皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
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E-BANKERさん |
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平均点: 6.01点 | 書評数: 1812件 |
No.592 | 5点 | 材木座の殺人- 鮎川哲也 | 2011/11/28 22:23 |
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銀座のとあるビルにあるというBAR「三番館」を舞台とするシリーズ4作目。
今回も、肥満の弁護士=名無しの私立探偵=「三番館」の達磨大使のようなバーテン、の三者がそれぞれ活躍(?)。 ①「棄てられた男」=雪国のとあるペンションに集められた「いわく付き」の男女と、彼らを脅すために招待した男。そして、脅迫者の男が殺された! って書くと、何だか魅力的なプロットのように見えますが・・・なんともあっさりしたオチと真相。 ②「人を呑む家」=以前、住人が忽然と消えた「家」。そしてまた新しい住人が忽然と消えた! って書くと、何だか魅力的なプロットのように見えますが、非常にあっさりしたというか、子供だましのようなトリック。こんなトリックに引っ掛かるなよなぁ・・・ ③「同期の桜」=同じ会社で働く女性を殺害した容疑者として挙がったのは、「同期の桜」3名。それぞれアリバイがあるのだが、探偵の捜査&三番館のバーテンの推理により意外な犯人が判明。 ④「青嵐荘事件」=金満家で「青嵐荘」の主人である男が毒殺される事件が発生。鍵になるのは、死亡推定時刻と容疑者(=青嵐荘の住人たち)のアリバイ。よく「推理クイズ」なんかで出てくるようなプロット&レベル。 ⑤「停電にご注意」=これも主題は「アリバイトリック」だが、かなり強引なトリック。この写真のトリックって、相当使い古されたやつだと思っていたが、まさかこんなに堂々と使われていたとは・・・「三番館」のバーテン推理後に再度事件が起こるというのが、珍しいパターンの作品。 ⑥「材木座の殺人」=鎌倉在住だった鮎川氏らしく、鎌倉~三浦半島の名所めぐりをした後に事件が発生。これもアリバイトリックが主題だが、ラストはあっさり。 以上6編。 よく言えば「偉大なるマンネリズム」、悪く言えば「いつものワンパターン」。 ただ、いつもは『事件発生の顛末』⇒『名無しの私立探偵の捜査』⇒『三番館のバーテンの推理』という3部構成だったのが、探偵の捜査をほとんど省略して、すぐにバーテンが推理して解決というものが数編ある。 プロットもまさに「ワンアイデア」の一発勝負ばかりで、こうなるとかなり味気ない気もしてくる。 シリーズものの宿命とはいえますが、やっぱり回を重ねるごとにクオリティが落ちてくるのが仕方ないのかなぁ・・・? (特にお勧めはなし。敢えて言えば⑤) |
No.591 | 5点 | コンピュータの熱い罠- 岡嶋二人 | 2011/11/23 20:56 |
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1986年発表のノン・シリーズ長編。
タイトルからして、岡島(井上)氏らしく、コンピュータに題材をとった作品。 ~相性診断によって男女を引き合わせるコンピュータ結婚相談所。オペレーターの夏村絵里子は、恋人の名前を登録車リストに見つけて愕然とする。「何かがおかしい・・・」。彼のデータを見直し、不審を抱いた彼女を正体不明の悪意が捕らえる。相次いで身辺で起こる殺人事件は増殖する恐怖の始まりでしかなかった!~ まとまりのいい作品。 プロットとしては、それほどオリジナリティを感じないし、ストーリーの進行に従い、徐々に明らかになる「事件の背景」というやつがちょっと薄っぺらい感はある。 真犯人もねぇ・・・ちょっと「いかにも」すぎるかな? 最近でも、サイバーテロ等がマスコミを騒がせていますが、本作が発表された約25年前には、こういったコンピュータのセキュリティやハッキングといった話題は、まだまだ一般的ではなかったはず。 そういう意味では、実に先見性のある作品ということは言えそうです。 見せ方もさすがです。 まぁ、トータルでは水準級という評価。 (結局、本筋の殺人事件とコンピュータ絡みの謎があまり有機的につながってない気がするが・・・) |
No.590 | 8点 | 妖魔の森の家- ジョン・ディクスン・カー | 2011/11/23 20:54 |
