皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
していません。ご注意を!
メルカトルさん |
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平均点: 6.02点 | 書評数: 1769件 |
No.269 | 7点 | 螢- 麻耶雄嵩 | 2013/02/12 21:56 |
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再読です。
ネタバレしています。(初読の際の記憶は全くありませんので、再読とは言え、初読のようなものです) 麻耶作品にしては地味と言うか、大人しめなんだよね。 氏にはもっとこう突き抜けた、破天荒なものを書いてほしいと、私は思うんだけど。 しかしながら、決してつまらない訳ではなく、むしろ力作だと感じる。ジャンル的には典型的な嵐の山荘ものである。 三人称だか一人称だか判然としない文章は、いかにも怪しげで叙述トリックの匂いがプンプンする。これはどう考えても一人称の部分を記述している人物が真犯人だと確信するものの、作者の策略にまんまと嵌まり、見事に騙された。 まあ良い線はいっていたと思うけれど、ミスリードにやられました。 又もうひとつの叙述トリックは、読者には分かりきっている事実を、登場人物は知らなかったという、誠に珍しい仕掛けとなっている。 が、ちょっとした驚きはあるものの、あまり感心しないトリックだと思う。別に事件そのものに関わってくるわけでもないしね。 まあしかし、なんだかんだ言っても楽しめたのは間違いないので、ギリギリこの点数に落ち着いた。 |
No.268 | 7点 | 人体模型の夜- 中島らも | 2013/02/09 21:31 |
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再読です。
人間の身体のパーツにまつわるちょっと怖い話をまとめた、連作短編集。と言っても、それぞれが独立した話であり、相互間系は全くない。 私が一番気に入っているのは第一話の『邪眼』。ラスト一行でやられます。 しかしながら、ほとんどがオチが予想できるものであり、ページ数が残り少なくなると、なんとなく想像出来てきて、大抵が想像通りに終わってしまうのが何とも・・・ 多くの短編がブラック・ジョーク風味であり、まあいかにも中島らも氏らしい作品と言えるだろうか。 それでも、一風変わった、それぞれ趣の違うホラーが並んでおり、読み出したらすぐに引き込まれることは間違いない。 どことなく『世にも奇妙な物語』的なストーリーが多いような気もする。 |
No.267 | 7点 | 金雀枝荘の殺人- 今邑彩 | 2013/02/07 20:23 |
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再読です。
なるほど、あとがきを読んだ後には、もう一度序章を読みかえしてしまう。ネバー・エンディング・ストーリーは言い過ぎだが、これはなかなか面白い試みだと思う。 本格的な館ものであり、密室も必然性がありよく練られている。そして見立て殺人と、本格ミステリの美味しいところをこれでもかと詰め込まれており、これこそは隠れた名作と呼んでも差し支えないだろう。 今邑女史の作品の中でも、一、二を争う出来の良さかもしれない。 まあ、相変わらず警察がいかにも頼りないというか、ほとんど出番がないのは作品の性質上仕方ないのか。 霊感少女の存在は個人的には不要な気もするのだが、作者としては遊び心というか、雰囲気作りの一環として登場させたものとして解釈したいと思う。 とにかく全体的に重すぎず軽すぎず、丁度いい感じのさじ加減はさすがにプロの作家と言えるだろう。 |
No.266 | 5点 | 匣の中- 乾くるみ | 2013/02/05 21:54 |
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再読です。
ネタバレするかも。 名作『匣の中の失楽』とは似て非なるもの。 構成は似たところがあるが、それだけ、比較するのも憚れるまがい物といった感じである。 道中の衒学趣味は果たして必要なのか、かなり疑問に思われるし、私にとってはただただ鬱陶しいだけであった。 そして何より、結局誰が誰を殺害したのか、全ては藪の中で判然としないのは、こういった作品ではやむを得ないのであろうか。 最後には作者まで登場し、メタ的展開を見せるのには辟易とさせられる。これでは何でもありで、アンチ・ミステリどころではなくなってしまう。 読後感はひたすらもやもやしていて、いかにもすっきりしない。かなり気分が沈みがちな後味の悪さを覚える結末。 一体「揚げ物、メシの残り食うかや」このセリフは何だったのだろうか。 |
