皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
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kanamoriさん |
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| 平均点: 5.89点 | 書評数: 2460件 |
| No.2240 | 6点 | 粗忽長屋の殺人(ひとごろし)- 河合莞爾 | 2015/03/30 18:56 |
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| 落語ミステリ、といっても愛川晶や大倉崇裕が書くような落語界を背景としたものではなく、熊さんや八っつぁんが持ち込んだ謎を、長屋のご隠居が鮮やな推理で解決するという、古典落語でお馴染みのキャラクターがそのまま登場する文字通りの"落語"ミステリの連作です。
長屋のご隠居が名探偵という点では仁木悦子の「横丁の名探偵」という先例がありますが、各編とも古典落語の演目を下敷きにして、そこに隠された謎を創作するという趣向が作者のアイデアといえます。こういう作風のものも書けるのかと、ちょっと感心しました。 収録作は、伊勢屋の器量よしの女房の婿養子が次々と死んでいく「短命の理由」、住人を集めて下手な義太夫を聞かせようとする大店の旦那の真意「寝床の秘密」、熊さんの死体を見かけた八っつぁんが本人に知らせに走る「粗忽長屋の殺人」、死んだ花魁を香を焚いて呼び出す坊主「高尾太夫は三度死ぬ」の4編。いずれもミステリとしての仕掛けは底が浅く真相は割と分かりやすいが、レギュラー三人のボケとツッコミのやり取りが抜群に面白い。また、小噺風のつかみから人情話に持っていく展開や、謎解き後のサゲも”原作”の味を損なわない配慮がうかがえる。 |
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| No.2239 | 5点 | 狼男卿の秘密- イーデン・フィルポッツ | 2015/03/28 18:01 |
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| 父の急死によって、准男爵の称号と広大な領地を引継ぐことになったウィリアム・ウルフは、領主館の図書室で古い詩集を見つける。以前から神秘主義に興味を持っていた彼は、人狼伝説を綴った詩の一節が、近い将来自分の身に起こる”予言”だと妄信し、やがて彼の身辺で詩の内容に沿った不吉な出来事が続発する--------。
怪奇小説をそろえた国書刊行会の”ドラキュラ叢書”(全10巻、紀田順一郎&荒俣宏監修)のなかの一冊。 人狼、狼憑きがテーマで、物語の大半は、オカルティズムに傾倒した若いウルフ卿が、古書に予言された”破滅の日”に向かっていく様を描いている。教区牧師と卿の婚約者であるその娘、従兄弟、領地管理人の元学友など、周辺人物がウルフ卿の精神状態を心配し右往左往するのですが、このあたりは展開がゆったりしすぎて正直なところ読むのが少々苦痛に感じた。謎の血糊や狼男の痕跡などのオカルト要素も出てくるものの、あまり怪奇性を強調しているようには思えない。 ところが、終盤の十三章で様相が一変、思わず「そういう話だったのか!」というような”構図の反転”が控えてました。たしかに、ある人物の退場が唐突で不自然だとは思っていましたが...........。本書が”ドラキュラ叢書”の一冊ということが、図らずもミスリードに繋がる一番の要因になっているかもしれない。 |
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| No.2238 | 6点 | 瀬戸大橋3.64秒の殺意- 池田雄一 | 2015/03/26 18:57 |
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| 病に倒れた大手企業グループの総帥・苅部は、財閥を守るため隠し子の有美子を米国から呼び出し政略結婚を企てる。だが、何者かによる有美子殺害計画を知った苅部は、脚本家の杉山翠に替え玉の花嫁を依頼するも、結婚披露宴のさなか式場ホテルで連続殺人が発生する---------。
