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メルカトルさん
平均点: 6.02点 書評数: 1769件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.369 5点 ロートレック荘事件- 筒井康隆 2013/11/21 22:26
なんだか違和感ありありの文章で、何か仕掛けがあるのかなと思いながら読み進んでいったのだが、これがいわゆる叙述トリックだと気付くのにちょっと時間が掛かった。その頃の私はまだ擦れていなくてあまりこのようなトリックに慣れていなかったため、あっさり騙された。しかし、やられたという感じは全く受けなかった。なので、良い意味でのカタルシスは生まれなかったのを覚えている。本来なら、そうだったのかと、膝を打つような軽いショックを受けても良さそうなものなのに、その辺がミステリ作家ではないゆえなのかとも思う。
事件そのものもありきたりであまり感心しないが、まあ短くて伏線を後から確認しやすいのが美点と言えるだろうか。
他はこれと言って褒めるべきところが見当たらないかな。

No.368 5点 ラジオ・キラー- セバスチャン・フィツェック 2013/11/20 22:23
数々の難事件を解決に導いたベルリン警察のベテラン交渉人、イーラ。彼女は長女ザラの自殺に心を痛め、その日が彼女の最期になるはずだったが・・・しかし、皮肉にもラジオ局を乗っ取っての立てこもり事件に駆り出されることになってしまう。
事件の犯人はサイコな知能犯で、人質を盾に殺人ゲームを始めようとしていた。しかも彼の要求は事故で亡くなった恋人を連れて来いというものだった。
とまあ、なかなか派手な展開で、飽きることなく楽しませてくれる。主人公のイーラの心理描写もよく描き込まれている上に、各登場人物の造形がしっかりしているのは好感が持てる。
アマゾンではすこぶる評価が高いが、私にはそれ程でもなかった。確かにスピード感あふれるサスペンスは一読に値するとは思うが、この程度なら日本の作家のほうがよりきめ細やかに描くことができるだろう。ただ、翻訳物独特の雰囲気のようなものは勿論真似できるわけではないけれど。
後味は悪くなかった。果たしてアル中でシングルマザーの主人公がこの事件を通じて得たものは何か、その後彼女はどんな人生を歩んでいくのか、その辺りも想像をかき立てられる。

No.367 5点 軽井沢マジック- 二階堂黎人 2013/11/19 22:21
再読です。
コージーミステリはやはり肌に合わないと痛感させられた作品。
水乃サトルのキャラは嫌いではないし、さらにそのお姉さまはとても素敵だとは思う。本筋よりもむしろこの軽すぎる探偵の紹介や、お姉さまが大暴れするシーンのほうが面白い。よって、ミステリとしての面白さはイマイチとしか言いようがない。
何もかもが中途半端で、ライト感覚のユーモアミステリでもなければ、トリック重視の本格物でもない、新興宗教やトラベルミステリ的な要素も絡んでくるが、それも際立ったものが見当たらない。
一番注目していた、死体の眼球を抉り取った理由もなんだか納得できない感じで。
二階堂氏は蘭子の「~ですわ」口調が鼻につくが、やはり二階堂蘭子シリーズのほうが読み応えがあっていいんじゃないかな。

No.366 7点 永遠の0- 百田尚樹 2013/11/18 22:24
これはミステリじゃないね、立派な文芸作品だよ。でも書いちゃうよ、登録されていたからね。
とても素晴らしい作品、何が?それは読まなきゃ分からない。そこかしこに落涙ポイントが散見されるし、その上立派なエンターテインメントとしても成り立つという、まれにみる名作じゃないだろうか。
志願せずして特攻隊として亡くなった祖父の謎を、孫たちが彼を知る当時の仲間たちを訪ねて聴取するという構図は確かにミステリのようではあるが、あくまで文芸作品と捉えたい。
それにしても、本作は様々なことを勉強させられるし、また感動を与えてくれる、勿論嗚咽を堪えながら読まなければならないシーンも少なくない。戦争を体験することなく育った我々が読むべき作品であり、長きに亘って語り継がれるであろう作品でもある。
尚、文庫版の解説は、本好きで知られた今は亡き児玉清さんが担当しているのも、因縁浅からぬものがあるような気がする。

