皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
していません。ご注意を!
HORNETさん |
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平均点: 6.32点 | 書評数: 1121件 |
No.901 | 5点 | 殺人依存症- 櫛木理宇 | 2022/04/30 11:27 |
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息子を六年前に亡くした捜査一課の浦杉は、その現実から逃れるように刑事の仕事にのめり込む。そんな折、連続殺人事件が勃発。捜査線上に、実行犯の男達を陰で操る一人の女の存在が浮かび上がる。彼女は一体何者なのか―。息をするように罪を重ねる女と、最愛の家族を失い死んだように生きる刑事。二人が対峙した時、衝撃の真実が明らかになる。(「BOOK」データベースより)
浦杉の娘と、面倒を見ている少女が後半にどうなるのかかがあまりに予想通り。さらに、どうにもやりきれないバッドエンド。 「慟哭のラスト」との謳い文句通り、あまりにも悲惨な終わり方。そんなにハッピーエンドにこだわる私ではないが… 不愉快で受け付けない人も多そう。 |
No.900 | 7点 | 白雪姫には死んでもらう- ネレ・ノイハウス | 2022/04/30 11:12 |
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トビアス・ザルトリウスは、10代の少女2人を殺害したかどで10年間の服役を終え、生まれ故郷のアルテンハイン村に戻ってきた。事件当時トビアスは泥酔していて記憶がなく、本当に自分が犯した罪なのか未だに分からない。しかし殺人者の烙印を押されたトビアスとその家族に当然村人の目は厳しく、嫌がらせを受ける毎日が続く。そんな折、トビアスの母親が駅の歩道橋から何者かに突き落とされる事件が起きた。殺人未遂事件として捜査にあたったのはオリヴァー&ピアのコンビ。捜査はやがて、10年前の少女殺害事件に隠された真相に迫っていく。
550ページを超える厚みだが、停滞することのない展開で楽しみ続けることができる。事件捜査とは別に、妻コージマとの間に起きた問題に悩むオリヴァーの話も展開し、物語りに幅を持たせている(にしてもオリヴァーも節操がないな…) それにしても人は本当に、犯した罪に口をつぐんで、しかも知人にその咎を負わせたままで生きていけるのだろうか。ずっと心に重石を載せ、心から笑える日などない人生になってしまうと思うのだが・・・ 物語当初から怪しさを感じる人物がやっぱりそうだったので、それほど意外性はない。だが、複雑に入り組んだ事件の様相を一つずつ解きほぐす過程は見ごたえがあり、世間でおおむね好評価なのもうなずけた。 |
No.899 | 3点 | 無邪気な神々の無慈悲なたわむれ- 七尾与史 | 2022/04/25 21:28 |
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子供を神と崇める信仰が根付く児宝島。事故で両親を失った瑠偉を養子に迎えた一年の記念にこの島を訪れることにした辻村京子、正樹夫妻は、多くの子供が居ながらも、大人が一人もいない児宝島に次第に違和感を感じる。夫妻は島を調べ始めるが、その隙に瑠偉が攫われてしまう。攫ったのは、この島でもっとも神様らしい存在だった――。
プロローグを読んだ時点ではその後の展開に期待をしたのだが、結局そのプロローグで本編の答えを明かしているようなものなので、本編序盤の島の不可解さも、読者としては答えが見えている感じで「長い」という感想になってしまう。 推理らしい推理の場面もなく、ただただ悲劇を追っていくような展開で、ミステリというよりはホラー。ラストもただただ悲劇の終焉という感じで、読み易くはあるものの深みはなかった。 |
No.898 | 7点 | 指切りパズル- 鳥飼否宇 | 2022/04/25 21:13 |
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綾鹿市動物園で、”動物アイドルユニット”を冠する地下アイドル「チタクロリン」のコンサートが行われた。チーフ警備員の古林新男は混乱による事故が起きないよう、職務に力を入れる。ところがそんな最中、ユニットメンバーの飯岡十羽が撫でようとしたレッサーパンダに指をかみ切られる大事故が。不運な事故と思われたが、その後関係者が次々に指を切断される事件が続いていく。
指切断事件が次々と起きていくという猟奇的な展開の中で、それぞれの事件で微妙に不可解な点が累積されていき、ラストにすべてが解決される、きれいな本格ミステリと言える。各事件で違う指が切断されている点にもきちんと理由があり、なかなか作りこまれた作品だと感じた。 |