二時間ドラマのトラベルミステリのようなタイトルで損をしていますが、前作「21時間02分の密室」と同様に、大掛かりで巧妙なミスディレクションを使った良質の本格パズラーになっていると思います。 主人公や劇団関係者たちが事件に関わる経緯が都合よすぎる点や、タイトルが示唆する豪快なアリバイトリックには、突っ込みどころもあるものの、終章近くで明かされる”裏の構図”は意外性十分です。 探偵役で旅行代理店のツアーガイド・阿久津竹男や、弱小劇団の脚本家・杉山翠など、前作のキャラクターが再登場するのが単なるシリーズ化のためではなく、仕掛けの部分に有効に寄与している点も評価したい。 |
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| No.2237 | 5点 | 球型の殺意- 山村正夫 | 2015/03/24 20:12 |
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| 城南ボウリング・パレスに深夜強盗が入り宿直の職員が殺される。同僚の庄司も負傷するが、状況から強盗を手引きしたとの疑いをかけられ解雇されてしまう。庄司は濡れ衣を晴らすべく犯人探しを続けるも、今度は強盗団の一味と目を付けた男が密室状況で殺害された事件に関わることに--------。
物語は主人公・庄司の執念の犯人探しを中軸に展開しますが、並行して警察の捜査動向の描写があり、さらには犯人側視点のパートが挿入されて、そのなかで強盗団の正体が早々に明らかになります。読者に舞台裏を見せているようなものですから、この構成はちょっと変わっています。 ボウリング場の密室状況下のロッカールームでの殺人という”謎”はあるものの、ジャンル投票を”本格”にするのは迷いました。サスペンス、警察小説、犯罪小説、それぞれの要素が混在しますし、読者が推理をする余地もあまりないので。そのため終盤のドンデン返しは意外というより唐突感がありますね。ただ、某フランスミステリ作品のある趣向に挑戦したと思われる作者の意欲は買います。 |
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| No.2236 | 5点 | ベルリンの女- 高柳芳夫 | 2015/03/22 20:56 |
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| ノンシリーズの短編集。各話ともドイツ、オーストリア、ノルウェー、スイスなど欧州諸国の街を舞台背景にしているところが共通しています。ジャンルは、不正経理や贈収賄事件などの社会派要素を加味した本格ミステリが中心ですが、幻想ホラー風のものや心理サスペンスも収録されています。
表題作の「ベルリンの女」は、取壊し寸前の古いビルの一室が現場となる密室トリックもの。トリックは既視感があるものの、一応の真相が明かされた後のツイストが効いていて、コレが個人的ベスト作品。 「ヴィーナスの山の白い館」は、素人探偵の日本人女性像や古城周辺の情景描写はいいが、アリバイトリックは陳腐と言わざるを得ないかな。「国際電話会社殺人事件」は、社会派の要素が大きい骨太の作品で読み応えがあるが、メイントリックを疑う手掛かりが後出しぎみなのが残念なところ。 本格モノ以外では、ある商社員の凄まじい怨念が印象に残る「ラインの誘惑」が心理サスペンスものの佳作。そのほかの怪奇幻想風のショートストーリー2編はいずれも微妙な出来でした。 |
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| No.2235 | 5点 | 人魚と金魚鉢- 市井豊 | 2015/03/21 10:11 |
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| 生まれながらの”聴き屋”体質の大学生「ぼく」こと柏木と、文芸サークル”ザ・フール”の個性的な面々が繰り広げる連作ミステリの第2弾。もともとド派手なトリックは出てこないシリーズですが、今回はとくに”日常の謎”に徹した構成になっています。
