皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
していません。ご注意を!
メルカトルさん |
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平均点: 6.02点 | 書評数: 1769件 |
No.229 | 6点 | 蒼林堂古書店へようこそ- 乾くるみ | 2012/08/24 21:35 |
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ほのぼのとした雰囲気が実に心地良い、それにさりげない季節感を時折漂わせている点も評価できる。
ただ、ミステリとしてはいかにも弱いところや、解決に強引さが感じられるケースが多々見られるのは少々残念。 それでも私はこの物語が好きだ、それはもう理屈抜きに。 そしてラストのサプライズも好ましい結末と言えよう。 それぞれの登場人物が生き生きと描かれているのも素晴らしく、紅一点のしのぶがまた魅力的である。 後味も良い。 |
No.228 | 5点 | 交渉人・爆弾魔- 五十嵐貴久 | 2012/08/17 21:17 |
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この手の作品は一気に読んでしまったほうがより楽しめるね。
内容としては所々に見せ場が用意されているが、その他のシーンは平板な印象を受ける。 登場人物も結構多いが、感情移入できるような人物造形がなされていないのは残念であった。 また、タイトルは「交渉人」となっているが、犯人側との交渉シーンは全くないので、期待外れの感は否めない。 前作と比較するとやはり数段落ちると思うのは自分だけではないだろう。 |
No.227 | 6点 | 煙突の上にハイヒール- 小川一水 | 2012/08/05 21:47 |
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近未来の世界を描いたSF&ファンタジー。
ミステリ度は薄いが、敢えて登録したのは、最終話の衝撃度が強烈だった為。 失恋して半分ヤケ気味になったOLは、少なくない預金を解約してあるものをすべてつぎ込んで購入するが・・・。 ペットの猫が最近太り気味になっているのを気にして、首輪にカメラを埋め込んで猫の動向を探ると、意外なシーンが映っていた・・・。 など、少し変わったシチュエーションが楽しめる、5編の短編から成る作品集である。 だがなんと言っても、特筆すべきは最終話、これだけでも一読の価値があると言っても言い過ぎではないと思う。 |
No.226 | 6点 | 奇談蒐集家- 太田忠司 | 2012/07/16 21:17 |
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奇談と言うわりには驚くようなものはあまり見当たらない、どちらかというと地味な連作短編集。
どの短編も奇談が語られた直後は、ちょっぴり不可思議な、或いは幻想味を帯びた余韻を残すが、蒐集家の助手?が一刀両断の下にオチを付けていく過程は、現実の味気なさにがっかりさせられるパターンが多い。 ちょっと意外な結末の短編も含まれているが、全体的に「ああ、なるほど」程度にしか感じられないのが少々残念。 でも、まずまず楽しめる。 最終話はもう少しまとまりのある結末が欲しかったかな。 |
No.225 | 6点 | 中途半端な密室- 東川篤哉 | 2012/07/06 21:49 |
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何だろう、この読み心地の良さは。
どの作品も臨場感があり、脳裏に情景が浮かんでくる辺りは、さすが売れっ子作家だと感心させられる。 突出した短編はこれといって見当たらないものの、どれも及第点をクリアしていると言って良いのではないだろうか。 まだ本格的にデビューする前の作品のわりには、なかなかの完成度の高さを誇っているし、肩の凝らない程よいユーモアも保たれていて、非常に読みやすい。 これは評価されるべき点であろう。 これだけ褒めておいて、この点数は低すぎるかもしれないが、全体的にやや物足りなさを感じるのは否定できないからやむを得まい。 |
No.224 | 6点 | 死なない生徒殺人事件- 野崎まど | 2012/07/01 21:43 |
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永遠の命をもった生徒が存在する、という密かな噂がある名門私立藤凰学院(女子高)に新しく赴任した、生物教師の伊藤。
彼は後日、その「死なない生徒」だという女生徒に声を掛けられるが、彼女はその後しばらくして頭部を切断された死体となって発見される。 犯人はいったい誰なのか、なぜ頭部を切断されたのか? といったストーリー展開で、この事件は連続殺人に発展する。 少しミステリを齧った読者なら、容易に犯人は予想できるはずだし、首を切った理由も想像がつくだろう。 しかし、問題は勿論それだけに留まらない。 つまり、死なないはずの生徒がなぜ殺されたのか、という究極の命題が残されている。 ライトノベルでありながら、新たなミステリの形を提唱しており、“不死”の定義付けという難しいテーマに挑戦する姿勢は立派だと思う。 ただし、最終的な解決は首肯できかねる部分もあり、若干不満が残るが、なかなか面白く読ませてもらったのも事実ではある。 |
No.223 | 7点 | 神様ゲーム- 麻耶雄嵩 | 2012/06/27 21:31 |
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これは少なくとも子供向けの読み物ではないね。
