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まさむねさん
平均点: 5.89点 書評数: 1282件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.1182 7点 明智恭介の奔走- 今村昌弘 2024/08/29 23:34
 初の短編集。タイトルどおり、探偵役は神紅大学ミステリ愛好会会長の明智恭介。助手役として葉村譲が登場。剣崎比留子の出番はなし。シリーズの番外編という位置づけになるのでしょうが、本家(?)のシリーズ作品とは雰囲気が異なり、ユーモアにあふれています。これはこれで好印象。
 収録短編の中では「とある日常の謎について」が最も楽しかったですね。ある事実が判明した時点でニヤニヤ。そうか、それだったか。「泥酔肌着引き裂き事件」のバカすぎる謎の提示と、その謎を解かんとする明智と葉村のやり取りも楽しい。記憶なくし過ぎだけどね。

No.1181 7点 そして誰かがいなくなる- 下村敦史 2024/08/18 23:03
 ド直球の本格設定の中での終盤の展開。いいですねぇ。好きですよ。餌が分かり易いだけに、色々想定しながら読んだのですがねぇ…。複数の工夫にも感心。よく練られた作品だと思います。もっと多くの方に読まれていいかも。

No.1180 6点 アルファルファ作戦- 筒井康隆 2024/08/17 20:49
 ドタバタ不条理SF短編集と言ってしまっては一括りにし過ぎかな。盛り上げた割にラストは…といった短編が無いではないけれど、総じて楽しく、一部考えさせられながら読ませていただきました。特に会話部分が面白い。
 表題作に加え、人口爆発後の地球を描いた「人口九千九百億」、若返る薬を巡る騒動「一万二千粒の錠剤」が印象に残りますかね。個人的には「公共伏魔殿」の皮肉たっぷりな書きぶりも、昭和後半以降の時代を示唆しているようで良かったです。

No.1179 6点 お梅は呪いたい- 藤崎翔 2024/08/12 21:31
 戦国時代、呪いで大名一族を滅亡にまで追い込んだ日本人形「お梅」。五百年を経た令和の世に、その封印が解き放たれる…っていう設定のうえでの「お梅」が何とも素敵です。動いているところを、ちょっとだけ見てみたいです。
 呪おうとすればするほど幸せに繋がるという、ネタとしてはありがちではあるけれど、語り口もコミカルで可笑しいし、何気に「人生の転機って何だろうね」という、時代を超えた命題を問うているような気もします(いや問うてないか)。純粋に面白かったですね。続編もありそうなので、楽しみに待ちたいと思います。

No.1178 5点 退職刑事3- 都筑道夫 2024/08/06 23:32
 シリーズ第3弾。このシリーズは、安楽椅子探偵モノの国内代表格と言えると思うのですが、本作は前2作と比べると多少落ちるかな…という印象。真相について他の解釈も可能では?という短編もございましたし、全体的にこじつけ感が強めのような…。
 収録作の中では1作目の「大魔術の死体」がベスト。電話ボックス内に射殺死体が、でもボックスのガラスは無傷…という謎が魅力的(ちなみに近い将来「電話ボックス」も死語になるのかなぁ)。2作目の「仮面の死体」も好みだけれど、胆となる部分が1作目と被っている分、割引か。後半にダイイング・メッセージ系が固まっていることもあるし、短編の掲載順を少し変えてみると短編集全体の印象も変わるのかも。

No.1177 5点 放課後ミステリクラブ1 金魚の泳ぐプール事件- 知念実希人 2024/08/03 20:02
 2024年本屋大賞ノミネート作品。児童書として初めてのノミネートということで、気になっていました。
 体裁としては、文字大き目のフリガナ付き、挿絵もふんだんに挟んであって、まさに「児童書」。一方で、内容としては、シンプルながらも本格ミステリの要件を満たしていると思います。確かに「本格児童書ミステリ」と言えるのではないかな。あっという間に読めるので、試しに一読してみるのもいいかも。
 ちなみに、図書館予約の順番の関係で、夏休みのど真ん中に借りることになってしまいました。しかも親子で楽しむという訳でもなく、おじさん一人で読んでしまい、ちょっとした罪悪感。少年少女の皆さん、ごめんなさい。急いで返却します。

