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虫暮部さん
平均点: 6.22点 書評数: 1938件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.1878 7点 剥製の街 近森晃平と殺人鬼- 樹島千草 2025/01/03 11:35
 猟奇的なシリアル・キラーを描くこの手の作品は既に沢山書かれていて、殺し方や動機の面白さを競い合っている。その観点では、本作の真相や “普通” なまま壊れちゃった感じは、及第点ではあるが、新しいアイデアでは全くない。ただ、書き方の達者さと、相反するようだが妙なフレッシュさとが感じられて、そこが良かった。

No.1877 6点 篠婆 骨の街の殺人- 山田正紀 2025/01/03 11:34
 列車内の事件そのものはそこまで重要ではなく、背景となった歴史と心情がメイン。スケールの大きな動機、その前で立ち竦む主人公。“著者のことば” で『神狩り』に言及しているのも納得である。
 それとの繫がりを鑑みても、謎としてより魅力的なプロローグの “窯から出て来た骨” をもっとフィーチュアしてはと思う。が、話の順番としてそうもいかないかな。惜しい。

 それとは別に、全5冊で構想したものの1冊で頓挫したシリーズ、と言うことで未処理の伏線が散らばっているのが何とも切なく。兵どもが夢の跡、って感じだ。

No.1876 6点 屍蠟の街- 我孫子武丸 2025/01/03 11:33
 続編は前編を超えないと高評価はしづらいな~、と私は思った。
 事態がエスカレートしている点は良い。犬を飼いたがるのは微笑ましい。しかし、ハッカーの話に変わると前半の脇役は何処かへ行っちゃって、読み終えてみると取り散らかった話、との印象も強い。
 そして、この設定だと “溝口 vs 菅野” の最終的な決着は付けようが無いよね(自殺は勝利ではないと思う)。作者は自身に対しての無茶振りに応え切れなかったのか。否、最後の章の一人称代名詞は伏線のようにも思えるし、リドル・ストーリー?

No.1875 4点 霧枯れの街殺人事件- 奥田哲也 2025/01/03 11:32
 短編は発表していたものの、これが長編デビュー作、しかも新本格勃興期の1990年、講談社ノベルスからの刊行なんだよね? それにしては新人のピュアさも “一発かましてやる” みたいな気合も希薄なのである。中堅作家による一世代前のメンタリティのゆる~い警察ものって感じ。
 それなりに捻ったラストが用意されてはいるが、読んでいる最中は “どーもパッとしないな~” と言う気分がどこまでも付いて回った。

No.1874 4点 悪夢街の殺人- 篠田秀幸 2025/01/03 11:32
 鬼熊事件の異様な迫力、集団水難事件の不可解さ、凄い! と思ったら、これらは現実に発生した事件、を題材にしたドキュメンタリー作品、を改変してフィクション化したもの。殆ど他人のネタじゃないか。それじゃ駄目だよ。
 それ以外の、語り手の面前で進行する出来事は、描写が全体的に硬い。心霊現象とシリアル・キラーがあまり絡み合っていないので、主題を二本立てにする意味が希薄。
 “人間消失” は、事前の準備が必要である反面、当日のポジションは犯人がコントロールしたわけではないから、かなり幸運頼み。しかも結果的に容疑者を限定する働きをしているビミョーなトリックだ。

No.1873 8点 伯爵と三つの棺- 潮谷験 2024/12/27 11:12
 題名は “伯爵(count)よ、棺を数えよ(count)” と言う洒落?
 時代ものなのに、犯人も探偵役も現代のミステリ読者みたい。しかし論理を積み上げて行けば、ミステリ小説誕生以前でもミステリ的思考には辿り着く筈だから、これでいいのだと言うことにしよう。
 犯人がこのまま三択では論理的であっても地味だなぁ、と思ったら更に深み、それも “逆転” ではなく同じ方向へもう一歩二歩踏み込む展開がグレイト。
 あの一節は、気付いたけど物語の流れに紛れて忘れ去っていた(笑)。ACへのオマージュですね。

No.1872 7点 腐蝕の街- 我孫子武丸 2024/12/27 11:11
 ハード・ボイルド的筆致に違和感は無く、イメチェン(ではないと作者は言うが)成功。脳と身体と、二段階方式の再生のアイデアは新鮮。確かに身体感覚を一貫させるにはああする必要があるなぁ。ただ、ディスクをばらまいて乗っ取り成功者を待つ手法では、成功者が複数生まれて鉢合わせするリスクがあるのでは?
 初出が1995年で作中設定は2024年12月。ふーむ、我孫子武丸の未来予測はこういう感じか~と意地悪く読んでしまった。(件の “スパ” は別として)大ハズレの変な予測が無いので物足りなかったりして。

No.1871 6点 異セカイ系- 名倉編 2024/12/27 11:11
 うわぁ。本気で世界を救う本。
 メタな反転の繰り返しでも、これはそれが主題だからいいのだ。小説投稿サイトや異世界転生と言った題材に馴染みが無く初めはあまり乗れなかったが、途中からグングン追い上げて来た。作者自身が道化に見えてしまうことも承知の上なのだろう。
 あとこの文体。言葉遣いが考え方を規定する、と言う側面はあって、“語彙が足りなくて思考に不自由するネット時代のニート” を疑似体験しているようだ、と思いながら読んだが、それって “文字に依拠するアイデンティティ” と言うテーマの結構近くを射抜いていたかも?

