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まさむねさん
平均点: 5.89点 書評数: 1282件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.502 7点 時鐘館の殺人- 今邑彩 2014/12/13 22:08
今邑さんの短編集の中でも,かなり高水準ではないでしょうか。
①「生ける屍の殺人」:いかにも今邑女史らしい作品。でもラストのホラー帰着が個人的にはどうにも微妙。
②「黒白の反転」:伏線や反転を含めて綺麗に纏められた良作。そこかしこに巧さを感じます。良作。
③「隣の殺人」:オチが読みやすすぎるため,逆に何かあるのか…とすら思わせる。でも思い過ごしでしたねぇ。凡作。
④「あの子はだあれ」:SF短編として良質。余韻を残す反転も見事。
⑤「恋人よ」:20ページ程度の分量の中でしっかりと雰囲気を作っています。最後の捻りも私は結構好き。
⑥:「時鐘館の殺人」凝ったプロットです。遊び心にも溢れています。文庫版ではノベルス版にはあった箇所を大幅に削除しているとのこと。理由の一つが「実在する作家の方々を揶揄するような表現が多々あることが気になったから」とのこと。気になるなぁ。

 ⑥・②がベスト2。④と⑤も好み。①は個人的には評価しにくいが,いかにも作者らしい。③のみ凡作か。

No.501 7点 月光ゲーム- 有栖川有栖 2014/12/07 22:13
 良くも悪くも「若い」です。
 人物が多すぎる…とか,動機が何とも…とか,ダイイング・メッセージはやり過ぎだろう…等々,気になる点は少なくありません。
 とは言え,読者挑戦モノとしての気概は天晴だし,やはり読んでいてワクワクしちゃいます。七色の変化球を操る投手も好きですが,やはり直球で押すルーキーの魅力には敵わない。内角に直球を投げ込めない投手は,結局変化球も活かせないものです。
 ってことで,思い入れも入りつつ,この点数。

No.500 5点 乱れからくり- 泡坂妻夫 2014/11/30 21:52
 泡坂ファンのみならすとも,「言わずもがな」な有名作品。ベスト100モノでは常連(?)といってよいでしょう。
 玩具を絡めた発想,それぞれのトリック,終盤での伏線の回収と転換,そして何よりも「騙し」へのこだわり…等々,自分なりに評価の高さの理由を理解しつつ,しかしながら,緊張感やスピード感は…とか,こういう設定(ネタバレを避けて詳細は書きませんが)だったら何でもアリでは…といった,おそらくは素人的であろう感想を持ったのも事実。初期作品なら,個人的にはアノ短編集の方が好み。
 勿論,楽しめたのですが,敢えてこの点数にしましょう。

No.499 5点 幻色江戸ごよみ- 宮部みゆき 2014/11/23 23:06
 「本所深川ふしぎ草紙」が結構楽しかったので手にした次第。
 勝手に「岡っ引きの茂七親分」が登場するシリーズものだと思い込んでいたので,純粋な短編集であることにちょっとびっくり。(私が勝手に思い込んでいただけで作者には何ら非はないのですが。)
 内容としては,人情&ホラーを重視した時代小説といったところか。「器量のぞみ」「庄助の夜着」「神無月」あたりが良かったかな。

No.498 7点 去年の冬、きみと別れ- 中村文則 2014/11/17 19:57
 芥川賞作家が描くミステリー作品。ミステリーとして「異色」とまで言えるかは別として,なるほど,確かに芥川賞作家らしい筆致で,登場人物の心情も含めて,緊張感に満ちた構成です。
 序盤からミステリーとしての「匂い」がプンプンと漂う展開で,あれこれ想定しながら読み進めざるを得なかったのですが,浅はかな想定を上回る終盤の展開は見事。登場人物たちの,それぞれの「狂気」が読後ににじみ出てきます。とある団体に関して,不発気味というか,ちょっと投げっぱなしになっていないか?との疑問もありますが(単に読みが甘いだけか?),個人的には「いつもと違う読書」を満喫できましたね。
 こういう系統の作品は,かなり好き嫌いが分かれると思うのですが,中編と呼んでもよいくらいの分量ですし,一読する価値はあると思います。

