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メルカトルさん
平均点: 6.04点 書評数: 2008件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.648 6点 白光- 連城三紀彦 2016/05/14 22:26
一見平和に見える、どこにでもありそうな親族たち。だが、姉妹とその夫、子供と舅、それぞれが嫌らしいほどの思惑を胸に抱いており、善人は一人もいない。これだけドロドロした思念を持った人々を描いているのならば、普通は嫌悪感は拭いきれない作品になるはずだが、連城氏の手によるとそうはならない。殺人事件がまるで夢想の中で起こったかのような錯覚さえ覚える。
結局実行犯は明らかになるが、主犯は誰なのか。もしかすると一族全員の想いが殺人事件に発展させたとも言えそうであり、プロバビリティの犯罪の変形とも言えるかもしれない。
いずれにしても、本格好きな読者には不向きだと思う。どうにももやもやした消化不良な感じが心の中にしこりとなって、いつまでも残るからである。それもまたこの作品の持ち味なのであろう。

No.647 7点 ケムール・ミステリー- 谺健二 2016/05/08 22:15
タイトルから推測するに、多くの方がイロモノ的な作品を想像されると思うが、決してそうではない。異色というか奇書と呼ぶべきなのか判然としないが、れっきとした本格ミステリであるのは間違いないのでご安心を。
六甲山中の赤屋敷と呼ばれる大邸宅のはなれで、奇妙な「自殺」事件が連続する。現場の状況はいずれも密室で、一見自殺に違いないと思われるのだが、事情を関係者から聴取した探偵役の鴉原はこの一連の自殺の事案に疑問を抱き、友人の多磨津と共に赤屋敷に乗り込む。
ケムール人とはウルトラQやウルトラマンシリーズに幾度も登場した、一度見たら忘れられない容姿をした宇宙人である。本作はこのケムール人が至る所に登場し、まさにケムール尽くしとも呼べる作品となっている。この怪人の生みの親である成田亨の残した遺産なども紹介され、その孤高の芸術家ぶりも記されている。残念ながらこの本ではケムール人の静止画などは記載されていない。個人的には著作権や肖像権が複雑な模様で難しいのかもしれないが、表紙に堂々とこの怪人を載せてほしかった。
鴉原の暴く真相は、様々な手がかりをもとに緻密な推理を重ねたというものではなく、その点でやや不満の声も聞こえるかもしれないが、物語の雰囲気を含めて私はこの作品が好きである。少々の瑕疵には目をつむりたいと思う。

No.646 5点 アトロシティー- 前川裕 2016/05/02 22:23
冒頭から序盤にかけては、母娘餓死事件や悪質な訪問販売を迫力ある筆致で描き読者を飽きさせない。いわゆる掴みはOK、である。そんな私もかなりのめり込むことができた。
その後、主人公のジャーナリストである田島が事件を追うごとに、様々な人物に遭遇し、或いは自身が事件に巻き込まれるなど、なかなかいいテンポでストーリーは進行していく。現在進行形の事件や過去の事件が入り乱れる一方、登場人物も多彩なため、煩雑になりそうな危険性をキッチリと整理された文章で回避しており、その意味では腕は確かなものを感じる。
がしかし、一方でやや面白みには欠けるきらいがあり、さしたるサプライズもないのは個人的に物足りなかった。
サスペンスでありながら社会問題を扱っているため、社会派と捉えることもできる。解説には「エグミス」などと銘打たれているが、それほどえぐくはないと私は思うのだが。

No.645 6点 神社姫の森- 春日みかげ 2016/04/26 22:21
いろんな意味でネタバレになるので多くは語れないが、久保竣公の記憶を持つ作家久保竣皇はいったい誰なのか、というテーマでストーリーは進行していく。構成はいたって単純で、本筋は全体の半分ほどしかない。その他は京極堂の蘊蓄が大部分を占め、いささか退屈ではあるが、京極夏彦作品の雰囲気はある程度楽しめる。
前半は鳥口や木場らが本シリーズよりも妙に賢くなっている気がしてやや違和感を覚える。そしていよいよ榎木津の登場でにわかに面白くなるのかと思えばさにあらず、いつもの勢いがいまひとつ感じられず、やや格好悪いのが不満といえば不満。
だが結局拝み屋の憑き物落としと最終章には妙に納得なのであった。
尚、久保竣皇の正体は誰にでもすぐわかってしまうはずだから、そこは期待しないでいただきたい。しかし、本家京極堂シリーズの刊行が絶望的な今、こうした作品でも読んで昔を懐かしむのも悪くはないだろう。

