皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
していません。ご注意を!
文生さん |
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平均点: 5.85点 | 書評数: 456件 |
No.116 | 4点 | くたばれ健康法!- アラン・グリーン | 2015/10/18 05:46 |
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不可能犯罪のトリックはユニークだったが、それだけで全編を覆うユーモアというやつが全く理解できず、退屈な作品でした。 |
No.115 | 6点 | 鍵の掛かった男- 有栖川有栖 | 2015/10/17 10:26 |
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作家アリスシーリズ最長作というだけあって、ずっしりとくる重量級の作品である。
ただ、いつものようなロジックのアクロバットを期待してはいけない。 本作の探偵役は主にアリスがつとめ、事件の真相というよりも主に死んだ男の経歴を調べ上げる。そこから浮かび上がってくる被害者の人生こそが本作の主題であり、読み応えのある部分だ。 一方、事件の真相は終盤にやってきた火村の手で解かれる。こちらも悪くはないが、作品の長さを考えると明らかに軽量級。 エラリー・クイーンのライツヴィルシリーズのようなもので、ガチガチな本格を期待すると肩透かしを覚えるだろう。 |
No.114 | 6点 | 生還者- 下村敦史 | 2015/10/17 04:00 |
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雪崩の事故から奇跡的に生還したふたりの登山家の証言が大きく食い違う中、事故で兄を失った主人公がその死に疑念を抱き、真相を探る山岳ミステリー版藪の中。
息詰まる登山シーンから始まり、生き残ったふたりの登山家の証言が180度異なることから生じるサスペンス、そして徐々に明らかになる登山家たちの複雑な過去といったふうに物語が展開する骨太で非常に読み応えのある作品です。 ただ、本格ミステリのフォーマットを採用せず、人間ドラマに力点が置かれているため、早い段階で事件の背景が透けて見えるのは本格ファンとしては少し物足りなかった。 とは言え、事件解明後にも小さなサプライズを用意するなど、細部まで工夫を凝らした力作であることは確かです。 |
No.113 | 7点 | ミステリー・アリーナ- 深水黎一郎 | 2015/10/16 12:30 |
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作中作に基づいて15人にのぼる解答者が次々と真相を推理していく趣向が楽しい。その推理というのがどれもこれもバカバカしいものばかりなのだが、それも昨今乱発されている叙述トリックのバーゲンセールを揶揄しているものと考えれば逆に深みさえ感じられる。
ただ、似たり寄ったりの解答が多いため、中盤少し退屈に感じてしまった。解答者の面々も老若男女色々取り揃えてはいるが、自信過剰の上から目線キャラが多すぎてかなりワンパターン。 楽しい作品であることは間違いないのだが、もう少しメリハリを意識してくれれば傑作になりえたと思う。 |
No.112 | 4点 | ノックス・マシン- 法月綸太郎 | 2015/10/15 13:45 |
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やはり、ミステリーファンが楽しめるのは「引き立て役倶楽部の陰謀」だけのようですね。私もそれなりにSF小説を読んでいるつもりだったのですが、「バベルの牢獄」は無理でした。
今となってはこのミス1位だったのが不思議な作品です。 |
No.111 | 5点 | スイス時計の謎- 有栖川有栖 | 2015/10/13 17:53 |
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表題作が非常に評価が高いわけだが、本作の柱となるロジックが納得できない。
犯行の最中に、自分の腕時計を割ってしまった犯人はなぜ、被害者が持っている同じ種類の腕時計と交換しなかったのか? (交換しておけば腕時計に注目されて、容疑者を限定されることもなかったのに) というのが推理の端緒になっているが、被害者の腕時計を持ち帰って自分のものとし、被害者の腕に割れた自分の腕時計をはめたとしても科学鑑定にかけられればいつ自分の腕時計である証拠が見つかるか分かったものではない。 どんな事情があろうと遺留品はすべて持ち帰るのが自然だと思うのだが いかがなものだろうか。 |
No.110 | 7点 | 冬のオペラ- 北村薫 | 2015/03/09 04:00 |
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作者の代表作である『空飛ぶ馬』や『夜の蝉』などと同系統の日常系ミステリだが、個人的にはこちらの方が楽しむことができた。
探偵のキャラが立っており主人公も親しみやすい。 文学的な味わいは後退しているが、ミステリとしての切れ味は素晴らしく、全体的に肩のこらないエンタメ作品に仕上がっている。 |
No.109 | 7点 | 倒錯のロンド- 折原一 | 2015/03/08 14:43 |
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推理小説の新人賞原稿が盗まれ、その犯人を捜すという設定がユニーク。
本格ミステリーとしては結末にいささか無理があるが、多少の無理は強引にねじ伏せる勢いと熱にうなされているような異様なテンションに引っ張られ、真相の不自然さはさほど気にならなかった。 |
No.108 | 4点 | 殺しの双曲線- 西村京太郎 | 2015/03/07 12:33 |
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西村京太郎本格の最高傑作と呼ばれている作品だが自分には合わなかった。
まず、多くの人が指摘している通りクローズド・サークルものなのに緊迫感が今一つなこと。それに肝心の双子トリックがそれを使用する状況を作りだす手順に無理があり、たとえ成功してもそれほど効果的なトリックだとは思えなかったのが評価を下げた大きな理由。 さらに加えるならば、動機も気に入らない。犯人に同情的な書き方をしているけれど単なる逆恨みとしか思えない。そして極めつけは、純粋なパズラーとして書いているのにもかかわらず、逮捕する決定的な証拠がないからといって犯人の情に訴えて自白を引き出そうとしている点だ。 新しい本格ミステリーを書こうとした当時の意気込みは伝わってくるのだが、どうも自分の求めてたものとは違っていたという印象だった。 |
