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E-BANKERさん
平均点: 6.01点 書評数: 1812件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.352 6点 サムソンの犯罪- 鮎川哲也 2010/11/07 17:49
三番館シリーズの第2短編集(創元文庫版)。
前作に続いて、弁護士に雇われた私立探偵の「わたし」が三番館のバーテンダーの的確な助言を得て、事件を解決します。
①「中国屏風」=ちょっと違った角度で見たら、不可能が可能になる。言われてみると簡単なことですけど・・・
②「割れた電球」=これも発想の転換が見事。
③「菊香る」=双子登場でトリックはやはり双子絡みですが・・・たいしたことはありません。
④「屍衣を着たドンファン」=これも本シリーズ典型的な内容。あまり印象に残らない・・・
⑤「走れ俊平」=新宿通りをストリーキングした理由は? この謎がロジカルに明かされるところがいい。
⑥「分身」=珍しく殺人事件以外の内容。けっこう面白くて好き。
⑦「サムソンの犯罪」=短編らしい逆転の発想。
以上7編。
秀作が多かった前作に比べると、若干レベルダウンした印象。さすがにここまでワンパターンが続くと、読む方もちょっと変化球的作品が欲しくなる・・・

No.351 5点 ふたたび渚に- 西村寿行 2010/11/07 17:32
前作「遠い渚」に続いて、関守充介を主人公に据えた「渚」シリーズ。
作者の十八番といえば「ハード&ロマン」というわけで、今回もそれを見事に踏襲、主人公・関守が単身で巨大な悪に立ち向かい、様々な妨害に逢いながらもラストは悪を殲滅させます。
もちろん、お得意の「○○シーン」もサービス満点・・・その点でも十分満足させてもらえます。
確かにワンパターンと言えばワンパターンなんですけど、それが作者の魅力であって、これがないと「やっぱり寿行じゃない!」となるのがスゴイところです。
まさに行間から「男臭さ」が漂ってくるような作品。(まぁ、読者を選ぶでしょうけど・・・)

No.350 8点 龍臥亭事件- 島田荘司 2010/11/03 23:32
350冊目の書評はこの作品で。
御手洗潔シリーズというよりは、情けない中年の象徴「石岡」覚醒&再生の物語・・・
まず最初から「何で光文社ノベルズで石岡が?」という初歩的な疑問を持ちながら読み進めていきますが、最後の最後で「あの人が○○だったのか!」という(ファンにとっては)驚きの真相が披露され、島田氏の「企み」に唸らされる結果に!
作者あとがきでも触れてますが、本作はいわゆる「コード型ミステリー」と島田流日本の昭和史の融合を狙った作品ということで、それを十分に感じるほどのエネルギーとクドさを十二分に堪能できるでしょう。
「見立て」の必然性の問題とか、いかにも島田流の大掛かりなトリックについては、そのクオリティ云々を含めて、今回はあまり気になりませんでした。
「津山三十人殺し」や、それを生んだ日本の風土・風習など、その正誤や是非はともかく、読み手に考えさせずにはいられない圧倒的なスケール感にはやはり脱帽するしかないような気がしますね。(当然、好き嫌い・合う合わない、はあるでしょうが・・・)
今回、久々にこの超長編を再読して改めて思いました。「島田ファン以外がこれを読破するのは相当キツイ」と!
何しろ、上下刊で千ページ強。これでもかと続く殺人事件のオンパレード! こんな作品書ける作家は他にいないでしょうねぇ。それを含めての評価。

No.349 7点 ポアロのクリスマス- アガサ・クリスティー 2010/11/03 23:07
ポワロ物の佳作。
時期的にはちょっと早いですが、中味もあまりクリスマスを意識した内容ではありません。
本作、「館」に集まった大家族や怪しげな使用人、ゲストも登場という具合にいわゆる「コード型ミステリー」の要素満載ですが、そこは”いかにもクリスティー!”というストーリー&プロットを十分に感じさせてくれます。
正直、前半~中盤まではやや平板で盛り上がりに欠けるような気がしたところへ、ラストで意外な真犯人が指摘されます。
既視感のある「意外さ」なのは確かですが、見せ方がうまいですね。簡単に騙されてしまいました。
「外から施錠された密室(?)」というのも理由付けを含めてなかなか面白いと思います。