「青鬼の涙」では、法事で家族とともに帰省した柏木が、小学生時代に目撃した亡き祖父の”ある行為”を回想し謎解く。些細なミステリながら雰囲気のいい異色作。 つぎの、聴き屋体質ゆえに真実に気付かなかったという「恋の仮病」は、真相が早々に見えてしまった。 「世迷い子と」では、テレビ番組の撮影中に子供タレントが突如恐慌に陥った理由が謎として提示される。手掛かりが十分ではないが真相には意外性がある。 ザ・フールのメンバーが公園で隠れんぼをする「愚者は春に隠れる」の、謎解きは大した事ないものの、ネガティブなユーレイ部員”先輩”のキャラが全開で楽しめる。 最後の「人魚と金魚鉢」では、学生選抜コンサートの会場を泡まみれにした犯人とその動機を謎解く。これも途中でなんとなく真相が見えるが、爽やかな気持ちにさせてくれる読後感のいい作品。 |
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| No.2234 | 6点 | 絶望的 寄生クラブ- 鳥飼否宇 | 2015/03/19 18:37 |
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| 綾鹿市にある大学の准教授・増田米尊は、最近だれかに監視されている気配を感じていたが、ある日パソコンに保存していた研究発表用資料が、変な短編小説にすり替わっていることに気付く。研究室の5人の学生のだれかの仕業とふんだ増田は、犯人探しに乗り出すが--------。
変態フィールドワーカー・増田准教授を主人公とするバカミス・シリーズの最新作(で、最終作?)。 作中作というか、入れ子構成で挿入されている4つの”読者への挑戦”付き短編小説が、(それぞれのジャンルは異なるものの)いずれもバカミス要素が濃厚で楽しめる。 最初の「処女作」は、処女受胎を巡るフー&ハウダニット・パズラー。処女を一種の密室に見立て、ノックスの十戒をネタにしながら、最後に”意外な犯人”が現れる。犯罪小説風の「問題作」は、監禁立て篭もり事件を起こした男を巡る”ホワイダニット”で、歪んだ動機が異様な印象を残す作品。官能小説風の「出世作」は、登場人物の男の名前を当てるクイズのような趣向の作品だが、仕掛けの原理は、昨年読んだ某作に通じるところがあるような。最後の「失敗作」も、仕掛けの部分が某バカミス大家のアイデアとカブるが、外枠の物語につながるメタな展開が面白い。 ちなみに、今作も副題はチェスタトンですが、内容のほうは「奇商クラブ」と全く関連はありませんw |
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| No.2233 | 6点 | にぎやかな落葉たち 21世紀はじめての密室- 辻真先 | 2015/03/17 18:38 |
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| 今世紀になって初めての大雪に見舞われた日、グループホーム「若葉荘」の密室状況の部屋で、銛に射抜かれた女性市議の死体が見つかる。「若葉荘」の女性オーナー野末寥や入居者たちが被害者と過去に何らかの因縁を持つことが分かってくるなか、ホームの最年少スタッフ・綾乃は全員の前で口を開く--------。
北関東の小さな町にあるグループホーム「若葉荘」を舞台にした”雪の山荘”モノ本格ミステリ。 殺人事件がなかなか起こらない。山間の狭い町で昔からの人間関係が綿々と続いているという設定が重要なファクターとなっているので、ほぼ前半の半分が過去の因縁や事件の背景説明に費やされています。それでも、個性的な入居老人たちのユーモラスな言動やコージー風に近い語りで、重いエピソードも軽く読ませます。そういうところは作者の持ち味が出ていると言えるのかもしれない。 犯行の動機がやや弱く、少々納得いかないところがあるものの、”すべての条件が偶然そろってしまう”という横溝正史の某名作を思わせる”犯行スイッチ”の趣向がなかなか面白く、2つの殺人の手段がともに過去のエピソードを伏線にしている点も上手いと思えた。 |
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| No.2232 | 6点 | 13の判決- アンソロジー(海外編集者) | 2015/03/15 18:10 |
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| 英国推理作家協会編のアンソロジー。法廷ミステリだけを収録したようなタイトルですが、実際は事件関係者内の私的な”評決”だったり、法廷場面が全く出てこない”判定”も多く、テーマはかなりユルい縛りになっています。