No.265 | 8点 | 獄門島- 横溝正史 | 2013/02/01 21:40 |
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不朽の名作だね。
登場人物がそれぞれの役割を果たしている点や、第二次世界大戦が物語に大きな影響を与えている点、ある条件が揃ってしまい動機が生まれる点など、評価されるべき部分が多いところは見所の一つと言えるかもしれない。 私が面白いと感じたのは、あまり本筋とは関係ないが、釣鐘が動くという奇妙な出来事である。 無論、見立て殺人はそれぞれが際立っており、横溝氏の美意識を感じる。 また、例の名台詞はやはり物語の根幹を成すものとして、後世に語り継がれるだろう。 ただ、ストーリー自体は他の氏の名作に比較すると、私の好みとは若干ずれるのが少々残念ではある。 だから、9点でも良かったのだが、1点マイナスとした。 |
No.264 | 7点 | 戻り川心中- 連城三紀彦 | 2013/02/01 21:23 |
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再読です。
たまにはいいね、文学作品も。えっ、本格?これが。 いや、確かにミステリ的要素は幾分か含まれてはいるが、どう考えても本格ミステリじゃないでしょう。やっぱり純文学、いくら贔屓目にみても文学だよね。 個人的には、格調高い文章に載せて語られる、男女の愛憎劇だと考える。 ミステリ的角度から見れば、ホワイダニットが中心となるだろうか。意外な犯人とかを期待すると間違いなく裏切られるが、ちょっとした反転は味わえる。 ミステリじゃないから、どう評価していいかやや困惑してしまうが、やはり文学作品として低い点数は付けられないので、無難に7点にしておく。 |
No.263 | 6点 | A先生の名推理- 津島誠司 | 2013/01/29 21:55 |
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再読です。
事件の概要が説明される前半と、A先生が登場する解決編がはっきりと区別されている連作短編集。 前半の事件はどれも奇天烈なもので、謎としては申し分なく実に魅力的だが、一転それらの謎を解く後半は味も素っ気もないくらい、あっけなく解決されてしまう。 A先生の推理は、なるほどと思わせる部分もあるが、いささか強引で説得力が無い。 『宇宙からの物体X』の前半が最も面白かったかな、後半は相変わらず肩すかしだが。 それと、もしかしたらこの作者の本領が最も発揮されているのは最終話の『真夏の最終列車』かもしれない。 この短編だけはA先生が登場しない、氏のデビュー作であるらしい。 このアリバイトリックはすっきりしていて、意表を衝かれる、なかなかよく考えられたものであると思う。 ただ、轢断死体、つまり変死体なので、警察が本気で調べればあっけなく真相が看破されてしまうはずなのだが。 それでも、この最終話だけは評価されるべきではないだろうか。 |
No.262 | 7点 | ドグマ・マ=グロ- 梶尾真治 | 2013/01/26 22:10 |
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再読です。
最初に断っておきますが、タイトルが例の名作に酷似していますが、一切関係ありませんのであしからず。 さて本作品、登録しようか迷ったが、せっかく読み返したので、書き留めておこうと思う。 というわけで、ほとんどの人が興味ないと予想されるので、概要などは割愛して簡潔にまとめてみたい。と言っても、ストーリーは意外と複雑で登場人物も多いので、書こうにも書き切れない、一言でいうと、新米看護師の主人公が初夜勤で体験するある病院での一夜の恐怖の物語である。 通称カジシン、この人は基本的にホラー作家だと思うが、ほとんどの作品がホラーでありながらヒューマン・ドラマとなっているのが特徴ではないだろうか。 簡単に表現すると、人間臭いというか人間味溢れるホラーか。 本作では老婆の患者5人の活躍が、胸を熱くする。 他にも、思わず目頭が熱くなるシーンが随所に見られ、感動のホラー巨編に仕上がっている。 ラストシーンは、これまたご愛嬌である。 |
No.261 | 6点 | さらわれたい女- 歌野晶午 | 2013/01/24 21:43 |
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再読です。