No.644 6点 火の粉- 雫井脩介 2016/04/21 22:14
まあ、面白かったですよ。普通にサスペンスとして。
でもねえ、いわゆる怪しい隣人としての、武内の不気味さが今一つ伝わってこなかった気がするのも事実。あまりあからさまに異常性を暴き出してしまっては、サスペンス小説として機能しなくなるし、だからと言って単なるいい人の面だけを強調しても締まりがなくなってしまう。そのあたりのバランス感覚は優れていると言ってもいいだろう。
ドラマ化には大変向いていると思う。脚本次第では手に汗握る本格的なサスペンスドラマに仕上げることも可能かと。ユースケ・サンタマリアはどうなんだろう。ややおとなしすぎる感じがしないでもないが・・・やはり観てみないと分からないなあ。

No.643 8点 追憶の夜想曲- 中山七里 2016/04/15 22:13
うーむ、これは7点以下は付けられないな。
法廷ミステリでありながら、根幹はまごうことなき本格ミステリだ。主人公、悪辣弁護士御子柴と検事岬(岬洋介の父親)の対決は読み応え十分だが、それよりも逆転裁判が現実のものとなったのちの結末が素晴らしい。
単純に思えた事件の顛末は意外性に満ちており、これほどまでにドラマチックな物語に昇華してしまう手腕はさすが中山氏といったところであろう。すべての登場人物にしっかりとした役割が与えられており、その意味でも大変密度の高いミステリに仕上がっているように思う。
探偵役は御子柴だが、彼はなんと○○○でもあるのが新しい。
とにかく完成度の高い本格ミステリであり、一気読みがお勧めだ。文庫化されたこの機会にぜひみなさんに読んでいただきたいものだ。

No.642 6点 OUT- 桐野夏生 2016/04/08 22:12
様々な重荷を背負った女たちの暗い日常を赤裸々に描き、さらにその日常からこぼれ落ちていく様を乾いた筆致で綴った力作だと思う。だが、残念ながら私の肌には合わなかった。
中盤までは死体の解体を中心に、主婦たちの内面から生活様式までを描き切り、一方で警察の捜査も含めて追う側、追われる側両面からのクライムサスペンスとして見どころも多い。しかし、それ以降は意外というか行ってほしくない方向に向かってしまい、ラストはなんとなく付いていけないなと感じる結末に落ち着いており、個人的にはやや不満が残るものとなっている。
死体解体シーンは全くグロくない。と思う。また、途中から全く警察の追及が描かれなくなり、私などはそんなはずない、もっと早く真相に至るだろうと疑問に思ったりもした。その辺がないがしろにされているのはどうなんだろう。

No.641 6点 D町怪奇物語- 木下半太 2016/03/29 22:18
ホラー短編13からなる怪奇譚。
ホラーというよりむしろ怪談と言ったほうが正しいのかもしれない。まさか実話ではないだろうが、その奇想とも呼べる発想はやはり只者ではないと思わせるに十分な奇天烈さを持っている。
内容はバラエティに富み、しっかりとオチもできている。「世にも奇妙な物語」辺りの原作としてもしっくりきそうな物語が多いが、木下氏独自のテイストというか味わいが感じられ、一風変わった世界観を垣間見られる。

No.640 7点 雨の日も神様と相撲を- 城平京 2016/03/26 22:15
4ページ目、タイトルの前に記されている「少年少女青春伝奇」の文字がこの作品の概要をよく表している。つまり、青春小説であり伝奇小説だということ。ミステリは主題ではないので、おまけ程度と思って読んだほうが無難だろう。
主人公の少年はある村に転校してくるが、ここではカエルが神様であり、カエルの言葉を唯一理解できるのがもう一人の主人公の少女、真夏である。少年は小柄だが相撲の経験者で、彼は外来種のカエルを相撲で攻略する方法をトノサマガエルらに教示する。
少年は非常に大人びており、どこか達観しているところがあって感情移入しづらいのがやや残念な気もする。一方の真夏もあまり感情をあらわにしないタイプの上、大柄なため可愛げのない感じを受けるので、損をしていると思われる。ただし、この凸凹コンビのやり取りがちぐはぐであったり、少年が思ったことの半分も言えず、言葉を飲み込んだりする心理描写はなるほどと頷ける部分も多い。
ラストは爽やかすぎて青春小説として◎。