そんな中では、大昔の毒殺事件の洗い直しを依頼されたダルグリッシュ警視の私的捜査を描いた、PDジェイムズ「大叔母さんの蠅取り紙」が編中の白眉といえる。60年以上前の公判記録や当時の関係者などをあたる骨太な内容に加え、炙り出された皮肉な真相と”無〇〇な犯人”という設定が非常に印象に残る傑作。 ディック・フランシス「ローパーと二十一人の仲間」は、競馬の”写真判定”結果の賭け事で連戦連勝をする男の話で、ハウダニットの仕掛けが盲点を突きオチが鮮やか。 そのほか、飼い猫が咥えてきた指を巡って隠れた事件を集団で推理するパトリシア・ハイスミス「猫の獲物」、評決直前に陪審員が突然死した事件に警視総監のアプルビイが関わるマイケル・イネス「ペリーとカリス」、キャンプ場で野鳥観測者が変死した事件を私的裁判で真相を暴くナイオ・マーシュ「ホッホウ」、渋いスパイ・スリラー風のマイケル・ギルバート「三人の評決」がまずまずの出来栄え。 天国で三人の悪女が過去の事件を掘り起こすクリスチアナ・ブランド「至上の幸福」や、架空の惑星が舞台のピーター・ディキンスン「猫殺しの下手人は?」など残りの作品はいまいち面白さがわからなかった。 |
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| No.2231 | 5点 | 叛徒- 下村敦史 | 2015/03/13 21:26 |
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| ”通訳捜査官”七崎は、歌舞伎町で起きた中国人殺害事件を通報した中国人男性の取調べに同席するも、その証言から、現場から逃走した若い男が自分の息子である可能性に慄き、虚偽の通訳をしてしまう--------。
管内で発生する事件の関係者に在日中国人が多いことから新宿警察署に配属されている”通訳捜査官”を主人公にした、江戸川乱歩賞受賞第1作。 警察組織内でもあまり知られていない特殊な職務の主人公という点では、横山秀夫の一連の警察小説を思わせますが、主たる題材が外国人労働者の過酷な実態や、中学生のいじめであり、警察小説というより社会派の要素が強い作品です。また、先輩通訳捜査官でもあった義父を自死に追いやった”正義”と、息子を守るため職務に背く”叛徒”という相反する2つの立場で苦悩する七崎とその家族のヒューマンドラマでもあります。小さな構図の反転はあるものの、ある程度予想の範囲内であり、前作「闇に香る嘘」と比べると謎解きミステリの成分は薄めと言わざるを得ません。また、ご都合主義的で、予定調和で終わるストーリー展開に共感しずらいところもありました。同じ横山秀夫でも「半落ち」タイプを好む人には合うかもしれません。 |
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| No.2230 | 5点 | 小人たちがこわいので- ジョン・ブラックバーン | 2015/03/10 22:00 |
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| 北ウェールズ山地の別荘小屋で休暇を過ごす細菌学者マーカス・レヴィン卿と妻のタニアは、不気味な民間伝承がある岩山〈騎士の丘〉で航空機会社社長の墜死体に遭遇する。そして、最近その会社絡みでロンドンで続発する奇怪な事故が、どこかで結びついているのではと調査に乗り出すが----------。
英国情報局カーク将軍&レヴィン卿コンビが地球規模の危機に対峙するB級ホラー、シリーズ最終作。 とにかく次々と繰り出されるネタの数がハンパない。絶滅した古代人伝承が主軸となるが、予知夢と不滅の霊魂、廃水汚染による謎の病原菌、ナチス残党のマッドサイエンス、ソ連技術者の亡命、カトリックとプロテスタントの宗教対立などなど。スティーヴン・キングなら上下巻1000ページを超えるぐらいの超大作に仕上げるところを、文庫の240ページに収めるのだからやはり無理があります。これらのネタは全てラストに明らかになる壮大なバカ真相に繋がる伏線ではあるけれど、あまりに詰め込みすぎて整理しきれておらず、物語にのめりこむという風にはならなかった。 |
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| No.2229 | 5点 | 千葉淳平探偵小説選- 千葉淳平 | 2015/03/08 23:08 |