No.897 | 7点 | マザー・マーダー- 矢樹純 | 2022/04/17 20:37 |
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「息子の恭介は、自宅でコンピューター関係の仕事をしている」と息子自慢をする梶原美里。しかし、その恭介の姿は近隣住民は誰も見たことがない、いわゆる「引きこもり」。普段は愛想よく住民に挨拶もする梶原美里だが、息子のことになると何かが憑いたかのように豹変する。梶原家が抱える秘密は何なのか?本当に恭介はいるのか?現代社会の病理とも言える、引きこもりとその親をめぐる数奇な物語。
いわゆる「毒親」を題材とした連作短編集。一作目などは独立した短編の様相だが、その後の主要登場人物が現れ、次編以降へとつながっていく。全編の中心は梶原美里とその息子・恭介なのだが、さまざまな物語の編み方で違う角度からそれぞれ描かれており、面白い。唯一、初編の事件は闇に葬られたままなのが気になったが… |
No.896 | 5点 | 完璧な母親- まさきとしか | 2022/04/17 20:27 |
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最愛の息子・波琉を事故で失った知可子は、息子を産み直すことを思いつく。同じ誕生日に産んだ妹を「波琉子」と名付け、誕生日にはケーキに兄の歳の数の蝋燭を立て祝うう。そんな知可子の狂気にやがて波琉子は、「お兄ちゃんもうれしいって言ってるよ」と答えるように。それを喜び、知可子は歪な“完璧な母親”を目指し続ける。そんな中「あなたの子供は幸せでしょうか」と書かれた手紙が―。
知加子の「毒親」ぶりが目を引く序盤だが、第二章から物語は違う展開を見せる。池でおぼれた波琉の生まれ変わりだという中年女性とその弟が出てくることで、異なる様相が見えてくる。意外な展開に最初はちょっとついていけないが、ラストで示される真相はなかなかのもの。 そこそこ面白かった。 |
No.895 | 8点 | 星降り山荘の殺人- 倉知淳 | 2022/04/03 20:45 |
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面白かった!
作者の中では一番有名な作品なので、各章の冒頭にある注意書き(?)のようなものにも騙しがあるのかと思って読んでいたが、それは素直に受け止めてよいものだった(笑) <以下ネタバレ> 真犯人が、自身の潔白を自ら証明するために謎のほとんどを論理的に解明し、最後に真の探偵役が一部をひっくり返すという構成はなかなか味があった。 真相解明は(ちょっと行き過ぎているほど)ロジカルで、その部分だけを取り上げれば往年のクイーンのよう。 どちらかといえば昨今は脱力的な(?)作風が印象的な作者だが、真骨頂を見せられた気がして唸らせられた。 |
No.894 | 7点 | 深い疵- ネレ・ノイハウス | 2022/03/31 21:57 |
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ミステリを嗜好していると自然に耳に入ってくる人気作家。手に取らないわけにはいかない、ということで日本で初刊の作品から読みに入った。
ホロコースト、ナチという歴史的な色合いの強い作品という点は意外。しかしながら、詳しくなければ理解できないというわけではないので安心してよい。殺害現場に残される謎の数字、なんていう舞台描写は本格ミステリの嗜好性にぴったり合う。 各作品それなりに厚みがあるようだが、没頭できる面白さ。順に読んでいきたいという気にさせる一作。 |
No.893 | 6点 | いちばん悲しい- まさきとしか | 2022/03/31 21:44 |
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大雨の夜、刺殺された中年男・戸沼暁男。警察が、戸沼が所持していた携帯電話で頻繁に連絡がとられている女性に連絡したところ、「そんな名前の男は知らない」という。つきつめると、戸沼は偽名を騙って不倫をしていたのだった。しかし不倫相手の真由奈は知人間では有名な妄想女で、「自分といた彼こそ本当の彼」として譲らず、戸沼の残された妻・杏子と子供たちに怒りの矛先を向ける。女刑事・薫子は、そんな女たちの心の奥底にうずまく毒感情を次第に暴いていく―
被害者戸沼の不倫相手・真由奈、妻の杏子、そしてその娘。それぞれの視点から、ある日突然事件に巻き込まれ心を乱していく様相が描かれていてなかなか楽しい。一方事件の真犯人はいっこうに見えてこず、そういう意味ではミステリとしてもしっかりなりたっている。 「あの日、君は何をした」からちょっと興味がわいて作品に手を伸ばしているが、十分期待に応える出来栄えだと思う。 |