No.365 5点 覆面作家- 折原一 2013/11/17 22:21
再読です。
そうねえ、まあ折原氏らしいと言えばそうなんだろうが。どうもいまいちインパクトに欠けるというか、盛り上がらないんだよね。
トリックというか、覆面作家の正体を明かされても、はあそうですか、くらいの感慨しか浮かんでこなかった。そうだったのか!とか、一杯喰わされたとか、とにかくやられた感がほとんどないので、全体が霞んでしまうのだろうかね。
多重構造はお手の物の作家だから、今更驚かないし、こちらも身構えて読むから、この結果にはいささか拍子抜けしてしまう。
残念だが、読み返す必要もなかった。折原氏の作品の中でもどちらかというと精彩を欠いた仕上がりに思えてならない。

No.364 7点 - 曽根圭介 2013/11/16 23:20
第14回日本ホラー小説大賞短編賞受賞作『鼻』他、『暴落』『受難』を収録した短編集。
それぞれ違ったタイプの不条理劇とでもいうべき佳作が揃っている。ホラー小説とは言ってもさほど怖くはなく、むしろブラックユーモア的な独自の世界観を醸し出している辺りは、新人らしからぬ筆力の持ち主だと感じる。
個人的に最も気に入っているのは『暴落』でラストの衝撃はもうね、これ程意表を突いた結末はなかろうというくらい、まさかの展開が待っている。『鼻』も途中サスペンスを交えながら、これまたオチが見事に決まっている。
『受難』はこれぞ不条理の世界って感じで、なぜだか分からないが身動きが取れなくなった主人公の前に3人のタイプの異なるちょっといかれた人々が現れては去っていくという、何とももどかしいホラーである。何故誰も助けてくれないのか、その辺り不条理さ全開で、奇妙な味わいを醸し出している。
どれもかなり面白く、レベルの高い作品ばかりで、とても印象深い一冊である。

No.363 9点 絡新婦の理- 京極夏彦 2013/11/15 22:34
まず何と言っても冒頭の美しさは、日本のミステリ史上髄一と言っても過言ではあるまい。そしてそれはラストシーンに繋がるという、まさに構成の妙を見せている。勿論、ストーリー全体の構成力はさすがなものがあり、これだけの長尺を無理なく描いている腕は確かである。
本作は、いきなり犯人が登場することで『鉄鼠の檻』と共通する部分を持っている。そして、『鉄鼠』は男の世界、『絡新婦』は女の世界というようにまるで対比するような描かれ方をしている。その意味で両者は兄弟或いは姉妹的な関係にあると考えられるのではあるまいか。
いずれにしも本作は、ある意味「百鬼夜行シリーズ」の頂点に立つ作品なのかもしれない。シリーズ最長であることも、何かを示唆してはいないだろうか。
まあそれにしても、よくこれだけ長い小説を書けるものだと感心する。ただ書くだけではなく、複雑な事件や人間関係をキッチリまとめ上げる手腕は大したものだと思う。
確かに犯人は分かりやすいかもしれない、しかしそんな些末なことはこの大作を前にしては、いか程のものでもない。

No.362 7点 殺人方程式- 綾辻行人 2013/11/14 22:22
再読です。
犯人も死体切断の理由も分かった上で読み直したので、どうかなとやや不安だったが、やはり上質の本格推理小説であった。
氏にしては珍しく物理的トリックを駆使して、死体を○○させているのはお見事。図解も入って分かりやすく、まるで本格物の教科書のような印象すら受ける。
反面、「館シリーズ」のような独特の雰囲気が全くなく、文章も淡々としすぎていて、ワクワクするとかドキドキするといったミステリ特有の愉しさが欠けているのは大きなマイナス点だろう。おそらくそれが災いして、平均点の低さにつながっているのではないかと思う。
とにかく綾辻らしさがないので、氏らしいミステリを期待した読者には裏切られた感があったのではないかと感じる。だが、例えば他の作家がこれを書いたとしたらどうだろう。もっと評価が高くなっていたのではないかと私は思うのだが。