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| 昭和38年、雑誌「宝石」短編賞の第一席入選作「或る老後」「ユダの窓はどれだ」の2作でデビューした千葉淳平の”短編全集”。解説にもありますが、雑誌「幻影城」世代には、ちょっと複雑で因縁めいたものを感じる作家名ではありますね。
「宝石」などの推理雑誌を中心に発表された13編は、密室や毒殺トリックを多用した本格色が強いものが揃っていて、東大物理工学科卒、発明協会勤務という経歴を活かしたような理化学トリックの使用が特徴と言えます。また、単にトリック小説ではなく、奇妙な味タイプでもある「或る老後」や、ユーモア風味の「ユダの窓はどれだ」など、意外と作風は幅広く、最後にツイストを効かせプロットに工夫があるものは、宝石短編賞同時受賞の天藤真に似た味わいがあります。ただ、後半の作品は通俗的なクライム小説に流れてしまっていますが。 その他、遊民の独身男・沢井が女性を巡る事件に巻き込まれる軽ミステリ連作”女”シリーズは、第1話は面白いが、連作が進むにつれ尻すぼみになった。 収録作でとくに印象に残ったのは、上記2作品と「女三人」「13/18・8」「静かなる復讐」あたりかな。 |
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| No.2228 | 6点 | 消え失せた密画- エーリヒ・ケストナー | 2015/03/06 21:57 |
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| ベルリンの肉屋の親方キュルツは、旅先のコペンハーゲンで美術品蒐集家の秘書と称するイレーネと知り合う。イレーネから高価な密画をベルリンまで運んでほしいと頼まれたキュルツは、彼女とともに列車に乗るが、彼らの周りには怪しげな男たちが次々と出没し、やがて巧妙な手口で密画が盗まれてしまう--------。
児童文学「エミールと探偵たち」で知られるエーリヒ・ケストナーが1935年に書いたユーモア犯罪小説です。ドイツ人作家とクライム・コメディというのがイメージ的にあまり結びつかない(偏見?)のですが、正直者でお人好しの主人公(というか、狂言回し役)肉屋のキュルツの、とぼけた言動やカンの鈍さが、独特の仄かでまったりとしたユーモアを醸し出しています。 また、スラップスティックな笑いだけではなく、密画を巡るコンゲーム風の争奪戦というプロットも意外としっかりしていて、ある人物の意外な正体やどんでん返しの仕掛けでサプライズを演出しています。物語の冒頭からラストシーンまで牧歌的な雰囲気に包まれているのも好印象です。 |
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| No.2227 | 6点 | からくり探偵・百栗柿三郎- 伽古屋圭市 | 2015/03/04 22:10 |
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| ”よろず探偵、人探しも承り”--------浅草の町はずれにある百栗(ももくり)庵の主で、キテレツ発明家の柿三郎が探偵稼業にも踏み出した。招き猫型ロボットの”お玉さん”を連れ、女中の千代を助手にして4つの不可解な事件の謎解きに挑む---------。
帝都・東京市を舞台にした大正ロマン×本格ミステリの第2弾。 語り手の千代との出会いの第1話は、科学者の邸宅で博士が殺された事件。標本の人造人間を犯人と見せかけた理由を基点に、柿三郎が真犯人を特定するロジック展開がなかなか秀逸。 第2話では、男と女のバラバラ死体が連続して発見される。事件の裏に隠された秘密はある意味現代的なところもあって、ホワイダニットの真相には驚かされる。 第3話では、幻術師の道場に入ったままの男の捜索を依頼される。これは、ある程度構図が見えやすい。 最終第4話は、二重殺人の惨劇を目撃しながら行方不明になった少女を捜索する話。定番とはいえ、物語当初から張られていた伏線を回収しつつ、連作を貫く”からくり”によって最後にサプライズが炸裂する。 個別的には、ロジカルなフーダニットの第1話と、奇想風トリックの第2話を推すが、全体的には、キャラクターや爽やかなラストなど読み心地がいい作風を一番に評価したい。 |
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| No.2226 | 7点 | 七人目の陪審員- フランシス・ディドロ | 2015/03/02 22:27 |