No.1870 5点 名探偵の有害性- 桜庭一樹 2024/12/27 11:10
 怖い怖い。探偵活動が知らず知らず関係者の人生を狂わせ傷付けていたかも知れない……“光と影” の影の部分。どんな弾劾を受けるのか、びくびく(わくわく)しながらページを繰った。
 でもこんなタイトルを掲げたにしては手ぬるい。もっと一話ごとにダメージを重ねて満身創痍になるかと心配(期待)したが、いつの間にか “再生の旅” みたいになってるね。
 書き方の上手さでまんまと読まされてしまったが、意地悪く評すなら、読者が作中の弾劾に同調はしない前提で、仲間内限定の自虐ネタをやったものであり、それ以上の境地には至っていない。市川哲也の方が勝っている。

No.1869 5点 プロジェクト・インソムニア- 結城真一郎 2024/12/27 11:09
 技術的に可能になっても、夢を他者と共有したくはないなぁ。色々な意味で怖い。

 それはそれとして、“科学的に裏付けされたプロジェクト” と “夢” は食い合わせが悪い。夢にはどうしても曖昧な部分があり、ルール化を拒むから。
 小林泰三のメルヘン殺しシリーズのように根本がファンタジーならともかく、外部から夢をそこまで制御出来るテクノロジーは納得しがたい。
 一方で、ミステリを成立させるには相応の枠組みを固める必要があり、その矛盾が苦しいところだ。
 例えば “システム管理者側の意向で安全の為に設定されているシンボルを、参加者が自由意志で捕獲可能” な設定などは、トリックの都合に合わせて可/不可の境界線を引いていてズルいと思う。

No.1868 7点 あさとほ- 新名智 2024/12/20 13:02
 こういう話を当事者の一人称で書くのには長所も難しさもあるだろうが、境界線がふっと見えたり消えたりする揺らぎを繊細な言葉に落とし込んだ本作は健闘しており、最後まで底が読めずに楽しめた。
 日本人なら誰でも知っている「あさとほ」が無名の散佚物語であると言う大胆な世界改変には苦笑。それに説得力を持たせる為に、架空の古典作品を色々挙げてもっともらしい論考まで捏造しており、感心させられた。

No.1867 7点 ラブ・アセンション- 十三不塔 2024/12/20 13:01
 恋愛リアリティ番組ともなれば、どれが本音か建前か、本音に見せかけた建前か、そう見せかけた本音か、判ったものじゃない。地球外生命体を絡めつつ、ミステリ的興趣だって感じられた。大文字のSFと言うより、デスゲーム系小説(死なないけど)にSF要素を混ぜたもの。
 12名の参加者が皆個性豊か過ぎで、誰一人恋愛相手としては魅力的に思えないのが難点……ではないのかな……リアリティ番組とはそういうものなのかな……?

No.1866 7点 わたしたちの怪獣- 久永実木彦 2024/12/20 13:01
 「夜の安らぎ」。魔に救いを見出す、拒絶された魂。だからってお前その切れ方は……(笑いが込み上げる)。

 他、死体を捨てに行く話。職権乱用で動画投稿する話。映画館に籠城する話(私だったら助けには行かない)――共通して、日常が崩れる中、割と淡々と心情を客観視する様が可笑しい一人称の物語である。
 同一人物を2編に登場させることで(普通とは逆に)パラレル・ワールド設定を導入しているのは意味あるのかな~。特に意味の無い遊び?