巧妙なプロット、意外な展開、さすがに歌野晶午と言いたいところだが、いかんせん面白みに欠けるのがどうもね。 本格的な誘拐物では勿論ないし、さりとてユーモア・ミステリとも違う。サスペンスと呼ぶにはやや緊迫感に欠ける。 じゃあ、どういうスタンスで読み進めば良いのか、正直迷ってしまう。 しかしながら、十分水準点はクリアしているし、読みやすいので苦痛は感じない。 ところで、ジャンルは何に投票すれば良いのだろうか、本格か、サスペンスか、ちょっと迷ってしまう。なんとも表現しがたい作風なのだ。 ラストは、個人的にはこれで良かったのではないかと思う。 それほど意外性はないけれど、無難な着地の仕方だろう。 まあ、結局右往左往しながら、主人公の何でも屋と一緒に冒険を楽しむ作品なのかな。 |
No.260 | 8点 | 頼子のために- 法月綸太郎 | 2013/01/22 21:58 |
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再読です。
初読の際は、なんだか切ない読後感だったが、今回読み直してみて、全体を通して痛々しい印象を持った。 痛々しくなかったのは、唯一探偵の綸太郎のみで、登場人物それぞれが心に何かしらの傷をもっており、読んでいて辛くなるような心持がしたものだ。 一方、綸太郎は最初から「僕は真実の側につく」との言葉通り、最後の最後まで己のスタンスを貫いている。 この姿勢は、解説にもあるように、どちらかと言うとハードボイルドを思わせる。 従って、この作品は本格ミステリというよりも、ハードボイルド寄りのある(名探偵ではない)探偵の物語という側面を持っていると思われる。 さて、冒頭の手記に関してだが、私は一読後唯一首を捻りたくなるような記述があったことを除いて、特にこれといって不可解な点には気付かなかった。 その手記をもってして、再調査に乗り出し、真相に迫る法月綸太郎はさすがと言えるかもしれない。 しかし、最後に真犯人に対して、○○を促すような言動は探偵としていかがなものかとは思う。 たとえ真実の側についた人間だといえ、ここは思い留まらせるべき場面だった気がするが、どうなのだろう。この点も一つ後味の悪さにつながっているように思える。 まあしかし、様々な面で優れた作品であるのは間違いないし、端正な文章に載せて語られる氏の代表作と言って良いだろう。 |
No.259 | 8点 | 黒い家- 貴志祐介 | 2013/01/19 21:52 |
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再読です。
ネタバレするかも。 これぞホラー小説の真髄。誠に素晴らしい出来栄えの傑作である。 舞台が保険会社なので、生命保険、傷害保険、入院保険などの勉強にもなり、為にもなる小説。 そして、なんといっても怖いのである、それはもう心底。背中を這い上がるようなぞくぞくする怖さと、とても心臓に悪いショッキングなシーンの両面攻撃で、読者を恐怖のどん底に陥れる。 ハイライトはSが旦那の○○を○○してしまうところ、これはもう半ば予想していながら、トラウマになりそうなくらいの恐ろしさだ。 病棟の個室で、三善が恫喝するシーンが私のお気に入りなのだが、その百戦錬磨の三善が簡単にやられてしまうのはやや不満と言うか、不可思議で疑問が残る。 しかし、気になるのはその点くらいで、他は何を取っても完璧ではないだろうか。 前半のサスペンスフルな展開や、主人公の若槻が事件を追うミステリ的な趣向、後半の若槻とSとの対決はどれも読み応え十分である。 |
No.258 | 5点 | 思い通りにエンドマーク- 斎藤肇 | 2013/01/16 20:20 |
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再読です。
本棚から溢れた本を整理していて、たまたま目に付いた一冊。 今ひとつ覚えていなかったので、読み直してみようかと思い立ったのが運の尽き。 主人公である学生の僕が名探偵よろしく、いわゆる嵐の山荘状態での連続殺人を解決して凱旋するのだが、そこに待ち受けていた陣内先輩に一刀両断される。 曰く「お前の推理は滅茶苦茶だ」。というわけで、一旦解決を見たかに思われた密室絡みの連続殺人事件の真相を暴きに、陣内先輩と僕は再び惨劇の館へ向かう。 その前に「作者への挑戦状」(読者への挑戦)が挿入されるが、正直、真犯人はボンクラの私にも丸分かりであったし、動機も予想通り。 これだけ分かり易い謎も珍しい。 アリバイトリックはなかなかよく考えられているものの、密室トリックには大きな疵がある。 よく読めばいくつかの疑問点やアラが見えてくる、とても高得点は望めない凡作であろう。 |