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| 薬局の店主グレゴワールは、河べりを散歩中に水浴びをする娘ローラに出くわし、悲鳴をあげられた混乱のなか彼女を殺めてしまう。しかし嫌疑は彼に及ばず、ローラの愛人アランが犯人として逮捕される。グレゴワールはアランの冤罪を雪ごうと策を弄するうちに、事件の陪審員に選任されてしまう---------。
冤罪を扱った法廷ミステリ、とはいっても重厚さやシリアスな感じはあまりなく、軽い語りでブラック・ユーモアもある、いかにもフランス・ミステリらしい作品。(ただ、最後まで読むと、その印象がだいぶ変ってくるのですが)。 夢想家ぎみの中年男グレゴワールという人物の揺れ動く内面描写が終始興味深く、自首はしたくないが無実の青年は救いたいため、あの手この手と策を弄するも、皮肉な展開の連続に翻弄される。このあたりフランス版「試行錯誤」という評も肯ける。 一方で、誰もが顔見知りで噂がすぐに広まってしまう小さな町という舞台背景が重要な要素になっていて、それがバークリー作品とはテイストが異なる、風刺的で不条理な本作の結末に結びついているように思います。 |
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| No.2225 | 6点 | 虹の歯ブラシ 上木らいち発散- 早坂吝 | 2015/02/28 22:40 |
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| メフィスト賞のデビュー作「○×8殺人事件」で登場したエンコー女子高生・上木らいちを探偵役に据えた連作ミステリ。タイトルの意味は、らいちの高級マンションの部屋に曜日ごとに訪れる”固定客”のために備え置きされている七色の歯ブラシのこと。
全七話で構成されていますが、まるで”虹”のように、編が進むにつれ各話のテイストが徐々に変な方向に変貌していくところは作者の狙いのひとつかもしれない。 下ネタやエロい描写はあるものの、決めるときは比較的まともなロジックが展開された第1話から、第3話「青」のバカミスの王道のようなトリックを経て、最終話では叙述トリックそのものをネタに、どんでん返しを繰り返し、読者をとことん翻弄する手際は確かにバカミスを超越している。 今回も読者を選ぶ内容で、また仕掛けの性質上、前作ほど真相に笑撃度はないものの、ラストの斬新な趣向は評価したい。 |
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| No.2224 | 5点 | チャーリー・モルデカイ (4) 髭殺人事件- キリル・ボンフィリオリ | 2015/02/26 23:13 |
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| ジャージー島で暮らすモルデカイのもとにオックスフォード時代の指導教官ドライデン博士が訪ねてくる。大学の女性研究員が不審死した事件を調べてほしいという博士の依頼に応え、ちょうど口髭を生やしかけていたモルデカイは、身元を隠し潜入捜査を始めるが---------。
怪しげな画商の”ぼく”こと、チャーリー・モルデカイ閣下シリーズの第4作。 今回はカレッジ・ミステリの様相で、とくに前半は名探偵モノのパロディと言えそう。文学などの衒学趣味・薀蓄に溢れた脱線は相変わらずで、舞台がオックスフォードということもあって、クリスピンのジャーヴァス・フェン教授シリーズを髣髴とさせるところがあります。しかし、アメリカ大使館の大佐が再登場してからは、またまたモルデカイは過酷な状況に陥るのですが......(これはもうシリーズのお約束の展開か)。 最終作となってしまった本作では、妻のジョハナと用心棒ジョックの登場シーンが少なめなのが残念なところ。そのためスラップスティック的な面白さがやや減退してしまっているように感じた。 |
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| No.2223 | 5点 | 青銅ドラゴンの密室- 安萬純一 | 2015/02/24 22:59 |