No.361 6点 チャイナ蜜柑の秘密- エラリイ・クイーン 2013/11/13 22:00
国名シリーズの中でも異色作だと思う。クイーンと言えば、殺人事件のそれ程不可思議ではない謎をロジックで徹底して詰めていって、段階的に真相を解き明かしていく過程に、特徴があるのだと思うが、本作はまずトリックありきで、そのホワイダニットを解けば自然と犯人にたどり着くという珍しい構造を持っている。
半分密室の中であべこべに服を着せられて殺されている男、しかも部屋の中のすべての家具などもあべこべに向きを変えられている。
犯人は何故そんな面倒なことをしなければならなかったのか。とにかくその謎が不可解であり、その理由が解き明かされた時にはなるほどと思ったものだが、よく考えてみればそこまでする必要性が果たしてあったのかどうか、やや疑問視される。
作中の切手に関する薀蓄は興味のない人間にとっては退屈だろうし、中国があべこべの国だという解釈には、首を捻らざるを得ないと私は考える。
単純な事件のわりには尺が長すぎるきらいがあるのも、やや気になる点である。
多分当時としてはかなり画期的な謎の提示だったのだと思うが、改めて今読んだらどうだろう、それ程までには魅力を感じないのかもしれない。

No.360 6点 迷宮学事件- 秋月涼介 2013/11/12 21:59
再読です。
みなさんは迷宮と迷路の違いをご存知ですか?本書を読むとその答えが明らかになります。
そんな事はどうでもいいが、これは綾辻と京極を掛け合わせたような作品である。プロットや雰囲気、事件そのものは綾辻似、登場人物の人間模様は京極似で、当然京極堂、榎木津、関口、木場に相当する人物が登場する。誰が誰に対応しているのかは敢えて書かないが、そういう事を頭に入れて読んでいくと一層楽しめるのではないだろうか。無論、秋月氏が大先輩諸氏の影響を受けたかどうかは定かではない。
面白いのは、上記の4人のうち3人までが女性であること。しかし彼女らすべてが女性らしさをあまり前面に押し出さず、どちらかというと中性的に描かれているのも興味深い。
まあいずれ絶版になっているだろうから読む機会はないと思うが、もし図書館や古書店で見かけたら、読んでみても悪くはないと思うよ。ハズレの多い【密室本】の中では、かなりよく描かれているほうであろう。

No.359 6点 阿弥陀ヶ滝の雪密室- 黒田研二 2013/11/11 22:13
再読です。
切断された死体が移動する謎、幼児連続誘拐事件の謎、雪密室の謎と中身が盛りだくさんで大丈夫かと心配したが、思った以上にスッキリと解決してなかなかの満足感。
特に「J」の正体を告げられた時は唖然としたが、謎が解明されるにつれてなるほどと思わず唸らされる真相であった。
切断された死体の謎はやや無理があるが、それでも面白いと個人的には思った。意表を突く感じで、イマジネーションを掻き立てられるような、それでいて絵になるような、不思議な感覚とでも言おうか。
タイトルにもなっている雪の密室は、残念ながら前例があるため、これはあまり評価できない。
なのでこの点数にとどまった、心情的にはもう少し上なんだけど。

No.358 5点 ドサ健ばくち地獄- 阿佐田哲也 2013/11/10 22:31
これはミステリじゃないね。でも書いちゃうよ、登録されていたからね。
本作は、阿佐田哲也氏が創作したキャラの中でおそらく最も人気の高いドサ健が主役の、ギャンブル小説である。確かにドサ健を中心にひりつくような勝負の数々を描いており、ある意味ピカレスクロマンとは言えるかもしれないが、やはり博打の世界だから、ミステリとは全く別物と考えるべきだろう。
この作品は私にとっては麻雀シーンが少ないのが不満の一つである。それに、別格の『麻雀放浪記』或いは『小説・麻雀新撰組』、『新麻雀放浪記』などの長編や『雀鬼五十番勝負』『雀鬼くずれ』『牌の魔術師』他多数の短編集に比較すると、幾分出来が劣る気がするのは、私の気のせいだろうか。
阿佐田氏といえば麻雀小説、だから、本作ももっと麻雀の勝負を描いて欲しかったというのが私の本音である。
たまたまこれを目にして、興味を持たれた方は、もし未読であるならば、まず『麻雀放浪記』から読み始めていただきたい。勿論『青春編』『風雲編』『激闘編』『番外編』の順でお願いしたいところである。面白さは太鼓判を押させてもらう。

