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まさむねさん
平均点: 5.86点 書評数: 1161件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.381 5点 山伏地蔵坊の放浪- 有栖川有栖 2013/04/24 22:25
 作者にとって比較的初期の短編集。ワン・トリックものの端正な短編が揃っており,個人的には好きなタイプですね。
 しかし,山伏のキャラが,その存在意義も含めて何とも中途半端。ちょっともったいない気がしましたね…ってことで1点減点かな。

No.380 6点 美人薄命- 深水黎一郎 2013/04/21 21:42
 進級のためのボランティアをせざるを得なくなった大学生「総司」と,片目の視力を失い,貧しい生活を送る老婆との温かい交流が物語の中心。老婆の過去のストーリーに総司の成長も相まって,青春物語としての良さもありましたね。
 で,読ませるのだけれども,どの辺りがミステリなのかなぁ…と気になりだした頃に,しっかりと用意されていました。
 切ないけれども,何か前向きになれる,そして考えさせられる,そんな作品ですね。

No.379 6点 黄色い水着の謎- 奥泉光 2013/04/18 23:46
 中編2本で構成されています。
 ミステリ的な側面だけで判断すれば,正直,特筆すべきものはございません。むしろ,あらら?といった感じ。
 しかし,ユーモアの観点では,個人的にど真ん中。端麗な文章で綴られる主人公クワコー准教授の心情といったら,笑えるというか泣けてくるというか…。心情描写は,自虐ネタの枠を超えて,実は人間の相当深いトコロを突いている印象すら受けます(笑)。現に,クワコーに対し,同情というよりも,共感を覚える局面も多々ありました(涙)。
 好きなんですよねぇ,こういうタッチの作品って。

No.378 8点 ナミヤ雑貨店の奇蹟- 東野圭吾 2013/04/13 16:12
 郵便口や牛乳箱を使い,様々な悩み相談に乗っている「ナミヤ雑貨店」を舞台とした,奇蹟と感動の物語。(タイトルそのままで,あまり紹介になってないか…)
 分類するとすればファンタジーってことになるのでしょう。個人的には好んで読む分野ではないのですが,この作品については,純粋に「読んでよかった」と感じましたね。リーダビリティーの高さ,全体の構成力…って東野サンだけに,言わずもがなでしょうか。とにかく巧いし,間口の広い方だなぁ…と改めて感じ入りました。
 登場人物のそれぞれの優しさに,プラス1点です。

No.377 6点 サファイア- 湊かなえ 2013/04/09 16:18
 7編からなる短編集。タイトルはすべて宝石の名が付されており,ラスト2編を除き,単独読み切りの短編となっています。
 唯一の連作となっているラスト2編は,ちょっと中途半端だったかな。一方,単独読見切りの5編は,個人的には結構好きなタイプ。特に以下の2作が好み。
「ムーンストーン」 
 ドロドロしそうな中での温かみが印象に残りそうですが,後半のちょっとした仕掛けの効果も大きいです。
「ルビー」
 予定調和と言うなかれ。こういう「ほっこり系」には弱いのです。

No.376 5点 ローカル線で行こう!- 真保裕一 2013/04/05 23:35
 「デパートへ行こう!」に続く,「~行こう!」シリーズ第2弾。今回の舞台は,宮城県にあるという赤字の三セク鉄道会社,その名も「もりはら鉄道」。平成19年に廃止となったくりはら田園鉄道(通称:くりでん)がモチーフになっているものと思われます。(終点に鉱山跡地がある点とか…)
 廃線もささやかれる「もりはら鉄道」の新社長に就任したのは,地元出身であり,新幹線のカリスマ・アテンダントであった独身女性(31歳)。副社長は,県庁から送り込まれた役人気質満点の同年代男性。立ちはだかる経営幹部や社員たち。それでも,社長の奮闘で社員や沿線地域が一体となる中,不穏な事件が続発し…という展開。
 ミステリー的な味付けも多少はありましたが,「味付け」と述べていいのかすら迷う程度のもの。あくまでもエンタメ小説として楽しむべきでしょう。真相のひとつは結構想像しやかったものの,「読み物」としてはそれなりに楽しめましたよ。

No.375 5点 白ゆき姫殺人事件- 湊かなえ 2013/03/31 12:46
 週刊誌記者に対する関係者の「証言」と巻末の「関連資料」で構成されている作品。
 ちなみに,「関連資料」には,事件に関するブログや週刊誌・新聞の記事が掲載されており,なんと全体ページ数の約3分の1を占めています。まぁ,資料全部を読まなくても一応小説として読み切れるのでしょうが,結局は読んでしまうのですねぇ。小説と資料を交互に読みたくなったりして,確かに読みにくい!とはいえ,なかなか面白い趣向ではありますね。
 内容としては,いかにも湊サンといったところ。ミステリ的にはちょっと肩透かし…かな?

