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kanamoriさん
平均点: 5.89点 書評数: 2460件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.900 7点 裂けて海峡- 志水辰夫 2010/07/31 21:19
主人公の「わたし」が、弟の海難事故の謎を追ううちに、ある謀略が判明し危難に巻き込まれるというストーリー。
れっきとした冒険小説なんですが、一人称記述で、遺族のもとを次々訪問していくプロットは、まさにハードボイルド小説。ウイットに富んだ会話、強い女性などシミタツ節が随所に読みとれます。
そして、あの最後の一文、キザ過ぎて鳥肌が・・・。

No.899 8点 成吉思汗の秘密- 高木彬光 2010/07/31 20:46
国産の歴史ミステリの先駆的作品。
こういった小説は、どうせなら突飛なもののほうがロマンがあって面白いので、大正時代に発表された”義経=成吉思汗説”を発展させた本書のアイデアは面白かった。
歴史研究者でないミステリ作家としての、多少強引でこじつけに近い論理でも、読者を納得させる筆力はすばらしい。ただ最後の、「昔を今に、成す吉もがな」は、さすがに無理筋。

No.898 6点 紳士同盟- 小林信彦 2010/07/31 20:26
多大の借金を抱える芸能関係者4人が、元天才詐欺師の老人の教えのもと2億円を騙し取るべく奮闘する、国産コンゲーム小説の嚆矢となる作品。
コンゲーム小説の神髄は、被害者はもとより読者をも騙す仕掛けの妙にありますが、同時にスマートなユーモア精神も必須で、その点、老人が称する”コンゲーム道”への入門編など、可笑しみに満ちている。
ただ、借金を抱える4人組素人詐欺集団というのは、どこかで読んだような設定だ。

No.897 9点 八つ墓村- 横溝正史 2010/07/31 18:08
伝奇冒険スリラーの傑作。
戦国時代の落武者と八つ墓伝説や、大正時代の大量惨殺事件など、主人公の「私」こと辰弥が訪れる前の八つ墓村の雰囲気作りが秀でていると思います。
双子の老婆を始め、いわくありげな田治見家や村人の行動もおどろおどろしさを醸しだし、クライマックスの鍾乳洞の追跡劇で頂点を極めています。ただ、シリーズの名探偵を配したために、本格ミステリとして見た場合は二級品の誹りを免れないのが惜しい。

No.896 5点 斜め屋敷の犯罪- 島田荘司 2010/07/31 17:03
デビュー作が傑作だったので期待が大きすぎたのかもしれませんが、この作品にはちょっとガッカリしました。
結局、小説の中の屋敷は作者のかってな創造物で好きなように出来る訳で、それを使ったトリックを読んでも全くサプライズを感じませんでした。

No.895 8点 悪魔の手毬唄- 横溝正史 2010/07/31 16:51
鬼首村の手毬唄による連続見立て殺人。
理屈抜きでいいですね、横溝正史の世界を満喫できます。
シリーズ初期作のようなおどろおどろしい怪奇趣向こそ薄味ですが、おぞましい過去の人間関係が、あるものが登場することによって現代に惨劇を引き起こすという定型のプロットが健在で、いくつかのミスディレクションも巧妙です。プロットの複雑さではシリーズ随一ではないでしょうか。

No.894 7点 影の告発- 土屋隆夫 2010/07/31 16:30
千草検事が探偵役を務めるシリーズ第1作。
デパートで高校校長が毒殺された事件を現場に居合わせた千草検事が担当する。容疑者特定の経緯はちょっとご都合主義的なところがあるが、アリバイ崩しが主題であるためあまり気にならなかった。
初読当時は、本書の写真によるアリバイトリックが目新しく、結構印象に残っています。

No.893 7点 黒い白鳥- 鮎川哲也 2010/07/31 16:09
「東西ミステリーベスト100」国内編の37位は鬼貫警部の2度目の登場。
アリバイ崩しを主題とした同シリーズは、「砂の城」「憎悪の化石」「鍵孔のない扉」など、個人的に出来はいづれも甲乙つけがたい。どれを先に読んだかで評価の順番が変わるだけの様な気がします。
地味な捜査小説で物語が二転三転し、最後に論理のアクロバット的発想の転換により真相が立ち上がる定型プロットが読んでいて心地いい。

No.892 6点 孤島の鬼- 江戸川乱歩 2010/07/31 15:42
大衆ミステリ作家としての乱歩の面白さのエキスがいっぱい詰まった極上の長編ミステリ。
前半の海水浴場での衆人環視状況での殺人という本格趣向、後半の怪奇・冒険スリラー風のスリリングな物語と、息も吐かせぬ読者サービス満点の作品でした。
この後の作品は通俗趣向に偏り過ぎて、読まなくなりましたが。

No.891 7点 サマー・アポカリプス- 笠井潔 2010/07/31 15:22
フランスのある別荘を舞台に、ヨハネ黙示録に則った見立て連続殺人を描いた、矢吹駆シリーズの第2弾。
登場人物は、語り手のナディアを始め主役の探偵以外フランス人ばかりで、異端派の宗教・思想論議など衒学趣味に溢れていることもあり最初はとっつきにくいが、中盤以降のスリリングな展開に惹きこまれた。
密室などトリックの真相は腰砕けの感もありますが。