No.357 5点 赤きマント 第四赤口の会- 物集高音 2013/11/09 23:16
怪しげな趣味を持つ収集家たちが集う、地下組織的な秘密集会、それが第四赤口の会だ。
彼らはいわゆる都市伝説や昔話、おとぎ話といった不可思議で怪しい噂を持ち寄って検証し、様々な角度から仮説を組み立てる。そして一応の結論を出していくのだが、これが今一つスッキリしないものが多いのである。よって、結局推測はあくまで推測であり、真実とは限らないというわけだ。それも当然、都市伝説という噂を検証しようということ自体に無理があるから。
まあそれはいいとしても、この文章、短文が畳み掛けるように続いており、慣れるまでが大変である。まるで一つの文章が途中でぶつぶつと切られているようで、読者によっては途中で放り投げたくなる不快さを感じるかもしれないので、その点は要注意である。

No.356 5点 殺しも鯖もMで始まる- 浅暮三文 2013/11/08 22:13
再読です。
冒頭、地下約2メートルの空洞に眠る餓死した奇術師。それをたまたま釣りに来ていた老人とその愛犬が掘り返すという奇妙な滑り出しは、なかなか興味深く読めたが、話が進むに従って次第に中だるみの様相を呈してくる。
そして第二の密室殺人が起こるが、最初の事件と同様、ダイイングメッセージが真相解明のカギを握ることになる。
第一の事件は「サバ」第二の事件は「ミソ」、一体これは何を意味するのかが、物語の焦点であり、密室ははっきり言っておまけのようなものである。
葬儀屋が探偵役を務めるのだが、最初から最後まで当たり前のように担当刑事につきっきりでアドヴァイスを送ったりする不自然さはどうにかならないものかと思う。他にもツッコミどころ満載で、多少イラッとするが、そこそこ面白かったとは言える。

No.355 4点 月長石の魔犬- 秋月涼介 2013/11/07 22:17
再読です。
各章ごとに猫の目のように視点が入れ替わるため、ややこしい物語のように感じるが、事件そのものはいたって単純。ある大学の同じゼミに通う女子大生が次々と猟奇的なやり方で殺されていく、というもの。それぞれの被害者は皆首を切断され、その代わりに犬の首を縫い付けられるという、異様な連続殺人事件である。
となれば当然興味はなぜそのような面倒なことをするのか、という一点に絞られるのではないだろうか。真犯人は誰かなどは二の次になってくるのは致し方ないと思うのである。
だが、その理由がいかにも拍子抜けで、正直がっかりだ。
最後に事件を追う側の関係者が一堂に会して、和やかな雰囲気で談笑するわけだが、事件はまだすべて解決したわけではないのに、なごんでいる場合じゃないだろうと突っ込みたくもなる。
全てが中途半端で、何も完結していないのに、宙ぶらりんの格好のまま読者は置き去りにされる。これはいけないんじゃないか。
初読の際はそこそこ面白かった記憶があっただけに、今回裏切られたような気分になってしまった。これがメフィスト賞受賞作とはお笑い草だ。

No.354 9点 アクロイド殺し- アガサ・クリスティー 2013/11/06 22:13
私が初めて本作を読んだのは確か中学の頃だったと思う。読み終わった後の衝撃は今でも忘れられない。しばらく呆然として何も手につかなかった覚えがある。
勿論その頃は叙述トリックなどというものは全く知らなかったので、その驚きは読んだ方なら想像できると思う。まだ年端もいかない少年がこんな奇天烈なトリックを体験するのは、読書人生でそう何度もあるものではない。
ただ、殺人事件そのものの真相は割と平凡で、こうしたトリックに慣れてしまった現代の読者には物足りないかもしれない。
しかし叙述トリックの先駆者としての歴史的価値は十分に評価されるべきであろうし、クリスティ畢生の大仕掛けだと思う。

No.353 6点 コミケ殺人事件- 小森健太朗 2013/11/05 22:50
同人誌をそのまま取り込むアイディアはなかなか面白いと思う。
メイントリックも一発勝負の、これっきりでもう二度と使用できないもので、斬新とは言えるだろう。だが、当然こうした無理のあるトリックに関しては批判の声が上がってもおかしくはないと考えられる。それを許容できるか否かで、評価も随分違ってくるのではないだろうか。
ここに書かれている方は、大方好意的にとらえられているようだが、それはこの作品の形体に対しての評価も含まれているのかもしれない。どことなくメタな本作は、その新鮮味においては十分高い評価が与えられてもおかしくはないと思う。

