皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
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E-BANKERさん |
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平均点: 6.01点 | 書評数: 1785件 |
No.245 | 8点 | 月の扉- 石持浅海 | 2010/05/28 23:52 |
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作者の第2長編作品。
発刊当時「このミス」でも上位にランクインした作品。久しぶりに再読。 「ハイジャックに遭った航空機の中という特殊な閉鎖空間」で起こる不可思議な事件・・・作者得意のプロットです。 個人的には、座間味くんが展開するロジックたっぷりの推理に一番感心しました。 特に、最後のドンデン返しに関する「動機」については賛否両論あるでしょうねぇ・・・石嶺某に心酔しているからこその動機なのですが、その辺読者にはあまり共感できるように書かれていないため、ちょっと唐突感はありました。 評価はちょっと甘めかもしれませんが、作者の長所がよく出た良作じゃないかと思います。 |
No.244 | 4点 | 十字架クロスワードの殺人- 柄刀一 | 2010/05/28 23:38 |
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天地龍之介シリーズ。
氏の作品は、とにかく「読みづらい」という風評を真に受け、いわば「食わず嫌い」という感じでしたが・・・ うーん。やっぱり、なんか合わないですねぇ・・・ 本作品もプロットとしてはなかなか魅力的だと思います。 離れた2つのクローズドサークルで起こる殺人事件・・・当然2つの事件の間には関連性があるのですが、どういう仕掛けになっているのか? 「見せ方」が下手なのかもしれませんし、真犯人にあまりにも意外性がなさすぎるのも致命的です。 「片腕を切断した理由」もイマイチ納得できません。 なんか批判的なことばかり書いてますが、「誉めるところ」がないのも悲しいかな事実です。 |
No.243 | 7点 | MIST- 池井戸潤 | 2010/05/28 23:25 |
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作者としては珍しく、割と普通のミステリー作品。
予想外に面白い作品でした。 山奥の村で、「切り裂きジャック」を思わせる猟奇的連続殺人事件が発生、村で唯一の警察官である駐在が意外な真犯人に挑みます。 主人公を筆頭に、話の視点が次々と変わっていくので、普通はちょっと落ち着かない感じになりがちですが、本作品ではその辺りあまり気にならず、逆にスピード感を付け、緊張感を高める効果を生んでいます。 ラストの急展開もきれいに嵌まっていて、もっと高評価でもいいのですが、途中、榊氏(登場人物の1人)に関するサブストーリー等が結局中途半端になってしまったことなどを差し引いて、この評点となりました。 |
No.242 | 6点 | 誰彼- 法月綸太郎 | 2010/05/23 19:00 |
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法月綸太郎シリーズ。
久しぶりに再読してみましたが、初読時は他の書評と同じく、仮説の連続で訳が分からないまま終わったような印象でしたねぇ・・・ ただ、今回再読してみると、その辺はそんなに気になりませんでした。(2回目だからでしょうか) 要は、「なぜ首を切ったのか」という理由付けの問題について、新事実が発覚するたびに「あーでもない、こーでもない」と推理し、結局は落ち着くべく所に落ち着いたという感じですね。 ただ、いくら兄弟だからといって、誰も見間違えないほど似てますかねぇ・・・いわゆる「入れ替わり」トリックについて、本作品はかなり乱暴な扱いじゃないかと思います。 現代なら「DNA鑑定」なんていう問題もありますし・・・ |
No.241 | 5点 | 佐渡伝説殺人事件- 内田康夫 | 2010/05/23 18:49 |
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浅見光彦シリーズの初期作品。
連続殺人事件の「動機」解明に主軸が置かれています。 ストーリーやプロットは実に内田作品らしい展開・・・ 2つの殺人事件が全く別の場所(東京と佐渡島)で起こりますが、被害者同士につながりが見え、2人の周りを洗っているうちに、過去のある事件が浮かび上がる・・・よくある展開です。 「リアリティ」という意味では、これほどその言葉を具現化している作家もいないかもしれません。 いい意味でも、悪い意味でも・・・ |