No.890 6点 猫は知っていた- 仁木悦子 2010/07/31 14:52
仁木雄太郎・悦子シリーズの第1作でデビュー作。
兄妹が下宿している医院の家族・患者内の連続殺人を描いていますが、ワトソン役の悦子の語り口がなかなか読み心地いい。
連続殺人を描いていても、横溝正史のようなおどろおどろしさがなく、(当時はまだ芽生えてなかったが)社会派のようなシリアスな感じもないので、純粋に探偵小説のロジックを楽しめた。

No.889 7点 追いつめる- 生島治郎 2010/07/31 14:33
同じく港町を舞台にしたデビュー作「傷痕の街」の延長線に位置づけされるハードボイルドの傑作。
誤って同僚を撃ち警察を辞した元刑事の一人称で、無駄を排した抒情的な文体で主人公の心情を綴りながら、組織暴力団に立ち向かう様を描いています。
海外の私立探偵ものは、主人公を傍観者的に置いたものが多いが、本書の主人公は意外とウエットで泥臭い。日本独自のハードボイルド小説という感じを受けた。

No.888 7点 人形はなぜ殺される- 高木彬光 2010/07/31 14:04
「東西ミステリーベスト100」国内編の32位は高木彬光3作目のランクイン。
犯人当ての本格編にしては、タイトルがヒントになったこともあり、真相は早めに分かってしまいましたが、それでも作者が色々と駆使しているミスディレクションの技巧が楽しめて面白かった。
神津恭介シリーズの中では読みやすい最良の作品だと思います。

No.887 6点 黄土の奔流- 生島治郎 2010/07/31 12:24
日本での大正時代末期、中国大陸を舞台に上海-重慶間の揚子江数千キロの冒険行を描いた正統派の冒険小説で、ハードボイルド作家のイメージとはだいぶ異なるエンタテイメントに徹した作品。
主人公の紅真吾以下、寄せ集めのメンバーの素姓が少しづつ明かされていく所が面白い。作者が楽しんで書いたような痛快冒険ものでした。

No.886 8点 白昼の死角- 高木彬光 2010/07/30 20:57
東大法学部の学生グループによる手形詐欺などを扱った悪漢・クライム小説の傑作。
実際にあった東大生の経済犯罪集団をモデルにしているだけに、とくに主犯の天才詐欺師・鶴岡の造形などリアルで迫真性がある。作中で、清張の「眼の壁」の手形パクリ詐欺の手法など児戯に類すると言わせている程です。
巨編ですが、あっというまに読み終えるリーダビリティ抜群のピカレスク・ロマンです。

No.885 8点 飢えて狼- 志水辰夫 2010/07/30 20:35
80年代・”冒険小説の時代”を牽引したシミタツのデビュー作。
択捉島潜入・ソ連兵からの逃避行とサバイバルなど緊迫したシーンの連続も読ませるが、流れるような文体とともに不屈ながら理知的ユーモアのある主人公がなかなか魅力的だ。
女性とのしゃれた会話など、ひねくれ気味の作者本来の持ち味は抑え気味だと思いますが、デビュー作らしい熱気に満ちた冒険小説の傑作だと思います。

No.884 4点 匣の中の失楽- 竹本健治 2010/07/30 20:11
推理マニアが集まって推理合戦を繰り広げるという構成は「虚無への供物」への供物だと思うが、現実世界と虚構世界が錯綜したプロットが人物造形の稚拙さと相まって非常に読む者を混乱させる。
アンチ・ミステリは嫌いではないが、「虚無への供物」と違って、この小説は最終的に何を言おうとしているのか理解不能でした。

No.883 7点 事件- 大岡昇平 2010/07/30 18:43
単なる刺殺事件の裏にある男女の人間ドラマを、リアルな裁判小説で克明に描いています。冗長さもあるが、終盤は結構スリリングでした。泡坂妻夫「乱れからくり」と同時に協会賞を受賞しましたが、「東西ミステリーベスト100」国内編でも、「乱れからくり」に次ぐ23位というのはなにかの因縁か。
野村芳太郎監督の映画のラスト、妊婦役の大竹しのぶがひょこひょこ歩いてフェードアウトするシーンは印象に残る。

No.882 8点 乱れからくり- 泡坂妻夫 2010/07/30 18:43
冒頭の隕石のエピソードに始まり、ねじ屋敷のからくり尽しと五角形の迷路などが結構ツボで惹きこまれました。
プロット全体を蔽う仕掛けも独創的で、意外な犯人像が強烈です。
惜しむらくは、殺人手段が(止むを得ない面かもしれませんが)やや陳腐なことと、探偵コンビが少々魅力に欠けるように思いました。

No.881 8点 占星術殺人事件- 島田荘司 2010/07/30 18:43
新人のデビュー作で、冒頭から占星術の蘊蓄話のようなエピソードを延々と繰り広げている所に、作者のこの作品に対する意気込み・自信のようなものを感じます。予備知識のない初めて読む作家で、これだと投げ出す読者もいるでしょうから。
一発ネタのアゾート殺人の仕掛けは意表を突いて衝撃的でしたが、けっこう伏線もフェアに敷かれていたように思います。

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