No.348 5点 交換殺人には向かない夜- 東川篤哉 2010/10/30 22:49
烏賊川市シリーズの第4長編。
鵜飼&戸村の迷コンビ(今回は別々ですが)を軸に、相変わらずドタバタ&ギャグのオンパレードでありながら、最後にはしっかり締めるといった展開。
今回は「交換殺人」をキーワードに3つの場面が交互に語られますが、ここにミスリードが用意されています。
途中まではなかなか事件も起こらずもどかしい展開ですし、事件発生のあとも、読者にはあまり材料が与えられず進行・・・しますが、ある人物に関する「仕掛け」が判明してさらに??
というわけで、割合トリッキーな作品だと思いますが、ちょっと平板な感じが拭えない気が・・・
「ミスリード」についても結構唐突だと思いますし、なんか全体的にうまく嵌っていないというか、背中がムズムズするような読後感(うまく表現できてないですが)・・・
個人的にはあまり感心しないですね。

No.347 6点 嘘をもうひとつだけ- 東野圭吾 2010/10/30 22:36
加賀刑事物の短編集。
個人的には、久々に東野作品を読了しました。
①「嘘をもうひとつだけ」=まずはタイトルが秀逸。たった1つの違和感から真犯人を追い詰める加賀刑事・・・素敵です。
②「冷たい灼熱」=個人的には本作中ベスト。社会問題にもなった事件をうまく処理してますね。
③「第二の希望」=ラストでの加賀の台詞『それが・・・あなたの第二希望ですか』が見事!
④「狂った計算」=真相はやや意外。想定内だけど。
⑤「友の助言」=この中では一番落ちるかな?
以上5編。
すべての作品で真犯人はほぼ特定されており、「ハウダニット」に特化した展開。
どれも高いクオリティで「さすが!」と唸らされますが、突き抜けるほどの読後感ではないという感じ。

No.346 5点 ローマ帽子の秘密- エラリイ・クイーン 2010/10/30 22:24
国名シリーズ第1弾にして、名探偵E.クイーンが誕生した記念すべき作品。
戦時中とはいえ、行間に古き良きアメリカの香りを感じさせ、「劇場」での殺人という設定が作品の舞台効果を高めているような気がします。
ただ、後年の作品と比べると、クオリティの面で格段に落ちるなという印象。
本作は「帽子(=シルクハット)がなぜ消えたか?」という謎にほぼすべてが費やされており、それはそれで明快なロジックと言えなくもないのですが、それだけで自動的に真犯人が決まるという解法にはやはり違和感を感じてしまう・・・
ラストの解決場面でも触れていますが、エラリー自身、中盤部分ですでに真犯人を特定していたとのこと・・・であれば、その他の捜査場面は何だったのか?
その辺り、あまりにも一発勝負すぎて、どうしても「それだけ!」という読後感になってしまいました。
それにしても、警視は息子(エラリー)を褒めすぎ!

No.345 8点 高層の死角- 森村誠一 2010/10/27 23:46
作者の「本格物」代表作。
今読んでも「古さ」を感じさせないところが見事!
超高層ホテルでの堅牢な密室と、東京-福岡間の鉄壁のアリバイという2つの大きな謎に熱血刑事が怯むことなく立ち向かいます。
密室トリックについては、途中で割りとあっさり解決してしまいますが、問題はアリバイトリックの方。真犯人が仕掛けた二重三重の「欺瞞」の壁を刑事たちが1つ1つ壊していく展開は、読者を飽きさせることなく解決まで導きます。
航空機のアリバイトリック自体は後年同種のものが多数出ていますから、正直それほどのサプライズはないのですが、ホテルのチェックインの仕組みを巧みに利用したアリバイトリックは賞賛に値します。(作者の経験の成せる技でしょう)
とにかく、時代を超越し、一読に値する名作という評価で間違いないと思います。
ラストが割りとあっさりしているところと、「動機」にちょっと違和感を感じる(そこまでするか?)のがやや残念!