No.240 | 7点 | 人形村の殺人- 篠田秀幸 | 2010/05/23 18:37 |
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弥生原公彦探偵譚の第3弾。
本シリーズは、「過去の実在の未解決事件+現在の事件」という体裁をとっていますが、本作品は、有名な「狭山事件」(作中では『笹山事件』)の解明に加え、現在の不可能状況に彩られた連続殺人事件の解決に挑んでいます。 「狭山事件」の解明は、これまでの研究者の受け売りに作者の考えを若干加えた・・・という感じですが、なかなかの迫力で、本筋であるはずの現代の事件よりもよっぽど面白く読めます。 一方、現代の連続殺人は、いわゆる「足跡のない殺人」トリックですが、不可能状況を煽った割には陳腐な解決だなぁーというレベルで残念です。 ということで、全体的にはこの程度の評価ですが、作品の雰囲気や重厚感という意味では、作者の中で1,2を争う作品かもしれません。 |
No.239 | 6点 | 死者のノック- ジョン・ディクスン・カー | 2010/05/16 17:19 |
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フェル博士の探偵譚。
実在の推理作家コリンズ幻の作品「死者のノック」を真似た犯人が密室殺人を企てるという内容。 「密室」という言葉に惹かれて本作品読んでしまうと、ガッカリすること請け合いです。 ごく単純な錯誤を利用したトリックですし、実はあまり殺人事件の本筋には関係ありません。 今回、フェル博士はあまり出番がなく、ラストで真犯人の指摘をするのが唯一の見せ場。 本作品は、むしろフーダニットとして割合よくできているので、フェル博士がきっちり伏線を回収して真犯人を指摘してくれるのがいいですね。 その点ではまあまあ評価できる作品かもしれません。 ただ、地味ですね・・・ |
No.238 | 5点 | ガラス張りの誘拐- 歌野晶午 | 2010/05/16 17:05 |
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ノン・シリーズで作者初期の誘拐物。
うーん、あまり感心しませんでしたねぇ・・・ 「なぜ、身代金の引渡しをあろうことか警官警備による衆人環視の中でやるのか?」というのが本作品のメインプロットとなるのですが、その理由が今ひとつ納得できません。 それと、人物描写がイマイチのせいか、ストーリー自体の緊張感にも欠けていて、誘拐物独特のサスペンス感も特に感じません。 プロットとして魅力的な気はするので、書きようによっては結構面白い話になったんじゃないかなぁと思うと、ちょっと残念な気が・・・ |
No.237 | 5点 | そして扉が閉ざされた- 岡嶋二人 | 2010/05/09 17:31 |
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作者の代表作の1つと言っていいでしょう。
密閉空間に閉じ込められた事件関係者4名が、3か月前の事件の真相に迫ります。 プロット自体は特に捻りがなく、読者には解決のための材料が事前には与えられないため、とにかく読み進めていくしかありません。 正直、シェルターから何とかして脱出しようとする「くだり」は事件に何ら関係がないので、最小限にとどめてもいいのになぁ・・・と感じます。 ラストももうひと捻り欲しいですねぇ・・・(欲張り?) |
No.236 | 5点 | 天に昇った男- 島田荘司 | 2010/05/09 17:16 |
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「秋好事件」からの一種のスピンオフ作品。
島田イズムともいえる、「冤罪事件」と「死刑廃止論」をベースに、ミステリーというよりはファンタジー作品でしょう。 冒頭の死刑執行シーンは、他作品でも割合目にするシーンですが、作者の筆力差のせいか、十分にリアリティ・迫力を感じさせます。 「本当にそんなことってあるの?」と思わせますが、ラストシーンでは一応オチが付くようになっています。だからこそ、途中の話が浮いてしまって、意味のないものを読まされた感がどうしても残ってしまいます。(夢オチと一緒ですね) |
No.235 | 9点 | 告白- 湊かなえ | 2010/05/09 17:03 |
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第6回本屋大賞受賞の作者デビュー作。