No.892 | 7点 | ダブルバインド- 城山真一 | 2022/03/31 21:30 |
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数年前に妻を亡くし、一人娘と父子家庭の刑事課長・比留公介。実は娘は、精子提供によって生まれた、実子ではない娘で、その娘が不登校になり途方に暮れていた。一方仕事では強盗犯を取り逃がして左遷が確定。八方ふさがりの比留だったが、管内で起きた駐在所員撲殺事件から「デビル」の異名を持つ比留の本領が発揮されていく―
疾走感のある展開と骨太な警察機構の描写で非常に面白く読み進められた。家庭の問題と事件とがつながっていく過程はちょっとできすぎ(やりすぎ)ではあるし、組織の隠蔽体質と戦う気骨ある刑事という構図も超ありがちだが、それでも楽しんでしまうんだから結局そういうのが好きなこちらの負け(笑)。 シリーズ化されないかな。 |
No.891 | 7点 | 法廷遊戯- 五十嵐律人 | 2022/03/19 23:24 |
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法曹資格を持っている作者が、その見識を生かしながらエンタメ的に非常に上手く仕上げたミステリと感じた。
終末の、法廷でのどんでん返しはどう考えも現実的には禁じ手だと思うのだが、何やら難しい法廷ルールで正当化されていた。資格者である作者が書くのだからきっと理屈では通るのだろう。 事件の真相や真犯人の意外さ自体は十分に面白い。その仕掛け方に法律の仕組みが介在しているのだが、その理論・理屈を理解するのがちょっと面倒。ただ本気で理解しようとしなくても、話自体は十分に楽しめると思う。 |
No.890 | 7点 | 屑の結晶- まさきとしか | 2022/03/19 23:08 |
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小野宮楠生(くすお)は、二人の女性を殺害した容疑で逮捕・起訴された。逮捕時に笑顔でピースサインをするさまや「誰を殺そうと俺の自由」というふざけた言動で、一気に世の注目を集め、世間からは「クズ男」と呼ばれる。しかし担当弁護士の宮原貴子は、そんな楠生の言動に何かしらの「腑に落ちない」感覚を覚え、小野宮が幼少期を過ごした宮城県M町へ赴く。すると、今の楠生には似つかわしくない当時の様子が明らかになり……
はじめは、年増の女たらしの楠生に宮原もたらし込まれて苦悩する展開になるのかと思ったが、そうではなくて安心した。宮原の調査により、楠生がただの「クズ男」ではないことは察せられるのだが、各ピースがどのような真相に辿り着くのかは良い意味でなかなか見通せず、リーダビリティを維持していた。事件関係者である女性が視点人物になる章の挿入の仕方も上手かった。 ラストはちょっと切ないなぁ。楠生はバカじゃないんだから、葬儀の日のパトカーに乗るシーンも連行じゃないことぐらい分かるのでは?とも思ったが。 |
No.889 | 7点 | 叶うならば殺してほしい ハイイロノツバサ- 古野まほろ | 2022/03/19 22:49 |
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真夜中の吉祥寺で火事が発生。現場からは、10代と思しき少年少女4人の遺体が発見され、しかも唯一の少女の遺体は手錠でつながれていた。遺体の状況から、少年たちが少女を監禁し虐待していた様相が浮かび上がる。そんな中で唯一、その家に独り暮らししていたはずの17歳の少年が無傷で生き残る。真実を知る少年が完全黙秘を貫く中、26歳キャリアながらゴスロリファッションで現場を闊歩する異色の女性管理官・箱崎ひかりが捜査にあたる。
600pを超える厚みのある一作だが、停滞しない展開が持続され、キャラクタリスティックな主要人物の味もあって非常に面白く読めた。はじめは監禁・性的虐待という、鬼畜少年たちによる凶悪事件といった、ある意味オーソドックスな様相を呈していた事案が、次第に複雑な背景を醸し出していく。まぁそりゃそうでなきゃ面白くないんだが、派手な舞台とキャラクター設定の一方で、捜査・推理はきちんと組み立てられていて、ミステリとしても精度の高い一作だと感じた。 |
No.888 | 7点 | 十字架のカルテ- 知念実希人 | 2022/03/06 20:24 |
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弓削凜は、高校時代に親友を殺害された。その犯人は、精神障害により不起訴。「精神に病があれば、罪は裁けないのか?」―その解を得るべく、凜は自らが精神鑑定医になる道を選び、その道の権威・影山司に師事する。無差別通り魔殺人の犯人、我が子を殺した母親、姉を刺した弟…さまざまな犯罪の犯行者の精神鑑定を通して、凜がたどり着いた答えは―?