No.1865 6点 泥の文学碑- 土屋隆夫 2024/12/20 13:00
 物凄く個性的と言うわけではないが、「空中階段」など、ポイントを的確に絞っている作品はウィットの効いたミステリ短編として悪くない。

 しかし――表題作では、架空の作家の設定にやけに力を入れているので、連城三紀彦みたいなことをするのかと思ったら、事件は別件で拍子抜け。
 長い手紙、長い電話、主人公が遭遇する奇妙な出来事、が実はまるごと犯人のデッチアゲ、と言う作品が幾つかあり、それではつまらない。作の中軸になる面白いエピソードが “嘘でした” って……。

No.1864 5点 僕を殺した女- 北川歩実 2024/12/20 12:59
 記憶や人格がコンピューター・ソフトの如くインストール出来ると言わんばかり真相は、果たしてホラー・ファンタジーなのか最先端科学なのか。前半で示される謎は魅力的だが、解きほぐす手捌きが不器用だなぁ。
 悪意を以て関わる人が多いと何でもアリみたいになってしまう。それもスッキリしない要因かも知れない。

No.1863 7点 #真相をお話しします- 結城真一郎 2024/12/13 12:34
 「惨者面談」。読み方を確認しなかったことが、結果的には手掛かりとなった――のだから、最後の一行、如何にも “ウィットの効いた終わり方” みたいな風だけど、実は狙いを外してない?
 「ヤリモク」。厳密を期すなら、あのファースト・ネームだけでは特定するに不充分。工夫の余地アリ。
 「三角奸計」。リモート飲み会を題材にした短編は以前読んだ記憶がある(作者は忘れた)。本作とどちらが先か判らないが、案の定、同じ機能をトリックに利用している。こういうのは早い者勝ちだね。
 うーむ、まぁ、どの短編もアイデアはしっかりしているし、良い意味で判り易いし達者、だけど癖が無くて今時としては普通じゃない?

 と思っていたら最後「#拡散希望」で驚心動魄。凄いな、大胆にも程がある。あ、考えてみたらコレも、いずれ誰かが書く、早い者勝ちの大ネタかも。

No.1862 7点 そして、よみがえる世界。- 西式豊 2024/12/13 12:34
 またか、仮想空間やらアバターやら。医療ネタとの組み合わせでそれなりに興味を引かれる。ミステリである前提で読み進むので、設定に対して “これはこういうトリックの為の伏線かな~” とかいちいち先回りしてしまう。
 しかし真相は、大まかにイメージしていたものより遥かに悪意的で残酷なものだった。それ故のカタルシスは確かにあった。

 読み終えて振り返ると、生命の重さにケースバイケースで差が付いている感じ。エリカが物凄く重視されている反面、院内での新たな死者や怪我人は “話の流れ上のひとコマ” みたい。それはそれでリアル?
 シリアル・キラーがまるで天災のように唐突に絡んで来て、唐突に(理屈は通っているが)フェイドアウト。フィクションとしては安易かなぁとも思う。それはそれでリアル?

No.1861 7点 推しの殺人- 遠藤かたる 2024/12/13 12:33
 題材が地下アイドルってことで気恥ずかしい、と言うのが最大の欠点。華やかに見えて舞台裏ではドロドロボロボロ、な設定はありきたり。でも覚悟を決めて読み始めてしまえば矢継ぎ早なアップダウンに乗せられて好きにならずにいられない。犯人(ホシ)はスターになれるのか!?

 ところで、この年の大賞&文庫グランプリは3冊とも、刊行に当たってタイトルがより判り易いものに改められている。ビジネスなんだなぁと感じた(悪い意味ではない)。
 でも “推し” はファンの立場から見た言い方でしょ。語り手の立場とは合っていない。安直にアイドル用語とミステリ用語を組み合わせただけじゃない?
 それとも実は、ファンが語り手から聞き書きした、と言う設定なのだろうか。確かに、ライターになりそうな人がチラッと登場するんだよね。

No.1860 7点 トッカン 徴収ロワイヤル- 高殿円 2024/12/13 12:33
 短編集であるおかげで案件が一つごとに完結していて読み易い。「人生オークション」のミステリ的反転が見事。
 一方、「対馬ロワイヤル」のブランド物売買にまつわる事柄は、どの件のどの部分がどういう理屈でルール違反になるのか、今一つ判らなかった。
 作品全体としてはミステリの看板を掲げているわけではなく中間小説だから、読者の経済感覚、と言うより常識度? が問われているのかも知れない。私は驚くべきポイントで反応出来ていないかも。

No.1859 6点 スイッチ 悪意の実験- 潮谷験 2024/12/13 12:32
 冒頭で示される興味深いアルバイト。でも要は心理ゲームとかでよくある思考実験だし、これだけで完結しているでしょ。小説になるの?
 と思っていたら意外な方向に接木を重ねて立派に成立させていた。題材から作品を立ち上げる手際が際立っている。

 ただ、パスワード探しのところで首を捻った。或る程度の目星を付けた上で、あとは総当たりチェック、と言うやり方。その場合、アトランダムではなく順番通りに試す方が絶対に効率的である。作者はフーダニットの手掛かりとして活用する為に(と言うか、判り易くし過ぎない為に?)敢えて不自然な行動を取らせているのか。これは戴けない。

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虫暮部さん
ひとこと
好きな作家
泡坂妻夫、山田正紀、西尾維新
採点傾向
平均点: 6.22点   採点数: 1938件
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