No.107 | 4点 | ゴルフ場殺人事件- アガサ・クリスティー | 2015/03/06 20:06 |
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デビュー2作目にして後年ミステリの女王と呼ばれるにふさわしい物語運びのそつのなさは垣間見られるのですが、ミステリとしては特にひねりもなく凡作の域を出ていません。 |
No.106 | 7点 | モルグ街の殺人- エドガー・アラン・ポー | 2015/03/06 18:30 |
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奇怪な事件、名探偵の登場、精緻なロジック、意外な結末。
世界最初のミステリにしてミステリのエッセンスがすべてつまっているという恐るべき作品で後世に与えた影響は計り知れない。 現代の読者からすれば、本格ミステリーとして純粋に楽しむことはできないかもしれないが、その物語から滲み出る独特の味わいは時を経ても色あせていない。 また、ポーの非ミステリーの代表作である『黒猫』や『アッシャー家の崩壊』などと読み比べてみるのも一興だろう。 |
No.105 | 8点 | 緑のカプセルの謎- ジョン・ディクスン・カー | 2015/03/06 13:09 |
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カーといえばおどろおどろしいオカルト趣味、ベタベタなスラップスティック・コメディ、大仰な密室殺人といったコテコテな要素が満載で手にしただけでお腹いっぱいになりそうなイメージがあります。
しかし、本作はそうした過剰な装飾物はなく、パズラーとしてすっきりした仕上がりになっています。プロットも実に良くできており、読者をだます手管はこれ以上ないというほど巧妙です。 中期の作品では他にも『皇帝のがき煙草入れ』『貴婦人として死す』という本書と同様の魅力を持つ傑作があり、カーは苦手だが、パスラーは好きという方におすすめです。 |
No.104 | 7点 | 猿来たりなば- エリザベス・フェラーズ | 2015/03/05 21:06 |
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トリックそのものは極めてオーソドックなものですが、殺されたのが猿であるという事実が読者を上手くミスリードさせることに成功しています。
発想の勝利というべき佳作です。 |
No.103 | 8点 | 遠海事件: 佐藤誠はなぜ首を切断したのか? - 詠坂雄二 | 2015/03/05 11:08 |
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佐藤誠というキャラクター自体が遠海事件の真相を隠すミスディレクションになっている構成は見事という他ない。
ストーリーそのものは序盤に起こった殺人事件について捜査をしていくだけという地味なものであるが、佐藤誠という不可解な存在に引っ張られてぐいぐいと引き込まれていく。 ただ、『佐藤誠の物語』としての落とし所は少し物足りなさを感じてしまった。80人以上も殺した殺人犯なのだから最期まで不気味な一面を残しておいても良かったのではないだろうか。 |
No.102 | 8点 | 球形の季節- 恩田陸 | 2012/04/10 21:10 |
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平凡な日常が静かに崩れていく様を描いたSF青春ミステリー。
ショッキングな描写はほとんどなく、何かがとんでもないことが起こっているという不穏な空気感だけで物語を引っ張っていく。 ラストでは何ひとつ解明されないまま唐突に終わりを迎え、ミステリーとして考えるのならば論外だが、思春期の漠然とした不安をSFという形を借りて描いた作品としてこれはそれ以外ないという〆だったと思う。 |
No.101 | 6点 | ユリゴコロ- 沼田まほかる | 2012/04/10 20:47 |
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平凡な家庭で育った男が突如、見舞われる不幸の連鎖。
そんな中、実家で偶然見つけた異様な手記。 前半、その手記を中心に物語は展開されるが、狂気と屈折した情愛の入り混じった内容は衝撃的でサスペンスにも満ち、強く引き付けれるものがあった。 ただ、現実に戻ってからの終盤の展開は予定調和であり、ミステリーとしての仕掛けも見え透いていてパワーダウンを感じたのは残念。 |
No.100 | 4点 | 死者を笞打て- 鮎川哲也 | 2012/04/10 01:30 |
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鮎川作品の中に実在の作家をモデルにした人たちが登場するパロディ作品だが、
作家たちが無駄にカッコイイのでリアリティに欠け、パロディとして面白味のない作品となってしまった。 事件自体も平凡で他の代表作のような切れは皆無。 |
No.99 | 8点 | 危険な童話- 土屋隆夫 | 2012/04/10 01:23 |
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社会派ミステリのような刑事の地道な捜査とそれとコントラストを成すように挿入される幻想的な童話。
これがやがてひとつに繋がり、謎が解ける瞬間がこの作品の白眉。 犯人の仕掛けたトリックについてはさほど見るべき点はないが、本格ミステリとしての構成の美しさにはため息がでる。 |
No.98 | 7点 | 獄門島- 横溝正史 | 2012/04/10 01:11 |
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本格ミステリとしての様々な仕掛けが魅力的である一方で指摘のある通り動機や見立て殺人の必然性には甘さを感じ、東西ミステリーベスト100の第1位は過大評価の感が強い。
とは言え、決して駄作というわけではなく、戦後復興期のミステリの中でも上位に位置する傑作であることは確かである。 |
No.97 | 6点 | 爬虫類館の殺人- カーター・ディクスン | 2012/04/09 13:07 |
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扉の内側からテープを貼り付けられた目張りの密室という設定が独創的で伏線の使い方も巧み。
ただ、トリック自体は単純な機械的トリックなので真相が分かった時の驚きには欠ける。 ストーリー自体も奇術師カップルの恋愛を軸に語られ、カーらしいケレンミに乏しく物足りない。 |