No.639 6点 シャーロック・ノートⅡ- 円居挽 2016/03/22 22:00
舞台は探偵養成学校。第一章はカンニングの疑惑を解決、だがかなり物足りない。この時点で先行きにいささか不安を感じ始めるが、第二章である古典作品絡みの事件を描いており、これがなかなか良い出来と思われ、盛り返す。相当有名な作品なので問題ないのかもしれないが、未読だと意味の分からない点があるので、要注意。
第三章で再びカンニング事件を扱うことになり、ここが本作の一番の見どころではないかと感じる。お得意の学園裁判は検事役、弁護士役が入れ替わる辺り、ある作品を彷彿とさせる。
金田一耕助ならぬ金田一剛助や、鬼貫らも登場し趣向を凝らしており楽しめる。
ラノベかと思いきや、骨格のしっかりした本格ミステリだった。

No.638 7点 毒入りチョコレート事件- アントニイ・バークリー 2016/03/17 22:00
今時なら珍しくない多重解決モノだが、事件が一見単純に見えるところがミソじゃないのかね。シンプルな事件をどれだけ展開させてこねくり回せるのか、しかも6つもの解決法を提示して、さらには前者の推理を否定しつつ新たな解法を披露するという荒業は、さすがに名作と呼ばれるだけのことはあると感じる。
二人目まではやや疑問符付きだったけれど、それ以降はとてもよく考え抜かれていると思う。意外な犯人あり、人間関係の妙あり、巧妙な欺瞞ありと、様々な視点からの推理がみられる。
ラストのブラックな味わいも、思わず唸らされる。

No.637 5点 保健室の先生は迷探偵!? - 篠原昌裕 2016/03/12 21:49
まあ習作の域を出ていない気がする。
これは、伏線を拾い集めて推理を構築するといったパズラーとは全く違う。わずかな伏線をもとに真犯人を指摘しているが、他の人物でもおかしくはない程度の推理であり、ミステリとしても青春小説としてもいささか弱いと言わざるを得ない。
また、ラブコメディの一面も持ち合わせてはいるが、二人の主人公の心理描写が行き届いておらず、唐突な告白には内心えっと思ってしまった。
絵の中で殺人を犯すというアイディアは良かったが、それを生かせていないし、どこをとっても中途半端な出来と感じる。

No.636 6点 猫間地獄のわらべ歌- 幡大介 2016/03/08 21:54
本格時代小説と本格ミステリがうまく融合された、なかなかの逸品。メタな趣向を盛り込むことにより、読者に「そんな馬鹿な」と言わせないように苦心している。一風変わった「読者への挑戦状」を挟むなど、サービス精神も旺盛で、読者を飽きさせないよう工夫しているのが涙ぐましい。
kanamoriさんもご指摘のように、長編の中に独立した事件が三件含まれており、どれもバカミス的でありながらもよく考え抜かれたトリックを採用している。
密室、見立て、首なし死体、屋形船(館)の殺人など、興味を惹く要素がまさにてんこ盛り状態な本作である。

No.635 6点 どんでん返し- 笹沢左保 2016/03/02 21:54
全体的に小粒な印象。異色な感は強いが、タイトル通りのどんでん返しを期待すると裏切られる。かなり緩めの切り返しといった感じで、エッジの効いた反転とはならなかったのは少々残念。
だが、それぞれがどことなく小粋な雰囲気を醸し出しており、会話だけで成り立っているとは思えないような、ストーリー性の豊かさを感じる。
個人的にベストは『皮肉紳士』で、ダイイングメッセージを学術的に幾種もの解釈を披露しており、興味深く読めた。

No.634 5点 コロシアム- 土橋真二郎 2016/02/25 23:13
『バトルロワイアル』の亜流のようなものかと思ったら、一味違う面白さを見せてくれた。とは言え、たたき台にしていることは確かだろう。
「コロシアム」ではある高校の女子生徒のみ、各クラスから一名が選ばれ、計30人に拳銃と殺傷能力のあるナイフが与えられる。そして殺し合うことを強要されるのだが、ある方法によりクラスメートと連絡を取り合うことができることが分かり、各クラスでは選ばれた女子生徒を援護するのだが・・・
中盤までは迫力不足とういか、緊迫感や臨場感が物足りなかったが、最終章のデスゲームで俄然盛り上がりを見せる。そしてラストでは意外な事実が発覚し、次巻以降に期待を持たせるような憎い結末を迎える。
まだ始まったばかりの印象だが、やはり3巻まで読まなければ収まりがつかないように上手く作られていると、妙に感心させられた。

No.633 5点 両性具有迷宮- 西澤保彦 2016/02/22 22:20
半分以上が官能小説風で、しかも設定が荒唐無稽、一風変わったものが多い氏の作品の中でも特に異色な作風ではないだろうか。
ミステリとしての主題はホワイダニットだと思うけれど、その部分がやや曖昧な印象を受けた。なぜ首を絞めた後に、ナイフで滅多刺しにしたのか辺りの疑問点も、謎として残されたままだし。
あからさまな性描写に加えて、牧野修氏や柴田よしき氏、倉阪鬼一郎氏らを実名で登場させるなど、サービス精神に溢れた小説であるのは間違いない。しかし、良識派の読者は眉をひそめること請け合いである。