No.1176 5点 緋色の残響- 長岡弘樹 2024/07/30 23:19
 スマッシュ・ヒットとなった「傍聞き」に登場した、シングルマザー刑事と新聞記者志望の娘が主人公となる短編集。
 作者の作品の多くは、一つの蘊蓄ネタだけを拠り所にしながら人間ドラマに結びつけようとする結果、相当のこじつけ感や非現実感、人間ドラマと真逆の作り物感が残るんだよなぁ…というのが私の個人的な印象。本書の短編においても、そういった側面は多分にあるのだけれども、母と娘の関係性や娘の成長という側面がそのマイナスを補ってくれたような気がしますね。もとより、リーダビリティは高い作家さんですしね。

No.1175 7点 名探偵のままでいて- 小西マサテル 2024/07/27 11:29
 孫である小学校教師、楓が持ち込む謎を、元校長の祖父が解き明かす安楽椅子探偵系の連作短編。その祖父は「レビー小体型認知症」を患っていて、時に幻視などの症状も現れる。ここもポイント。
 一部ではあるのだけど、その事実でそこまで推理できるものか、推理の根拠も弱すぎるかなぁ…と思う箇所も。しかし全体としては、心憎い転換等の工夫や終盤の急加速などもあって好印象。会話も含めて読みやすく、ミステリ蘊蓄も楽しかったです。
 ちなみに、個人的には「岩田か四季か?」は蛇足っぽく感じたのだけれど、むしろこういう部分がある方がいいのかしら。

No.1174 6点 高山殺人行1/2の女- 島田荘司 2024/07/21 16:32
 作者曰く「トラベル・ミステリーというと、100パーセント鉄道を使う推理小説をさすのはなぜだろうといつも考える」、「車好きの僕は、以前からこのことが不満だった」…。なるほど。そこで車(ドライブ)を用いた作品が誕生したわけですね。確かに、疾走感はありました。
 一方、途中で事件の大枠に気付く方が多いような気がしますね。主人公の女性の行動にも大いに疑問を感じます。勿論、楽しく読ませてもらったのですがね。

No.1173 5点 浅草殺人案内- 中町信 2024/07/19 21:21
 細かな複数の謎の配置によりグイグイと読まされはしたのですが、作者の作品としては凡庸な部類。
 ちなみに、寿司屋を営む探偵役の母、タツのキャラは結構好きです(「浅草のミス・マーブル」と称されていることはどうかとも思うけど)。警部が二人を頼りすぎ(捜査の過程を話し過ぎ)ではとか、鴨川の件は警察がもっと丁寧に捜査してほしかったよねとか、こういった部分も含めて、ある意味楽しませていただきました。

No.1172 6点 蜂に魅かれた容疑者- 大倉崇裕 2024/07/13 08:00
 警視庁いきもの係シリーズ第2弾。今回は長編。
 薄圭子巡査と須藤友三警部補の絶妙な掛け合いが楽しい。薄の天然ボケもいいが、須藤の突っ込みもなかなかのもの。コンビの信頼関係?は確実に増していますね。
 前作に引き続きこういった雰囲気を楽しむのかな、と思っていたところ(もちろん楽しめるのだが)、終盤の急展開&急加速には結構驚かされました。気軽に楽しめる、読み得な作品。

No.1171 7点 向日葵を手折る- 彩坂美月 2024/07/06 16:42
 父親の急死に伴い母の実家に引っ越してきた少女・高橋みのりの、中学3年までの4年間を描く青春ミステリ。
 母の実家は山形の山間にある集落・桜沢。通う小学校は分校で、全校児童数わずか37人。そこで出会う同級生、西野隼人と藤崎怜との心のやり取りがなんとも言えない感傷を誘います。濃厚な自然や集落の描写と主人公たちの心の動きの組み合わせも見事です。季節の移り変わりも含めて美しい。
 ミステリとして特殊的な部分はないかもしれませんが、久方ぶりに良質な青春ミステリを読ませていただきました。

No.1170 6点 殺意の設計- 西村京太郎 2024/06/27 22:22
 前半は夫の浮気に疑念を持つ妻の視点。心理サスペンスの側面もあって、西村作品としては新鮮な印象も受けます。一転、後半は刑事の視点で、これはいかにも西村先生らしい展開。
 こういった構成も含め、面白く読ませてはいただいたのですが、犯人としては、あまりにも都合の良い手法というか、結構なリスクを負う手法を採っているのではないかという違和感は残りました。特に、井の頭公園、かな。

No.1169 5点 盗作・高校殺人事件- 辻真先 2024/06/23 19:14
 「スーパー&ポテト」シリーズ第2弾。密室等のトリックは肩透かし気味だけれど、メタ的要素は作者らしいと言えましょう。
 ちなみに、「作者は 被害者です/作者は 犯人です/作者は 探偵です」という謳い文句は、ちょっと盛りすぎかも。