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創元文庫版のカー短編集。
短編になっても「カーはカー」とでも言いたくなる作品が並んでる。 ①「妖魔の森の家」=20年前に発生した森の家からの幼児消失事件。そして、20年後の今再び、同じ人物が同じ家で消え失せる ・・・H.M卿が解明した真相は現実的なもの。ただ、H.Mも「アレ」を持ったのなら、少なくとも「変だな?」くらいは思うんじゃないかなぁ?? ②「軽率だった夜盗」=これは、カーター・ディクスン名義で発表した長編「仮面荘の惨劇」の元ネタ。なかなか小気味いいトリックなので、むしろ短編の方が合う感じ。こちらは、フェル博士が探偵役になっている。 ③「ある密室」=カーお得意の密室もの。トリック自体は、カーが分類してみせた「密室トリック」の中の代表例のようなやつ。ただ、かなり強引で、犯人側にはリスキーなものに見えるのが難。 ④「赤いカツラの手がかり」=これはちょっと毛色の変わった作品。真夜中、素っ裸で殺害された女性の謎。要は、「なぜ素っ裸なのか?」が事件の鍵になるわけですが・・・日本人にはちょっと分かりづらいかな? ⑤「第三の銃弾」=この作品は中編と言うべき分量。これは、まさにカーそのものっていう作品で面白い。「密室トリック」はさすがに考えられてる。今回は、窓は密閉されていないが、目撃者の目が光っていたという、いわゆる「準密室」。密室トリックに3発の銃弾の取り違えや犯人側の錯誤(?)も交えていて、なんともまとまりのある作品になっている。お勧め。 以上5編。 これは評判に違わない作品集。 短編だけに、余計な寄り道もなく、ストレートにトリックや仕掛けを味わうことができる。 「密室」はトリック云々もいいが、やはり「なぜ密室にしたか?」や「なぜ密室になってしまったのか?」というポイントをどれだけ読者に納得させられるかが「いい作品」の分かれ道。本作はそういう点でも「お手本」でしょう。 (やはり⑤がベスト。①~④もどれも楽しめる) |
No.589 | 6点 | 魔術はささやく- 宮部みゆき | 2011/11/23 20:51 |
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第2回日本推理サスペンス大賞受賞作。
作者のストーリーテリングの鮮やかさが窺える作品。 ~それぞれは社会面のありふれた記事だった。1人目はマンションの屋上から飛び降りた。2人目は地下鉄に飛び込んだ。そして、3人目はタクシーの前に。何びとたりとも相互の関連など想像し得べくもなく仕組まれた3つの死。さらに魔の手は4人目に伸びていた。だが、逮捕されたタクシー運転手の甥・守は知らず知らずのうち事件の真相に迫っていたのだったが・・・~ さすがに読ませるなぁーという感想。 序盤から中盤は、いわゆる「ミッシング・リンク」テーマで、被害者たちのつながりが何なのかという謎を追うのが主題。 被害者をつなぐ「リンク」が判明した後半以降は、守と「魔術師」との対決が主軸に・・・というのが大まかな展開。 守の周りに魅力的な人物を配して、徐々に読者の心を煽っていくやり方がにくい。 ただ、「謎解きもの」としての魅力はやはり弱いかなという感じ。 (もちろん、これが作者の作風なのですが・・・) 「サブリミナル効果」やら、守の「技術」に関する部分も、ネタの1つとしてはいいが、どれも中途半端。 ラストもちょっとインパクトは弱いかなぁ。 例の老人も、結局「いい人」なのか「邪悪な人」なのかの書き分けがうまくいってない気がする。 実は、宮部女史の作品は今回初読(!)だったわけなのですが、やっぱり個人的には合わない作風のようです。 (うまいのは間違いないけどね) |
No.588 | 6点 | 災厄の紳士- D・M・ディヴァイン | 2011/11/19 14:27 |
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1971年発表、作者の第10長編。
「本格ミステリーベスト10(2010年度)」第1位(!)作品。 ~ネヴィル・リチャードソンは、見た目は美男子だが根っからの怠け者。ジゴロ稼業で何とか糊口を凌いでいたところ、さる筋からうまい話が転がりこんできた。今回の標的は、婚約者に捨てられたばかりの財産家の娘・アルマ。我儘でかつ気の強いアルマに手を焼くが、共犯者の的確な指示により、計画は順調に進んでいた。彼は夢にも思わなかった・・・とんでもない災難がわが身に降りかかることを・・・~ 「うまい」が、ちょっとインパクトには欠けるという読後感。 ディヴァインというと、家族や職場といった限られた人間関係の中で発生した事件を、卓越した心理描写で読ませる・・・というイメージですが、本作もまさにその通り。 主要な視点人物であるサラを通して、登場人物の造形が鮮やかに浮かび上がります。 ただ、他作品に比べると、落ちるなという印象は拭えない。 特に、フーダニットについては、確かに意外なのだが、何となく「ディヴァインのパターン」というものがあって、本作の真犯人もそのパターンに当てはまっているのだ。 ミスリードもあからさま過ぎるのが玉に瑕。 ということで、世間的な評判ほどではないかなという評価ですねぇ。 (ジョンはちょっと可哀そうだね・・・) |
