皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
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メルカトルさん |
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平均点: 6.04点 | 書評数: 1835件 |
No.335 | 7点 | 脳男- 首藤瓜於 | 2013/09/25 22:10 |
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異様なタイトルから受ける、暗めのサイコ・サスペンス風の印象とは内容がかなり違っていた。
前半から中盤にかけては、感情のない男、鈴木一郎の脳内を様々な人の証言からえぐっていく、やや学術的な要素を含むサスペンスとなっているが、これはこれでなかなか興味深い。 後半は一転スピード感あふれるアクションシーン満載で、息もつかせぬ急展開に、手に汗握ること必至である。また、警部の茶屋、心を持たない男鈴木一郎、鈴木の人間性についての解明を任された真梨子を中心に、それぞれのキャラがいい味を出している。 思っていた以上に面白く、自分としてはかなり満足しているが、やはり好みが分かれるタイプの作品といえるかもしれない。 まあしかし、一読の価値はあると私は思う。 |
No.334 | 6点 | 蓬莱洞の研究- 田中啓文 | 2013/09/22 23:06 |
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再読です。
私立田中喜八学園に入学した比夏留はどういうわけか、吹奏楽部に入部するはずが民俗学研究会に入会することになる。 そこには頼りになり、武芸の心得のあるらしき女部長の伊豆宮や、男なのに女として育てられたポニーテールのよく似合う犬飼、大銀杏を結ったデブの白壁がおり、彼らは洞窟に関するいくつかの冒険を経験していく、といった3つの中編からなる学園もの。 読んでいてとても楽しい気分になるので、個人的には好きな作風だが、ミステリとしてはあまり評価できない。 相変わらずのダジャレ連発や、脱力系のバカミス的トリックはいかにも作者らしいが、読者によっては怒りすら覚えるかもしれない。 真面目に読むと腹が立つので、肩の力を抜いて楽しむ姿勢が必要である。伝奇の部分も眉唾ものが多いような気も。 私は第二話が好きだが、これはミステリですらない、どちらかと言うとファンタジーっぽい世界だと思う。 いろいろ批判もあろうが、これはこれで結構楽しい作品ではないだろうか。 |
No.333 | 7点 | 毒を売る女- 島田荘司 | 2013/09/20 22:17 |
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再読です。
これぞ粒ぞろいの作品集と言えるのではないだろうか。 ジャンルは本格となっているが、どちらかと言うとサスペンスに近い作品が多いと思う。うむ、本格じゃないね。 島田氏にしては珍しいショート・ショートも含まれており、これがまた気の利いた、良い感じの仕上がりである。新発見、じゃなくて再発見した思いがした。 でもさすがに20年以上も経つと内容は忘れている。 それでも古臭さを感じさせないのは、氏の巧みな筆力があってこそだろう。平均点が高いのも頷ける。 ある作品では私自身物凄く身につまされる内容で、ちょっとショックだった。個人的なことなのでどうでもいいけど。 |
No.332 | 6点 | 倒錯のロンド- 折原一 | 2013/09/17 22:15 |
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再読です。
いかにも折原氏らしい作品。しかもまだ若い頃なので脂が乗っているのが筆の勢いで感じ取れる。 終盤で「これからどんでん返しが起こります」と宣言しているが、私にはそれ程のものかという印象だった。勿論叙述トリックが仕掛けられているのだが、これがそんなに鮮やかに決まっているとは言い難いと思う。 やられた感がないんだよね、ああそうなの、って感じで。 一番の謎は、この作品で作者が乱歩賞を受賞できる自信がどこから来ていたのかに尽きる。 どう考えても、こうした作風は乱歩賞にふさわしくないでしょう。 残念ながら、最終選考に残っただけでも大したものだと納得するしかないのではないだろうか。 まあでも、サクサク読めるし、それなりに楽しめるのは確か。ではあるが、ちょっと捻くりまわしすぎの感は否めない。 |