No.1168 4点 なぜ、そのウイスキーが謎を招いたのか- 三沢陽一 2024/06/15 21:00
 仙台のバーを舞台とする短編集の第二弾。バーテンダーの安藤が馴染みの客の話を聞き、真相を解き明かすスタイル。ウイスキーが何らかの形で謎に絡んできます。謎自体やウイスキーの蘊蓄などは悪くないのですが…。気になる点を何点か。
 まず1点目。探偵役・安藤の推理の根拠が曖昧。単なる推測?
 2点目。真相がいくらなんでも無理筋ではないか。後半の短編になればなるほど顕著。最終話は犯人?の心理が全く理解できない。
 3点目。これが最もマイナスなのだけど、表現が大げさすぎる。何でも例えればいいというものではないだろう。しつこすぎるし、読んでいるこちら側が恥ずかしくなるレベル。ちょっと私とは合わないな。

No.1167 7点 ぼくらは回収しない- 真門浩平 2024/06/10 21:35
 5作品が収録された短編集。どの短編も無駄に長尺にせず極めて読みやすい流れの中、プロットに趣向を凝らしていて好印象。
 ベストは、お笑い芸人を扱った「カエル殺し」で、フーとホワイの二重奏。テーマも興味深い。第19回ミステリーズ!新人賞受賞作「ルナティック・レトリーバー」も良作。「ぼくらは回収しない」という短編集のタイトルがじんわりと響きます。

No.1166 5点 最後のディナー- 島田荘司 2024/06/07 21:13
 石岡ファン(と犬坊里美ファン)のための短編集と言ってよいのではないかな。スウェーデンにいる御手洗は、②と③に電話出演するのみです。
①里美上京:里美が横浜の女子大に転入してきた…という近況報告。ミステリ度はゼロ。
②大根奇聞:この短編集の中ではベスト。あくまでもこの短編集の中では。
③最後のディナー:読み物として悪くはないが…。でも、石岡の情けなさぶりは素敵すぎてグッとくる。

No.1165 7点 きこえる- 道尾秀介 2024/06/03 20:34
 各短編の結末に(時に冒頭や作中にも)ある二次元コードでYouTubeにアクセス。その音声…によって真相が…という趣向。臨場感も出て、この手法自体は面白いと思いましたね。もっと効果的な使い方もありそうだし、続編を期待したいところ。採点は短編ごとにマチマチだけれど、新鮮さと今後への期待を込めて加点。
①聞こえる:冒頭の短編なのに、分かりにくかったなぁ。
②にんげん玉:ふむふむ。いかにも作者らしい仕掛け。
③セミ:本作品中のベスト。ある意味で作者らしい内容と締め方。
④ハリガネムシ:むしろ「その後」が気になった。
⑤死者の耳:おっと。そういう使い方もアリだったか。

No.1164 7点 掲載禁止 撮影現場- 長江俊和 2024/05/29 23:09
 8編を収録した短編集。各編(文庫で)40ページ程度の文量で、序盤から終盤までグイグイ引っ張ってくれる引力があります。
 マイベストは「ルレの風に吹かれて」。なかなか言葉では表しにくい雰囲気を纏っていて、記憶に刻まれそうな一品。次点は悩ましいけれど「カガヤワタルの恋人」か。こういった基本的な手法の組み合わせ方(見せ方)は、個人的には好きです。
 切り上げてこの採点ということで。

No.1163 5点 木曜組曲- 恩田陸 2024/05/26 16:56
 小説家・重松時子が自宅の「うぐいす館」で薬物死してから、毎年その場に集い、宴を催す5名の関係者。全員女性で、物書きに関係する仕事に就いている。薬物死の際もこの5人は顔を揃えており、今回は死後4回目の集い。告発と告白を繰り返しながら、時子の死の謎に迫るが…
 心理ミステリとして典型的とも言える流れで、悪くはないのだけれども、ハラハラ感はあまりなく、何より物語に入り込みにくい面があったかな…というのが正直な感想。私の感性が鈍いだけかもしれないのですが。

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まさむねさん
ひとこと
ミステリとしての特別な知識なく乱読していますので、私の書評はあまりアテにしないでくださいね。
好きな作家
道尾秀介・東野圭吾・東川篤哉
採点傾向
平均点: 5.89点   採点数: 1282件
採点の多い作家(TOP10)
東野圭吾(58)
有栖川有栖(45)
東川篤哉(44)
森博嗣(37)
島田荘司(29)
道尾秀介(28)
伊坂幸太郎(26)
西村京太郎(24)
米澤穂信(23)
歌野晶午(21)