No.587 | 6点 | 猿島館の殺人~モンキー・パズル~- 折原一 | 2011/11/19 14:26 |
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「鬼面村の殺人」に続く黒星警部シリーズの長編2作目。
黒星と虹子のコンビが、パロディに次ぐパロディに彩られた事件に挑む! ~東京湾の孤島・猿島で、ひっそりと暮らす猿谷家の人々。その館にフリーライターの葉山虹子が迷い込んだ。ところが主人の藤吉郎が、密室の書斎で不可解な死を遂げるや、次々と起こる変死事件。現場の状況が示す犯人は、なんと『猿』! 折しも、脱獄犯を追ってきた黒星警部と虹子が推理をするが・・・~ 久し振りに再読したけど、いやぁなかなかの「怪作」って感じです。 よく言えば「遊びごころたっぷり」ですけど、逆にいえば「悪ふざけ」。 それでも、途中まではまずまずの面白さ。 「モルグ街の怪事件」(当然「猿」つながりね)と「Yの悲劇」を思いっきりパロってるとはいえ、デビュー作「七つの棺」で思いっきりパロデイ作品を連発した作者ですから、これくらいならむしろかわいい方。 ただねぇ・・・真相は相当脱力感がある。 なんだ、この「動機」と「密室トリック」は!! (折原ファン以外なら、怒り出すレベルかも・・・) というわけで、遊びこころを理解できる方にしかお勧めできません。 「どくしゃへの挑戦」のヤツもなぁ・・・ (小学生が、○○を△△とを間違えないだろ!) |
No.586 | 5点 | 儚い羊たちの祝宴- 米澤穂信 | 2011/11/19 14:24 |
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ブラック風味の濃い作品が並ぶ連作短編集。
夢想家のお嬢様たちが集う読書サークル「バベルの会」が各作品を緩やかに繋げてます。 ①「身内に不幸がありまして」=最後の一撃に唸らされる・・・という趣向。確かに「動機」は相当ブラックだね。 ②「北の館の罪人」=この中では地味だが、なかなか味わい深い一作。離れの館に幽閉された男が、使用人の女性に次々と頼む買い物の品々の謎。ラストの衝撃はそれほどでもないが、割合好み。 ③「山荘秘聞」=ストーリーの進行とともに寒気がしてくるような作品。仕掛けがあからさまなので、逆のラストを予想してましたが、真相はやっぱりブラックに・・・この女は怖い! ④「玉野五十鈴の誉れ」=ストーリーの途中に引用されることば『初めチョロチョロ、なかパッパッ、・・・』がラストに効いてくる・・・確かに切れ味のいい作品。 ⑤「儚い羊たちの晩餐」=何だ、その「アミルスタン羊」って? もしや?・・・あらゆる食材を使いすぎる料理人の謎と「バベルの会」の謎がシンクロし、ラストへ・・・ 以上5編。 作者の独特の世界観が滲み出てます。 ①~⑤とも、主人と使用人とを軸にしたある種異様な主従関係を背景に事件が発生し、ブラックな結末へという流れ。 最近、こういう手の作品も多いので、目新しさには乏しいとはいえ、作者のストーリーテリングの巧みさは感じられた。 ただ、折角「連作」形式にしたのなら、もう少し全体通しての「仕掛け」が欲しかったなあというのが不満点。 (③がベストかな。④はそれほどでもない) |
No.585 | 7点 | 高い窓- レイモンド・チャンドラー | 2011/11/13 20:10 |
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フィリップ・マーロウ登場作の長編3作目。
