、ポーラ・パリスとカップルで活躍する「スポーツ・ミステリ」の連作短編が、長編との色違いが感じられて興趣が尽きない。読者として作者と推理合戦をするにもちょうどよい手応えだと思う。『人間が犬を噛む』の毒殺トリック、『正気にかえる』の、エラリーの紛失したコートから犯人言い当てるロジックなどはさすがクイーンという感じ。ラスト『トロイの木馬』は、真犯人も隠した場所もすべて当てることができて非常に気分が良かった(笑) クイーンの「謎解き小説」の魅力をてっとり早く堪能するには最適の一冊ではないかと思う。 |
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| No.790 | 6点 | 僕の神さま- 芦沢央 | 2021/03/14 15:20 |
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| 小学5年生の「僕」は、ある日おじいちゃんの家で、桜の塩漬けをひっくり返してダメにしてしまった。それはおじいちゃんが、亡きおばあちゃんが作ったものとして毎年春の楽しみにしていたもの。どうしよう…と窮地に立たされた僕の頭に浮かんだのは、どんな謎でも推理して解決してくれる「神さま」、同級生の水谷くんの顔だった―。
1話目「春の作り方」はハートウォーミングなストーリーで、穏当なコージー・ミステリという作者の新境地?と思いきや…いやいやそこは芦沢央、それだけで終わるわけがない。作者の巧みなストーリーテーリングを改めて実感する良作だった。 |
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| No.789 | 5点 | マーダーハウス- 五十嵐貴久 | 2021/02/23 19:04 |
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| 鎌倉にある瀟洒な洋館風のシェアハウスに、新潟から出てきた新女子大生が入居することになった。奥まった丘にある不便さを除けば、きれいなつくりや設備、広い自室などで月4万5千円の家賃は破格。入居者も美男美女ぞろいで、まるで某テレビ番組のよう。ただ、現実はテレビのように美しいことばかりではなく、ちょっとした入居者同士の確執や事故で、一人、二人と人がいなくなっていく。
作品登録の際に、ジャンル何にするのか迷った。正しかったか自信ない。一応フーダニットの体だが、真犯人に結び付く情報提供が事前にあるわけでもなく「最後に一気に真相明かし」というスタイルなので。 「事故」と処理される住人の死など、コトは起こっているのだが、作品上は普通に共同生活が送られている体でずっと話が進んでいくので「ミステリ」を前面に出すのはラストだけだった。退屈はしなかったが、盛り上がりもしなかった。 |
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