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[ 本格/新本格 ] 案山子の村の殺人 |
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楠谷佑 | 出版月: 2023年11月 | 平均: 7.00点 | 書評数: 7件 |
東京創元社 2023年11月 |
No.7 | 6点 | nukkam | 2024/07/03 11:58 |
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(ネタバレなしです) 2023年発表の本格派推理小説で、2度に渡って「読者への挑戦状」が挿入されるなど正統派のパズルミステリーです。文学性を求める読者にはお勧めしません。舞台を雪で閉ざされた村という古典的設定にしていますが通信手段は確保されていますし時代に取り残されたような描写もありません。村の地図は欲しかったですけど。主人公が従兄弟関係のコンビ推理小説家というのがエラリー・クイーンを連想させます。死体の周囲に犯人の足跡がないという不可能犯罪を扱っていますが、演出は地味でトリックも大掛かりなものではありません。サスペンスは乏しいし特別な何かというのも感じませんでしたが、ある前提のひっくり返し方は印象的でしたし論理重視の謎解き推理を楽しめました。 |
No.6 | 7点 | パメル | 2024/06/04 19:26 |
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コンビミステリ作家・楠谷佑として活動する宇月理久と篠周真舟は、土着信仰のある村の小説を構想していた。従兄弟同士で合作する彼らは大学の友人に誘われ、秩父の奥の宵待村へ取材旅行に出かける。訪れた宵待村は、至る所に案山子が設えられた、まさに案山子の村。その村で毒矢で射られる案山子に、忽然と姿を消す案山子。緊張が高まっていく中、ついに起きてしまう殺人事件。
特殊設定ミステリが流行している現代において、この作品は昔ながらの本格ミステリの趣があり、どこか懐かしさを感じさせてくれる。因習が残る地域ということもあり、横溝作品を連想させるが怪奇色は控えめ。あくまで作中の描写や、登場人物の言動など、些細な手掛かりを起点とした推理で楽しませてくれる。意外なロジックを存分に味わえる構成になっており、読者への挑戦状も二度挟まれている。 素人探偵として謎に直面し戸惑い、他者の秘密を知り、その事実と向き合い傷ついていくところが魅力的。それでも解かざるを得なかった者の悲哀と孤独を温める従兄弟同士のコンビ作家というバディ関係も絶妙で、爽やかな印象を残す。今後もこのコンビは続きそうなので楽しみである。 |
No.5 | 7点 | 虫暮部 | 2024/05/09 11:49 |
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紛れもない正統派で挑戦状を掲げる資格は充分。変にこじらせていないところが眩しい。
しかし一つツッコミ。あのトリックは、左右同時に動かさないと上手く働かないと思う。確実を期すなら両者をリンクさせる仕組みが必要では(仕組みが無いとは記述されていないけどね)。 |
No.4 | 7点 | まさむね | 2024/02/20 23:01 |
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従兄弟で合作推理小説を書いている大学生コンビが、秩父の山奥の村で遭遇した殺人事件。奇をてらわないクラシック・スタイルの本格モノで、好感を持たれる同志の方も多いと思います。登場人物の造詣も上手く、ストレスなく読み進められます。密室の謎は小粒かもしれませんが、ミスディレクションには感心。ぜひとも続編を書いてほしい。 |
No.3 | 7点 | 人並由真 | 2024/02/09 15:53 |
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(ネタバレなし)
2022年の初め。「僕」こと創桜大学の学生・宇月理久は、同い年の従兄弟、そして学友でもある篠倉真舟と合作し、高校時代からミステリ作家「楠谷佑」として商業出版で活躍していた。そんな二人は同じ大学の友人・秀月旅路の誘いで、彼の実家である秩父の「宵待村」にある温泉宿「宵待荘」に2月4日から8日まで投宿することにする。宵待村は秩父の山奥にあり、吊り橋のみで外界と繋がる、案山子製作で知られた場だ。そしてそんな山村で理久と真舟を待っていたのは、世にも不可解な<密室殺人>だった。 たまたま作中の物語の大筋と、ほぼ同じ日付で読んだ(笑)。こーゆーことも、タマにはあるもんである。 SRの会でのウワサで、クイーン(ロジック)、カー(密室殺人)、さらにクリスティーを思わせる趣向「あの(中略)の意味は?」まで全乗せというので楽しみにしていたが、さすがにもう著作も多い書き慣れた作者ゆえ、それなりに厚めの話をスラスラ読ませる。登場人物も紙幅に比例してちょっと多めだが、各キャラクターのくっきり感がかなり明快なので、読者的にもストーリーへの密着感がかなり高い。 トリックは昭和30年代の旧「宝石」の新人作家を思わせるようなもの(具体的に前例のあるものに類似とかじゃなく、センスの意味合いで)だったが、被害者を誘導するあたりの手際にからむロジックとかはなかなか面白かった。前述のクリスティーっぽいところもそこそこうまくいっているとは思うが、一番の得点部分はその辺の名探偵コンビの思考のありようだろう。 最後に明かされるホワイダニットの真相は思う所も多く、それこそ三大巨匠の一角にも通じて余韻も大きい。まああれこれ語るのは控えるが、ここも本作の勝負ポイントのひとつであったろう。 弱点……といえるか、気になったのは、結局は(中略)の件など、要はただの偶然? めいたものだったこととかな。まあミスディレクションの仕込みとしてアリか。作者もお約束を自嘲する余裕もあったみたいだし。 作中の随所で出て来るミステリのトリヴィアも楽しく、まずは良作。SRのベストで昨年の5位までには入らなくてもいいが、10位までには入ってほしい、そんな一冊。シリーズ化ももちろん希望。 |
No.2 | 8点 | HORNET | 2024/01/13 21:04 |
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合作推理作家の大学生コンビ・宇月理久と篠倉真舟は、取材旅行も兼ねて同級生の地元「宵待村」への帰省に同行することにした。宵待村は、別名「案山子の村」とも呼ばれるほど、町興しも兼ねて案山子が林立している村。だが2人が着く早々、村にある看板に毒の矢が射込まれ、ついに殺人事件が勃発する。現場はいわゆる雪の密室の様相を呈していた――。
定期的に読みたくなる、純粋な本格推理モノ。〈読者への挑戦状〉も挿入され、往年の本格ファンには堪らない一作では。 始めの謎として立ち現れた「雪の足跡」に関する真相はちょっとチープではあったが、犯人の動機、真相を絞り込むまでの過程、クローズド・サークルにふさわしい舞台演出など、本格推理欲に十分応えてくれた満足感。 堪能しました。 |
No.1 | 7点 | silver cloud | 2024/01/08 18:57 |
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案山子がある山の奥の村にしては地味すぎるんじゃないかと思うほど、地に足をつけたまま話が進む。
こういう書き方は嫌いではない。吹けばど飛ぶほど軽いミステリーが多い中、こういうミステリーもなければならないと思う。 ただ、地に足をつけているだけに、トリックがちょっとチップに感じられる。でもそこで終わるのではなく、後半の展開で楽しませる。 まあ、動機も個人的にはありだと思う。 有栖川有栖が好きなら読んでみても損はないと思う。 |