No.374 6点 - 道尾秀介 2013/03/26 23:13
 少年達の冒険物語として見れば,なかなかの良作と思います。一方,ミステリ的な味付けは決して濃くなく,その部分を期待している方にとっては肩透かし感を抱くかもしれません。
 章建てになっていますが,前半は各章ごとに一応の謎と解決が用意されており,連作短編の体裁。後半はサスペンス的要素も加わって勢いを増していきます。
 主人公は,これまでの作者の作品に登場してきた少年の中で最も「少年らしい少年」で,その仲間たちを含めて,感情移入しやすかったですね。リーダビリティも高く,何とも言えない懐かしい心情・雰囲気を満喫しました。装丁も良いです。

No.373 6点 淋しい狩人- 宮部みゆき 2013/03/20 21:11
 東京の下町にある古本屋の店主,イワさんと“たった一人の不出来の孫”の稔が主役を務める連作短編。結構シビアな事件を噛ましつつも,人間的な温かな読後感を残す力量はさすがです。
 ちなみに,タイトルが地味すぎますねぇ。「古書店モノ」が売れている昨今,タイトルを変えて新装版を出せば売れるような気がしますが,新潮社さん,どうでしょう?

No.372 5点 笑うハーレキン- 道尾秀介 2013/03/19 00:05
 読売新聞に連載されていた新聞小説です。
 経営していた会社も家族も失い,今は「ホームレス家具職人」とでも言うべき生活を送る主人公。そこに謎の女・奈々恵が弟子入り志願してきて,さてさて…という展開です。
 人と人との絆だとか,人間への温かいまなざしだとか,その想いは伝わってきます。また,作者らしい伏線や反転も(期待ほどではなかったにせよ)忍ばせてあります。
 一方で,冗長に感じてしまった面も。また,後半の「棚修理」の流れは,唐突過ぎるし,個人的には「とって付けた感」が否めませんでした。
 道尾作品としては,正直「中の下」といった印象です。サービスしてこの点数でしょうか。

No.371 4点 PK- 伊坂幸太郎 2013/03/10 18:44
 3編からなる短編集。3話とも微妙(?)に繋がっているわけです。
 で,率直な感想としては,モヤモヤするし,なんだか小難しくし過ぎている感もあって,あまり面白くなかった…。
 いや,作者が敢えてやっている意図は分からないでもないのです。最終話「密使」自体も嫌いではないし…。でも何と言うのかなぁ…展開が迂遠で遅いからなのか「読み進めたい!」ってあんまり思わなかったなぁ…と。それと,作者の想いは分かるんだけれど,ちょっと「押し付けがましい」印象も。

No.370 7点 法月綸太郎の新冒険- 法月綸太郎 2013/03/03 23:27
 法月綸太郎シリーズの短編集です。ズバリ,高水準で面白い!特に下記の1と3が好み。
1「背信の交点」
 「法月さんがトラベル系?」と思わせておいての終盤の切れ味。作者本人も「会心作」と述べておられます。
2「世界の神秘を解く男」
 雰囲気は嫌いではないのですが,この作品集の中での印象は薄いかな?
3「身投げ女のブルース」
 いやはや,やられました。そう来ましたか…。
4「現場から生中継」
 さすがの反転ですが,この作品集の中での印象は薄いかな?
5「リターン・ザ・ギフト」
 正直フーは分かり易いものの,ラストのホワイが印象深かったなぁ。

No.369 6点 殺人鬼フジコの衝動- 真梨幸子 2013/03/03 22:30
 構成自体は,評価したいのです。最後の最後まで,練られています。一気読みさせてしまう魅力もあります。
 でも,相当な不快感。イヤな方々があまりにも多く登場しすぎて…。うーん,「イヤミス」ってのは,こういうことなのか?