No.497 7点 魔球- 東野圭吾 2014/11/11 22:01
 作者の初期の長編作品。
 心に訴えかける結末です。「悲しい」という一言では言い表すことのできない余韻があります。野球部員の殺人事件のみならず,一見無関係にも見える他の事件を絡ませることで,ストーリーの厚みが格段に増しています。その事件の真相の一つとして明かされる,とある人物たちの墓前でのやりとり,そしてその両者の心情については,特に記憶に残りそうです。
 読者が犯人を論理的に特定できるような構成ではありませんが,作者の構成力,ストーリーテラーぶりが,当時から十分に発揮されていたことを認識できる作品と言えましょう。

No.496 5点 大癋見警部の事件簿- 深水黎一郎 2014/11/03 23:13
 メタミステリーとしてどう評価していいものやら。
 目次から拾ってみても、「ノックスの十戒、アリバイ、密室殺人、叙述トリック、レッドヘリング、ダイイング・メッセージ、ヴァン・ダインの二十則、後期クイーン問題、正確な死因、お茶会で特定の人物だけを毒殺する方法、二十一世紀本格、「見立て」の真相、バールストン先攻法にリドル・ストーリー、警察小説、歴史ミステリーおよびトラベルミステリー、さらには多重解決」…というように、ガンガンに詰め込んでいます。そのせいなのか、個々のネタについては、小ぶりの印象が否めません。
 気軽に読む分には良いと思うのですが、個人的には「天下一大五郎」センセの方が好みかな。

No.495 6点 本所深川ふしぎ草紙- 宮部みゆき 2014/11/03 21:38
 岡っ引きの茂七親分が活躍する,時代小説短編集。
 ミステリーというよりも,人情モノという側面が強いかな。「片葉の芦」「送り提灯」「落葉なしの椎」が良かったですね。弱いんですよねぇ,人情を前面に出されると。
 宮部さんの時代小説をもう少し読んでみようかな,という気にさせられましたね。

No.494 6点 迷いアルパカ拾いました- 似鳥鶏 2014/10/25 22:32
 「楓ヶ丘動物園」を舞台にした,動物園ミステリーシリーズ第3弾。
 文庫版で234ページという,長めの中編と言ってもよい分量。これまでの作品同様,「動物園」への深い理解が伝わってきました。サラサラと読みやすく,「犯人は?」って疑問を終盤まで持ち続けさせる辺りに作者の力量を感じます。

No.493 4点 アガサ・クリスティー賞殺人事件- 三沢陽一 2014/10/23 23:27
 「致死量未満の殺人」で第3回アガサ・クリスティー賞を受賞した作家による,受賞後第一作品。そしてこの表題作ときた。分かり易いですねぇ。
 さて,前作「致死量未満の殺人」は,文章力にやや難があり,派手さもなかったものの,プロット自体は極めて堅実で,むしろ好印象を抱きました。
 で,本作品は5編で構成される連作短編集。個人的には,前作での好印象に加え,「作家や評論家が実名で登場。さらに被害者は有栖川有栖」という謳い文句に惹かれて手にしたわけですが,実質的にその謳い文句が活かされるのは,最終話となる表題作にたどり着いてから。
 最終話までの4作品は東北の各地を舞台にしたもので,堅実とも言えるし,無難すぎるとも言える内容。決して嫌いではない部類(特に「柔らかな密室」は何気に好きなタイプ)なのですが,何と言いますか,表現も含めて「新しさ」は感じ得ないかなぁ…と。
 最終話については,相当な肩すかし感を抱きました。トリックも薄目だし,動機も強引すぎる。前4話の存在意義もよく分からず,連作短編集としてちぐはぐ。残念。
 それと,有栖川ファンの私にとっても,最終話での「有栖川押し」の強さにはちょっと引き気味になりましたねぇ。これも如何なものかなぁ…と。