No.257 | 6点 | 女囮捜査官 触姦- 山田正紀 | 2013/01/13 21:48 |
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再読です。
囮捜査官という、これまでにない捜査法を取り入れたなかなか斬新なアイディアを持つ新感覚のミステリ。 本格ミステリと呼ぶにはやや抵抗があるので、新型の警察小説とでも言うべきなのだろうか。 駅の女子トイレで起こる連続殺人事件、次々と現れては消える容疑者たち、囮捜査を巡って巻き起こる警察組織内での軋轢と人間関係、めまぐるしく展開していくストーリー、どれを取っても悪くない、むしろ面白い。 結末も良い感じで、意外な犯人像も十分納得のいくものだろうと考えられる。 ただ、最初から感じていた違和感が結局真犯人逮捕の決め手になろうとは、何とも脱力ものではある。 中身は薄味だが、読みやすい珍品の娯楽作と言えるだろう。 |
No.256 | 7点 | 水晶のピラミッド- 島田荘司 | 2013/01/12 21:33 |
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再読です。
初読では期待しすぎたあまり、今ひとつと感じたが、読み直してみて意外に面白いのを再認識した作品。 多くの方が指摘されているように、古代エジプトとタイタニック号のくだりは不必要なのかもしれないが、これがあってこそ物語が盛り上がるのではないだろうか。これらのエピソードが交互に配される事によって、御手洗シリーズの雰囲気作りに一役買っているように思われて仕方ない。 内容は密室あり、人工ピラミッドの最上階で溺死した死体という不可能犯罪あり、さらには謎の怪物まで出現して、まさに盛りだくさんで読者を飽きさせない。 またリーダビリティもさすがと言えるが、説明文がややくどく、若干分かりづらいのが難点かと思う。 レオナの台詞が芝居じみていて鼻に付くのも気になる。まあしかし、御手洗と対等に渡り合うためにはやむを得ないのかもしれない。 ラストの捻りも良い感じに決まっており、若干地味ではあるが、御手洗シリーズの面目は保っているのではないだろうか。 |
No.255 | 6点 | 龍は眠る- 宮部みゆき | 2013/01/08 21:50 |
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再読です。
平均点が高いのも分かるけどね。 めまぐるしく展開するストーリー、緻密なプロット、超能力に見えた現象を理論的に解釈する辺り誠に素晴らしいと思う。さすがに宮部女史だ。 しかしねえ、どうも盛り上がりに欠けると言うか、サスペンスらしい緊迫感がイマイチだと感じる。 超能力を持った二人の青年を中心に、人間関係はとても分かりやすく描写されているし、どの人物もそれなりに個性的ではある。が、もう少し心理描写とかを掘り下げてもらえたら、もっと傑作になった気がする。 初読の際はもっと面白かったと感じたので、再読したわけであるが、良かったのは第一章の超能力をトリックとして解釈したところまでと、七恵の性格の良さかな。 いずれにしても、本作は宮部みゆきの代表作の一つであるのは間違いないとは思う。 ただ、私にはちょっとヌルいと映った。 |
No.254 | 9点 | 首無の如き祟るもの- 三津田信三 | 2013/01/05 21:54 |
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再読です。
本来ならもっと早い時期に書評すべき作品だが、自分で言うのも何だけど、高得点が予想されるので慎重を期して再読にて評価した。 初読の際は単行本だったが、今回文庫版を読んでの書評とさせていただいた。 加筆、改稿されていたせいか、幾分読みやすくなっていたように思う。 前半から中盤にかけては、まどろっこしいというか、まわりくどい印象で、ワクワク感もあまりなかったし、ホラーの要素から来る背筋がゾクゾクするような怖さもさほど感じなかった。 これをもし島荘辺りが書いていたら、もっと面白かっただろうにと思うと少しだけ残念ではある。 だが、閉鎖された村での因習や、過去の因縁話など、ホラーの要素を絡めて繰り広げられる広義の密室での、首なし死体を露呈する連続殺人事件は非常に興味深いものがある。 後半の読者の推理はほとんど意味がないに等しいので、必要だったのかやや疑問に感じる。 しかし、さすがに刀城の推理は素晴らしい切れ味を見せる、これでもかと畳み掛けるような展開もとても読み応えがあって引き込まれる。 メイントリックは、首なし死体のバリエーションの新機軸と言えるものであり、過去に前例がない為非常に高い評価が期待できると思う。 それにしても一見複雑に見える謎の数々が、たった一つのヒントから芋づる式に解き明かされていく様はかなりのカタルシスが得られる、これはやはり総合的に見て高得点を与えねばなるまい。 従って、滅多に付けない9点とした。 |