凶悪犯罪を犯した者に、責任能力はあるのか?昨今の実際の事件でも持ち上がる話題に切り込んだ作品であり、その判断を下す鑑定医の立場から描かれているのがまた興味深い。鑑定医の役割は、精神疾患であるかどうかの診断を下すこと。それもこうした領域に関しては、物理的なデータによる診断ではなく、監察医の「診察」によるため、当該の人物との面接がすべて。そうした厳しい条件の中、対象者の言動をつぶさに観察しながら診断を下す過程はまさに「推理」と呼べるもので、なるほどミステリだなと思った。 扱うケースごとに1話になっている連作短編で、ラストは凜の親友を殺害した犯人と対峙する。うまくまとまっているし、それぞれに仕掛けが施されていて、満足のいく一作だった。 |
No.887 | 7点 | ただし、無音に限り- 織守きょうや | 2022/03/06 20:09 |
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探偵・天野春近には、霊が見え、その霊の視覚記憶を読み取るという特殊能力がある。普段はその能力を生かすこともなく、浮気調査などに追われる日々だが、友人の弁護士・朽木の紹介で、時には人の死が関わる、探偵らしい依頼も。とはいえ依頼された時点では事件性のない案件なのだが、天野の特殊能力が、見えなかった真相を明らかにしていく―
事故や行方不明で片付けられていた事案も、「霊の記憶を読み取れる」天野には、そうではない真実が見えてしまう。とはいえその記憶に音声はなく、死んだ者の視点から見た映像だけなので、そこから推理と捜査が必要になる。自然死ではなく、あるいは行方不明ではなく殺人だった、という結論だけが先に見え、しかし犯人やその様態は分からない。そんな構成により「謎」がずっと持続され、興味が尽きることなく読み進められる。現実的に解決するために真相の解明は確かな捜査、証拠がなくてはならず、その謎解きはしっかりと行われて解に至る。 これはなかなか面白かった。 |
No.886 | 5点 | 朝と夕の犯罪- 降田天 | 2022/02/27 17:09 |
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アサヒとユウヒの兄弟は、幼い頃、父親と三人でオンボロ車での放浪生活をしていた。賽銭泥棒や万引きで糊口をしのぎながらの生活だが、それでも家族3人の絆があった。やがて時は経ち、アサヒとユウヒは離れてそれぞれの生活へ。大学生となったアサヒはある日、10年ぶりに弟のユウヒに再会する。久闊を叙する間もなくユウヒがもちかけてきたのは、「狂言誘拐」への協力だった―
狂言誘拐から8年後、あるマンスリーマンションで起きた幼児遺棄事件で第2部となる本編が始まる。この遺棄事件の捜査を進めるうちに、8年前に起きた狂言誘拐事件とのつながりが見えてくるという構成。遺棄事件の加害母が、狂言誘拐で被害者役をした女ということまではまぁ予想通りなのだが、そのあとの展開がなかなかよく仕組まれていて、「ユウヒは今どこに?」の解はそれなりに意表を突かれた。 児童虐待や貧困、親子や兄弟の絆という面でのテーマ性も感じられて、面白く読むことができた。 |
No.885 | 6点 | 彼女が最後に見たものは- まさきとしか | 2022/02/26 20:41 |
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クリスマスイブの夜、新宿区の空きビルの一階で女性の遺体が発見された。捜査一課の三ツ矢&戸塚署の田所は再びコンビを組み、捜査に当たる。シリーズ第2弾。