名作と名高い「さらば愛しき女よ」に続く1942発表の作品。 ~パサデナの裕福な未亡人の依頼は、盗まれた家宝の古金貨を取り戻して欲しいというものだった。夫人は息子の嫁を疑っていたが、マーロウは家庭にはそれだけではない謎があるのを感じとっていた。傲慢な夫人と生活力のない息子、黒メガネの謎の男。やがて事件の関係者が次々と殺されていき、マーロウの前には事件の意外な様相と過去の出来事が浮かび上がってくる・・・~ 実に堪えられない作品。 「これぞチャンドラー、これぞマーロウ」・・・というのが率直な読後感。 今回、マーロウが巻き込まれるのは、紹介文のとおり、古金貨の盗難に端を発する事件なのですが、捜査を進めるごとに、正体不明の人物が登場し、事件がどんどん広がっていくという展開。 ついには、連続殺人事件に発展してしまう。 残り頁が少なくなってきて、どうやって収束させるのか?と思ってましたが・・・ マーロウの推理はなかなか鮮やか。頻発した事件の1つ1つをきれいに結び付け、味わい深く解決してしまいます。 そういう意味では、本作は単なるハードボイルドではなく、ミステリーとしての謎解きも楽しめるのがいい。 人物の造形も相変わらず見事。特に、マールですかね。 (昔の事件の真相は分かったうえでの、老婦人への忠誠だったのでしょうか?) いずれにしても、チャンドラーのハードボイルドをたっぷりと楽しめる良作という評価。 |
No.584 | 7点 | 密室の鎮魂歌- 岸田るり子 | 2011/11/13 20:09 |
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第14回鮎川哲也賞受賞作。
作者の実父は、インターフェロン等の研究で有名な医学博士、岸田綱太郎氏とのこと。(だから?) ~世界的に成功したある女流画家の個展会場で、『汝、レクイエムを聴け』という作品を見た女性が、悲鳴を上げて失神した。失踪した自分の夫の居場所をこの画家が知っているに違いない、というのが彼女の不可解な主張だった。しかし、画家と失踪した男に接点はなかった。5年前の失踪事件は謎に満ちていた。そして5年後、再び事件の現場だった家で事件が起こる。今度は密室殺人事件。さらに密室殺人は続く。問題の絵に隠された驚くべき真実とは何か?~ デビュー作としては衝撃的な内容ではないでしょうか? (もちろん、アラはいろいろあるにしても) まずは、密室トリックが云々というよりは、作品のプロットが新人離れしていると感じた。 5年前の失踪事件と、現在の連続密室殺人が有機的に結びついていて、伏線の張り方もなかなか見事。 いかにも女流作家らしい細やかな心理描写や、醜い女性同士の争いなど、特に終盤はたたみ込むように迫ってきます。 「絵画」が事件の「カギ」になる、という趣向は先行例がいろいろありますが、本作では「紋章」の件ではなく、絵画製作自体の秘密という趣向が面白かった。 (で、ここからは不満点なわけですが・・・) まずは「密室」。3番目(イタ飯屋のヤツ)はともかく、2番目もちょっといただけない。真相解明ではアッサリ説明しているが、現実的に可能かというとかなり怪しい気がする。4番目は問題外。最初のヤツが1番マトモ(=現実的)。 あと、動機につながる肝の部分(2人の○の関係)。あれほど嫉妬深い妻がそれをほっとくかねぇ? それを全く知らなかったという設定はちょっと首肯し難い。 もう1つ言うなら、最初の登場人物表。「あまりにも少なすぎるだろ!」。フーダニットに対する読者の興味を引っ張るためにも、もう少し人物増やせなかったかなぁ?(これは無理か・・・) 中盤以降は犯人がほぼ自動的に分かってしまった。 などと不満点を述べましたが、トータルでは本格ファンなら、とにかく1度読んでみるべしという感想ですね。 (鮎川賞の受賞作家はレベル高い) |
No.583 | 6点 | 猫丸先輩の推測- 倉知淳 | 2011/11/13 20:07 |
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大人気(?)の猫丸先輩シリーズの作品集。
相変わらず神出鬼没! 揉め事のあるところに、この人ありって感じで、「サラッ」と事件を「推測」します。 ①「夜届く」=もちろん「夜歩く」のもじり。差出人も目的も不明の電報が夜何度も届けられる・・・という謎。この真相は「うーん・・・」。わざわざ作品にして活字にする意味があるのだろうか? ②「桜の森の七分咲きの下」=元ネタは坂口安吾の某作。花見の場所取りをしている新入社員に対し、次々とやってくる珍客の謎。まぁ、こういうプロットは、ホームズ作品の時代からの短編の典型っていう気がする。 ③「失踪当時の肉球は」=元ネタはヒラリー・ウォーの某作。いなくなった飼い猫の調査依頼に纏わる謎。なんてことない話なのだが、逆説的な真相がなかなか面白い作品。割と好きだね。 ④「たわしと真夏とスパイ」=元ネタは天藤真の某作。露店が並ぶ商店街のセール会場で次々と巻き起こる「小事件」の謎。これも同様。真相は脱力感さえ感じるしようもなさ、なのに何となく「へぇー」と思わされるうまさがある。 ⑤「カラスの動物園」=元ネタはテネシー・ウィリアムスの某作(知らなかった)。平日の動物園内で突如発生した引ったくり事件と、逃走中に消えた現金の謎。プロットは面白いが、ちょっと陳腐かな? ⑥「クリスマスの猫丸」=元ネタはもちろん「クリスマスのフロスト」。これは、何かボーナストラックのような作品。クリスマスイブに1人で過ごす男性の悲哀を感じる作品。(猫丸先輩には関係ありませんが・・・) 以上6編。 相変わらずです。 「This is 猫丸先輩シリーズ」とでも言いたくなる作品が並んでる。 バラバラ殺人やらシリアルキラーなんていう血生臭い作品が続いた後、こういう奴を読むとホッとさせられますねぇ。 もちろん「日常の謎」ですから、トリックも真相も「そんなもんでいいの?」というレベルではありますが、それでも感じるのが、作者の確かな力量。 こういう作品を書かせたら、作者の右に出る者はいないような気がします。(そんなに確信はないが・・・) (④はもう大爆笑! 商店主のやり取りが面白すぎ。③もなかなか) |
No.582 | 7点 | 象牙の塔の殺人- アイザック・アシモフ | 2011/11/11 16:51 |
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1958年発表の本格ミステリー。
大学内の複雑な人間関係を背景に発生した殺人事件を、主人公の助教授が解き明かす。 ~大学の実験室で、化学の実験中の学生が毒ガスを吸って死亡する。事故死か、或いは自殺か。指導教官のブレイドは、この事件を単なる過失とは考えられず、自ら真相究明に乗り出すことになった。しかし、これが殺人事件だとすると、真っ先に疑われるのは彼自身なのだ! しかも、事件はやがて彼の大学における地位や家庭における平穏までも脅かすことに・・・~ 理系ミステリーのはしり的作品か? と思いきや、プロット自体は純粋な海外本格ミステリー。 というのが読後の感想。 前半は、シアン化合物がどうだとか、実験器具がどうだ、とか文系人間の私には頭にスッと入ってこない単語が続々登場。 中盤以降は、主人公を中心とする大学内の複雑な師弟関係や上下関係が明らかになり、終盤は一気呵成に真犯人を指摘! 巻末解説でも触れてますが、確かに本作の「動機」は独特。 一般の人にはちょっと理解できない。(でも、ありうる気にはさせられる・・・それがアシモフのうまいところ) 伏線もうまい具合に撒かれ、意外な真犯人像のリアリティを補完してます。 他作品でも目にしますけど、大学内って、普通の会社以上に人間関係が難しいんだねぇ・・・ (頭のいい人ほど、妬みや上昇志向が強いってことでしょう) 50年以上も前とは思えないほど、出来のいい本格ミステリーなのは間違いのないところ。 分量も手頃ですし、もうちょっと評判になってもいいんではないかな? |
No.581 | 5点 | 沈底魚- 曽根圭介 | 2011/11/11 16:49 |
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第53回江戸川乱歩賞受賞作。
「スパイ小説」と呼ぶべきか、「警察(公安)小説」と呼ぶべきか迷う作品。 ~現職の国会議員に中国のスパイがいるという情報によって、極秘に警視庁外事課に捜査本部が設置された。指揮官として警察庁から女性キャリア理事官が派遣されるが、百戦錬磨の捜査員たちは独自に捜査を進める。その線上に浮かんだのは、次期総裁の呼び声高い1人の男だった・・・~ ミステリーとしてのジャンルはともかく、いかにも「乱歩賞受賞作」という感じがした。 主人公は、無頼派の公安刑事。とある事件が発生するが、途中まで事件の構図探しが続き、1つの流れが見えてくる。 解決と思いきや、ラストにドンデン返しが待ち受けて・・・ まぁ、簡単にまとめると、こんな展開のプロット。 いかにも、っていう感じは拭えない。 確かにデビュー作としては達者だと思います。人物造形はちょっと深みに欠けるかなとは思いますが・・・ 公安刑事同士の「化かしあい」という展開も、既視感はあるけれど、まずは及第点でしょう。 けど、スパイっていったい「何重」まであるんでしょう?(二重スパイとか、三重スパイとか出てくるので・・・) まっ、この手のジャンルが好きな方であれば、「味見」をしてみる価値くらいはあるかなと思います。 |
No.580 | 5点 | エデンの命題- 島田荘司 | 2011/11/11 16:48 |
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中編2作によるノン・シリーズの作品集。