No.253 | 5点 | 競作 五十円玉二十枚の謎- アンソロジー(出版社編) | 2013/01/02 19:39 |
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再読です。
若竹七海女史が学生時代、書店でアルバイトしていた時に実際遭遇したある不思議な出来事が本書の発端となっている。 その出来事とは、毎週土曜日の午後、ある男が50円玉二十枚を千円に両替してくれと頼んで、両替が終わるとそそくさと去っていく、というもの。 男はなぜ土曜日ごとに同じ書店で両替するのか、なぜ毎週50円玉が二十枚も貯まるのか。 その謎に、プロのミステリ作家たちと、一般公募の読者が挑戦する。 正直なるほど、と納得できる解答が提示されている作品はほとんどないが、中には面白いものもあるにはある。 個人的には一般公募の自動販売機ネタが最も良かった。解答としてだけでなく、一篇のミステリとしてよく出来ていると思う。 倉知淳のデビュー作?も公募の中に含まれており、猫丸先輩最初の事件も楽しめる。 |
No.252 | 6点 | ミステリーの愉しみ⑤奇想の復活- アンソロジー(国内編集者) | 2012/12/29 21:36 |
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再読です。
アンソロジーとは言っても、競作のお披露目の場なので、正確には新作書き下ろし競作集なのだろう。 単行本で830ページ、読み応えがあります。 いわゆる島田学派を始めとする新本格の面々と、それに準ずる創元社出身の作家ら19人が、さながら百花繚乱のごとく咲き乱れている。中には狂い咲きの様相を呈してる方も。 初読の際は司凍季が気に入っていたが、改めて読み直してみるとかなり感想が変わってくるものである。 特に印象深いのは、今邑彩、歌野正午、綾辻行人、竹本健治辺りだろうか。 一番のバカミスは津島誠司の『叫ぶ夜光怪人』で決まり、でも面白い。 |
No.251 | 6点 | 閉じ箱- 竹本健治 | 2012/12/22 21:37 |
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再読です。
全体を通しての印象は、玉石混合ですかね。竹本氏初の短編集。 ミステリ色の濃い作品もあるが、どちらかと言うと幻想味の強いホラーが多い。 そんな中なんと言っても傑作は『恐怖』であろう。氏自身もあとがきで書いているように、竹本氏の短編の代表作だと思う。 また、解説で山口雅也氏も書いているが、日本のホラー小説の最高傑作と言っても過言ではあるまい。 あと個人的に気に入っているのは『陥穽』である。 竹本氏はこの作品が嫌いで、出来れば自身の作品から抹消したいほど気に入らないらしいが、本作を編むに当たって少し見直したようだ、それほど悪くないのではないだろうかと。 他は正直特筆すべきものは見当たらないのだが、そこはかとない幻想味は竹本氏らしく、世界が反転するような、或いはあっと驚くような仕掛けはないし、ある程度展開やオチが読めてしまうものも少なくないが、雰囲気は十分味わえる。 こういう短編集は、一気に読むよりも少しずつじっくり読んだほうが印象に残りやすいかもしれないね。 |
No.250 | 7点 | 歳時記(ダイアリイ)- 依井貴裕 | 2012/12/20 21:50 |
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再読です。
作中作という私好みの構成だが、その問題の作中作がかなり読みづらいという難点を抱え込んでいる。 その為、あまり深読みすることなく流してしまったが、解決編を読むにつれ、もっと慎重にじっくり読み進めるべきだったと悔やんでみたりして。 なぜなら、この中に伏線が嫌というほど散りばめられているのだから。 作中作の少なくない違和感は、そのまま解決編へと直結している。 なるほど、確かに読者への挑戦が堂々と宣言されているだけあって、論理的に真犯人を導き出すことが十分可能となっている。 意外なエピソードが伏線になっていたりもして、なるほどと唸らされる事しきりであった。 ただ、動機だけは犯人の告白を待つ他なかったようであるが、これは致し方ないだろう。 とにかく本作はロジックに重点を置いた、良質の本格ミステリであるのは間違いない。 |