No.492 6点 白い兎が逃げる- 有栖川有栖 2014/10/19 23:00
 私事ですが鳥取を訪問する予定があったため,敢えてこの日程に合わせて手にした次第。
 で,表題作。あれ?鳥取自体はあまり登場しないのね…ってのは自分勝手すぎるか。でも個人的に利用機会が多い(現に今回も利用した)関西空港も舞台だったから,まぁいいか。ちなみに,この空港を利用する機会の多い人間にとっては結構わかり易いトリックだったですかねぇ。中編の長さが必要だったのか,内容的にも疑問。
 表題作よりも,「不在の証明」と「地下室の処刑」の2短編をお薦めしたいかな。

No.491 5点 魔法使いと刑事たちの夏- 東川篤哉 2014/10/15 22:06
 魔法使い「マリィ」シリーズ第2弾。
 魔法の使いっぷりとしては,倒叙形式だからこそのギリギリのラインを守っているのですが,魔法使いという設定をミステリの構成に活かしきれているのかと問われれば,かなり疑問。マリィのキャラ自体は結構好きなのですがね。、
 内容自体としては,犯人の発覚理由にニヤリとさせられるものが多く,なかなか楽しめました。「魔法使いと妻に捧げる犯罪」の伏線にもニヤリ。大技はないですが,気軽に楽しみたい方にはよろしいのではないでしょうか。

No.490 4点 豆の上で眠る- 湊かなえ 2014/10/11 21:41
 終盤前までは,さてさて何が隠されているのか…とグイグイ読ませます。で,期待も高まったうえの終盤で急失速。実際の複数の事件を,不謹慎な表現と知りつつ敢えて書かせていただければ,「イイとこ取り」しているだけという気がします。でも現実的にはあり得ない。ネタバレを避けて敢えて多くは述べませんが,いくつもの点でもの凄く疑問が残ります。いやぁ,現実感がなさ過ぎますなぁ。

No.489 7点 ○○○○○○○○殺人事件- 早坂吝 2014/10/07 00:06
 第50回メフィスト賞受賞作品。
 冒頭にある「読者への挑戦状」において,メインは,犯人当てでも,トリック当てでも,動機当てでもなく,「タイトル当て」とありますが,正直,タイトル自体にとてつもない楽しみが隠されているわけではありません。そして,もの凄く品がない内容であります。下品極まりなし。毛嫌いする方も多いでしょう。
 でも,私は嫌いじゃないです。っていうか,結構好き。誤解の無いように申し述べれば,決してお下劣な表現が好きだということではなく,実は,伏線も含めてしっかりと練り込んでいるからであります。最大の大仕掛けについても,「馬鹿馬鹿しい!」と思いつつ,それは怒りには発展せず,何故か清々しさ(ちょっと誇張)すら感じさせます。
 皆様同様,前半の冗長さはもっと工夫の余地があると思いましたが,いろんな意味で次回作に注目せざるを得ない作家さんではあります。

No.488 7点 さよなら神様- 麻耶雄嵩 2014/10/04 23:10
 ミステリーランドの衝撃作「神様ゲーム」に続くシリーズ第2弾の連作短編集。
 読みどころは,第4話「バレンタイン昔語り」でしょうか。「ああ,コレかぁ…」と思わせつつの更なる仕掛けが見事。これも前半3作品があってのこと。最終話を含めて,全体構成はいかにも「麻耶作品」です。
 ちなみに,登場人物の名字は三重県内のJR関西本線&伊賀鉄道(作者の出身地ですね)の駅名から採用しています。こういった,いつもの麻耶さんの遊び心は結構好きです。

No.487 7点 民宿雪国- 樋口毅宏 2014/09/28 16:23
 老年になってから画壇デビューし,国民的画家となった「丹生雄武郎」。彼は,新潟の海辺の民宿の主でもあった。97歳の長寿を全うした彼の生涯について,生前に残した日記などを基に,あるライターが追っていく…。
 前半の,目新しさはないながらもトリッキーな展開に,まずは掴みとられました。中盤以降の,昭和史を絡めた怒涛の展開も凄い。過激さと繊細さが同居しています。「問題作」との書評もある意味頷けるのですが,単にこの3文字では言い表せない何かを感じます。