No.331 | 6点 | 13階段 - 高野和明 | 2013/09/15 22:23 |
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こういうのを力作と言うのだろうが、とにかく前半が重苦しすぎる。確かに勉強になるし為にもなる。しかしながら、後味がどうもスッキリしないのはどうしたものだろう。
最も印象深いのは、南郷が過去に携わった二つの死刑執行のシーンだった。これは読み応えがある、臨場感も感じられるし、リアリティもあり、まさに真に迫った描写力は素晴らしいと思う。 その後は一気にテンポアップし、実にサスペンスフルな展開が用意されている。でも、なぜか手放しで喜ぶ気にはなれないのが残念なところ。 やはり乱歩賞はどうも信用できない。審査員の満場一致で受賞が決定したらしいが、そんなに高レベルな作品だろうか。 何かこう納得がいかないもやもや感を残したまま、読了してしまった気がする。 |
No.330 | 7点 | 六花の勇者 2- 山形石雄 | 2013/09/10 22:20 |
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いやー、面白いねえ。第一巻よりもストーリーに厚みを増しているし、意外な展開の連続に全く飽きが来ない作りになっている。
主人公のアドレットこそ今回は脇に回っているが、その代わりに最年長のリーダー的存在で女剣士のモーラを中心に物語は進行していく。モーラとその敵となる凶魔の統率者の一人である、テグネウの絡みがストーリーに深みを与えており、プロローグではいきなりまさかのショッキングなシーンが用意されていて、全く予断を許さない緊迫感を読者に強いることになる。 また読んでいて時折イマジネーションを掻き立てられるシーンがあったり、完全にファンタジーの世界なのに情景が浮かんで来たりして、この独自の世界観にのめり込めることは間違いない。 誰が偽の勇者なのか、まだその正体は明かされず、先への興味の一つとして残されているため、3も読まずにはいられない気分にさせられる。心憎いばかりの作者のたくらみである。 まあそうじゃなくても、面白いから続編の3も読むけどね。 |
No.329 | 7点 | 黒猫館の殺人- 綾辻行人 | 2013/09/08 22:20 |
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再読です。
初読の際はどうも地味な印象でイマイチだと思ったが、今回読み直してみてその面白さを再認識できた。特に手記にばら撒かれた伏線の数々は、あらすじを知った上で読んだせいもあり、これはそんな意味があったのかと感心しながら読み進むことができ、随分楽しめた。 メイントリックに関しては、同時期に発表されたS氏の某作品との類似性が盛んに指摘されているが、果たして単なるシンクロニシティなのだろうか、真相は藪の中である。 どなたかこれに対してご存知の方がおられたら、是非ご教示願いたいと思う。 これだけのスケールの大きいトリックが、同年に二作別の作家によって使用されるのはいささか不自然と思われるがいかがなものだろうか。 まあそんな些細なことは別にして、本作は「館シリーズ」の雰囲気を十分継承した由緒ある異色作と言えるのではないかと思う。 これまで過小評価していたきらいがあったので、今回再読して評価が変わり、取り敢えず個人的に満足している。 |
No.328 | 6点 | わが一高時代の犯罪- 高木彬光 | 2013/09/04 22:15 |
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再読です。
中編である表題作を含む短編集。今思うと、どの作品のトリックも凡庸で看破しやすいものがほとんどだが、初読時はそれでも感心して読んだものだ。 私の一推しはロマンチシズム溢れる『月世界の女』である。これも分かりやすいトリックだが、結構いい話ではないだろうか。 そしてラストの『鼠の贄』は最初から手掛かりを大胆に提示しているが、この心理的な誤謬に気づく人は少ないかもしれない。 この仕掛けは現在でも十分通用するものだろうし、なかなか気の利いた短編だと思う。 本来ならば、平均点が示しているように、もう少し高得点でも良かった気もするが、やはりいま読み返すとこの点数も已む無しといったところか。 |
No.327 | 5点 | 首切り坂- 相原大輔 | 2013/09/01 22:27 |