特に前半の連続野良猫殺害事件は、本件には殆ど関連性がなく、神様である鈴木君の存在を際立たせるために書かれたとしか思えない。 とは言え、これが全く必然性がないとも言い切れないところもある為、一連の流れとして捉えた場合、不自然さは感じさせない。 それにしても、この捻れたラストは一体何なのだろう。 さすがに麻耶雄嵩氏、一筋縄ではいかない。 もう一度最初から読み直しても、私には本当の真相を見抜く自信がない、誰かネタバレ覚悟で私にこの結末の意味を教えていただけないだろうか。 |
No.222 | 7点 | 小説家の作り方- 野崎まど | 2012/06/22 22:14 |
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この世で一番面白い小説のアイデアを閃いてしまったので、小説の書き方を教えてほしい、という旨のファンレターをもらった駆け出しの作家、物実。
彼はその後、ファンレターの相手と直接会い、彼女に小説の書き方を初歩からレクチャーする事になる。 ここまで読んで、ちょっぴり恋愛風味で味付けされたファンタジーなのかと思っていたが、突然現れる謎の女性が登場してからとんでもない展開に発展していく。 無論、ミステリ好きには願ってもない展開なのだが・・・ これ以上は、これから本作を読もうとする人の興を削ぐ事になるので書けないが、期待していた以上に面白い。 中盤まではまったりと進行していくが、後半は見違えるようにテンポが良くなり、一気に読み進められる。 いわゆるライト・ノベルだが、正直これはお薦めの一作なのは間違いないだろう。 |
No.221 | 6点 | 星を継ぐもの- ジェイムズ・P・ホーガン | 2012/06/17 21:44 |
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あまりの高評価につい読んでみたが、私の弱い頭ではストーリーに付いていくのがやっとで、楽しむ余裕はなかった。
だが、私の苦手な翻訳物ではあるが、読みづらいとは思わなかった。 ただ、専門用語が多すぎて、理解不能な部分が結構あり、本来のめり込めるはずの作中が右から左へ流れるように去っていくのを、ただただ目で追っていくのが精一杯であった。 しかしながら、終盤は俄然面白くなったのは事実であり、最後の種明かしもなるほどと思えたのは、僅かな収穫ではなかったろうか。 それにしても感心するのは、みなさんの鋭い読解力であり、本サイトのレベルの高さだ。 本作を順当に評価しての平均点の高さは、私には納得できるものではないが、現実を受け入れようと努力はしたいと思う。 |
No.220 | 6点 | ぼくと、ぼくらの夏- 樋口有介 | 2012/06/07 22:06 |
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ミステリよりも青春小説の色が濃い。
何よりも素晴らしいのは、小粋な台詞回しにある。 高校生が主役なのだが、まるでハードボイルドそのものの雰囲気とセリフ、こうしたミステリもたまにはいいだろう。 ただ、プロット、ストーリーがいかにも平板で、起伏が足りないのはマイナス点だと思う。 せっかくこのタイトルなのだから、もっと夏を感じさせるような、強烈な描写ももう少し欲しかった気がする。 しかし、全体としてはまずまずの作品ではないだろうか。 |
No.219 | 6点 | 6時間後に君は死ぬ- 高野和明 | 2012/06/02 23:49 |
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表題作の第一話とファンタジーっぽい第二話を読み終えた時点では7点か8点付けるつもりだったが、以降トーンダウンしてしまい、この点数に。
しかしまあ、全体として楽しめたのは確かだし、一読の価値はあると思う。 最終話で、なかなかのサスペンス振りを発揮しているのはいい感じで、ハッピーエンドにしたのは正解だったろう。 ただ、ミステリとして捉えるとやや弱いのは残念な気もする。 |
No.218 | 4点 | スロウハイツの神様- 辻村深月 | 2012/05/05 21:31 |
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スロウハイツは、小説家と脚本家を中心に、漫画家や画家の卵などが集う、言わば現代のトキワ荘である。
特に目立った事件が起こるわけでもなく、物語は淡々と進んでいく。 一種の青春群像を描きたかったのだろうか、その意味では一応頷ける気もするが、お世辞にも読みやすいとは言えないし、無駄に長い。 一応、核となる過去の事件が存在するのだが、詳細は最後の最後まで明かされずに終わってしまっているのもいかがなものか。 最終章は多少心動かされるものがある。 どうせなら、最終章とその前の章のみで短編を書けばよかったのにと思うと返す返すも残念である。 |
No.217 | 6点 | 交渉人- 五十嵐貴久 | 2012/04/23 22:12 |
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これは・・・何を書いてもネタバレしそうだ。
取り敢えず、最終章までと最終章との落差にびっくり。 読者はよく注意して読まなければならない、もし中盤までに何らかの違和感を覚えたのならば、それが真相を暴くヒントになるだろう。 総合病院をジャックした犯人と、交渉人である警視正石田のやりとりはどことなくのんびりした雰囲気が漂っていて、緊迫感に欠ける。 勿論それには理由があるのだが・・・ これ以上は書けないな。 |