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| ホルツマイアー家の敷地内にある青銅のドラゴンを模した塔を見るため、近代建築研究家で探偵を称するラズボーンが訪れる。調査を進めるさなか、密室状況の塔の内部で、頭をかみ砕かれたような死体が発見される。それは百年前に旅芸人の男女が殺された状況と全く同じだった---------。
ドイツの旧家一族に秘められた過去や、死んだはずの男の復讐に怯える兄弟、陰惨な伝説がある塔で再び起こる密室殺人と、全盛期のディクスン・カーを思わせる王道の本格編です。 物語の全体構成に荒削りなところがあり、登場人物も類型的で(すべて外国人ということもありますが)単なるパズルのピースのように描かれているのが難点ですが、それらも含めてコテコテのパズラーの王道ですw 本書の中核の謎は、ドラゴンの塔を巡る密室殺人の”ハウダニット”で、個人的にあまり好みではないタイプではあったものの、ユニークなトリックは一読に値するのではと思います(現場の見取図がないのが惜しまれますが)。多重解決の”仕掛け”を含め、最後まで目の離せない快作です。 |
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| No.2222 | 5点 | 放送中の死- ヴァル・ギールグッド&ホルト・マーヴェル | 2015/02/22 22:14 |
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| 英国BBCの放送局スタジオで、ラジオドラマの被害者役の俳優が、まさにオンエア中にドラマと同じタイミングで絞殺される。ロンドン警視庁のスピアーズ警部補は、BBCスタッフらの素人探偵にかき回されながら必死の捜査を続けるが-------。
本格ミステリ黄金期の作品(1934年発表)ですが、お屋敷で殺人が発生し名探偵が登場.....といった型にはまった古典本格とは一味違い、現代的な雰囲気のあるフーダニットです。作者コンビの片割れギールグッドは、作中の主人公格の放送ディレクター・ケアードと同様にBBCで長らくラジオ放送に関わっており、のちにディクスン・カーと組んでラジオドラマを製作した業界人で、この時代では珍しい”業界ミステリ”(=ほかに思いつくのはセイヤーズ「殺人は広告する」ぐらい)をリアルな情報を盛り込み仕上げています。 ただ、ミステリ部分の出来に関してはそれほど高い評価はしずらいかな。動機の情報が後出しですし、犯人の計画したトリックがかなり綱渡り的で、ちょっとした齟齬があればすぐ破綻してしまいそうなのも問題です。 設定は”ハイカラ”なのに、中身はあくまでクラシックという感じでしょうか。 |
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| No.2221 | 6点 | スノーホワイト 名探偵三途川理と少女の鏡は千の目を持つ - 森川智喜 | 2015/02/20 18:09 |
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| 〈なんでも知ることのできる鏡〉を持つ女子中学生の襟音ママエは、こびとを助手にして探偵事務所を構え、依頼人が持ち込む日常の謎を安楽椅子探偵きどりで”解決”していた。そんなある日、〈あっちの国〉の王位継承を謀る御后ダイナが、悪辣名探偵の三途川理にママエの暗殺を依頼ししてきた---------。
毒入りリンゴや七人の小人など、童話「白雪姫」をモチーフにし、なんでも知ることができる魔法の鏡という、謎解きミステリにとっては掟破りのアイテムが重要な役割をする異世界風の特殊設定ミステリ。 謎解き以前に真相が分かってしまう装置という点では、「さよなら神様」とコンセプトが似ている(=魔法の鏡が、神様・鈴木太郎の役割)が、結論だけでなく推理の過程まで質問すれば何でも答えてくれるという設定がなんとも異端。これでどうやって謎解きミステリを展開していくんだろうと思っていたら、第2部では鏡の機能を最大限に利用した謀略戦の様相になってしまった。(これはこれで面白いですが.......) 法月綸太郎氏の文庫解説で気が付いたが、全知全能の神様の麻耶雄嵩、魔法の鏡の本書、Yahoo!知恵袋を悪用したカンニング事件と、似た発想がみんな京都大学つながりなんだなw |
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