No.486 6点 インサート・コイン(ズ)- 詠坂雄二 2014/09/25 22:24
 すべてゲームをモチーフにした連作短編集。
 内容は措いておき,個人的にはスーパーマリオの考察(なぜキノコは動くのに,ファイヤーフラワーは動かないのか)に引き込まれましたね。ドラクエⅢの薀蓄(あれだけのデータ量であれだけの世界を構築していたという事実)にも驚かされました。改めてプレイしたくなったなぁ…。
 ミステリとは言い難い作品がほとんどなので(掲載順も仕掛けの一つなのでしょうが,私はソレをミステリには括らないので…),このサイトでの採点は控えめにしますが,ファミコン世代には,懐かしさ満載で楽しめるのではないかと思います。
 しかし,何かしらの「捻くれ」を配置する作者さんですねぇ。

No.485 6点 しらみつぶしの時計- 法月綸太郎 2014/09/23 13:24
 ノンシリーズの短編集。印象に残った作品について短評を。
①使用中
 こういう「密室」もイイ。本短編集中のベストかな。
②ダブル・プレイ
 交換殺人からの反転の妙が印象的。似たプロットを見たことがあるような気もしますが。
③しらみつぶしの時計
 「1分ずつ異なる時を表示する1440個の時計の中から,6時間以内に唯一正確な時計を探さなければならない」という命題への,解決までの過程が秀逸。オチは何とも微妙ですが,ランドルト環の使いっぷりを含めてむしろ印象に残りそう。

 その他の作品は,良く言えばバラエティに富んでおり,悪く言えば寄せ集め。その中でも印象深かったのは,都筑道夫氏の「退職刑事」シリーズのパスティーシュ「四色問題」かな。(ミステリとしては相当に期待外れながら,都筑氏への愛が感じられるなぁ…と。)
 総合的に,「法月綸太郎 」シリーズの短編集には及ばないですね。

No.484 5点 虚ろな十字架- 東野圭吾 2014/09/13 22:36
 学生時代から死刑制度について考えることがあり,その点では,なかなか興味深かったですね。
 一方で,ミステリーとしては何とも…。展開がわかり易いですし,意外性も…。
 登場人物ひとりひとりの人生ドラマとして,さらに,死刑制度を含めた刑罰のあり方を考える作品として捉えるべきでしょう。

No.483 5点 赤緑黒白- 森博嗣 2014/09/08 22:05
 Vシリーズの最終作品。
 この作品単体で読んだとしたら,何とも中途半端な印象を受けると思います。フーの捻りも分かり易いし,動機も常人には理解不能。
 一方で,S&Mシリーズを含めた森ワールド全体を見渡せば,極めて重要な「仕掛け」のヒントが,この作品のラストに示されています。(実は,自分の解釈が間違っていないかネタバレサイトで確認し,なるほど更にこんな仕掛けもあったのか…と改めて驚いたりしたのですが。)
 もはや単体のみでは真に楽しめないワールドを構築していて,ソレが良いことなのか否か…自分でもちょっとよく分からなくなっています。次の四季シリーズに手を付けるかどうか,しばらく悩むことになりそうです。

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まさむねさん
ひとこと
ミステリとしての特別な知識なく乱読していますので、私の書評はあまりアテにしないでくださいね。
好きな作家
道尾秀介・東野圭吾・東川篤哉
採点傾向
平均点: 5.89点   採点数: 1282件
採点の多い作家(TOP10)
東野圭吾(58)
有栖川有栖(45)
東川篤哉(44)
森博嗣(37)
島田荘司(29)
道尾秀介(28)
伊坂幸太郎(26)
西村京太郎(24)
米澤穂信(23)
歌野晶午(21)