「冠」に違わぬ文章力とプロットが光ります。 他の書評者の方は第1章を絶賛されているようですが・・・個人的には、第2章から展開される事件関係者視点のストーリーが本作品の”深さ”を醸し出しているような気がします。 本作品では「父親」という存在が徹底的に無視されていますねぇ・・・ 「母子」の歪んだ愛情の中から起こってしまった殺人事件。確かに、子供にとって母親というのは唯一無二の存在なのでしょうけど、じゃ父親って何?と(父親でもある)私は思ってしまいました。 ラストは救いがないですねぇ。迫力はありますけど・・・ |
No.234 | 7点 | ザ・ジョーカー - 大沢在昌 | 2010/05/09 16:47 |
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殺人も引き受ける便利屋「ジョーカー」を主人公とした連作短編集。
何となく、現代版「必殺仕事人」といった雰囲気も感じます。 ①「ジョーカーの当惑」:出張マッサージ業界の裏事情についても知ることができます。 ②「雨とジョーカー」:「新宿鮫」にも登場した改造銃作りの名手「木津」と肩を並べる男が登場。 ③「ジョーカーの後悔」:一人の少女を媒介として、最後はちょっとしたいい話でオチがつきます。 ④「ジョーカーの伝説」:本作品のベスト。昔の恋人が実は・・・という展開。ラストはハードボイルドしています。 他2編の全6編。 それほど重くなく、読みやすさを追求した作品集という感じでしょうか。 |
No.233 | 7点 | 倒錯の帰結- 折原一 | 2010/05/05 13:52 |
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「倒錯」シリーズの完結編。
本作品は「首吊り島」と「監禁者」という2作品が背中合わせになっており、2作で1作という凝った作りになっています。 いや、評判悪いですねぇ・・・ どの書評をみても、まさに「批判一色」という感じです。 確かに批判する方の気持ちはよく分かります。「首吊り島」であれだけ魅力的な謎の提示をされて、もう一歩というところで「監禁者」へ・・・そこで解決されるかと思いきや、なにやら訳の分からない展開になり、そのままラストへ・・・ 数々の?に収束をつけないまま、たいへん都合のいいエンディングになってます。 まぁ、そういう批判を理解しつつ、あえて今回はこの評点としています。 何しろ、山本安雄と清水真弓と大沢芳男が出てきて、これだけ縦横無尽に(作品中で)暴れてくれれば、本望というものです。(折原好き以外には分からない感覚かもしれませんが・・・) |
No.232 | 6点 | チャイナ蜜柑の秘密- エラリイ・クイーン | 2010/05/05 13:41 |
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国名シリーズの第8作目。
シリーズ中でもかなり「異色」の作品という評判です。 本作品のテーマは有名な「あべこべ殺人」。 殺人が行われた部屋の中で、なぜか被害者は服をあべこべに着せられ、家具などもあべこべの向きにされています。 問題は、当然「なぜ真犯人はあべこべにする必要があったのか?」というところになるのですが、これは私の頭や価値観では理解不能でした。 そもそも、この時代の「中国」という国に対する見方や、欧米の生活習慣?が分かってないと、これを見破るのは無理でしょう。 密室についても説明はあるんですが、正直理解できませんし、エラリーがあれだけ拘った「タンジールオレンジ」についても、「それはないでしょう!」という解決法でした。 本作を当時NYタイムズ紙が激賞したそうですから、欧米社会にとってはたいへん分かりやすい作品なのかもしれません。 |
No.231 | 6点 | 栄光一途- 雫井脩介 | 2010/05/05 13:27 |
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作者の処女長編作品。
日本の柔道界とドーピング問題をベースに、主人公が事件に巻き込まれていくという展開。 まずは、作品の設定・舞台そのものが珍しいことや、筆致もデビュー作とは思えないほど達者なため、グイグイ読み進めていけます。 中盤は若干モタモタするんですが、終盤は一気呵成にドンデン返しの連続・・・というふうに解説でも書かれていますが、ただ個人的には最後のオチはいらなかったですねぇ・・・ なんか最後にきて、救いのない話になってしまったような気がします。 主人公の篠子は柔道界を去り、次作「白銀を踏み荒らせ」では何とアルペンスキー種目に転進します。(なんか無理あるような気がしますけど・・・) |