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再読です。
明治時代の話なので耳慣れない言葉遣いなどを使ったり、当時の街並みや風景などに配慮して、雰囲気を出しているのはいいが、やや読みづらいのが難点。 犯人は何故首を切断したのか、という理由はいたって平凡で謎というほどのものではなく、首を地蔵の上に置いたわけもさしたる問題とはならない。結果、フーダニットもハウダニットもいかにも中途半端な印象を受ける。 また唐突に犯人が探偵役の口から切り出されるのも、なんだかなあといった感じ。読者が犯人を推理する余地があまりないのも、伏線がほとんど張られていないのもマイナス要素である。 メイントリックに関しれは、これはもう完全にバカミスとしか言いようがない。意外性を狙ったのは分かるが、そんな偶然が万に一つも起こるはずがないと思わざるを得ないのは、本作を読まれた方ならご理解いただけるであろう。 これら全ての現象を「呪い」の一言で片づけているが、果たしてそれで読者は納得するだろうか。 |
No.326 | 5点 | 最後の喫煙者- 筒井康隆 | 2013/08/29 22:18 |
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いつの間にか時間の流れが速くなり、世の中のあらゆる時計までもがそれに合わせるようにどんどんスピードがアップして、終いには一年があっという間に過ぎてしまうという話。
世界的に禁煙運動が進み、最後の喫煙者となって国会議事堂の屋根に籠城する男の話。 老境に差し掛かったターザンの蛮行を描いた話など、とにかく荒唐無稽で理屈抜きの無茶苦茶なストーリーが目白押しの短編集。 主にSF的な趣向が根底にはあるようだが、そんなことなどどうでもよくなってしまうような、ハメの外しっぷりはこの作者らしいと言えるのかもしれない。 書かれた年代が年代だけに、放送禁止用語が嫌というほど出てくるのは少々嫌気が差してしまうが、とにかくこのはじけ方は尋常ではない。 オチもあったりなかったりで、必ずしもきれいな着地を決めているわけではないのはやや不満な点。 一番のお気に入りは、背中に20cmもあるコガネムシを背負うことによって寄生させ、寄生させた男は天才になってしまうという『こぶ天才』。オチも決まっている。 |
No.325 | 6点 | 六花の勇者- 山形石雄 | 2013/08/26 22:24 |
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魔神の復活を阻止するために選ばれた6人の勇者たちの活躍を描くという、絵に描いたようなファンタジーの王道作品。
とは言っても、第一巻は6人が集結するまでしか描かれておらず、まあ登場人物の紹介とそれぞれの特徴がどんなものかくらいしか読者には分からない。 しかし、なんと勇者は6人揃うどころか7人目まで登場してしまい、1人が偽物だということになり、それぞれが疑心暗鬼に陥る。 疑われたのは主人公のアドレットで、彼は仲間の疑いを晴らすべく戦い、尚且つ広義の密室の謎に挑む。 という訳で、若干ミステリ的要素もありつつ、しかしあくまで主題はアクションであり、誰が偽物かという命題と共にうまくミックスして描かれている。 それにしても、アドレットは「俺は地上最強」を連呼しすぎ。かなり鼻に付く感じである。 そんなこともあり、2巻以降はパスするつもりだったが、驚くべきエピローグに次巻も読まなければならない気にさせられてしまった。これは反則だよな、しかしながら上手く読者を繋ぎ止める、見事な戦略だとは思う。 ファンタジー好きは迷わず読むべきであろう。 |
No.324 | 7点 | 日本殺人事件- 山口雅也 | 2013/08/23 22:31 |
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再読です。
現代の日本、しかしそこは、人力車が走り、廓が存在し、スーツを着た侍が日本刀を帯びているという、とんでもない世界だった。 この物語は作家山口雅也が古本屋で見つけた、外国人が書いたミステリを翻訳したという、一風変わった設定となっている。 だから、日本は日本でもパラレルな、しかし確かな現実感を伴った世界である。 そうした舞台で起こる、3つの古来から伝わる日本文化に関わる殺人事件を、トウキョー・サムという外国人私立探偵が解決する。 それぞれ面白いが、特に最終話はなかなか凝っている。両腕を切断された花魁から始まる「花鳥風月」連続殺人事件はトリックに新味はないものの、じっくり読ませる良く出来た本格ミステリではないだろうか。 愛とは何か、花魁にとっての愛とはどんなものなのかを読者に問う問題作でもある。 |