No.632 5点 ブラインド探偵(アイ)- 米田京 2016/02/17 22:06
糖尿病により両目を失明し、全盲となった作者による連作短編集。
主人公の勇は事故で失った視覚を嗅覚や聴覚で補い、ヘルパーの弘子と二人三脚で様々な事件を解決に導く。
本書は視覚障害者の勇の生活ぶりや、障害ゆえの苦労がよく伝わってきて勉強にもなる。その意味では大変な良作だと思うし、健常者では書けない心理状態の描写なども見どころとなっている。
しかし、ミステリとしてはやはり弱いと言わざるを得ない。謎もトリックも単純なものだし、捻りも効いていない。ご自身はあとがきで「読者に損はさせない」と豪語しておられるが、そこまでの高評価は個人的にはできない。

No.631 5点 ウェディング・ドレス- 黒田研二 2016/02/08 22:09
一生懸命書いているのがよく伝わってくるし、文章も下手ではないと思う。ただいかんせん面白みに欠ける気がする。その割にのめり込めるのは、「僕」のパートと「私」のパートが読み進むにつれて齟齬を生じてくるためだろう。その据わりの悪さは何が原因なのか気になって、自然に読むスピードが速くなってしまう。つまり、作者の思うつぼってことだろう。
メイントリックに関しては、発想は大変ユニークで面白いが現実味は薄い。映像として浮かんでくるのを想像するに、どう考えても不自然さが拭えないと思うが。
全体として決して悪くはないけれど、いろんな要素を詰め込み過ぎて焦点がぼやけてしまっている気がしてならない。メフィスト賞受賞作として相応しいのかと問われれば、まあ何とも微妙なところ。

No.630 5点 グランドマンション- 折原一 2016/02/04 20:06
久しぶりに折原氏を読んだが、相変わらず安定した低空飛行ぶりに安心した。
昨今の溢れかえるような叙述トリックに慣れた体質には、いささか刺激が弱すぎたようだ。アッと驚くような目新しさもなければ、裏技的な技巧も感じられない。悪く言えば使い古された叙述ものを総ざらいしたような印象で、世界が反転するような鮮やかさには程遠い。
自他ともに認めるボンクラ(クソ読者)の私には、入り乱れる人間関係や前後する時系列がやや煩雑であったことを認めなければならない。それもグランドマンション1号館という限られた舞台の中での群像劇なので、多分に窮屈な感が否めない。
それでも、単行本刊行の際に新たに加筆された『リセット』と『エピローグ』で、それまでの事件をサラリと振り返りながら読者の頭脳を整理させて、すべての短編を上手く繋げようとする努力は涙ぐましいものがあると思う(ちょっと大袈裟)。

No.629 6点 桐島教授の研究報告書- 喜多喜久 2016/01/30 20:03
序盤は主人公の一人、芝村の理系大学の学生生活が面白おかしく描かれており、楽しく読むことができた。中盤はそれほど強烈な謎が出現するわけでもなく、やや中だるみの感があるが、理系出身の方にとっては興味深く読めるのではないだろうか。私は文系なので、やや専門用語などについていけない部分があり、少々退屈な思いを強いられた。
だが、それも謎解きの段階に入って格段にミステリらしさを発揮し始めるので、佳境になるほどヒートアップする。そして意外な犯人像や、意表を突く動機には驚かされるばかりである。
全般としては、氏の得意分野である化学、薬学をうまく生かして物語を紡いでおり、特徴がよく表れていると思う。芝村の恋愛感情なども絡めながら、エンターテインメント性も十分認められる気がする。

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メルカトルさん
ひとこと
「ミステリの祭典」の異端児、メルカトルです。変人でもあります。色んな意味で嫌われ者です(笑)。
最近では、自分好みの本格ミステリが見当たらず、過去の名作も読み尽した感があり、誰も読まないような作品ばか...
好きな作家
島田荘司 京極夏彦 綾辻行人 麻耶雄嵩 浦賀和宏 白井智之 他多数
採点傾向
平均点: 6.04点   採点数: 2008件
採点の多い作家(TOP10)
浦賀和宏(33)
アンソロジー(出版社編)(30)
島田荘司(25)
西尾維新(25)
京極夏彦(22)
綾辻行人(22)
折原一(20)
日日日(20)
中山七里(19)
森博嗣(19)