No.352 7点 貴族探偵- 麻耶雄嵩 2013/11/05 22:40
「推理などという雑用は使用人に任せておけばいいんだよ」と公言してはばからない貴族探偵。当の本人は何をしているかというと、もっぱら美しい女性を口説くのに精を出しているという始末。
この特異な探偵をどう捉えるかで、作品そのものの評価もかなり変わってくるだろう。安楽椅子探偵を気取って、何もしないどころか推理すらしない、こんな馬鹿げた探偵など評価に値しない、と思えば必然的に採点は低くなるし、いや、これは今までにない新ジャンルなんだと考えればそれなりの点数は入れるだろう。
個人的にはあまり魅力を感じないが、逆に執事やメイド、運転手兼用心棒らの推理力は確かなものがあり、彼らに対しては好印象を受ける。しかし、貴族探偵の存在感はやはり絶大で、何もしなくてもそこにいるだけで許されてしまう感覚は、この作者ならではだと思う。
作品自体は短編集だが、それぞれのトリックもロジックもしっかりしていて、私としては高評価。
特に第三話の首と両手首を切断した理由は奮っている。

No.351 8点 仮面山荘殺人事件- 東野圭吾 2013/11/03 22:30
普段ほとんど読まない東野氏の作品を再読しようと思ったのは、他でもない本サイトにおいて、採点者数が多いにもかかわらず平均点が高かったからに他ならない。
が、本棚を探しても一向に見つからない、確かノベルズだった記憶はあるが・・・どうやら『白馬山荘殺人事件』と混同していたようだ。そこで、これはもう購読するしかないと心に決め書店に向かい、無事ゲットできたのである。
さて前置きが長くなったが、本作、大変面白かった。
今の時代なら、これくらいの仕掛けには驚かない読者も多いことと思うが、私は気持ちよく騙されたということで、後味もスッキリしていて悪くないし、とても楽しめたと思う。
ただ、これだけの大掛かりな仕掛けは若干無理がある気がしないでもない。しかし、文章自体には不自然なところがないので、ミステリとしては十分成立しているのではないだろうか。
序盤、登場人物が誰が誰だかやや分かりづらかったのが、個人的には多少不満ではあるが、これは私の読解力のなさによるものだから、これから読まれる方は大丈夫だと思う。

No.350 5点 日曜日の沈黙- 石崎幸二 2013/10/31 22:29
再読です。
「お金で買えない究極のトリック」を目の前にぶら下げられて、最後まで引っ張られ、挙句の果てにそのトリックがこれか、と幾人の読者が憤りを覚えたことだろう。
まあ、ミステリィど素人の女子高生コンビと、ぼんやりとした名探偵石崎幸二の掛け合いは結構笑えるので、その意味では面白かったとも言える。
中でも、殺人劇の謎を解くために招待された内の一人である、ミステリィ研の大学生の「ミステリィファンにとってはたまらない名誉だぜ」という発言に対して、女子高生コンビの一人ミリアの「たまらないのはあんたの頭の中よ」という傍若無人な発言には笑えた。
しかし、起こるのが実際の殺人事件ではないので、のんびりピクニックにまで出かける始末。こんな緊張感を欠いたミステリも珍しいのではないか。
そんなわけで結局最後まで消化不良のまま終わって、スッキリしない読後感を味わわされる羽目になる。
ダミーの解答はそれなりに考えられているとは思うが・・・。

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メルカトルさん
ひとこと
「ミステリの祭典」の異端児、メルカトルです。変人でもあります。色んな意味で嫌われ者です(笑)。
最近では、自分好みの本格ミステリが見当たらず、過去の名作も読み尽した感があり、誰も読まないような作品ばか...
好きな作家
島田荘司 京極夏彦 綾辻行人 麻耶雄嵩 浦賀和宏 他多数
採点傾向
平均点: 6.02点   採点数: 1769件
採点の多い作家(TOP10)
浦賀和宏(33)
島田荘司(25)
西尾維新(25)
アンソロジー(出版社編)(23)
京極夏彦(22)
綾辻行人(22)
折原一(19)
中山七里(19)
日日日(18)
森博嗣(17)