No.323 | 6点 | あくむ- 井上夢人 | 2013/08/21 22:16 |
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再読です。
これは気味悪いよね。感触としては背中を柔らかいブラシ様のもので逆なでされるような感じだろうか。 5作からなる短編集だが、どれも終始一貫して奇妙で独自の味わいを醸し出している。どこかいかれた、厭らしさを持った作品ばかりで、読後感は正直スッキリしない。 ホラーと言えばホラーなんだけど、普通の感覚と相当なズレを感じるような、作者の頭の中を見てみたいような。 しかも、どれもこれもが明後日のほうに着地しているため、不安定な感触は半端ない。 でもなかなか面白いのであるから、余計に厄介な代物である。 |
No.322 | 6点 | 「北斗の星」殺人事件- 吉村達也 | 2013/08/19 22:19 |
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再読です。
ああ、吉村達也だなと思う。軽くて読みやすくて洒落た作風は間違いなくこの人の作だとつくづく思う。 吉村氏の作品も随分読んだが、一番印象に残っているのがこれである。あとがきの取材ノートを読んでいると、元気だった頃の氏の活躍ぶりが嫌でも思い出される。でも亡くなってしまったんだよね。まだ若かったのに・・・ さて本作は珍しく、名探偵朝比奈耕作シリーズでありながら、彼はホテルに缶詰にされてほとんど出番がない。 代わりに活躍するのが、いつもは事件に巻き込まれてばかりいる平田均である。まあすべて彼が解決するという訳ではないが。 内容としてはよくありがちな、吹雪で閉ざされ外部との連絡の取れなくなった、スキー教室で起こった連続殺人事件を扱ったもの。 それに心霊現象やオカルト的要素を加味しながらも、決して重くなり過ぎない作品に仕上がっている。 アッと驚くようなトリックや仕掛けはないけれど、動機は十分納得のいくものであるし、テンポよく読ませる辺りはさすがと言えよう。 |
No.321 | 6点 | 魔女は甦る- 中山七里 | 2013/08/18 22:26 |
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80個以上の肉片と化した細切れ死体、謎の薬品会社、何匹もの飼い猫の失踪、嬰児の誘拐と、序盤の掴みは完全にOK。
ダークな雰囲気も好みの範疇にあるので、読んでいて何ともやるせない気持ちにさせられるのは事実だが、苦痛とは感じなかった。 ただ残念なのは、真相の説明があまりにもあっけないこと。それまでの捜査で色々な事実が詳らかにされているので、それで十分納得はできるわけだが、それにしても何ともあっさりしすぎている。 それと犯人像、これにはいささかがっかりである。 我々読者はこういうのを求めているのではない、とだけ言わせていただこう。 本作は、実質的なデビュー作のようなものなので、やや荒削りな面があるのと、『ドビュッシー』や『カエル男』のようなどんでん返しを期待すると裏切られるので、これから読もうとする人は気を付けたほうが良い。 そして、事件を捜査する刑事達や被害者を含めて、多くの登場人物がそれぞれ暗い過去を背負っていること、事件の解決があまりに救いのないものになってるので、後味はかなり悪い。 それでも、続編の『ヒートアップ』は文庫化されたら読みたいとは思っている。 |
No.320 | 7点 | 丸太町ルヴォワール- 円居挽 | 2013/08/12 22:22 |
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まず冒頭で「河原町祇園」の名前が出てきたことで、一筋縄ではいかぬと知らしめられた思いがする。さすが京大ミステリ研出身だ。
ライトノベルで重要なキャラは立っているので、その点では合格だろうし、なかなか楽しめる。 ミステリには違いないが、私がこれまで読んできたどれとも性質が異なる作品であり、異色というカテゴリーでは括り切れない、何とも不思議な作風であるのは読めば納得されると思う。 第一章のボーイミーツガールの全然甘くない会話のやり取り。ここからして普通の恋愛小説とは全く違う。 そして終盤に炸裂する驚愕の○○トリック。これはしかし、誰も予測しえなかったものだろう。 なぜなら、それまでに私の読む限りではほとんど伏線が張られていないから。 だから嫌でも騙された感が印象に強く残る。 さらには、主役が何度も入れ替わる構成も実に凝っていて、それだけでも読む価値は十分あると言いたい。 読者によっては、あまり良い評価を下さないと思われるが、それだけ革新的かつ実験的な作品だということだろう。 |