相変わらず飄々として謎めいた三ツ矢と、その三ツ矢に振り回される田所。読者としては必然的に田所目線となるのだが、今回は三ツ矢の不可思議さ、というか一足飛びの推理についていけない感がさらに加速。仕組みもちょっと複雑で、よく仕組まれていると思う反面、煩雑さも否めなかった。 自分の幸せを自分で測れず、「他にどう見られているか」でしか評価できない、承認欲求とSNSという現代的なテーマで読めるところは面白かった。 |
No.884 | 5点 | 真夜中のマリオネット- 知念実希人 | 2022/02/23 23:47 |
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半年前に婚約者を殺された救急救命医、小松秋穂。彼を殺したのは、世間を騒がせる連続殺人鬼「真夜中の解体魔」だった。失意から前を向こうと勤務に復帰した秋穂のもとに、ある晩救急搬送で少年が運ばれてきた。必死の治療で少年の一命をとりとめる秋穂。ところが少年は、警察が追っている「真夜中の解体魔」の容疑者だった―。秋穂に冤罪を訴える少年。やがて秋穂は少年の無実を信じ、真相解明に乗り出す―
よく言えば読み進めやすく、悪く言えばややチープな印象。真犯人なのか、冤罪なのか?定かではない状況でありながら、次第に美少年に籠絡されていく主人公の様はあまり気持ちよくはなかった。 J.ディーヴァーばりに2度のどんでん返しがあるが、どちらも予想の範疇で、「まぁ、やっぱりそうか」が素直な感想。決して悪くはないが、氏の作品の中では埋没しそう。 |
No.883 | 8点 | あの日、君は何をした- まさきとしか | 2022/02/23 13:36 |
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広告代理店に勤める24歳女性がアパートで殺害された。彼女と不倫関係にあった男が同日から行方不明になっており、捜査にあたった捜査一課の三ツ矢と田所は当然その行方を追う。ところが捜査を進める先々で、15年前に起きた、中3男子の事故死事件が持ち上がってくる。二つの事件に関わりはあるのか?母親を殺された過去を持つ、一風変わった刑事・三ツ矢と田所が、地道な聞き取りで事件の真相を探り出す。
「1部」で描かれる15年前の物語と、「2部」からの本編が、後半に行くにつれ次第につながっていく。よくある手法ではあるのだが、それぞれの様相からはなかなかつながりが見えなくて、「いったいこれがどう関係してくるのか?」という興味が最後まで尽きない。事故で亡くなった中3の男子が「なぜ、死ななければならなかったのか」という謎がずっと持続され、女性殺害事件の捜査の進捗と上手に歩調を合わせて明らかになっていく手際も見事だった。奇を衒った仕掛けがあるわけでもない、ある意味オーソドックスなミステリなのだが、母子(娘)関係の問題も絡めながら非常に魅力的なストーリー展開がなされていた。 最後の1章がまた、とても効果的だった。 |
No.882 | 6点 | あなたの後ろにいるだれか 眠れぬ夜の八つの物語- アンソロジー(出版社編) | 2022/02/23 13:18 |
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雨の停留所で出会った男が語りだす、幼き日の恐怖体験(「長い雨宿り」彩藤アザミ)。「怖かった」という噂だけが流れ、どこにも所在が確認されないホラー短編(「涸れ井戸の声」澤村伊智)。「ここで殺人が行われた」と霊視する霊能者の欺瞞を暴こうとするジャーナリスト(「例の支店」長江俊和)。活躍中の人気作家たちによる、快作ぞろいのホラーアンソロジー。
どの話もなかなか凝った仕掛けになっていて、粒ぞろいの良質アンソロジーだった。どれもホラーを冠するにふさわしい内容だが、どんでん返しなどのミステリ要素も諸所に見られ、非常に楽しく読み通せる。澤村伊智、あさのあつこ、長江俊和の作が印象に残った。 |