No.344 5点 月光ゲーム- 有栖川有栖 2010/10/27 23:28
作者のデビュー作にして、学生アリスシリーズの第1弾。
今さらですが、久々に再読しました。
クローズドサークルでの連続殺人やダイイングメッセージ、さらには本シリーズには付き物の「読者への挑戦」など、ミステリーマニアの心をくすぐる材料が揃ってはいますが・・・
いかんせん”若い”ですし、詰め込みすぎて消化不良気味。
容疑者が総勢10名超(江神や推理研メンバー除く)というのもどうかと思いますし(しかも名前が覚えにくい)、ダイイングメッセージは写真付けてまで必要かなぁ?というレベル。
あとは、皆さんご指摘のとおり「動機」ですよねぇ・・・まぁ納得はいかないですね。
とまぁ、かなり辛口の評価になってしまいましたが、次作「孤島パズル」では見事にロジックの効いた名作を出しているわけですから、まぁこれはこれでよしとしましょう。

No.343 4点 高山殺人行1/2の女- 島田荘司 2010/10/27 23:17
光文社の分数シリーズとしては、唯一吉敷刑事(当時)が登場しない作品。
ジャンル的には本格物ではなく、サスペンスですね。
作者のあとがきにもありますが、トラベルミステリー=鉄道という暗黙の了解を打ち破るべく、「ドライブミステリー」なるものに挑戦したのが本書とのことです。
ただ、サスペンスとしてもやや陳腐な内容で、主人公の女性が勝手に怯えているという印象が強く残るだけになってます。
ドライブ途中で起こる数々の不可解な現象が、一応ラストですべて説明付けられていますが、あまり感心はしませんね。
というわけで、ちょっと”やっつけ感”の残る小品という評価に落ち着いてしまいます。
車マニアの作者らしく、そっち方面の薀蓄が出てくるところだけが良かった。

No.342 7点 退職刑事1- 都筑道夫 2010/10/24 00:31
作者の代表的シリーズ第1集。
退職した元刑事の父親が息子(警視庁刑事)の話を聞くだけで事件を解決するという完全アームチェア・ディテクティブ物。
①「写真うつりのよい女」=”なぜ被害者が男物のパンツをはいて死んでいたか”という1つの謎。ここから見事なロジックが展開されます。
②「妻妾同居」=個人的には本作でベスト。これも逆転の発想ですよね。まさに「アッ!」と言わされました。
③「狂い小町」=見事なロジック。ちょっと強引かなぁ・・・とも思いますが。
④「ジャケット背広スーツ」=これも短編らしい切れ味。魅力的な謎。父親の推理というか想像力がスゴイですね。
⑤「昨日の敵」=②に通じるプロット。
⑥「理想的犯人像」=父親が語る「容疑者が犯人ではないというロジック」が見事。真犯人は結構強引に当て嵌めた感じ。(短編だし、しょうがないかな)
⑦「壜づめの密室」=面白いんですが、ボトルシップについてのくだりは動機がよく理解できませんでした。(そんなことするかな?)
以上、全7編。
どれも「さすが」というべき粒ぞろいの作品集でしょう。
本編以外にも、作者のあとがきや法月氏の解説も一読の価値十分です。

No.341 5点 黄金番組殺人事件- 西村京太郎 2010/10/24 00:16
私立探偵左門字進シリーズ。
タイトル名は”ゴールデン・アワー殺人事件”。
本シリーズといえば「誘拐物」というわけで、毎回意外なプロットで楽しませてくれますが、今回は民放テレビ局の看板番組の出演者5名が収録中に忽然と消え、誘拐事件に発展・・・という設定。
誘拐方法も犯人像も謎のまま事件は進み、期待感は膨らみますが、他の佳作ほどの捻りはなく、ラストもやや平板な感じは否めません。その分どうしても評価は辛めに・・・
ただ、本作の白眉は当時(70年代後半?)の芸能人が何と実名で登場すること!(和田アキコや西条秀樹、なんと森繁久弥までも。許可取ってるの?)
しかも、和田アキコに至っては左門字に調査の依頼までしちゃいます。
さすが大物です。