最近の島田作品によく登場するテーマが本作でも色濃く取り上げられてます。 ①「エデンの命題」=「エデン」とは、当然「旧約聖書」に登場する、アダムとイブが暮らしていた楽園のこと。 ~アスペルガー症候群の子供たちを集めた学園から、少女が消えた。残されたザッカリ・カハネのもとに届いた文書に記されていたのは、世界支配に取り衝かれた民族の歪んだ野望と、学園の恐怖の実態だった。生きるため、学園を脱出したザッカリを待ち受ける驚愕の真実とは?~ う~ん。プロット的には「よくあるやつ」だと思いますねぇ。 主人公宛に残された少女の「手記」が、本作のカギを握っていて、「ユダヤ・コネクション」の暗躍やら野望なんて話は、昔から広瀬隆あたりの本で目にしていた分、「ありうる話」として受け取れた。 ただ、風呂敷を広げすぎた分、カラクリが判明した後の真相は、ちょっと拍子抜けしてしまったが・・・ ②「ヘルター・スケルター」=直訳すれば、「すべり台」という意味ですが、かのビートルズの楽曲名としても有名。 記憶を失っているらしい1人の患者が、美人女医からの「誘導尋問」により、自身の驚愕の過去を思い出していく・・・という趣向。 これも、「眩暈」やら「ネジ式ザゼツキー」等で試みられたプロットの焼き直し感はある。 (スケールは小さいが・・・) ただ、本作はオチがちょっと唐突だし、流れを腹入れする前にネタバラシされてしまった感覚。 (でも、本当にこの年代に脳科学はここまで進歩していたのだろうか?) ①②とも、「クローン技術」やら「脳科学」といった、作者の「研究(?)」分野がテーマになっていて、表紙には堂々と「本格ミステリー」と銘打っているものの、私の志向する「本格ミステリー」とは大きく異なっている作品なのは間違いない。 前回の島田作品の書評(『溺れる人魚』)でも書いたが、やっぱり、ファンとしては御手洗や吉敷が活躍する骨太の「本格ミステリー」が読みたいんですよ! 荒唐無稽でもいいから、「アッと驚く大掛かりなトリック」で・・・ (もうムリかな?) |
No.579 | 7点 | 殺人交叉点- フレッド・カサック | 2011/11/05 21:39 |
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フランスミステリ批評家賞受賞作。
創元文庫版では「連鎖反応」を併録。 ①「殺人交叉点」=文庫版あとがきで触れられてるとおり、「最後の一撃」が読者にガツンとくる作品。 ~10年前に起きた二重殺人事件は、きわめて単純な事件だったと誰もが信じていた。殺人犯となったボブをあれほど愛していたルユール夫人でさえ疑うことがなかった。しかし、真犯人は別にいた。時効寸前に明らかになる驚愕の真実とは・・・~ この結末は十分予想できたはずなのに、見事ヤラレてしまった・・・という感じ。 他の方の書評どおり、「叙述トリック」としては初歩的ですが、それだけにスッキリとした後味になります。 (シンプル・イズ・ベストっていうことかな) 確かにねぇ、後から読み返すと、母親との会話(お金の無心に行く場面ね)なんて、違和感プンプンで、うまく騙してる。 最近では、本作をベースにしたかのような作品が溢れてますので、その元祖的作品を味わうのも一興でしょう。 ②「連鎖反応」=愛する女性との結婚を間近に控えた主人公に告げられた、愛人からの妊娠の事実。そこから主人公の苦悩が始まる。主人公が選択したのは、上司の殺害による自身の昇進&昇給。(これで、子供の養育費を捻出しようということ) そして、主人公が望んだ以上の結果が得られ、幸せな未来が見えてきた矢先に・・・訪れる悲劇! これは、皮肉な結末だねぇ。まぁ「勧善懲悪」ということなのでしょうが・・・ 普通なら、○○で終わるところ、本作では、視点人物の「解説(?)」を最後に付け加えてるのが特徴的で面白い。そして、そこにまでラストにサプライズが仕掛けられてる。 なかなか小気味いいし、よくまとまってます。 (①②ともお勧めできる良作というレベル) |
No.578 | 7点 | 妖奇切断譜- 貫井徳郎 | 2011/11/05 21:38 |
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「鬼流殺生祭」に続く、朱芳=九条シリーズの2作目。