No.368 5点 しあわせなミステリー- アンソロジー(出版社編) 2013/02/28 23:54
 タイトルからも想定しやすいと思いますが,「人の死なない」ミステリー集だそうです。ミステリー度は決して高くありません。作品ごとに感想を。
1 「BEE」伊坂幸太郎
 彼らしい「殺し屋」が登場する物語ですが,人は死にません。代わりにスズメバチが死にます(笑)。これってミステリーなのか?…という印象はありますが,軽快なタッチは健在。
2 「二百十日の風」中山七里
 読後感も良く,嫌いではないです。ただ,伏線を含めて全体的に分かりやす過ぎるかなぁ。
3 「心を掬う」柚月裕子
 個人的には初読の作家さん。登場人物が「いい人」揃いで読み心地は良かったですが,もうワンパンチ欲しい印象も。
4 「18番テーブルの幽霊」吉川英梨
 これも個人的に初読の作家さんの作品。展開もスピーディーだし,ミステリー的にもこのアンソロジーの中ではベストの印象。

No.367 4点 謎解きはディナーのあとで 3- 東川篤哉 2013/02/24 22:27
 人気シリーズの第三弾。
 軽快な本格ミステリとしてのいつもの持ち味は出ているのですが,ちょっと小粒でしたねぇ。また,犯人の行動として理に適っていないと思われる点(「殺人には自転車を~」でのカムフラージュ等)もあったりして,積極的にはオススメできません。
 ネタ切れ感についてはkanamoriさんと同意見です。この辺りが潮時のような気がしますね。

No.366 5点 味なしクッキー- 岸田るり子 2013/02/18 23:05
 6編から成る短編集。濃淡ありますが,ブラックな読後感を味わえます。
 読み応えという点では,プロットの妙が光る「味なしクッキー」と,連続反転の「パリの壁」がトップ2でしょうか。「愚かな決断」の一捻りと「生命の電話」の着目点もなかなか面白いです。
 一方,「決して忘れられない夜」と「父親はだれ?」の両作品は,ブラック度は別にして,ネタとしては分かりやす過ぎるかな?「ああ,やっぱり」っていう感想に集約されましたね。特に後者は,冒頭シーン(マウスの実験)がなかなかだっただけに,ちょっとだけ残念。

No.365 6点 覆面作家の夢の家- 北村薫 2013/02/16 21:20
 覆面作家シリーズ完結編。
 岡部兄の結婚という展開の早さに,冒頭から驚かされました(笑)。前作同様,会話シーンが実に楽しく,ラストも美しい。
 読み心地の良いシリーズだったし,3冊で完結してしまうのは惜しいなぁ。もうちょっと二人を見ていたかったのだけれど…。

No.364 6点 覆面作家の愛の歌- 北村薫 2013/02/16 21:09
 覆面作家シリーズ第2弾。
 登場人物の会話シーンが実に楽しい。全体的にサクサク読み進められるのも良いですね。ちなみに,表題作はこのシリーズ随一の本格色を醸し出しています。

No.363 5点 おれは非情勤- 東野圭吾 2013/02/10 23:41
 小学校を舞台にした,物凄くシンプルな短編集。それもそのはず。学研の「5年の学習」「6年の学習」(懐かしい!)に掲載された作品に加筆修正したものだそうです。
 ジュブナイルの評価というのはいつも迷うのですよねぇ。何を求めてこの作品を手にしたかで評価は大きく分かれますでしょうねぇ。私は頭の一部で楽しみながら,一部で肩透かし感を…って意味不明ですか?
 ちなみに,作者の作品の幅広さには感服いたします。裾野が広すぎます。

No.362 6点 陰の季節- 横山秀夫 2013/02/09 21:29
 D県警シリーズ第一作品…というよりも,作者にとっての第一作品集ですね。「警察小説」には違いないですが,刑事は登場せず,人事や監察,議会担当などの管理部門の人間が各短編の主役を務めます。
 「組織」を描かせるとホントに強いですよねぇ。各短編とも,謎の提示や終盤の転換が秀逸ですし,心理サスペンスという面でも楽しめます。その後の作者の活躍を十二分に予感させる作品集と言えましょう。
 ちなみに,登場人物の行動の中には「いくらなんでもそこまではしないだろう!」と突っ込みたくなるものもありますね。

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まさむねさん
ひとこと
ミステリとしての特別な知識なく乱読していますので、私の書評はあまりアテにしないでくださいね。
好きな作家
道尾秀介・東野圭吾・東川篤哉
採点傾向
平均点: 5.86点   採点数: 1161件
採点の多い作家(TOP10)
東野圭吾(56)
有栖川有栖(43)
東川篤哉(41)
森博嗣(37)
伊坂幸太郎(26)
道尾秀介(26)
島田荘司(23)
米澤穂信(22)
歌野晶午(21)
倉知淳(19)