No.340 6点 シャーロック・ホームズの回想- アーサー・コナン・ドイル 2010/10/24 00:03
「シャーロック・ホームズの冒険」に続く第2作品集。
新潮文庫版題名は「シャーロック・ホームズの思い出」となっています。
①「白銀号事件」=有名作。人は死んでいるが、いわゆる殺人事件ではないというパターン。ホームズ物らしい作品。
②「黄いろい顔」=結局、ホームズが解決する前に一件落着してしまいます。
③「株式仲買人」=プロット的には「赤毛連盟」に通じるもの。作者はこのパターン好きみたいですね。
④「グロリア・スコット号事件」=探偵ホームズが手掛けた最初の事件という位置づけ。(もちろん「緋色の研究」よりも前です)
⑤「マスグレーブ家の儀式」=これもホームズが私立探偵事務所開業後すぐの事件。ストーリーそのものはパッとせず。
⑥「背の曲がった男」=密室っぽい部屋で殺人が起こり、窓の下に妙な動物の足跡が残る・・・という魅力的な設定ですが、真相はそれほどでもない。
⑦「海軍条約文書事件」=機密書類紛失の謎を扱った内容。割合まとまっていて面白い。
⑧「最後の事件」=好敵手モリアテイ教授が登場。最後は活劇風にスイス山中の谷底へ・・・急すぎる!
他2編の全10編。
前作(「冒険」)の質の高さに比べれば明らかに落ちるし、短編らしい切れ味を感じない作品が多いことは確かです。
ただ、時代性を考慮すれば、作者やホームズの偉大さを否定するほどではないかと・・・

No.339 5点 黄金を抱いて翔べ- 高村薫 2010/10/17 22:39
直木賞作家でもある作者のデビュー作にして、かつ日本推理サスペンス大賞受賞作。
銀行の地下に眠る「黄金」を狙う犯罪者グループが主役のコンゲーム的(?)・ミステリー。
ただ、ストーリーの3分の2は犯罪の「準備段階」に費やされ、特に幸田と北川を中心としたメンバー1人1人の背景やキャラクターを独特の筆致で浮かび上がらせています。
そのため、よくいえば「重厚でディテールに拘った作品」と言えますが、逆に「どうも読みにくい」印象が強く残り、同種のミステリーには欠かせない「スピード」や「疾走感」というものからは真逆の印象になってしまいます。
まぁ、これは「好み」の問題なので、どっちが優れているというべきものではないのですが、個人的に言えば、後者の読後感が強く残った作品になってしまいました。
ラスト、実際の強盗シーンが何か付け足しみたいになっているのも「勿体無い」と思います。

No.338 7点 亜愛一郎の逃亡- 泡坂妻夫 2010/10/17 22:26
憎めない迷(?)探偵、亜愛一郎シリーズのラストを飾る作品集第3弾。
①「赤島砂上」=裸体主義者の団体ということは、愛一郎も真っ裸だったということでしょうか?
②「球形の楽園」=短編ではよくお目にかかる趣向、トリック。やや安易すぎる気が・・・
③「歯痛の思い出」=ストーリーとしてかなり面白い。ギャグを織り交ぜたつまらない描写にも「こんな意味があったのか!」と思わされます。
④「双頭の蛸」=正直、トリックの仕組みがよく分かりませんでした。ただ、登場人物のやり取りは秀逸。
⑤「飯鉢山山腹」=トリックそのものは面白いけど、かなり偶然性に頼った無茶な計画のような印象。
⑥「赤の賛歌」=真相の看破は割合容易。作者らしい作品。
⑦「火事酒屋」=ロジックが鮮やかな一作。短編らしい切れ味が光ります。
⑧「亜愛一郎の逃亡」=シリーズの締めくくり。ついに愛一郎と三角形顔の老婦人の正体が明かされます。
以上8編。
作者らしい「稚気あふれた」作品が多く好感が持てますが、前2作以上に”お笑い系”要素が強く、ロジックやトリックという面ではややネタ切れを感じさせます。
個人的な好みでいえば、やはり、「狼狽」>「転倒」>「逃亡」という順番になっちゃいますね。

No.337 4点 疑惑- 折原一 2010/10/14 21:24
長期間続いている「・・・者」シリーズからスピンオフした作品集。
①「偶然」=オレオレ詐欺ネタ。仕掛けはあっさりしたもの。軽~い作品。
②「放火魔」=よくある趣向。若干ひっくり返されますが、サプライズはほんの少し。
③「危険な乗客」=新宿発「ムーンライトえちご」の進行に合わせて2人の乗客の秘密があらわに・・・たいしたことはありません。
④「交換殺人計画」=これもちょっと中途半端かな
⑤「津村泰造の優雅な生活」=ラストは若干のサプライズとややブラックな読後感が残りました。
他ボーナストラック1篇の全6編。
他の書評で、「クドイ!」と書いている折原作品ですが、短編になると「クドサ」は消えましたが、逆に物足りない感じが・・・
これこそファン心理でしょうか? まさに”ないものねだり”かもしれません。

