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虫暮部さん
平均点: 6.22点 書評数: 1848件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.19 6点 迷蝶の島- 泡坂妻夫 2018/05/22 10:55
 恋愛話は爽やかなもののほうが好きなので、私にとって本書などはカロリーが高過ぎる。しかし“痴情のもつれ”を動機にするにはこのくらい濃い恋でないと説得力が足りないか。
 島での死までの描写で、現実と幻覚が恣意的に混ざっているのはちょっとずるいと思う(一応、黒い蝶を見てその人物のイメージが導かれた、という流れが設定されているようだけど)。

No.18 6点 写楽百面相- 泡坂妻夫 2018/03/22 14:12
 必ずしも写楽がストーリーの主軸と言うわけではないので、このタイトルは如何なものか。正体の謎に対してもっとがっぷり四つに取り組んだものを期待してしまったので若干の肩透かし感あり。
 そのせいもあってか、物語の本流よりも、細々としたディテールのほうが楽しかった。時代風俗に関する注釈をあまりせずにすいすい進む筆致は心地良い(が、それを全てストレートに理解するにはいかんせん私の知識が足りない)。

No.17 8点 亜愛一郎の逃亡- 泡坂妻夫 2018/02/13 09:44
 「赤島砂上」で某メフィスト賞受賞作を思い出したり、「球形の楽園」で赤川次郎の某長編を思い出したり。
 「火事酒屋」だけは納得出来ないなぁ。犯人はあんなトリックを弄さずに犯行後さっさと逃げれば良いじゃないか。救助者が2人来る保証もないし。

No.16 9点 亜愛一郎の転倒- 泡坂妻夫 2018/02/05 10:29
  論理の飛躍が楽しい名短編揃い。「砂蛾家の消失」が一番好き。
 「藁の猫」で不満なのは、“開かない扉”“重力を無視する水”等の創意工夫された間違いと比べて、“藁の猫”がよそから持ち込んだだけの単なる異物だ、と言う点。‟藁の猫”である必然性が無い。キャラクターの一貫性を損なっている気がする。ああいう人は凝り性だと思うんだよね。題名にしちゃったものだから尚更それが目立つ。

No.15 9点 亜愛一郎の狼狽- 泡坂妻夫 2018/02/01 11:15
 亜愛一郎シリーズの瑕疵は、まさにその“シリーズである”点だと思うのだ。作者が如何に手を変え品を変え亜の抜け作っぷりや怪しげな行動を描写しても、読者は“このひとが探偵役”という先入観からついつい別枠扱いしてしまう。まっさらな状態で読めたらギャップが更に映えてどんなに面白いことか。
 しかし一方、シリーズゆえにこの愛すべきキャラクターがじっくり育まれたのもまた確かなわけで、痛し痒しなのである。

No.14 10点 乱れからくり- 泡坂妻夫 2017/11/21 11:47
 何度読んでも腑に落ちないことがある。ネタバレありで書いてしまうが、毒のカプセルのトリック。あれは犯人にとってどういうメリットがあるのか(薬の中に毒を一錠混ぜるのと何が違うのか)。出処を探られたら自分に直結する証拠品のカプセルが警察の手に渡るのはやはりリスキーでは。薬瓶の中身が掏り替えられたのは被害者が死ぬ前一日以内、と誤認させられるのでアリバイ工作になる、と言うこと?作中で明確な説明が欲しかった。
 という不満はあるが、とても大好きな作品。全編を貫く騙しの美意識がなんとも愛おしい。

No.13 7点 妖女のねむり- 泡坂妻夫 2017/11/06 10:15
 精緻に組み上げられた幻想的なロマンスとしての評価は出来る反面、愛読者の贔屓目で見ても偶然に頼り過ぎではある。これだけネタがあれば、私でもその気になるだろう。ところでラストがあれでは、死んだ彼女は何だったんだと淋しくなった。

No.12 6点 花嫁のさけび- 泡坂妻夫 2017/08/09 10:19
 ネタバレ大いにアリで書くけれども。
 五章の4。MがI に“もうそろそろ思い当たりやしないか”と告げる内容は、要約すればこう言うことだ。
 “これは君の愛するHを騙して慰謝料を払わせる計画だ。その結果君はHと結婚出来るのだから協力しなさい”。
 それで協力を得られると思ったのだろうか。手駒にそこまで教える必要はないだろうに。愛のことが判っていない奴だと言えばそれまでだが、この場面が非常に滑稽に見える。それも含めて事件の全体像を見直したとき、どうにも作り物めいた、起こる道筋に無い事件を作者が無理に起こしたような印象だ。 