戊辰戦争に続く、明治維新期の江戸(東京)を舞台に発生した美女の連続バラバラ殺人事件が今回の謎。 ~戊辰戦争の傷跡癒えぬ東京で、美女ばかりを描いた錦絵が評判を呼んでいた。だが描かれた女がバラバラ死体で、それもなぜか稲荷で発見される事件が続発、町に恐怖が広がる。元公家の九条は、捜査に乗り出すが、非道の犯行は止まらない。困惑した九条は病床の友人・朱芳の頭脳に望みを託す。驚愕の結末が待つ傑作推理!~ これはなかなかの問題作。 『被害者は美女ばかり』、そして『体の一部分が欠けている連続バラバラ死体』というと、どうしても連想してしまいますよねぇ。 あの名作、そう「占星術殺人事件」を! 当然ながら、作者もそれを意識しているでしょうから、もちろん同じ仕掛け・トリックを使うわけはないと思いつつ読み進めましたが・・・ 真相にはちょっとビックリ。(ただ、プロットの骨格としてはやや被ってる感はある) キーワードとなった「○○」については、「何だかなぁ・・・」という感想でしたし、「動機」もちょっと納得しがたい。 「真の」犯人は、「まぁそうだろうなぁ」と思っていた人物であり、想定内。 ただ、鬼気迫る異様な姿は相当に印象的で、何とも言えない読後感のある作品だと思う。 カニバリズム的な描写を含め、割とエゲツない箇所もあるので、そういうのが苦手な方はご注意を。 (でも、喜八郎のパートはこんなに長々とページを割くほどの意味はないんじゃない?) |
No.577 | 5点 | 風神雷神の殺人- 阿井渉介 | 2011/11/05 21:36 |
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若きエリート警部補・堀進とギャンブル好きのロートル刑事・菱谷のコンビが活躍するシリーズ第2弾。
本作も作者独特の重い雰囲気の作品。 ~「風神雷神の助けでおまえを殺す」。謎めいた脅迫が現実になったかのように、怪異な手口で起こる連続殺人。東京、静岡に次いで4通の殺人予告が列島を震撼させる。動機はなにか。犯人が起こしたと豪語する余部、信楽の列車事故の意味するものは? 捜査一課の名物コンビが凄まじい怨恨に駆られた犯人を琵琶湖畔に追い詰める!~ 本格モノというよりは、なんだか「社会派」作品のような雰囲気。 中盤までは、犯人の狙いも犯人像も全く分からないまま、異様な事件が続いていく展開。 「列車シリーズ」をはじめ、氏の作品の特徴は、とにかく「不可能趣味満載の謎の提起」と大掛かりなトリック。 ただ、本作、トリック的な妙味ではなく、「動機」一本に絞ったかのようなプロットがある意味新鮮ではありました。 ただ、こういう作品の場合、犯人像が判明してしまうと、読み手の興味が半減してしまう功罪はありますが・・・ 余部、信楽の大列車事故は現実の事件ですから、さすがに「トリック」的な仕掛けは無理だったのでしょう。 そういう部分では、氏の作品としては、やや不満の残る内容かなぁ・・・ でも、この「動機」はちょっとリアリティに乏しい気はしますねぇ。 (こういうヤツらは確かに憎むべき存在ではありますが・・・) |
No.576 | 4点 | 名探偵も楽じゃない- 西村京太郎 | 2011/11/03 10:44 |
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名探偵パロディシリーズの第3弾。
今回は、高層ホテルの最上階フロアというクローズド・サークルで起こる連続殺人事件が舞台。 ~ミステリーマニアの組織の例会が、会長の経営するホテルで開かれた。特別ゲストはクイーン、メグレ、ポワロ、明智小五郎の4大探偵。その席に自ら現代の名探偵を名乗る青年が闖入、殺人の匂いがあると予言。果たして奇怪な殺人劇が連続して起こってしまう! 世界的名探偵たちはどうする?~ さすがに3作目ともなると、設定自体に無理があるような気がする。 大した分量でもないのに、次々と惜しげもなく起こる殺人事件。 クローズド・サークルでもあるし、本格ファンなら望むべきプロットのはずですが、いかんせん内容が軽すぎる! 今回、自称「名探偵」として登場するのが、その名も「左門字京太郎」。 長身でハンサムなハーフってことは、これって後にシリーズ化される「私立探偵・左門字進」の原型?っぽいです。 で、殺人事件の方は、左門字の推理によって、一旦収束することに・・・ しかし、今回は4大名探偵の影薄すぎ! と思ってると、最後の最後になって、やっと二重構造の事件の背景が4人によって明かされるという趣向。 (これもかなりご都合主義ですが) 決してお勧めできるようなレベルの作品ではありません。 何でシリーズ化しちゃったんですかね。1作だけでやめとけばよかったのに・・・ (因みに、「Yの悲劇」は思いっきりネタばらししてるので、未読の方がいらしたらご注意を!) |
No.575 | 6点 | 813- モーリス・ルブラン | 2011/11/03 10:43 |
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アルセーヌ・ルパン物の代表作の1つ。