No.230 | 7点 | イニシエーションラブ- 乾くるみ | 2010/05/05 13:15 |
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「叙述トリック」で評判の作品。
今回あえて予備知識ゼロで読了しました。(本当に) 普通に読み終えてしまうと、80年代を舞台にした切ないラブ・ストーリーそのものですから、「どこがミステリー?」と思うしかなかったんですが・・・ というわけで、今回だけは2度読みする前に「解説サイト」を閲覧することに・・・ 「なるほどね」・・・多分ほとんどの読者はそういう感想になるんじゃないでしょうか。 でも、これは80年代という時代に思い入れがないと楽しめないかもしれませんねぇ。 あと、個人的には繭子の行動には若干納得できないところもありますけど・・・2人に同じ○○○を付けるなんて! |
No.229 | 4点 | 凶区の爪- 竹本健治 | 2010/04/30 21:32 |
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囲碁の天才、牧場智久を探偵役としたシリーズの一作。
辺鄙な田舎の村で強大な権力と富を握っている一族、そしてその一族には美人3姉妹や行方不明になった叔父、そして大昔の陰惨な伝説が残る・・・という設定はまるで横溝の「獄門島」を思い起こさせます。 本書の「謎」の中心は、なぜ昔の伝説になぞらえて殺人を行ったのかという、いわゆる「見立て」の意味を問うものなのですが、そこが何とも曖昧というか納得できない感じです。 真犯人についても、意外性はありますが、そもそも一族との関係について、読者に全く材料を与えられてないため、「なんで?」という感想しか持ちませんでした。 ちょっと「狙いすぎ」ですかねぇ・・・ |
No.228 | 7点 | 陰の季節- 横山秀夫 | 2010/04/30 21:23 |
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D県警を舞台とした連作短編集。
粒ぞろいの作品集といっていいでしょう。 ①「陰の季節」: 警務課二渡警視が主人公。二渡は他の3作にも登場する本書のキーパーソンです。本作は、元刑事部長が天下り先を辞めない理由について、思わぬラストが控えています。 ②「地の声」: 監察課新堂警視が主人公。ラストの捻りが効いていてなかなか考えさせられます。 ③「黒い線」: 婦人警官にスポットライトが当てられます。女性から見ればこういうのは許せないのでしょうね。 ④「鞄」: 秘書課柘植警部が主人公。組織の中で勝ち上がる厳しさに慄然とさせられます。 普通の「警察小説」は現場の捜査官(刑事とか)を主人公として事件の解決を追っていくのに対して、本書は警察内部の抗争や組織の中の争いを扱っている点が大きく異なっており、そういう意味で「今までなかった警察小説」というべきなのかもしれません。(解説の北上氏も触れてますが・・・) |
No.227 | 5点 | 現金強奪計画―ダービーを狙え- 西村京太郎 | 2010/04/30 21:06 |
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スピード感のあるクライムノベル。
1人の青年を主人公に、7人の若者が日本ダービー売上金の強奪に挑みます。 綿密な作戦により、現金強奪計画が成功したかと思いきや、「そうは問屋が卸さない」とでも言うべき展開に・・・ 背景には70年代という時代性を引きずっている部分が見え、この時期の氏の作品らしさが窺えます。 ただ、「暗い」作品ではなく、ラストはまるで映画のワンシーンのような感じ・・・(ちょっと安易ですが) 蛇足ですが、氏の作品としては珍しいくらい「夜の営み」シーンが多いのも本書の特徴でしょうか。 |
No.226 | 7点 | 銀行仕置人- 池井戸潤 | 2010/04/26 23:16 |
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なにやら、故藤田まこと主演の時代劇のようなタイトルですが・・・
作品の内容としては、主人公の銀行員が銀行の上層部に嵌められ左遷→→内部に味方を得て上層部の悪事をあばき、見事に仇を討つ・・・という展開。 作者の長編によくあるパターンです。 本作は、銀行内部の専門的な用語や職務内容に触れている部分が比較的多いため、一般の読者にはやや分かりくい所があるかもしれません。 ただ、プロットとしては銀行版の「勧善懲悪痛快娯楽作品」なので、肩の凝らない読みやすい作品に仕上がっているとは思います。 しかし、銀行って「ドロドロ」したところですね・・・氏の作品を読むとつくづく感じてしまいます。 |