No.11 9点 煙の殺意- 泡坂妻夫 2016/11/08 10:08
 敢て文句をつけるなら「椛山訪雪図」。その絵のイメージが私の心の中に、浮かび上がっては来なかった。あーそういう設定なんですね、としか思えず、犯人が見間違えたと言われても“架空の薬物の特殊な作用を利用したトリック”を読んだような気分。まぁ私の読み方が下手ってことで。 
 「歯と胴」の最後の行にはクラッと来た。収録順だが、コミカル度の高い「開橋式次第」は最後ではないほうが良い。読み返すときはシャッフルしよう。

No.10 8点 しあわせの書―迷探偵ヨギガンジーの心霊術- 泡坂妻夫 2016/09/05 12:06
 この本を参考にして何度か断食の行を試みていますが、毎回2~3日で挫折してしまうのです。

No.9 7点 ヨギ ガンジーの妖術- 泡坂妻夫 2016/08/09 18:01
 「隼の贄」は、カーター・ディクスン『読者よ欺かるるなかれ』に対するオマージュだよね。

No.8 6点 妖盗S79号- 泡坂妻夫 2015/01/05 12:19
 「庚申丸異聞」「南畝の幽霊」「檜毛寺の観音像」が面白かった。見て判らないほど細かく裂いてセーターに編みこんだ日本画を復元って、理屈はともかく現実に可能なんだろうか。「癸酉組一二九五三七番」だけは現金を頂戴しているわけで、最後に語られるS79号の行動原理とちょっとずれているのでは。

No.7 7点 毒薬の輪舞- 泡坂妻夫 2014/11/25 13:18
 犯罪の物語というよりはスラップスティック・コメディであって、それだけに人死に無しで完結させられなかったものかという点が惜しい。

No.6 8点 湖底のまつり- 泡坂妻夫 2014/11/07 19:58
 なかなか強引なプロットではあるが、泡坂妻夫は“愛”と“性”を接着剤にして小説による魔術を成立させてしまった。決定的な矛盾は無いと思う。細かな御都合主義にはこだわらずに流れに身を任せて騙されるが吉。
 官能描写の格調高さと、晃二のキャラクターの意外な俗っぽさは、良し悪しかなぁ。

No.5 7点 死者の輪舞- 泡坂妻夫 2014/10/30 12:25
 ったく、ナンパしながら捜査するんじゃねぇ!
 パズラーというより、ミステリの形をしたドタバタ人情劇のようなつもりで読み返したので、途中の偶然過ぎる事故死も許容範囲内。
 海方はあまり好きになれないキャラクターだが、“二日酔いや病気は出勤しながら治すもんだ。元気なときだからこそ、休暇を取って遊べる”は実行しています。

No.4 5点 旋風- 泡坂妻夫 2014/10/28 12:46
 再読したところ、“妊娠”ネタのインパクトが強過ぎてそれ以外の全てを忘れていたことが発覚。所謂パズラーではないから以前の自分は流し読みしちゃったけど、いまならこういう“愛のミステリ”も楽しめる。柔術関係の描写は職人ものに通じるところがあるね。

No.3 7点 喜劇悲奇劇- 泡坂妻夫 2014/10/22 20:15
 再読して気付いた。“レモン殺人事件”と“遺体の入れ替わり”は、犯人にとって必然性が希薄ではないか。
 とはいえ遊び心溢れる佳作。芥子之助のキャラクター好きだなぁ。

 私も一つ回文に挑戦。
 キツそうな罪、血しぶき、泣き伏し、緻密な嘘吐き(きつそうなつみちしぶきなきふしちみつなうそつき)。

No.2 8点 11枚のとらんぷ- 泡坂妻夫 2014/10/16 20:28
 色々強引に感じる部分はあるが、ロジカルなパズラーを成立させるための御都合主義としては許容範囲内。
 「砂と磁石」「見えないサイン」の、トリックに関する知識がある奇術家ゆえに引っ掛かるトリック、という構造が面白い。

No.1 5点 雨女- 泡坂妻夫 2014/09/22 10:56
 久々に読み返したけれど、なんだか物足りなかったな~。泡坂妻夫は大好きな作家だが、このひとの描く愛の情念は濃過ぎ。一方で、「凶手の影」は事件の謎よりも主人公の“仕事”ぶりが面白かった。

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虫暮部さん
ひとこと
好きな作家
泡坂妻夫、山田正紀、西尾維新
採点傾向
平均点: 6.22点   採点数: 1848件
採点の多い作家(TOP10)
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