No.216 | 5点 | 幽談- 京極夏彦 | 2012/04/19 21:42 |
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ホラーテイストのもの、怪談っぽいもの、寓意小説的なもの、観念小説のようなものなど、様々な作風が収められた短編集。
どの作品にも共通しているのが、オチがないところ、これは読者によっては不満に感じるだろう。 かく言う私もそうだ。 どの作品を読んでも、最後に味わうのは宙ぶらりんの、取り残されたが如く寒々しい印象のみ。 そこになんとも言えない味を見出せるかどうかで、評価は大きく変わってくると思う。 怪談を好む読者にとっては好印象かもしれないが、ミステリファンには物足りないのではないだろうか。 |
No.215 | 6点 | 空飛ぶタイヤ- 池井戸潤 | 2012/04/14 21:33 |
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実際の事件をモチーフにした、直木賞候補の力作。
非常にリアリティに溢れ、切羽詰った男達の苦悩や熱い想いが直に伝わってくるエンターテインメント小説だ。 個性豊かな登場人物たちが、生き生きと熱気に包まれながら描かれており、まるでドキュメンタリーを読んでいるような錯覚さえ覚えるほどである。 ただ、前半はめまぐるしい展開に振り回されるような臨場感があるが、後半やや尻すぼみの感が否めない。 もう少し盛り上がりを期待したが、それほどでもなかったのがやや残念な点である。 |
No.214 | 6点 | 逃亡者- 折原一 | 2012/03/30 22:00 |
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ある理由から殺人を犯したごく普通の主婦の逃避行の物語。
前半から中盤にかけては、さながらトラベルミステリの様相を呈している。 全国各地を転々とし、整形手術を受け、顔を変えて逃げ続ける女の足跡を追う描写は、なかなかのサスペンス振りである。 ところが後半予想もしない展開が待ち受けていて、どんでん返しも鮮やかに決まっており、最近の折原氏の作品の中では出来は良い方ではないだろうか。 若干長いのが気になるが、決して退屈する事はない。 なかなか読ませてくれる。 |
No.213 | 6点 | 少女- 湊かなえ | 2012/03/22 21:51 |
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流れるような文章ですらすら読める。
二人の少女が人が死ぬところを見たいという願望から、それぞれ行動を起こし、やがて交錯し一つの結末に帰結するのだが。 冷静に考えれば、こんな偶然あり得ないとしか言いようがない、しかし小説だからね、こんなのは普通かも。 私にとっては許容範囲内だが、読者によっては許しがたいかもしれず、その辺りも評価が別れるところだろう。 現役女子高生の実態は案外こんなものかもしれないと、妙に納得できる部分もあるが、二人の少女の個性が今ひとつキッチリ描き分けられていなかった気がするのがやや残念である。 とは言え、思いのほか面白かったのは事実で、もう少し点数を高くしてもよかったが、ギリギリこの点数で。 |
No.212 | 6点 | 傍聞き(かたえぎき)- 長岡弘樹 | 2012/03/19 21:51 |
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うーむ、どの作品も無難にまとめているが、言い換えればどれもこれもインパクトに欠けるということだろうか。
読み方が悪いせいなのか、私の頭が弱いせいなのか、一度本を置いてブランクが空くと、それまでのストーリーがほとんど思い出せないという珍現象が頻繁に起こった。 もう自分にはミステリを語る資格がなくなったと言うことか。 悲しい現実を突きつけられた作品だが、決して面白くなかった訳ではなく、それなりに楽しめたと思う。 それぞれの短編に教訓のようなものが示唆されているのも、一つ良いポイントであろう。 |
No.211 | 6点 | 永遠の仔- 天童荒太 | 2012/03/16 21:38 |
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長い、さすがに文庫本5冊分は長い。
しかしながら最後まで飽きることなく読めたのは、やはり作者の力量が並ではないということなのだろう。 帯の「ミステリーの最高峰」の謳い文句は大袈裟だが、心に残り続ける、というのは決して間違ってはいないと思う。 要所要所に、問題提起やちょっとした感動を呼ぶサイドストーリーが散りばめられていて、いいアクセントになっている。 全体としてはさして複雑なストーリーではないが、丁寧に描かれているため、この長尺はやむを得ないのかも。 だが、個人的には誰にも感情移入できなかったのはマイナス点だろうか。 |
No.210 | 7点 | 昆虫探偵- 鳥飼否宇 | 2012/02/20 23:38 |
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単に昆虫の世界を舞台にしているだけではなく、昆虫の生態を生かしたトリックを仕掛けており、事件も一風変わったものばかりで最後まで興味を持って読むことが出来る。
作者は作家になる前は昆虫の研究をしており、とても素人では書けない本格的な昆虫界の知識を披露していて、ミステリ史上でも相当に異色の作品に仕上げていると思う。 こんな作品が脚光を浴びてもよいと思うのだが、いかんせんマニアックすぎるきらいもあり、一般受けするかどうかは未知数である。 しかし、一読の価値はあると言いたいと思う。 |