No.319 | 6点 | トランプ殺人事件- 竹本健治 | 2013/08/08 22:24 |
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再読です。
雰囲気はデビュー作にかなり似通った、そこはかとなく幻想味を帯びた作品に仕上がっている。 必ずしも面白いとは言えないが、小道具のトランプのカードの使い方は上手い。気になるのはブリッジの専門用語やゲームの遊び方などがしつこく説明されているが、さっぱりわからないのでほとんど飛ばしてしまったこと。 これは必要なかったのでは?と思いきや、そこには意外なものが隠されていて、ああなるほどよく考えられているなと感心させられた。 が、個人的にはあまり好きなジャンルではないので、楽しめるというほどでもない。 全体的に地味な作品だが、竹本氏の作品としては破綻なくまとめられている。 |
No.318 | 5点 | ウロボロスの基礎論- 竹本健治 | 2013/08/04 22:43 |
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再読です。
ミステリ界を震撼させるう○こ事件。何故犯人はミステリ小説の天井部分やページの間に次々とう○こをしていくのか。 というまあおそらく、日本のミステリの中で最も下品な作品。ではあるが、無論作者は大真面目で書いているところが笑える。作中の人物もこのう○こ事件に対して、真剣に各々の推理を述べ立てる。 そして例のごとく、作中では全く別の事件も並行して起こっていき、そこには矢吹駆や牧場智久まで登場し、さらに混沌としてくる。 実名登場人物は、笠井潔、綾辻行人、法月綸太郎、麻耶雄嵩、小野不由美、そしてあろうことか中井英夫までが登場する。 さらには、法月氏や麻耶氏の原稿まで挿入されて、何がなんだか訳がわからないカオス状態に。 1300枚を超える大作のわりには、例によって謎がそのまま残されている。それもおそらく読者の最大の関心事が未解決のままで完結してしまっており、まあ竹本氏らしいと言えばそれまでだが、これは読み手によってはかなり業腹だろうと思う。 よって、高得点はやはり期待できないだろう。 |
No.317 | 6点 | 空飛ぶ馬- 北村薫 | 2013/07/28 23:13 |
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再読です。
まあ、可もなく不可もなく、というのが正直な感想。 文体は時折キラリと光るものを感じさせる時もあるものの、どちらかというと平板で読んでいて若干退屈さを覚える。 『砂糖合戦』はなかなか面白かったが、他はごくごく普通の出来。 女子大生の「私」にもあまり魅力を感じず、探偵役の円紫はおとなしすぎてあまり好みではないし。ただ、さすがに推理は切れ味鋭いものを見せる辺りは名探偵の面目躍如といったところか。 全体的に、謎はまずまず興味を持たせるが、肝心の真相がいまひとつ感心しなかったのは残念である。 |
No.316 | 7点 | 七つの海を照らす星- 七河迦南 | 2013/07/21 23:09 |
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児童養護施設で起こった「学園の七不思議」と称される謎にまつわる事件を、二年目の保育士北沢春菜が児童福祉司の海王の助けを借りて解決する、連作短編集。
全体的にトリックそのものは他愛のないものが多いが、伏線もかなり張られていて好感が持てる。 やや文体が私には合わないと思う部分があったり、第5話などはミステリから乖離しており、正直この話だけは不要だと感じた。 それとそのトリックも、もしこんなのが真相だったら嫌だなと思った通りのものだったのには、はっきり言って腰砕け。 まさかの稚拙なトリックに、驚きを隠せない。 だが、そうした欠点を補って余りあるのが、最終話の衝撃。 創元社の伝統というか、お約束ではあるが、それにしても心の中でアッと叫ばずにはいられない見事な締めくくりであった。 第4話で披露される回文も実によく考えられていて感心した。 |