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[ 短編集(分類不能) ] 藤村正太探偵小説選 Ⅰ |
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藤村正太 | 出版月: 2014年12月 | 平均: 6.00点 | 書評数: 1件 |
論創社 2014年12月 |
No.1 | 6点 | kanamori | 2015/01/04 11:52 |
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作者が昭和38年に「孤独なアスファルト」で乱歩賞を受賞し”再デビュー”するさらに10年以上前に、川島郁夫名義で発表した初期の作品集。1巻目の本書には、デビュー短編「黄色の輪」をはじめ、昭和24年~27年に雑誌掲載された15編と評論・随筆が収録されています。
密室やアリバイ工作を主軸としたトリッキィな探偵小説が多かったのですが、なかには歴史・時代小説や戦争小説、ユーモラスなコンゲーム的なものなどもあり、意外と作風は幅広いなという印象です。ただ、作品毎のクオリティにはかなりバラツキがあり、アンソロジーに採られている下記の既読作品はアイデアに光るものがあるものの、他の初読の作品にそれほど良質なものが見当たらなかったのは少々残念です。 個人的ベストは、密室とアリバイ・トリックともに工夫されたガチ本格の中編「盛装」。とくに首切断死体の大胆なミスリードの趣向には驚かされる。このトリックは後に作者の某長編にも再利用されている。 準ベストは、事件の構図を複数回反転させたスマートで完成度が高い「接吻物語」か、アリバイ工作が警察の捜査によって完結してしまうという皮肉な趣向の「或る自白」あたり。 総体的に、本格編はプロットがごちゃごちゃしたものが多くて読みずらく、アイデアがストレートに伝わってこない感じがした。 |