本作はいわば「前篇」的な位置付けで、結末は「続813」へ・・・という趣向。 ~「ダイヤモンド王」と呼ばれる大富豪・ケッセルバック氏は、全ヨーロッパの運命を賭けた重大秘密を握ってパリへ出た。その全貌を明らかにすべく、怪盗紳士A・ルパンが会見したその夜、氏は何者かに刺殺されてしまった。現場に残されたレッテル『813』とは?手掛かりの人物を恐るべき冷酷さで消していく謎の人物・L・Mを相手にルパンの息づまる死闘が始まる・・・~ 予想よりは面白かった。 これが率直な感想。 もちろん、本作は「前篇」ですから、解答編ともいえる「続813」を読まなければ、物語全体の評価は付かないですが・・・ 事件の鍵を握る人物「ルデュック氏」をめぐって、ルパンと警視庁の辣腕・ルノルマン保安課長、そしてアルテンハイム男爵が三つ巴の頭脳戦を展開するストーリーは、さすがに読み継がれている作品という風格を感じさえします。 そして、ラストの衝撃!・・・ まぁ、ルパン物の定番と言ってしまえばそれまでですが、個人的にはなかなかの衝撃でしたねぇ。 (これって、「叙述トリック」なのかな?) 今回、堀口大学訳の新潮文庫版で読了しましたが、独特の読みにくさはあるものの、気品のあるいい訳文だと思います。 ということで、ストーリーを忘れないうちに「続813」を読むことにしよう! |
No.574 | 5点 | 殺人鬼(角川文庫版)- 横溝正史 | 2011/11/03 10:40 |
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金田一耕助登場の作品集。
なかなかバラエテイに富んだ作品が並んだなぁという印象。 ①「殺人鬼」=ある推理作家の目線で事件が描かれる、という当時の作品でよくある趣向。結局、「殺人鬼は誰なのか」が大きな謎となるわけですが、まぁ「こうなるよな」という結末。 ②「黒蘭姫」=デパートに日毎現れ、貴金属を万引きする黒衣の美女。そして、突如発生した2つの殺人事件。金田一が示した解答は、いわば「不幸な偶然」っていうこと。でも、あの女性には罪はないのか? ③「香水心中」=アリバイトリックがメインだが、今読むといかにも古臭いトリック。「動機」もなぁ・・・。女性実業家一家を軸に、なかなか魅力的な設定なのですが・・・ ④「百日紅の下で」=名作と評される短編。確かに雰囲気はよい。ただ、毒殺の「くだり」は読者には推理不可能ではないか? ラストが印象的。この後、金田一は「獄門島」へ向かっていったんだねぇ・・・(へぇー) 以上4編。 やっぱり、名作長編に比べると2枚も3枚も落ちる印象。 短編らしい切れ味に欠ける作品という評価になっちゃいますね。 ④も名作と言うほどのものは感じなかった。 (どれも、戦後すぐという時代背景を感じさせる作品) |
No.573 | 4点 | 靴に棲む老婆- エラリイ・クイーン | 2011/10/29 22:32 |
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国名シリーズ後の第2期、ライツヴィルシリーズの合間に発表された作品。
確か、昔ジュブナイル版で読んだ記憶があるのだが・・・ほとんど覚えてなかった。 ~靴の宮殿に住む百万長者の老婆の6人の子供。3人は精神異常者で3人はまとも。そのまともな子供が次々と殺されて、しかも手を下して殺した殺人犯は、真の犯人ではないという、クイーン一流の精緻を極めたプロット。クイーンの転身第2期の作品中の白眉とするに足る名作で、陰惨限りない雰囲気を柔らかな同様のユーモアでくるみ、一種独特の気品が滲み出ている・・・~ プロットは面白いが、何とも中途半端な読後感。 腹違いの兄弟が、時代遅れの決闘を行い、エラリーが空砲とすり替えたはずのピストルから、実弾が発射され、「まともな」方が殺されてしまう。誰が、実弾をすり替え得たか? というのが本作メインの謎。 一旦、納得できる解決が示されたと思いきや、ラストでひっくり返されるという、二重構造の鮮やかさ。 など、さすがに円熟期を迎えたクイーンの技巧の確かさは窺える。 ただねぇ、魅力的な「材料」を生かしきれてないのも事実。 マザーグースは結局どうしたかったんでしょうね? 単なる雰囲気つくりか? 事件の本筋とは全く関係ないため、完全に浮いている印象。 「まともでない」兄弟たちも、「まともでないのか」、「まともでない振りをしているのか」など、読者を惹きこむ役目を果たしていない。 ということで、やっぱり欠点の方がどちらかといえば目立つ作品でしょうね。 (ラストのニッキー・ポーターの逸話には、「へぇー」って思わされた。) |