No.336 5点 さらわれたい女- 歌野晶午 2010/10/14 21:14
初期のノンシリーズ。
文庫版解説の法月氏によれば、「葉桜~」に代表される現在の作風につながる出発点の作品ということらしいです。
世間で「誘拐もの」は玉石混交、いろいろな作品がありますが、レベル的にいえば決して高いとは思えません。
何より、いくら似ているとはいえ、ほんとに見間違うかなぁ・・・というのが大きな疑問です。そこがあっさり片付けられてるところは、納得性を下げてしまいます。
プロットそのものは、まあよくできていると思いますし、見せ方の問題だとすれば、ちょっと勿体無い気はしますね。
ラストも既視感たっぷりですが、法月氏のおっしゃるとおり、まさに作者のステップアップの第一歩というべき作品なのかもしれません。

No.335 7点 看守眼- 横山秀夫 2010/10/14 21:03
さまざまな職業に従事する人間の矜持を描いた短編集。
相変わらず高レベルの作品が並びます。
①「看守眼」=刑事になりたかった男(退職した看守)の執念? 1つの物事を継続することの大切さを教えられます。
②「自伝」=展開がやや安易な気がする。
③「口癖」=他人より優位に立ちたいという主人公の心理・・・何となく分かる気がします。(悲しき小市民ですね)
④「午前五時の侵入者」=分かるなぁ・・・保身的な上司ってこういう反応をするんですよねぇ・・・
⑤「静かな家」=作者得意のマスコミネタ。自分のミスを隠したい気持ち・・・よく分かります。
⑥「秘書課の男」=女よりも男の”妬み”の方が嫌らしく感じてしまいますが、気持ちはよく分かる!
以上6編。
組織に生きる人間を描いた作品が多くて、どうしても自分の姿と重ねて読んでしまいます。
ただ、作品の質的には他の佳作よりは落ちる印象。

No.334 7点 白い僧院の殺人- カーター・ディクスン 2010/10/11 00:31
H・M卿が活躍するカーター・ディクスン名義の有名作。
今さら言うまでもありませんが、「足跡なき殺人」のバイブル的作品です。
本作は「足跡なき殺人」(雪密室)の真相(トリックとは言いづらい)についての、H・M卿の推理に尽きるといっていいでしょう。
確かに見事なロジックで、特に「犬」の存在に係る心理トリックが効いてます。これこそ、本格ミステリーの醍醐味だと痛感させられますね。
ただ、カーの特徴なのか、訳のマズさなのか分かりませんが(多分両方でしょうが)、読みながら『一体、今どういう場面なのかピンとこない』ことの連続・・・
登場人物もモーリスとベネットを除いては、キャラクターがはっきりせず、ストーリーが頭になかなか入らない・・・
というわけで、この程度の評価。

No.333 9点 殺しの双曲線- 西村京太郎 2010/10/11 00:14
ゾロ目(333番目)の書評は、個人的に氏の最高傑作間違いなしの本作で!
初期の本格ミステリーで、特に探偵役は登場しません。
冒頭で「双子トリック」の使用を堂々と宣言しながらも、中盤以降さらに読者を二重三重に欺くという最高レベルの「仕掛け」が炸裂します。
①なぜ、東京の街中で双子の兄弟が引き起こす連続強盗事件とクローズドサークルでの連続殺人が交互に語られるのか、②なぜ、名作「そして誰もいなくなった」を模倣しながらも、相違点も読者へ明らかにしているのか、その他魅力的な謎が目白押し、伏線も見事だと思います。
それでいて、無駄な部分は極力削ぎ落とされており、冗長なところは一切ないのも西村流本格ミステリー・・・
この頃は、印象的かつ画期的なプロットが光る作品をつぎつぎに生み出しており、やっぱり「並みの作家ではない」ことを十二分に感じさせられます。

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ひとこと
好きな作家
島田荘司、折原一、池井戸潤などなど
採点傾向
平均点: 6.01点   採点数: 1812件
採点の多い作家(TOP10)
島田荘司(72)
折原一(54)
西村京太郎(43)
アガサ・クリスティー(38)
池井戸潤(35)
森博嗣(33)
エラリイ・クイーン(31)
東野圭吾(31)
伊坂幸太郎(30)
大沢在昌(27)